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アサミ 第六話「存在」
作者:ひいらぎ 由衣   2012/04/29(日) 17:05公開   ID:LQ8Pd4ylDqI
五月下旬の中間テストを前日に控えた夜。

高林郁夫は杏里町にある父の敏夫が二年前に建てた一軒家の一階のダイニングで夕食を食べていた。

ダイニングには四人掛けの木製のテーブルに四つの背もたれの付いた椅子が並べてある。

郁夫は義理の母の智恵と向かい合うように椅子に座って、智恵の隣にはベビーチェアに座った腹違いの妹の梨恵がいる。

今晩の夕食の献立は、ポテトサラダと梨恵の好物のハンバーグ、ハンバーグはヘルシーな豆腐ハンバーグ。

今日の夕食も一家団欒とはいかず、敏夫は仕事で遅くなるらしい。

郁夫の通っている朝見南の教頭でもあるので、郁夫には文句のしようがない。

それに敏夫とは郁夫は最近は会話どころか、顔も合わせていないような気がする。

郁夫は茶碗のご飯を箸でチビリチビリと食べながら少し考え事をしている。

目の前の茶碗の中にある白く光っている米粒としばらく睨みあって、郁夫は意を決して顔を上げる。

智恵はハンバーグを箸で器用に一口サイズに切ると、その一切れを口に運ぶ。


「あの、智恵さん」

「ん?」


智恵は郁夫の方をチラッと上目づかいで見るとすぐに視線を下に戻して、ご飯を頬張る。

郁夫は少し戸惑って「ええっと」と繰り返すと、手に持っていた茶碗と箸をテーブルに置く。


「智恵さんって朝見南出身ですよね?」

「そうよ、二十八年も前の話だけどね」


智恵は持っていた茶碗をテーブルの上に置くと、ガラスのコップに入ったウーロン茶を一口飲む。

郁夫は智恵の「二十八年も前」と言う言葉に確信を持つと、背筋を伸ばしてもたれかかっていた背を剥がす。


「智恵さんって、何組だったんですか?」

「……三組」

「じゃあ、クラスメイトにアサミ≠チて名前の生徒はいましたか?」


智恵は郁夫の質問にポテトサラダのキュウリをポリポリと食べていた口を一旦止めて箸をテーブルの上に置く。

少しだけ答えようか考え込んだ様子で、智恵は椅子にもたれかかると深く深呼吸をする。


「いた=c…アサミ≠チてクラスメイトは、確かにいたよ」


はっきりと言い放つ智恵に、郁夫はその事実を口に溜まった唾と共にゴクリと飲み込む。

五月だと言うのにもうすっかり夏の暑さになったためか、郁夫の額には汗でビッショリだった。


「じゃあ、その生徒は……その、いじめられてたりしましたか?」

「……その人、クラスで一番ネクラで地味だったからね、いじめの標的にはなったわ」


智恵は自分の長い髪を掻きあげると、思いっきりため息をつく。

郁夫は智恵の隣にいるフォークでハンバーグを口いっぱいに頬張っている梨恵の様子を少しだけ窺う。

この質問を聞こうか聞かないかを、幾分悩んだあげく聞くことにした。


「その人……二、三年に上がる頃に、自殺……しましたか?」


郁夫は今までよりも声のトーンを低くして智恵を直視できずに問いかける。

その質問に智恵はテーブルの上で重ねていた両手が一気に震え出す。

息遣いも荒くなって、ついには肩で息をし始めて運動もしていないのに走り切ったマラソンのランナーのような状態。

郁夫はその様子に異変を感じて「智恵さん」とようやく智恵の方を見て言う。

すると智恵は物凄いけんまくでバンッとテーブルと叩くと「やめてっ」とハッとするような厳しい語気で言う。


「やめてよ……その話はしないで」


智恵はテーブルの上で肘をついて自分の頭を抱え出すと嘆きそうな声で郁夫に言う。

今までこれほどの厳しい語気で智恵に怒鳴られた事のなかった郁夫は少し戸惑う。

すると智恵の隣にいた梨恵が驚いて大声で泣き出す始末。

いつもなら梨恵が泣き出したら速攻にあやすはずの智恵はこの時はスッと椅子から立ち上がる。


「郁夫くん、その話なら敏夫さんに聞いて」

「え、どうして……」

「敏夫さんは当時のクラスの担任の先生、郁夫くんの実のお母さんの郁代さんも副担任だったわ」


智恵はそう言い残すと座って椅子を戻してダイニングから出て隣の八畳間の和室へと移る。

郁夫は今の状況に幾分戸惑うと椅子から立ち上がって、泣いている梨恵をベビーチェアから抱きかかえてあやす。

何回かポンポンと背中を軽く叩いて梨恵も抱えている腕を横に軽く揺らすと梨恵は泣くのを止める。

郁夫はそれにホッとすると梨恵をもう一度ベビーチェアに戻そうとした時だった。


「トッチャン、なんで?カーザーセンシェー、なんで?」


ヒクヒクとしゃっくりのような息遣いの梨恵がまたこの言葉を繰り返す。

その言葉の意味が分かっていないのに、たぶん教えただろうと思われる敏夫に意味を聞いていなかった郁夫。

すると、梨恵は涙で潤った目を上目づかいで郁夫の方を見て次にこう言う。


「郁夫チャン、ゲンキ、出してね」


郁夫は梨恵のその言葉に微笑んで「ありがと」とお礼を言う。

しかし、郁夫ちゃんか。―――これは郁夫のちょっとした梨恵への訂正の部分である。

責めてでも「お兄ちゃん」と呼んで欲しかったと思う。

それでも励ましの言葉を覚えてくれた梨恵に対してはとても嬉しく思う。










五月も終わりを迎えた頃、先週行われた中間テストの結果が全て返ってきた。

2号館の二年生が使う廊下の壁には学年のテストの順位が張り出されている。

二年生の生徒たちはその順位を見て喜んでいたり、落ち込んでいたりとさまざまだ。

とうの郁夫はと言うと、自分の順位を見て少し上の順位だった事に心の中で喜んでいた。

郁夫の隣には七瀬理央とクラス委員長の八神龍と福島美緒が自分の順位を見ている。

七瀬は茶髪のショートヘアーを掻きまわしながらため息をつくようにこう言う。


「うっわー、また下の順位だよ」

「まあ、それがお前の個性だろ?」


八神が七瀬の順位を見て馬鹿にしたようにニヤニヤしながら黒ぶち眼鏡のブリッジを押し上げる。

郁夫も二人の順位を見るのだが、確かに二人の順位の差は天と地ほどある。

全体的には下の上くらいの七瀬と上の中くらいの八神。


「うっさいよ。アンタみたいなガリ勉にはなしたかないし」

「勉強ができるのとできないとでは、どっちがいいと思う?」

「ううっ」


今回の口喧嘩の勝者は八連勝中の八神だ。

そう思っている郁夫はと言うと、順位的には上の下くらいだと思える。

真ん中よりも上にいっただけでも、郁夫はどちらかと言うと嬉しい。

ずっと郁夫の隣で黙っている福島は、郁夫とだいたい同じくらいの順位だった。

その次に郁夫が目をやったのは、学年でトップ5に入っている生徒たちの名前。

五人中三人は別のクラスの生徒で知らないが、他の二人は二年三組の生徒だ。

二位に副クラス委員長の常本夏帆、そして一位には榊原志恵留(シエル)。

かなりの秀才の二人らしく、一年生の頃から二人は一位と二位を争っていると四月頃に七瀬に聞いていた。

今は志恵留の名前は出せないので、その事は言わずに二位の常本の事だけを言いだす。


「すごいよね、常本さん」

「だよねー、どうせなら常本さんが委員長だったら良かったのに」

「なんだよそれ」

「常本さんの方が八神より頭良いし、美人だし、しっかりしてるしさ」


七瀬は相変わらずお得意の憎まれ口で八神に言う。

八神は七瀬の言葉に反発をするそぶりを見せずに、眼鏡のブリッジを押し上げて気を落ち着かせているようだ。


「そりゃ、嬉しい言葉だ」


突然四人の後ろからそう話しかけたのは、とうの本人常本だった。

ブレザーを着ずに白のニットを羽織っている常本だが、結構容姿的にも真面目で頼りがいのある感じ。

常本は腕組みをして常本の事を褒めていた七瀬に二カッと笑う。


「常本さん、すごいじゃないですか!学年二位だなんて!」

「別にそんな事ないよ、本当は、まあ一位を狙ってたんだけどね」


常本はムスッとしたように口を尖らせて、自分の順位を睨みつけている。

紛れもなく常本と志恵留はかなりのライバル関係だと言う事はすぐに察する事が出来た。

そんな事を考えていると、常本が郁夫の方を向いてからっと笑う。


「ねえねえ、高林くんってどうだった?」

「え、まあ、僕的にはよくできた方だと思うよ」


郁夫は突然そんな事を問われて戸惑いつつも答えると常本は「ふうん」とコクコクと頷く。

郁夫は「なんだ?」と首を傾げていると、続いてまた常本が質問をする。


「得意教科って何?」

「え、理科……かな?特に科学とか」

「へえ、私は物理だね。今回のテストでも良かったの?」

「うん、まあ……」


常本の強引とまではいかないが、質問攻めに困った様子の郁夫を見て七瀬たちは討論をしているようだ。

七瀬は腕組みをして眉間にしわを寄せて渋い顔で常本を見る。


「見ろ、あれが草食系男子に迫る肉食系女子」

「常本さんって、意外と強引……」


福島は常本の様子を窺いながら苦笑をしてそう言う。

三人の視線の先の常本は未だに郁夫にいろいろ質問攻めをしている。


「困ってるなぁ、高林くん」

「と、言うよりも常本、見え見えだしな」


八神は呆れ顔で肩を落とすと眼鏡のブリッジを押し上げる。


「常本さんって、ああいうタイプが好みなのかな?」


福島は苦笑をし続けながら、黒髪を掻きあげている八神の方を見る。


「だろうな、常本ってああ見えて、Sっ気あるし」

「Sなの?あれが……」


三人がそんな事を言い合っている間、郁夫は常本の質問攻めに困り果てていた。


「理系が得意なんだね、じゃあアサミ≠ニ一緒だね」


常本はニコニコ微笑みながら突然、郁夫に言うと自分の誰もいない隣に視線を移して「ねっ」と言う。

郁夫は今の常本の行動に疑問を感じると、それを見ていた七瀬たちが青ざめた顔で慌てだす。

慌てて常本の腕を七瀬が引っ張って郁夫から離れた場所でヒソヒソと何かを話しだす。

すると次の瞬間、常本が「えぇ!?」とややあっと発したのはそんな驚きの声。


「ちょっと……なんで言えてないの?」

「いや、高林くんに言おうと思ったんだけど……いろいろ手間取って……」


青白い顔で真面目なクラス委員長の八神が深刻そうに腕組みをして常本に言い訳をする。

常本はそんな八神の様子を見て呆れたふうにため息をつくと何かを考え込み出す。

そんな四人の様子を窺っていた郁夫が視線を移した先にあったのは、廊下の二年三組の教室の窓。

そこにもたれかかるように立っている一人の女子生徒。

黒髪をハーフアップに結んで下を向いたまま後ろで手を組んでポツンといるのは志恵留。

郁夫は志恵留の姿を見つけると、すぐに志恵留のほうに駆け寄る。

その姿を見た七瀬と福島が慌てたふうに言いだす。


「ちょ、高林くん……」

「高林くん……ちょっと」


二人の声は郁夫には聞こえていないようで、志恵留に会うと「やあ」とこの間会った時と同じような挨拶をする。

志恵留は俯いていた顔をあげて郁夫を見ると眉を寄せて言葉を詰まらせる。


「榊原さん、今日は来てるんだね」

「うん、順位くらいは見て行こうと思ってね……」

「ねえ、榊原さん、いつになったら教えてくれるの?」

「教える、って?」

「クラスの事だよ、何で榊原さんがいないもの≠ンたいな事をして、いないはずのアサミ≠いるもの≠ノして……青崎くんの事だって」


その疑問は志恵留がいないもの≠フような存在になってから抱いていた事。

いるはずのないアサミ≠いるもの≠ノして、五月の初めに亡くなった青崎竜輝の事も気になっていた。

あんな悲惨な事故は普通なら起こり得ないはずだ。

だからこそ、郁夫はこのクラスで起こっているこの現象≠ニ言えるような状況について。

志恵留は郁夫の質問に幾分戸惑ったように目を泳がせている。

その時、二人の様子を廊下の端の方で窺いながら何かを話しあっているクラスメイトが目につく。

野々村飛鳥、高橋直子、杉本誠と言う顔見知りで今まで何度か会話を交わした生徒もいれば、そうでもない生徒もいる。

米倉拓郎、澄川陸、田中俊二、栗山典子、椎名ふれあ、谷川綾香と顔と名前は覚えている男女。

ジロジロと二人を見て何かを言っているようにも見える。


「ゴメンね、再来月になったら教えてあげる……それまでは大人しくしてて」

「再来月……七月になったら教えてくれるの?」

「うん……七月になったら教えてあげられると思うよ」


志恵留がそう言うと、郁夫に向かって「高林くん」と呼ぶ声が聞こえた。

郁夫が声の主の方を見ると、そこには担任の風見智彦が向こうから歩いてくる。

風見は郁夫の近寄るとかけている銀緑の眼鏡のブリッジを押し上げる。

風見が来たと同時くらいに志恵留は風見と目も合わせずに静かにその場を離れて廊下を歩いて行く。


「どうしたんだ?」

「あ、いえ。榊原……いえ、ちょっと考え事を」

「そうか……なら、いいんだけど」


風見はチラッと志恵留の立っていた場所を見ると「んっ」と口を引き締める。

郁夫が「榊原さんと話していた」ではなく「考え事をしていた」と言う言葉に変えた事にホッとしているようだ。


「今回のテストはなかなか良かったよ、期末もこの調子で頑張るように」









その日の夜、郁夫は杏里町の自宅の縁側で庭をぼんやりと眺めている。

夕食を済ませて風呂にも入ったので、今はもうパジャマ姿である。

すると、郁夫の自宅の塀の向こうから「どーも」と言う聞きなれた男の声がした。

向かいのマンションに住んでいるトモさんが無地の灰色のシャツにジーパン姿でいる。

郁夫はトモさんの姿を見ると、縁側から立ち上がってトモさんのいる塀の方に駆け寄る。


「トモさん、今日は仕事、終わりですか?」

「ああ、さっき帰ったばっかりだけどな、君も暇そうだね」

「まあ、特にやる事ないんでね」

「そうか、まあ、そうだよなぁ」


トモさんは腕組をして何だか納得したようにゆっくりと目を閉じてそして開く。


「トモさん、奥さん達、心配しませんか?こんなところにいて」

「大丈夫だよ、タバコ吸いに行くって言ってきたから」


トモさんの手元を見るとタバコと携帯灰皿と100円ライターがある。

トモさんの子供は幼く、梨恵と同じくらいだったような気がする。

それもあって、子供がタバコの煙を吸い込んでしまわないようにと外で吸うのだとか。


「じゃあ、僕はそろそろ戻るよ」

「はい、お休みなさい」

「お休み」


トモさんはそう言って郁夫に手を振ると自分の住んでいるマンションへと戻っていく。

郁夫もトモさんが戻ったのを確認すると自分が座っていた縁側に再び腰を下ろす。

すると郁夫が自分の隣に置いておいた携帯電話が鳴りだし、郁夫は携帯電話を開いて通話ボタンを押す。

電話の相手は郁夫が入院していた由岐井病院の担当の看護師の清水翔子だった。


「もしもし」

「あ、高林くん?ちょっといいかな?」

「はい?」

「四月くらいに高林くんが言ってた亡くなった女子高生の安田さんの事」


郁夫が四月に清水に調べてほしいと言った事故で亡くなった女子高生の安田野恵留(ノエル)。

志恵留が野恵留が亡くなった後に霊安室を訪れて野恵留の遺体と対面していた事。

志恵留は野恵留の事は「友達」と言っていたのだが、どうも引っかかっていた。

確か野恵留が事故で亡くなったのは郁夫が朝見南に転校する前日。


「安田さんね、四月八日の午後くらいに交通事故で亡くなったそうなの」

「そうなんですか……」

「それでね、安田さんについて調べたらとんでもない事≠ェ分かったの」

「とんでもない事=H」


清水は何やら面白がっているような口ぶりで電話越しに郁夫に告げる。


「安田さんね、一人娘さんだったらしいんだけど……養女≠セったらしいの」

「養女=H」

「そう、生みの親が誰かは知らないけど、親御さんが安田さんの遺体を確認した後に私の先輩のナースに言ってたみたいなの」


郁夫はその事実にコクコクと頷くとその養女≠ニ言う言葉に引っかかる。

清水はそれから次に荒川ルキアの「闇の教室」について話しだす。


「ねえ、どこまで読んだの?闇の教室=v

「ん?ああ、あれならもう読み終えました」

「へえ、早いんだねえ。どうだった?面白かったでしょ?」

「はい、最後に主人公が施設で自殺したところは……」


公園で出会った男の子とその他で会った小学生二人を殺害して逮捕された主人公。

主人公は施設でも、同年代の少女を殺害してその後自殺したと言うラスト。

郁夫は「闇の教室」が面白かった事で、荒川ルキアの「バッドメモリー」を最近購入した。

そちらはまだ読んではいないが、明日くらいに読もうと思っている。


「バッドメモリー≠燒ハ白いよ。闇の教室≠ニはまた違った感じでね」

「へえ、そうなんですか……」


郁夫がぼんやりと夜空に輝いている満月を眺めていると電話越しの清水の様子に異変を感じる。

清水の声の他にヒールのカツカツと言う音が少し早まっているように思える。

先ほどから清水の息遣いも荒くなって何かをしきりに気にしているようだ。


「清水さん?どうしましたか?」

「いや、仕事が終わって帰宅途中なんだけど……何だか、誰かにつけられているような、ヤダ、何?」


徐々に早まるヒールの足音がついには走っているような音に変わっていく。

すると、今度はざざっ、ざざざざざざっと言うようなノイズ音が聞こえ出す。

強くひび割れたような清水の声で「高林くん」と呼ばれる。

郁夫は耳から携帯電話を話すと液晶画面で電波状況を表すアンテナマークはかろうじて一本立っている。

充電も残り少ないためにこんなノイズ音が流れているのだと郁夫は一瞬だけ思った。

しかし、郁夫が再び携帯電話を耳に当てた時、ひび割れて途切れ途切れの声で清水は「助けてっ」と言う。


「どうしましたか!?清水さん」

「いやっ来ないで!……」


ざざざざざ、と激しいノイズ音と共に清水の悲鳴の声が途切れ途切れに聞こえてそして―――

電話が切れた。

電話が切れるぎりぎりの一瞬、郁夫は確かに清水の悲鳴に交じって誰かの甲高い笑い声が聞こえた。

そして郁夫は清水に関するある事を思い出す。

―――私の親戚では、朝見南出身の人はいないよ。今も朝見南に通っている人はいないし。

いつだったか入院中に郁夫が「朝見南出身の人はいるか?」と聞いた時に言った清水の答えだ。

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■作者からのメッセージ
いろいろ右往左往する部分もあると思います(汗

ですが、今回は結構重要なんじゃないかと思っています。

最後の清水さんのところでは、最後の高林くんの回想のところもいろいろあります(笑

それも踏まえて、次回も読んでいただけるとありがたいです。
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