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黒の異邦人は龍の保護者 # 16 “God of Death ....GO!! ―― 黒の死神、立つ ―― ” 『死神の涙』編 N
作者:ハナズオウ   2012/03/15(木) 04:44公開   ID:CfeceSS.6PE




『おーい! 聞こえてるか? おーっ! はーっ!よーっ! だよ!!』

 昼の穏やかな日差しが差し込む鏑木邸の客間。

 静寂に包まれる鏑木邸の客間に小さく鳴る無線。

 音声が鳴る無線を着けた黒は未だ眠りの中である。

 ハヴォックによって運び込まれて一日と半日、黒の死神として追われているヘイは一瞬たりとも目覚めていない。

 東洋系の青年は、静かに規則正しく寝息を立てている。

 傷を、疲労を、気力を、黒という存在その全てを癒すように、黒は深く眠っている。

 そんな客間に美味しそうな匂いが漂ってくる。

 その匂いに黒の指が布団の中でピクリっと動く。

 匂いに釣られて、黒は瞼をゆっくりと上げる。

 そして、腹が匂いの元を求めるように大きく遠吠えのように腹の虫が客間に鳴り響く。

『グゥウウウウウ!! ギュルルルウウウウ!!!』

 腹の虫に突き動かされるように、黒は力の入らない体をゆっくりと動かす。

 ………………

 …………

 ……

 眠る黒を目覚めさせる匂いを放つキッチンでは、鏑木安寿とその孫の楓が楽しそうに昼食を作っているところだ。

 白髪を綺麗に後ろで編んだ初老の東洋系の女性、鏑木安寿は、慣れた手付きで料理をこなしている。

 その横で、サイドポニーを可愛らしいリボンで結んだ東洋系の10歳ほどの少女は、悪戦苦闘している。

 安寿は先日貰ったアンバーからの手紙に書いてあったように、これでもかよっ! という量の昼食を作っていた。

 おでんに秋刀魚の塩焼き、鰤の再京焼、ハンバーグ、カレー……etc

 既に机には大量の料理が並んでいる。

 コンロを占領して、楓はフライパンと必死に格闘している。

 フライパンの中で踊っているのは、チャーハン。

 焼ける音が次第に焦げる音に変わっていくが、楓はフライパンとの格闘に没頭し気づいていない。

「さぁて……アンバーちゃんが言ったように、“男の子な男性”はそろそろ起きてくるかね。

 ぁあ、楓……もう火を止めなさいな」

 刺身を切っていた安寿は、ニコニコと笑いながらフライパンと格闘する楓に言う。

 フライパンの中心以外にご飯がベッタリと張り付いてしまっているが、楓は『まだだよーっ!』っと火を消そうとしない。

 フライ返しでガシガシと30秒ほど格闘して、楓は火を消してチャーハンを皿に盛る。

 大量にフライパンにこびりついた元チャーハンを、楓はフライ返しでガンガンと削り取ろうとしている。

 ボロボロと落ちてきたチャーハンもどきは皿に山となり、楓は満足げに自信作を眺める。

「ねぇねぇお婆ちゃん! 出来たよー! 李さん起こそうよ!」

「起きてくるまで待ちなさいな……ほら、起きてきたみたいよ」

「あーっ! 李さん、おはよー!」

 楓はチャーハンを机の上に置くと、大きく手を振って黒に笑顔を向ける。

 安寿もにこやかに笑って出迎えている。

 黒は、少し大きめの黒のスエットを来て現れた。

 のそのそとゆっくりと動いている黒に、楓はタタタっと駆けてジャンピング抱きつきをして黒の腹に飛び込む。

 黒は踏ん張ったはずが力が入らずに、カクンっと床に転がる。

 思った以上に体に力が入らないことに驚きつつ、冷静に動かない箇所がないかを調べる。

 足……異常はなし。肩……異常なし。肘……異常なし。右腕……異常なし。

 左腕……黒に電流走る!

 激痛が走る左腕に一瞬黒は歯をグっと食いしばって耐える。

 しばらく左腕は使い物にならないどころか、何かが触れるだけで意識が飛びそうなほどの激痛が走る。

 正直なところ、左腕は現状足でまといとなっている。

 楓は黒の考えなんて知らないと、抱きついている嬉しさや楽しさに浸って、腹に顔を埋めてグリグリとしている。

「ほらほら、楓。いつまでも抱きついていないでこっちに来なさい。

 “李さん”とやらも、難しい顔してないでこっちでお昼はどうだい?」

「はーい! ねぇ李さんもっ!」

 楓は元気よく立ち上がると、黒の右腕の方を握って立ち上がらせる。

 手を引いて、楓は黒を机へと導く。

「ねぇねぇ、李さん! 私が作ったの! 食べて!」

「……ああ」

 遠吠えのように鳴る黒の腹の虫に、楓は自信作のチャーハンもどきを薦める。

 パラパラというよりも、バラバラとなってしまったチャーハンと呼ばれていたモノが黒の目の前に楓によって運ばれる。

 米だったものは水分が完全に消え、小石のように硬いだろうことは見ただけでわかる。

 焦げて原型が既になにかもわからない物体も、綺麗に散りばめられている。

 空腹を訴える腹の虫は食料を求めて叫んでいる……っが、黒は冷静にチャーハンもどきを見下ろしている。

 これを食べたらどうなってしまうのだろう……っと大食漢の黒が空腹の極限状態で“食べる”事を躊躇している。

「起きて早々にチャーハンは厳しいかもしれないね。

 ほら、お味噌汁でも飲みなさいな」

 楓のチャーハンもどきに躊躇している黒を見かねて、安寿は味噌汁を薦める。

 黒は助かったと少し表情を緩め、味噌汁を啜る。

 空っぽの身体に暖かい味噌汁がじんわりと染み込んでいく。

「ねぇねぇ李さん! 私頑張ったんだよ!」

「そう……か」

 黒は味噌汁を置き、楓のチャーハンもどきに手をつける。

『バリバリ! ボリ! ガリッ!』

 米を噛んだ感触ではないな……っと思いつつ、黒はチャーハンもどきを口に運んでいく。

 硬い。っが味は、いや……なんでだろうか、喉を通るとどこか優しい。

「ねぇ! 美味しい!?」

「……ああ。あとは火加減だな」

 完食した黒に、楓は満面の笑みで感想を求めた。

 嬉しそうに話しかけてくるのを、何も傷つける必要はない……っと黒は口元を綻ばせて静かに答えて優しく楓の頭を撫でる。

 黒のナデナデをエヘヘっと嬉しそうに受ける楓の頬は即座に赤くなる。

 黒の感想に満足した楓は、飛び上がり、クルクルと回って嬉しさを表現している。

 安寿と黒は笑いながらその光景を見ている。

「ほら、お師匠さん、冷めないうちに食べちゃいな」

 コクリっと頷いた黒は、遠慮なく目の前に広がる料理を口に運んでいく。

 極限まで飢えた状態だからか……いや、もう記憶にもないほど遠い昔の母の味ともいうべき、家庭の味に触れた黒は感動して動きを止めてしまう。

 一口安寿の料理を口に入れた黒は数秒固まってしまう。

 感動から覚めて動き出した黒は、一瞬たりとも止まることはない。

 テーブルをあっちへこっちへ箸を運び、10人前はあったはずの大量の料理は黒の胃袋へと消えていく。

 その光景を見ている楓と安寿は、目の前で起こる異常とも言える黒の大食いに目を丸くする。

 まるでブラックホールの如く、料理を吸い込んでいく黒。

 食べるペースは上がることもなく、下がることもない。

 それも美味しそうに食べる黒に、2人はいつしか笑って見ていた。

 笑う安寿は時計をみて、同じく笑う楓に話しかける。

「ほら、楓……そろそろ宝鈴パオリンちゃんのお昼の時間だから、お粥を持っていって食べさせておあげ」

「うん!」

 楓はブーン! っと言いそうなほど楽しそうに、お粥が入った大きな土鍋を持って部屋へと消えていく。

 楓が部屋へと消えた事で、安寿は唐揚げを揚げ始める。

 すぐに揚がり、テーブルに追加される。

 それも直ぐ様黒の胃袋へと消えていく。

 パーティでも開くのか? っというほどあった料理は全て黒の胃袋へと消えてなくなった。

 清々しいほど完食された料理を目の前にして、嬉しくて笑ってしまう。

「フフフ……アンバーちゃんの言う通り、よく食べるね。

 1つだけ言わせてもらっていいかい?」

「ああ」

「そんな食べると太るよ……30超えたら絶対太るよ。そうでなかったら世の中不公平ってもんだよ。

 世の女性に殺されるね」

 安寿の言葉に、黒はフフフっと笑い始め、次第に肩を震わせ、声を殺して笑い始める。

「どうしたんだい? そんなに面白かったかい?」

「ああ……昔皆に言われたよ」

「そうかい……少し外で話をしないかい?」

「ああ」

 黒にとって十分とはいえない量とはいえ、大量の料理を胃に収めた。

 黒は安寿の誘いを受けて立ち上がり、安寿と共に外へと出ていく。





―――――――





TIGER&BUNNY × Darker Than Black


黒の異邦人は龍の保護者


  # 16 “God of Death ....GO!! ―― 黒の死神、立つ ―― ”


『死神の涙』編 N


作者;ハナズオウ







―――――――




 森へと入っていった安寿と黒。

 木々の隙間から日が照り、涼しくも心地のいい空間に2人は入っていく。

 安寿は少し歩くと木で作った小さな腰掛に腰を下ろす。

 黒はそれに対峙するように立つ。

「さてと、色々と聞いておきたいね。なんで宝鈴ちゃんのお師匠さんが追われてるんだい?」

「正確にはわからない……ただ、俺の柵のせいだ。だから……」

「それで宝鈴ちゃんを遠くにやったわけかい。

 大切なものは遠ざけておけとは聞くけどね……」

 黒は首を縦に一度振り、肯定する。

 安寿はその答えの真偽を確かめるようにホンの一秒ほど黒の瞳を見つめる。

「それでお師匠さんはどうするつもりなんだい?」

「約束……いや、蘇芳に言った事を果たす。

 そのために蘇芳を誘き寄せる」

 しかし、黒には圧倒的に情報が足りない。

 敵がどこの誰なのか、わからないでいるのだ。

 鎮目 玄馬、蘇芳・パブリチェンコ、ジュライ、魏 志軍ウェイ チェージュンが敵対していることはわかっている。

 そのバックに誰がついているのか、どれだけの規模なのかがわからない。

 そんな黒が唯一頼れたのは“NEXTになれる薬”という都市伝説。

 トレーニングセンターで襲撃を受ける少し前から流れ始めたものである。

 しかし、いつもならの黒ならば取り合わなかっただろう。

 その矢先に“ハヴォックの登場”である。

 目の前で能力を使用して、黄の家に連れ帰った後は能力を失い“喪失者”となっていた。

 つまり一時的にでも能力を宿らせるモノが存在するということだ。

 黒にはそういうモノを1つしか知らない……“覚醒物質”である。

 そうなればやつがいることになる……そう、『亡霊ファントム“ハーヴェスト”』だ。

 “物質分解”能力という極めて凶悪な能力を武器に生きてきた契約者だ。

 問題はその先……ME技術を再現し、契約者を組織的に使っている者がいる。

 そこへの手掛かりがない。

 アンバーからある程度の未来の情報を持っている猫に聞いてみても、その部分だけははぐらかされてばかりだった。

「それで誘き寄せるために、シュテルンビルトの犯罪を潰して回ってたってわけかい。

 行き当たりばったりだね」

「それはわかっている……だが、それ以外に方法がない」

「そうだな。アンバーとの契約も一昨日別れた時に切れたからな。

 アンバーから止められてた情報も解禁してやる。

 ――反撃といこうぜ」

 安寿と黒が話していた所に聞こえてきたのはマオの声。

 その声はワクワクが抑えきれないといったいたずらっ子のような声だった。

 見るとそこにはやはり黒猫が楽しそうに座っている。

「猫……どうするつもりだ?」

「犯罪者として指定されたお前を活かすためにもな。

 このパンドラとお前の生存戦争を引っかき回す」

 猫は静かに語り始めた。

 アンバーから止められていた情報はかなり多い。

 契約者達を飼っているのは製薬会社パンドラのオーナー『エリック西島』だということ。

 シュテルンビルト内に2ヶ所、生成した『覚醒物質』を保管・管理する工場が秘密裏に存在すること。

 『覚醒物質』を餌にエリック西島は名前すら表に出ることはない巨大な裏組織と手を結んだこと。

 それにより、エリックはほぼ自由にヒーロー達を動かせるようになったこと。

 『蘇芳・パブリチェンコ』という少女は戸籍上存在しないということ。

 『牧宮蘇芳』という少女が日本にて捜索願が出されていること。

「面白いことにお前の言う『蘇芳・パブリチェンコ』と捜索願が出されてる『牧宮蘇芳』は同一人物だ。

 まぁそこらへんについて話したいってやつがいてな」

 ニヤッと笑う猫。

 仕掛けがガッチリとハマったと言いたげなドヤ顔を披露する黒猫の猫。

 仕掛け通りならば、黒の携帯電話にアンバーからの音声メッセージが届くはずだ。

 だが、黒にその反応はない。誰が話したいのだろう? っとでも思っているのだろう。少しキョトンとしている。

 安寿にいたってもわからずにニコニコとしている。

 しかし、少し待てど携帯電話の着信が森の中に鳴ることはなかった。

「……おい黒、携帯電話はどうした?」

「…………コートの中だ」

 ちょっ! おまっ!! っとアングリした猫。

 正直なところ、アンバーが話す部分について猫は全くと言っていいほど知らない。

 黒に取りに帰って貰わないといけないか……それだと流れがな……っと溜息を着いた猫。

 そんな猫に天使の笑顔をした救世主が現れる。

「李さーん! 李さーん!

 っあ! 李さんいたー! 携帯電話鳴ってるよー!」

 嬉しそうにトコトコと走ってきた楓は、黒を見つけて掛けてくる。

 本日二回目のフライング抱きつきにより、黒の腹に納まった楓は力一杯顔をグリグリと押し付けている。

 携帯電話を受け取った黒は、届いたボイスメールを開く。

『ふぅ、やっと開いてくれた……ありがとうね、鏑木楓ちゃん。

 黄 宝鈴ホァン パオリンちゃんが寂しがってるよ、傍に居てあげて』

「えー! んー、はぁい!

 ねぇねぇ李さん! この後ちゃんと遊んでね!」

「……ああ」

 やったー! っと楓はキーン! っと聞こえてきそうなほどご機嫌に家に走って帰っていく。

 ボイスメッセージのアンバーの音声は楓の姿が消えるまで、まるで見えているかのように黙っている。

『本当にいい子に育ってるね、安寿。

 あーあ、いっぱい貴方とお話したいんだけどな……本題に入ろうかな、黒。

 黒の言う“蘇芳・パブリチェンコ”とこの世界で捜索願が出されている“牧宮蘇芳”はおんなじ人を表している。

 1人の女の子を表す二つの名前。これを説明するにはこの世界の成り立ちから説明しないといけないね。

 ――この世界はね、イザナギが作り出した“弓張月”なの』

 弓張月……それはゲートが存在した世界にて、生まれながらにして契約者であった“イザナギ”紫苑・パブリチェンコが作り出したものだ。

 名前でわかるように、紫苑は蘇芳の双子の弟である。

 紫苑の契約者の能力は“物体の複製”、対価は“身体機能の一時的な不全”。

 紫苑の能力で複製されたモノには一つ特徴がある。

 それは本物と一つ何かが違っていること。

 それは大きさであったり、性別であったり、何かが違っているのだ。

『そう、イザナギの作ったもう一つの地球……つまり弓張月のことね。

 イザナギを中心にした人達はゲートのない世界を作ろうとしたの。

 その人達の思惑通り、作られた地球にはゲートは存在しない世界が出来上がったの。

 そして、ゲートで集めた膨大な量の人の記憶と共に“蘇芳”とジュライを送り込んだの

 この世界は紫苑が用意した蘇芳のための世界。だから戸籍もあるし、居場所もある』

 アンバーは冷静に、丁寧に説明していく。

 それぞれの思惑はあっただろうが、紫苑は蘇芳を能力者などいない平和な世界に送れたと幸せそうに対価により死んだ。

 しかし、実際にはゲートが存在しないだけで、能力者は存在していた。

 ――NEXTとして。

 感情を失わず、合理的な思考に支配されることもなく普通の人間と同じように生きている。

『契約者っていうのはね、ゲート粒子と呼ばれるゲート内に存在する特殊粒子と親和性が少なからずあった人間がなっていくの。

 ゲート粒子はその人と交わることで変質し、能力を宿らせるの。

 それは肉体や魂に作用していくの。

 そして、親和性が高い人達はドールとなってもう一人の自分と出会うの。

 その先に至ると、人形みたいに感情を失っていたドール達は感情を取り戻す。

 ――この世界のNEXTのようにね。

 そしてね、この世界にもゲート粒子は存在するの――アナタが銀をイザナミの抜け殻を火葬したことによってね』

 ふぅっとアンバーは小さく息を吸い込み、再び説明に戻る。

 傍で聞いている安寿にはさっぱりな内容だが、黒が聞き入っているのを見て一切口を挟まないようにニコニコと黙っている。

『そうそう、蘇芳の事だったよね。

 この世界は蘇芳の為に用意された世界。だから戸籍もあるし、家族もいる。

 苗字が違うのは、過去が変わった一つの結果ってだけだから。

 この世界に契約者がいるのは、ゲートで弓張月へと蘇芳を送った時の事故のようなもの。

 ゲート内で死んだ契約者達の魂がこの世界に蘇芳と共に送られたの。

 まぁ、この程度かな……じゃぁね! またね、黒!』

 ブツっと切れたボイスメール。

 内容はこの世界の成り立ちを説明したものだった。

「……以上、みたいだな。どうする、黒?」

「蘇芳を助け出す。

 あいつに銃を持たせてはいけない。

 俺との記憶も……いらない」

 静かに答えた黒の瞳にはさきほどまでの絶望の色はなかった。

 その瞳には感情の色もなく、機械のように生きてきた瞳はない。

 決意した瞳がそこにはあった。

 戦う相手も救うべき人もわかった。

 あとはただ進むだけ。

「俺の方もようやくこの身体の能力に慣れてきたしな。俺とお前だけでもパンドラを掻き回せるぜ」

「そうかい……そっちの算段がたったならこっちの話に移ろうかね」

 木に腰掛けた安寿はニッコリとしながらも、力強い声で黒と猫に語りかける。

「お師匠さん、宝鈴ちゃんはどうするつもりだい?」

「どうもこうもしない、俺がアイツの傍にいればアイツに害が及ぶ。

 俺の正体がバレた時点で消える事は伝えてある。

 俺がいなくてもアイツの世話は会社から世話役がやってくる手筈になっている」

「私が聞きたい事はそんなことではないんだけどね。

 なんでそんなに去ることにこだわるんだい?」

「俺は黒の死神だ」

「こだわってるのはこれかい?」

 安寿は、ため息混じりに懐から黒の仮面を取り出す。

 白地に右目に紫の稲妻模様が刻まれた仮面。左目には黒ずんだ血の跡が涙のように塗られている。

 黒を逃がさないために安寿はこの仮面を元より懐に隠していたのだ。

 安寿はニッコリと笑いながら、黒の仮面を傍にあった木に叩き割る。

 粉々に割れた仮面は地面に無残に落ちる。

「これでこだわってるものはなくなったね。どうするんだい? お師匠さん」

「俺が近くにいればアイツに害が……」

「それを潰しに行くんじゃないのかい?」

「俺は多くの人を殺してきた」

「前の世界でね。ハヴォックも言ってたよ、もう救われてもいいのかもしれないってさ」

「俺は壊すしかできない」

「なら、宝鈴ちゃんはあんなふうに育たないよ

 ――さぁて、次はなにが出るんだい?」

「俺は……」

「アンタが宝鈴ちゃんの幸せを第一に考えてるのはわかるよ。

 でもね、一つ大きな考え違いをしてるよ。

 その宝鈴ちゃんの幸せの絵の中にアンタが入ってもいいんじゃないかい?」

「そうだぜ、黒! 昔黄に言われただろう?

 “どっちか一方が無理ならどっちも取っちまえ!”ってな。

 黄 宝鈴の近くにいたいって想いとあの子の幸せの為にって思いに板挟みになったお前はまた、

 自分を殺す方を無意識に選んだんだよ」

「黄……宝鈴ちゃんのお父さんか誰かかい?」

「いや、以前の世界で仲間だったヘラブナみたいな奴だよ。あの天使な黄 宝鈴とは似ても似つかなねぇよ」

「そうかい……しかしいいこと言うね、その黄さんは。

 まぁお師匠さんがどういう答えを出すかは楽しみにさせてもらうとするさ。でもね、覚えておくんだよ?

 ――アンタは我が家の冷蔵庫をすっからかんにしたんだよ?」

「……ああ」

「そんなに黒のために動いていいのか? アンタの息子ともぶつかる可能性だってあるんだぜ?」

「いいさ。見てみたくなったのさ。

 宝鈴ちゃんを放ってまでアンタがしようとしてることの結末をね」

 よっこいしょっと安寿は立つと、ゆっくりと家へと帰っていく。

 黒と猫も安寿を追って家へと向かう。

「そういえばお前、前の世界で死んでないんだよな?」

「ああ」

「ならきっとイザナギって奴がお前をこの世界に導いたのかもな。

 蘇芳を守ってくれってな。頑張れよ、騎士様」

「…………」

 猫に返事をせずに、黒は鏑木邸へと入っていく。

 家に入ると、黒は折りたたまれた私服へと着替える。

 暗めのジーンズ、黒のタートルネックのロングTシャツの上に黒のロングコートを羽織る。

 家を出ようとすると、安寿はアンバーからの荷物を黒に差し出す。

 中を確認した黒は苦笑するように口元をほころばせる。

「これは黄に渡してくれ。

 ――アイツが俺を追ってくると決めたなら」

「ああ……そうさせてもらうよ。

 うんと意地悪してあげようかね」

「ああ。そうしてくれ」

 黒は安寿に少し微笑むと、コートを羽織り外へと向かう。

 仮面は割れて失われた。

 そんなもの隠れ家に10個近くの仮面のストックがある。

 真っ先に向かうべき目的地は決まった。

 いくら敵が巨大でもどこかしらつけいるところはある……。

 例えヒーローと再び戦う事になろうとも。

 能力者だけならば、いつもの戦闘と一緒だった。

 ヒーローは能力に加えてそれを補助するスーツや諸々がある。

 倒しても倒されてもダメ……。

 いつも以上にキツイモノになるだろう。

「お師匠さん、難しく考えてるようだけどね、喧嘩なんてね

 ――『振り上げた刀を重力に任せて振り下ろしてしまえばいい』んだよ」

 難しい顔を黒がしていたのだろう、安寿は笑いながら声を掛ける。

 何時の間にか考え込んでいたのが可笑しくなったのか、黒は軽く笑う。

「そうだな……世話になった」

「そんなことないさ。いってらっしゃい。ちゃんと必ずただいまを聞かせておくれや」

 ああ……っとだけ言い残して、黒は鏑木邸を去っていく。





―――――――




 ハヴォックとの賭けが終わった翌日、パーセルはハヴォックの横で眠っていた。

 黒髪オカッパの東洋系の14歳ほどの少女、パーセルは身体をゴキゴキ言わせながら目を覚ました。

 目覚めたパーセルは、オリエンタルタウンを一日ブラブラとした。

 ニコニコと楓が楽しそうに後を追ってきたが、始めパーセルは無視していた。

 それでもニコニコと追ってくる楓にうざったくなって能力を使って放っていこうかとも思ったが、気が引けて出来なかった。

 楓をどうしようかと悩んでいるパーセルはしまいめには猫耳を楓に取られる始末である。

 パーセルは楓から猫耳を取り返すのに、日中全てを掛けて山の中を二人で駆け回った。

 お気に入りの白地に大きなボタンがポイントのコートは少し汚れてしまった。

 頭に着けたゴーグルは楓に取られることはなく、ホッとしていた。

 そのせいもあって夜はぐっすりと寝てしまい、パンドラに帰還して工作しようとしていたのに出来なかった。

 次の日、目覚めたのは昼前であった。

 なにやら家主である安寿が楽しそうに大量の料理を楓と作っているのを見て、パーセルは猫耳を頭に装着した。

 そして、契約能力である黒い球体を発生させて、その場から去ろうとする。。

 パーセルの契約能力は“空間転移”。対価は動物の耳を模したモノを装着すること。

 楓は楽しそうにピョンピョンとしていたが、パーセルは全身筋肉痛だった。

 楓は一心不乱に安寿の横で何かを創造している。

 その嬉しそうな表情にイラっとしたパーセルは楓に飛びつかれる前に能力により鏑木邸の屋根にて昼寝することにした。

「うっし……行くか」

 何かを考え込むように黙っていたパーセルは、ある瞬間にパッと目を開ける。

 ハヴォックは、賭けの後から一度として目覚めていないらしい。

 それは好都合と、パーセルは覚悟を決める。

 その一言ともに、パーセルは能力により屋根から姿を消す。

 ………………

 …………

 ……

 鏑木邸の屋根から消えて、数時間後。

 パーセルはパンドラの施設内を歩いていた。

 その目的は柏木舞の奪還にある。

 特に仲がよかったというわけではないが、パーセルは無視する事ができなかった。

 ハヴォックから家族になろうと言われた時、頭に浮かんだのは『舞は……アイツは』っというひっかかりだった。

 鏑木邸の屋根でボウっとしている間中、ずっとひっかかりを無視するのか、冒険するかを悩んでいた。

「っま、結局冒険する事になるなんてな。ニヒヒ」

 笑うパーセルの手にはMEから抜き取った流星のカケラが握られている。

 パーセルは舞を奪還するついでに、パンドラを引っ掻き回そうとしているのだ。

 契約者やドールを駒としか見ないクソのようなエリック西島を少しでも困らせてやろうとしているのだ。

 能力を使って舞の部屋と屋上に行ったが、舞と会えなかった腹いせが少なからず入っているのは秘密である。

 いつもフラフラとしている事があるパーセルは、いつものようにパンドラ内を徘徊していた。

 二・三日帰らない事も偶にあったため、さほど怪しまれる事はないはず……とパーセルはふんでいた。

 フラフラとパンドラ内を徘徊していると、突如後ろからパーセルに声が掛かる。

「やっと帰ってきましたか、パーセル」

 ビクっと身体が硬直したパーセルは、ゆっくりと後ろを振り返る。

 そこには、ニヤリと笑うエリックが立っている。

 角刈りにキリっとしたメガネを掛けた東洋系の男性で、夜だというのに未だスーツをビシッと着ている。

「ああ……仕事はなかったはずだろ?」

「ええ、未来の記憶によると早くても明日の夜、BK-201が襲撃を掛けてくるでしょう」

「俺の仕事は?」

「ありませんよ。強いて言うなれば私の近くに待機してもらい、あるはずはありませんが緊急時には働いてもらいますよ。

 というわけですので、今日はゆっくりと休んでください」

「ああ……テキトーにそうさせてもらうぜ」

 エリックの会話が終わったと見るや、パーセルは足早に去ろうと歩き始める。

 パンドラから寝返ったパーセルは一刻も早くこの施設から出ていきたい。

 一秒も短く、パンドラの連中と接触を終えたい。

 その一心で無意識にパーセルはさっさと去ろうとした。

 それを見透かしたのか、エリックはニヤリと笑いながら足早に去るパーセルを呼び止める。

「ああ、パーセル。

 今の時間ならば食堂に舞がいるはずです。

 今日は外への任務で舞にMEをかけれていないのです。いつものようにMEに掛けておいてください」

「……ッケ。わかったよ」

 それでは……っとエリックは廊下の闇に消えていく。

 エリックが見えなくなったのを確認して、パーセルは急いで食堂に向かう。

 数分とせず食堂に到着したパーセルが中に入ると、目的の人物――柏木舞が座って夕食を食べていた。

 いつものようにタイツスーツを着ており、肩などの関節や胸にパットが着いている。

 少し茶色かかったセミロングの髪を纏めずにしている。

 高校生ほどの東洋系の少女は、機械的にカレーを口に運んでいる。

「よう……舞」

 意気揚々と話しかけたパーセル。しかし、返ってきたのは舞の感情の篭ってない視線だけだ。

 まぁいつもどおりか……っとパーセルは対面に腰掛ける。

 舞は作業のように、食べ物を口に運んでいく。

 そんなんで旨いのか? っと思いつつもパーセルは疑うような視線を注いでいる。

「……なにか、よう?」

「MEを受けてないって本当か?」

「…………今日は、まだ」

「き、記憶の方はどうなんだ? 抜けてんのか?」

 パーセルの問いに、返事は返ってこない。

 舞は感情が篭っていない視線を返すだけだ。

 明確な返答がない舞。

 パーセルは舞の植え付けられた記憶が抜け始め、共に逃げれるのかどうかを必死に見極めようとしていた。

 パンドラの道具として動くように植え付けられた記憶が強く残っていれば、パーセルは否応なく舞の抹殺対象になるだろう。

 幸い契約者を管理しているエリック直々に、舞に植えつけた記憶が今日抜け落ちると言ってきた。

 好機とばかりに、パーセルは攻めていた。

 しかし、いつものように舞の反応は薄い。

「舞……一緒に、一緒に逃げねぇか?!」

「逃げ……る?」

「そうだよ! ここにいたらいつまで経っても道具のままだぜ! 俺達契約者はよ!

 そんなの嫌だろ?!」

「…………」

 わかっていた。合理的な思考をする契約者が組織を裏切ることはよっぽどの事がないかぎり裏切ることはない。

 組織に身を寄せている事で多くの場合身の安全が確保しやすい。

 己が生きるために、契約者は組織に飼われる事を是としている。

 そんな契約者に組織を裏切って共に逃げようなど、コンクリート造の建築物を素手で倒壊させるようなものだ。

 しかし、パーセルは諦めようとはしない。

 無茶を押し通し、砂漠からダイヤモンドを探し出すほど刹那ほどの可能性を手繰り寄せたハヴォックを見たのだから。

 パーセルは心の中にハヴォックの姿を思い浮かべ、意を決したように息を飲む。

「逃げるぞ、舞! パンドラに居ても、“パパ”は見つけてくれねぇ!」

「追っ手が来て殺される」

「俺の能力があれば、いくらでも逃げ切れる!」

 パーセルがいくら強気で舞に呼びかけるも、舞からの返事は留まろうとするものばかり。

 それに焦れてパーセルは舞の手をガシッと握る。

 強力な“発火能力”の舞に燃やされるリスクを犯しつつも、パーセルは共に逃げ出せる事に賭けたのだ。

「行くぞ! オレがお前の“パパ”を一緒に探してやる!」

「…………」

 グイッと引っ張ったパーセル。頭1つ2つは軽く身長が違う舞を立たせると、能力を発動させて黒い球体を発生させる。

 舞を球体に引き込もうと力を入れた瞬間、脇腹から『バスッ』とした何かが貫通した小さな音がパーセルの身体の中に響く。

 力を入れていたはずの体からは一瞬にしてダランと力が抜ける。

 ジワジワと焼けるような熱さが、痛みもなく左の脇腹を走り始める。

 パーセルはゆっくりと視線を熱さの元へと移していく。

 真っ白なロングコートに、小さな穴が空いている。

 その周りにジワーっと赤い模様が広がっている。

 赤い模様がロングコートの裾に届き、一滴の血が床に落ちて赤い模様が血であると理解した瞬間、左脇腹の熱さは激痛へと変わる。

 パーセルはダンゴムシのように自然に身体を丸めて、床へと落ちる。

 無意識にパーセルは舞を掴んだ手を離さずに握っている。

 左の脇腹に走る激痛に、パーセルはプルプルと震え身動きが取れない。

「いやぁ、こうまで目に見える裏切りは久しぶりですね。

 舞、もういいですよ」

 食堂の入口から聞こえてきたのはエリック西島の楽しげな声。

 その手には蘇芳に持たせた銃と同じ、グロック34が握られている。

 身体を動かす事ができないパーセルの手から、舞はパッと払って逃れる。

 力なく床に落ちたパーセルの手にゆっくりとパーセルの血だまりが広がっていく。

「エリ……ク……」

「はい。どうしました? 裏切り者っ!!」

 エリックは話しながら、力なく横たわるパーセルの頭を踏み付ける。

 ガシガシと何度も何度も踏みつけられ、パーセルの髪は乱れ、薄らと血が顔に流れ落ちていく。

 足をグリグリと押し付けるエリックは、パーセルのネコミミを取り上げて右の耳の部分を引きちぎる。

 そしてゴミを捨てるように、パーセルの視界に入るように捨てる。

 薄らと開けたパーセルの視界に入った猫耳の引きちぎられた右耳の奥に何か機械が点滅している。

「以前の世界でも問題児だった貴方を何もせずに野放しにしていると思っていましたか?

 全て聞いていましたよ。ハヴォックとの賭けも何もかもね。

 ――そして、舞と共に逃げたいといった貴方の思いもね」

 楽しげにエリックはパーセルの背中側の銃弾の貫通跡を軽く蹴る。

 ぎゃぁあああ!!! っとパーセルは獣のような叫び声を上げる。

 叫ぶパーセルを見て、エリックは楽しげに笑う。

 エリックはニヤリと笑いながら、手に持った小型の銃グロック34の照準をパーセルの細い脚へと向ける。

 ゆっくりとトリガーに掛けた指に力が入っていく。

『バァンッ!』

 エリックから放たれた銃弾は、見事にパーセルの右脚を撃ち抜く。

 また獣のような叫び声で悲鳴を上げるパーセルを、エリックはプルプルと笑いながら見下ろしている。

 そして、エリックの次の照準は、パーセルの小さくて綺麗な指へと向けられる。

 指を撃ち抜き、永遠に失われるパーセルの1つの指の事を考え、エリックはゾクゾクとしながら笑いが溢れている。

 エリックはゆっくりとトリガーに掛けた指に力を入れていく。

 銃弾が撃ち出される一瞬前、突如としてエリックの視界は全て闇に包まれる。

 焦ってトリガーを引いた結果、銃弾はパーセルに命中せずに指のすぐ近くの床に撃ち込まれる。

「なんだ! なにがあった!!」

 エリックはグロック34を投げ捨てると、携帯電話を取り出して状況を確認する。

 各所に電話を掛けるも全ての部署の電気が落ちて、パンドラ内の全ての電気が消えている。

 屋上に上がって確認した者からの報告で、製薬会社パンドラとその周囲は暗闇に包まれる事がわかった。

 エリックは数秒考え、とある事を思いつきニヤリと笑い、即座に各所に指示を出していく。

「舞、その裏切り者を独房に放っておきなさい。

 治療も必要ない。ゆっくりと死んでいきながら、パンドラを裏切った事を後悔させるのです」

 舞は返事もなく、パーセルを抱きかかえるとトコトコと歩いて食堂から去っていく。

 エリックは誰もいなくなったのを確認して、電話を掛ける。

「マーベリック氏ですか。

 手を結んで早々で申し訳ないですが、ヒーローをパンドラに派遣してください。

 黒の死神が攻めてきます」

『ほう……それは大変ですな。

 我々はこの街を守る正義の味方です。

 喜んで派遣しましょう』

「よろしくお願いします」

 電話を切ったエリックは、すぐに自身の部屋へと帰っていく。

 緑髪の赤子が眠るカプセルが設置された部屋へと……。

 暗闇に包まれた製薬会社パンドラとその周囲の上空には、他の星よりもハッキリとクッキリと輝く星が瞬いた。

 ――BK-201の星が力強く光を放っていた。。





―――――――




 舞に抱きかかえられて、パンドラ内を運ばれているパーセルは、抜けていく身体の力を感じながら必死に意識をつなぐ。

「舞……オレ、家族になろうって言われたんだ……契約者の、オレをだぜ?

 舞……も一緒に、……どう…………だ?

 必ず……迎えに行く…………から。ぜ、たい……に」

 必死に呼びかけるパーセルの言葉になんのリアクションも示さずに、パーセルを運び続ける。

 そして独房にパーセルを放り、舞は去っていく。

 ひんやりとした床に倒れ込むパーセル。

 脇腹からはジワリと血が流れていく。

 撃たれた左脇腹と右脚は焼けるように熱くズキズキと痛む。

 血を止める術も無く、手で押さえるしかできない。

「っけ……二回目かよ。しかもネコミミ取り上げられるし……こりゃダメだな。

 せっかく……舞と逃げれると思ったのに」

 せめてベッドに置いてけよ……っと横にある簡易ベッドを見上げる。

 そこに所々汚れた枕を発見し、パーセルは皮肉げにニヒヒっと笑う。

 このまま死ぬだけだったが、パーセルは救いの一手を発見した。

「……そうだよな。ふつう知らねーよな」

 パーセルは血で染まった手で薄汚れた枕を手元に引き寄せる。

 枕カバーを丁寧に折り返し、引っくり返してそれを頭に被る。

 パーセルは枕カバーで臨時の猫耳を作り出したのだ。

 これは以前の世界でパンドラにて猫耳を取り上げられたパーセルが編み出したものである。

 これを使って何度も脱走していた。

 血がベットリと着いた臨時の猫耳を頭に乗せると、巨大な黒い球体を生み出し、転がりながらパーセルは球体へと消えていく。

 誰もいなくなった独房には、パーセルの血だけが床に溜まっている。





―――――――




......TO BE CONTINUED






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■作者からのメッセージ
どうも! ハナズオウです!

 私的な事でバタバタとしているハナズオウですが、なんとか更新にたどり着けました。
 しかし、なんて時間に投稿してるんだ……オレ?
 生活習慣を戻さないと……

 遂に黒 vs パンドラの最終決戦の幕が上がりかかりました(……?)
 前回のあとがきで、次の話は急展開と言ってましたが、読み返して思いました。
 さほど急展開していないことにwwww

 そして、今回はあっさりと、蘇芳が戸籍を持っている理由や世界についての謎解きがアンバーより成されました。
 気を抜けば一話を使いそうな感じでしたので、少しあっさりとしてしまったかもしれませんね……。
 一応わかりやすく書いたのですが、わかりにくかったら言ってください。
 なんとか追加で詳細を書きたいと思います。


そういえば、TIGER&BUNNYが今年劇場版しますね。
ワクワクしております。
出来ることならば、劇場版公開までに『死神の涙』編を完結させたいですね。
最終決戦入ったから、あと少しのはずだ……うん! きっとそうなんだ……

そして、遂に冬を抜け春に向かって行ってますね!
ポカポカ陽気に誘われて投稿が捗ればいいのに……な。

 今回も、感想を3件も頂けました!
 本当に嬉しい限りです! モリモリとやる気が湧いてますよー!
 読者の皆様も簡単な一言でも構いませんので、感想を頂けると嬉しいです!

 それではここより、感想返しとさせていただきます。


  >黒い鳩 さん

 いつも感想ありがとうございます!

 ハヴォックにはエンディングの為に茨の道を歩んでもらっています。DTB風に言うと、対価を支払っている感じですね。
 決して、主人公が黒からハヴォックに移ったわけではないのでw

 そうですね、1人寝返りました。
 相手の襲撃の肝の空間転移能力者を引き抜くというファインプレーをハヴォックは達成しました。
 っと言っても、厳密には黒の味方になったというわけではないんですよね。
 ただ、パーセルは黒の敵ではなくなったというだけですね。

 スカイハイの空気の読めなさは、表現できてるのか不安で仕方ありません。
 一応、スカイハイとハヴォックの会話の後に虎徹以外のヒーロー達はハヴォックが虎徹の親族を人質に取ったという事実を知りました。
 何もしないで欲しい虎徹の空気を読まずに、スカイハイはハヴォックと話しかけた……っといった感じですね。

 キャラクターの個性は私の課題でもありますので、頑張っていきます!


  >謎の女剣士 さん

 感想ありがとうございます

 指摘などについては、貰っても、結局自分で気づかいて受け止めないと何もならないので、お互い頑張っていきましょう。

 ネイサンはオネエキャラですので、私のオネエのイメージが強く出ていると思います。
 私もオネエ前回で話すネイサンは苦手ですw


  >13 さん

 いつも感想ありがとうございます!

 ようやく最終決戦が始まろうとしています。
 6話辺りからピリピリとした空気で進んでいるので、正直ノホホンな話を書きたいです……(オイ
 なんとか完結に向けて頑張っていきます!
 お互い頑張りましょう!

 スカイハイの空気の読めなさは正直脅威でしかないです。
 スカイハイを赴くままに泳がせると話があらぬ方向へと行ってしまいます……。

 ドブ川の男、黒は遂に動き始めましたよ!
 本格的な戦闘は次かその次の話当たり開始になりそうです!
 ようやく黒が生存しているとなんとか示せたかな?w

 お互い完結に向けて頑張っていきましょう!


 では、これにて感想返しとさせてもらいます。

 それでは次の話のあとがきでお会いしましょう
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