無数に存在する平行世界の1つ、〔アナザースペース〕。
かつてこの宇宙は〔ベリアル銀河帝国〕と名乗る勢力が支配していた。
多くの星々が帝国に支配下に置かれ、抵抗する者は誰であろうと彼等の地獄の業火に焼かれ、多くの命が灰の如く散っていった。
しかしそれも数年前の話。
その宇宙を恐怖と絶望で染めていた帝国は突然その戦力の殆どが消滅し、事実上の崩壊に追い込まれてしまった。
アナザースペースを手中に収める寸前まで迫っていた帝国を撃破したのは、各惑星の人々が帝国を倒すために結成した反ベリアル宇宙連合艦隊と"4人の戦士"。
だが帝国が崩壊して数年の月日が経った今でも、戦士達と帝国の残党戦力との戦いは続いていた。
『ダアラアァッッッ!!!!』
荒々しい掛け声と同時にL字を組んだ手から放たれた一筋の閃光が周囲に存在する数十体のベリアル軍量産型戦闘ロボット〔レギオノイド〕を飲み込み、次々と爆散させていく。
それを逃れたレギオノイドはその閃光を放った人物に対し、両腕からビーム攻撃を放つ。
『ハアァッ!!!』
戦士、〔ウルトラマンゼロ〕は襲い掛かるビーム攻撃を回避すべく足場としていた宇宙空間のアステロイドを飛び立った。
両手を前に広げて飛行するゼロに、レギオノイドからの攻撃が容赦なく襲ってくるが、ゼロはそれをヒラリヒラリとかわしていき、その赤と青の体にはかすり傷1つついていない。
『ヘッ!!数だけでこの俺を倒せるとでも・・・』
まだ50を越えると思われるレギオノイド達に背を向けていたゼロが180度反転して振り返ると、その頭部に装着された2本の刃に手を添える。
『思ってんのかッッ!!!!!』
ゼロは2本の刃型ブーメラン、ゼロスラッガーをレギオノイド向けて放り投げた。
大きな円を描きながら回転していくゼロスラッガーはレギオノイドを次々と真っ二つに切り裂いていき、再びゼロの元へと舞い戻ってきた。
それを頭部へ戻したゼロは近くに浮遊していたアステロイドに降り立ち、目の前のレギオノイドに拳を叩き込んだ。
『デアァッ!!』
腹部をパンチで貫通されたレギオノイドをすぐさま放り投げ、次のレギオノイドへと立ち向かっていく。
レギオノイドはビームガンが装着された右腕をゼロ目掛けて振り下ろすが、ゼロはそれを難なく防いで払いのけ、間髪いれずに蹴りを叩き込んだ。
わき腹からは火花が飛び散るなど激しい損傷を負ったレギオノイドは数歩後退するが、ゼロはすかさず追撃を加える。
『フッ!!ッラアァッ!!!』
両手にゼロスラッガーを握ると、先ほどとは違い今度は手持ちナイフのようにしてレギオノイドを切り裂いた。
その後に背後から忍び寄る殺気を感じ取ったゼロは振り返りざまに両手のゼロスラッガーで殺気の元凶であったレギオノイドに斬撃を与える。
『こいつで・・・仕上げだああぁぁっっっ!!!!』
ゼロは両手のゼロスラッガーを胸のカラータイマーを挟むように装着し、残り30体を切ったレギオノイドに向けてゼロの必殺光線のひとつ、ゼロツインシュートを放った。
右から左へと胸を動かしていき、その青い閃光に飲み込まれたレギオノイドはたちまち爆発していき、跡形も残らないほどまで木っ端微塵となっていった。
『フゥ、やれやれ。ベリアルの野郎。どんだけこいつ等作りやがったんだ。おかげでこっちは後始末に苦労してるってのに。』
かつて自分の故郷と仲間達を危機に追いやった今は亡き存在の顔を思い出しながら憤るゼロ。
そんな彼のイラつきを逆撫でするようにからかう声がその場に響き渡った。
『おお。派手に暴れたねぇ、ゼロちゃん。』
後ろから投げかけられる軽薄そうでお調子者を印象付けるような喋り方。ゼロは自分の知っている人物でそれに該当する者が1人だけいた。
『グレンか。いつからそこにいた?』
炎を連想させるような真っ赤な体を持つ戦士、〔グレンファイヤー〕に不機嫌そうに問うゼロ。
『ああ、俺様ならお前が「数だけで俺を倒せんのか」とか言ってた時からずっと見てたぜ。』
ゼロは自分が戦っているのをただ見ていただけの戦友に少々あきれながら自分が立っているアステロイドに座り込みながら言葉を投げかける。
『フン、だったら手伝ってほしいモンだな。ったく、残党の連中も数は確かに減っちゃいるが、まだまだ数は多いぜ。』
『そう言うなよ。俺だって残党の連中の相手してきたばっかなんだ。ほら、他の連中が待ってる。とっとと行こうぜ。』
キラーザビートスターとの激闘から数ヶ月、ベリアルとの死闘から数えれば1年と数ヶ月。彼ら2人を含む戦士達は今もなおベリアル軍残党の掃討を続けていた。
統率者を失った帝国は崩壊したが、残存している戦闘ロボットのレギオノイド達はいまだゼロ達に抵抗を続けていた。普通の戦争などであれば敵兵は武装解除して投降するのが普通だと思われるが、相手が自我を持たないロボットでは話は別であり、いまだ彼らの中にはベリアルのインプットした破壊行動の指示が生き残っていた為、今でもこうして戦いが続いているのだ。
その言葉にゆっくり立ち上がろうとするゼロ。
『ゼロ・・・』
その言葉が一瞬ゼロの動きを止めた。
『・・・?』
その声は自分の目の前にいるグレンの声とは似ても似つかない。それもテレパシーで自分へと語りかけた。
『おい、どうしたんだゼロ?』
ゼロの様子がおかしい事に気付いたグレンがゼロに問うが、当の本人はその言葉に気付いていない。
ゼロは必死に頭をひねって考えを進めていく中、1つの答が見つかった。
自分の心へとテレパシーで問いかける事ができるのは、超能力を扱う事が可能な一部の宇宙人。そして自分と同じ、"光の力を所持する者"だけ。
『おいゼロ!!さっきから人がどうしたんだって聞いてんだろうが!!いつまでも無視してんじゃ『ちょっと待ってろグレン!!静かにしてくれ!!』
グレンを一喝したゼロは、テレパシーをしてきた主に声をかける。
『誰だお前は?』
相手の正体が敵対する者の可能性、そしてゼロの少々荒っぽい性格から威圧するような声で応答するゼロ。
まるでこの場にいない者と会話しているように見えるゼロをグレンは小首をかしげながら不思議そうに見つめている。
『それに答えている時間はない。よく聞いてくれ。お前に力が必要なんだ。』
『俺の力が必要?どういうことだ?』
事態がうまく把握できないゼロは再び声の主へと問いただす。そして声の主の次の言葉にゼロは驚愕する事となる。
『この星の・・・・"地球"のあらゆる命が、邪悪な侵略者に奪われようとしている・・・』
『何ッ!?地球だと!?』
ゼロはその惑星の名を聞いて動揺を隠せなかった。
地球
こことは違う、ゼロの生まれた宇宙に存在する組織、宇宙警備隊の戦士でその星の名を知らない者は誰1人とていないだろう。
決して高い文明が築かれているわけでもないこの星だが、その星に生息している"人間"という生命体と触れ合う事によって、戦士として大きく成長できる。宇宙警備隊の中ではそのように語られており、隊員達はそこの防衛任務に憧れを抱いており、所属していたゼロも当然その話を耳にしている。
『そうだ・・・頼む・・・あのベリアルを倒したお前なら・・・この星を・・・』
『おい待て!!おいッ!!!』
テレパシーの声はだんだんと弱るように小さくなっていき、最終的には何も聞こえなくなっていた。
『おいゼロ!!!1人でどうしたんだ!?なんだその・・・チキューがどうたらとか言ってたが・・・』
グレンの言葉を背中で受け止めながら、ゼロはゆっくりと振り返る。グレンはいつもの彼らしくない様子を見て、ただ事ではないと察知した。
『グレン・・・・実はな・・・』
『なぁるほど。その地球とか言う星が、お前やお前の仲間たちにとってそれほど重要な星で、そいつが何者かに侵略されたって訳か。』
事のいきさつを詳しく聞き、納得したように言葉を発しているグレン。
『おそらくあのテレパシーは、こことも俺の宇宙とも違う、別の宇宙から届けられていた・・・そもそも俺のいた宇宙の地球なら、親父達が何もしないわけがない。』
『だがどうする?そのテレパシーの正体も誰かわかんねぇんだろ?罠かも知れないぜ?』
グレンの意見も最もである。何者かが救いを求めるフリをして自分をおびき寄せるつもりなのかも知れない。邪悪な侵略者の中には手段を選ばない者が大勢いるのだから。
ゼロはしばらく考えるように下を向きながら、ゆっくりと立ち上がり、その輝く複眼を上へ向ける。
『よし・・・・行って来る!!!』
『お、おいゼロ!?』
ゼロの言葉にグレンは少し慌てた様子でゼロをなだめようとするが、ゼロは勢いよく振り返りながらグレンへ言葉を返していく。
『助けを求める声を聞いてほっとけってか?そんな事すりゃあ、俺達ウルティメイトフォースゼロの名が廃るってもんだろッ!!!』
ゼロは一見口が悪い粗暴な性格のように見えるが、その心の中には筋の通った強い正義感が宿っている。助けを求める声に背を向けるような行為が彼らに出来るであろうか。それが例え、罠であったとしても。
そんな事は同じ正義感を持った仲間であるグレンも十分承知していた。
ゼロの言葉に少し黙るグレンだが、呆れたようにため息を一つ吐きながら背を向ける。
「わぁったよ!!とっとと行って来い!!」
ゼロが1度物を言い出したら聞かない性格と言う事を、共に戦ってきた彼も十分承知しているのだろう。荒々しい言葉を投げかけられ、ゼロもグレンに背を向ける。
「ゼロ。」
グレンへと再び振り返るゼロ。自分の名前を呼んだ当の本人は背中を向けたままである。
「この世界の事は気にすんな。俺達4人で大丈夫だ。だがな・・・・
絶対生きて返って来いよ。」
「グレン・・・」
グレンのその言葉には、いつもの彼らしい荒々しさが微塵も感じられなかった。
グレンとゼロ。出会った当初は殴り合いの喧嘩から始まるという最悪のファーストコンタクトであったが、共に熾烈な戦いを生き延びた仲間同士。その言葉は、仲間を強く気遣う優しさが十分に感じられた言葉だった。
「ああ!!お前等こそ、俺のいない間にヘマすんじゃねぇぞ!!」
ゼロは少し笑いを含めた口調で返しながら再び背を向け、左腕を高く翳す。
左腕に装着された〔ウルティメイトブレスレッド〕が強い輝きを放ち、銀色の神々しい鎧へと姿を変えた。
伝説の戦士、〔ウルトラマンノア〕に授けられた最強の鎧、〔ウルティメイトイージス〕を装着し、〔ウルティメイトゼロ〕へと姿を変えたゼロは、自分が立っているアステロイドを勢い良く蹴って飛び上がった。
ウルティメイトゼロの状態では使用者の戦闘力が飛躍的に上昇するだけでなく、時空を超え、平行世界への移動も可能となる。(ただしエネルギーを大きく消費しすぎるとイージスがしばらく使用できなくなってしまう)
イージスの力によって空間に時空を超えるワームホールを作り出し、ゼロはそこへ向かって一直線に飛んでいく。
『だが俺がベリアルを倒したことを知っている・・・?俺と一緒に戦った事のある奴か?』
ゼロが疑問を胸にワームホールへ突入すると同時にワームホールは消滅したが、グレンは先ほどまでワームホールがあった場所へじっと眼差しを向けていた。
「ゼロ・・・」
グレンの目には、多くの星々がいつも以上に輝いているように見えた。
仲間の無事を祈るかのように。
M78ワールド
M78星雲 光の国
先程とは異なる世界に存在する光り輝く神秘の星、光の国。
建造物は宝石で出来ているように見えるほど光り輝いている。その輝かしい光景が、この星が光の国と呼ばれる理由なのだろう。
そんな光り輝く都市の中央に、この都市のシンボルである事を思わせるように巨大なタワーが聳え立っていた。
そのタワーこそ、この宇宙の平和と正義を守る組織、〔宇宙警備隊〕の本部なのだ。
そんなタワーの中で、マントを羽織った1人の戦士が何かを感じたように、エメラルドの輝きを放つ空をじっと見つめ始めた。
「どうしました?セブン。」
その様子を不思議に思った赤き獅子の戦士、〔ウルトラマンレオ〕が声をかけると、戦士は空へ向けていた眼差しを、自分と同じマントを身に着けているレオへと向けた。
「息子が・・・ゼロが時空を超えた。」
ウルトラマンゼロの父であり、ウルトラマンレオの師匠でもある歴戦の戦士、〔ウルトラセブン〕が、レオへそのように言葉を返しながら、人間態、〔モロボシ・ダン〕の姿に変わる。
「ゼロが?いったい何故?」
レオも同様に〔おおとり・ゲン〕の姿に変わりながら疑問の声を上げる。
「わからん。だがおそらく、例の"事件"が関係しているのかもしれない。」
「例の事件?」
そんなやり取りをする2人の元へ、2人が身に着けている物と同じ真紅のマントを羽織った3人の戦士、〔ウルトラマン〕、〔ウルトラマンジャック〕、〔ウルトラマンエース〕がゆっくりと降り立つ。
「多くの平行世界の怪獣や生命体をさらい続けている謎の宇宙船。恐らくそれを追っているのではないか?」
「既に怪獣墓場からも何体かの怪獣をさらっている。以前、宇宙船が何者で何の目的かなどは不明だ。」
「だが、恐ろしい計画を進めている事は間違いありません。」
3人もそれぞれの人間態の姿、〔ハヤタ・シン〕、〔郷 秀樹〕、〔北斗星司〕へ変わっていきながらその事件について語っていく。
「はい。何とか阻止しなくては・・・」
「だが、無限に存在する平行世界をすべて警戒する事は残念だが不可能だ・・・」
ゲンのいう事も最もではあるが、その宇宙船は時空を越えて様々な世界に出現し、怪獣をはじめとする多くの生命体をさらい続けている。平行世界へ向かうことはかなりのエネルギーを消費する事になり、最悪の場合元の世界への帰還が不可能となる可能性もある。さらに北斗の言うとおり平行世界は無制限に存在する為、戦力的に考えても全てを見張る事は事実上不可能であった。
ダンは再び光の国の空を見上げながら、ゆっくりと呟く。
「ゼロなら・・・・きっとやってくれるだろう・・・」
自分の息子、ゼロが無限の可能性を持った戦士だと言う事は父である彼は勿論、他の戦士達も十分それを知っている。
そんなダンにハヤタが声をかける。
「だが、我々も彼1人に任せるわけにはいかない。」
「既に多くの部隊が各宙域をパトロールしています。あの宇宙船の手がかりが掴めれば・・・」
「ゾフィー兄さんにパトロールの強化を進言しましょう。」
ハヤタに続くように、郷、北斗がそのように言葉を発した次の瞬間、光の国の空に、1つの黄金の文章が浮かび上がった。
「あれはウルトラサイン!!」
「何か手がかりが!!」
ウルトラサインとは彼等宇宙警備隊での通信の役割を果たす能力だ。救援要請、辞令、定時連絡などの際に用いられているが、今回のウルトラサインはこの様に描かれていた。
《怪獣墓場にて例の宇宙船と遭遇。現在宇宙船が復活させた複数の怪獣と宇宙船と交戦中。救援を求む。
》
内容を理解し、直ちに援軍を送らなければと判断すると同時に、戦士達はそのサインの送り主を見て意外そうな声をあげた。
「勇士司令部第1部隊隊長・・・・ネオスか!?」
勇士司令部とは宇宙警備隊の中でも特に戦闘面で優れた隊員が所属する特殊部隊であり、怪獣や侵略者との戦闘を主な任務としている。
その第1部隊隊長、〔ウルトラマンネオス〕はその勇士司令部のエースであり、その戦闘力では彼等ウルトラ兄弟に勝るとも劣らない実力を誇っている。戦闘力の高い戦士が多く所属する部隊の中で隊長を任せられる事からも、彼の戦士としてのスキルの高さを示している。
そんな彼が救援を求めるとは、かなり状況が良くない事が伺える。
「直ちに援軍を−−−」
ゲンの言葉が言い終わらない内に、10数人の戦士達が飛び上がっていくのが彼らの目に映った。
「ゾフィー兄さんが既に手配したようだ。」
「これで、あの宇宙船の計画について、何か手がかりがあるといいんだが・・・」
5人の戦士達はそれぞれの思いを胸に、救援に駆けつける為に飛び立った戦士達の徐々に小さくなっていく背中を見つめていた。
怪獣墓場
宇宙空間のある宙域に存在するそこはその名のとおり、この宇宙の惑星、そして多くの平行世界で倒された怪獣達の魂が眠る墓場であった。ここに眠るのは怪獣だけでなく、宇宙人や生命体もここで安らかな眠りについてる。
また、多くの小惑星が集まっている事から、半ば宇宙の吹き溜まりと化していた。
数年前、光の国の命運を掛けた壮絶な戦いが繰り広げられた、怪獣墓場の巨大な浮遊大陸。
そこでは怪獣達の眠りを妨げるような激しい戦いが繰り広げられていた。
『フッ!!!』
浮遊大陸の巨大な大地を蹴り、宙へ舞い上がる。先程まで自分が立っていた場所に火球が命中して爆炎が舞い上がる。
ウルトラマンネオスは宙へあがった自分へ再び火球を放とうとした怪獣、ケルビムに対して勢いよく両手で十字を組んだ。
『シュアアァァッッ!!!!』
放たれたネオマグニウム光線は一直線にケルビムに向かって伸びていく。
胴体に光線を受けたケルビムは大爆発を起こし、周囲にいた数体の怪獣もそれに巻き込まれて爆散した。
これで何体目の怪獣を撃破しただろう。
勇士司令部のエースに相応しい見事な戦いぶりを見せているネオスだが、その体は疲労を感じずにはいられなかった。
仲間達へ目を向けると、誰一人エネルギー切れで倒れてはいなかった。格闘、光線、そして宇宙警備隊正式装備のウルトラブレスレッドなどの武器を巧みに操りながら応戦しているが、既に何人かが疲弊の色を隠せないでいた。
『皆、持ちこたえろ!!もうすぐ援軍が来る!!』
『ハッ!!』
ネオスは再び浮遊大陸へその巨体を着地させ、向かってくる怪獣を蹂躙していきながら、自分達を見下すように浮遊している宇宙船へ目を向ける。
怪獣墓場付近をパトロールをしていた勇士司令部第1部隊は偶然ながらも例の宇宙船を発見した。
すぐさま確保しようとするが、宇宙船は光線を放つなどして応戦。怪獣墓場の怪獣達を複数復活させ、自分達へ差し向けてきた。
何とか善戦しているが、パトロール規模の戦力では限界があり、徐々に押されつつあった。だがここに来て宇宙船を取り逃がすわけにはいかない。戦士達は必死に襲い来る怪獣達と応戦していた。
そんな中、1人の青い女性戦士が宇宙船に向けて飛び掛った。
『逃がさないッ!!!』
宇宙船は時空を超える能力を備えている。その能力を使って時空を超えられてしまえばこちらに追う手段はない。時空を越えられる前に動きを止めようとしたのだ。
宇宙船からは迎撃のために数機の宇宙戦闘機を吐き出してきたが、女性戦士はそれらの攻撃を難なく回避して光線と格闘で全て撃破し、再び宇宙船に向けて一直線に飛んでいく。
次の瞬間、宇宙船からいくつもの閃光が放たれ、女性戦士を襲った。
『キャアアアアァァァァッッ!!!!』
攻撃を直撃されて浮遊大陸に叩き落される女性戦士。彼女の体を激しい痛みが襲う。
そんな彼女に追い討ちを掛けるように、ベムスターとディノゾール、2体の宇宙怪獣が接近していた。
応戦しようとするが怪獣との戦闘や先程の宇宙船の攻撃によるダメージの蓄積のせいか、なかなか起き上がれない。
そしてディノゾールが女性戦士に向けて自身の舌を猛スピードで鞭のように振るった。
女性戦士は激痛を覚悟して顔を背ける。
だが激痛が彼女の体を襲わない。
女性戦士が顔を前へ向けると、ネオスが自分と怪獣の間に割って入り、ディノゾールの攻撃をその体で受け止めていた。そのダメージもあってか、カラータイマーが赤く点滅している。
『隊長!!!!』
『俺の仲間達に・・・・手を出すなぁッッ!!!!』
ネオスは体の激痛と疲労に耐えながら、目の前の怪獣に向けて腕を交差し、パンチを打ち出す様に光弾を数発放った。
ネオス・ナックル・シェルを受けたベムスターとディノゾールは泣き声をあげながらその場から数歩後退した。だがネオスの体も徐々に限界が近づいていた。膝を大地につけるが何とかその倒れまいと必死に堪えている。
だが目の前の宇宙怪獣達はそのチャンスを逃すはずが無かった。
『ギャアアアアオオオォォォォォ!!!!!!』
ディノゾールはそのメタリックブルーの強固な体から流体焼夷弾を放ち、次々とネオスへ命中させていく。
『キシャアアアアァァァァァァァッッッ!!!!』
それに怯んだベムスターが追い討ちを掛けるようにネオスの銀色の体を鋭利な爪で切り裂いていく。
『グハアアアァァァァァァァァッッッ!!!!』
ネオスはとうとうその体を地に沈めてしまう。隊長、と仲間達の悲鳴にも似た自分を呼ぶ声が聞こえるが、彼のエネルギーはまさに限界寸前であった。
顔を前へ向けると、ベムスターとディノゾールは自分へと接近している。応戦しようにもこのままでは手も足も出ない。
そして自分の前方100mまで怪獣が接近した時だった。
『キシャアアアアアァァァァァァッッ!!!!??』
『グオオオオオオオォォォォォォォッッ!!!??』
上から突如降り注がれた黄金色と青色の2つの光線が2体の怪獣に直撃。ディノゾールとベムスターは爆炎に包まれ、完全に姿を消していた。
そしてネオスをはじめとする勇士司令部の隊員達がその光線が降り注がれた先に目を向ける。
『大丈夫ですかネオス!?』
『皆無事かッ!?』
赤き戦士、〔ウルトラマンメビウス〕と青き戦士〔ウルトラマンヒカリ〕が複数の一般隊員を引き連れていた。
『何とかな・・・』
『ギャオオオオォォォォォォッッッ!!!!』
少し安堵するネオスの背後からアストロモンスが右手の鞭と左腕の釜を振り回し、大きな鳴き声をあげながら自分に迫ってきた。
『しまっ−−−』
だがそのアストロモンスに突如放たれた緑の細い光線が直撃し、断末魔を思わせる鳴き声をあげながら爆散していった。
『立てるか?』
背後に誰かが降り立つと同時に聞き覚えのある声がネオスへ投げかけられる。
聞き違えるはずもない。
ネオスは振り返りながら自分と特に親交が深い戦友に言葉を返す。
『心配掛けたな、|21《ツーワン》。』
自分に手を差し出している額に緑のクリスタルがある戦士、〔ウルトラセブン21〕の手を掴み取り、何とか立ち上がるネオス。
立ち上がったネオスのカラータイマーに向けて21がゆっくりと手を翳す。
手のひらからは光の粒子が発生し、それらは全てネオスのカラータイマーに吸い込まれていく。体の痛みと疲労が少しずつ和らぐ感覚が彼の体を包み、カラータイマーは青へと変色していった。
他の隊員達も応急処置ではあるが他の隊員から治療を受けている。
『戦闘が不可能と思われる者は下がってくれ。無理をするな。』
ネオスは自分の部隊の隊員にそう指示を下し、残った怪獣達と宇宙船へ目を向ける。
『あれが例の宇宙船ですか?』
『ああ、現に怪獣達を連れ去ろうとしていたからな。』
メビウスの問いにネオスが答えた瞬間、宇宙船はこの場から離れるように移動を始めた。』
『まずい!!時空を超えるつもりだ!!』
『時空を超えられたら追えないぞ!!』
その時、巨大な宇宙船へとまっすぐ伸びていく2つの光線が戦士達の目に映った。
虹色、そして金色の光線は宇宙船へと命中。宇宙船は命中した部分から爆炎が起こり、ゆっくりと浮遊大陸へと下降していく。
戦士達はその光線を放った人物の元へ目を移し、21が戦士達の名を口にした。
『マックス!!ゼノン!!』
2人の戦士、〔ウルトラマンマックス〕と〔ウルトラマンゼノン〕が宇宙船に向けて組んでいたL字を解いて仲間達に目を向ける。
『宇宙船付近の怪獣と宇宙船の確保は私達に任せてくれ!!』
『君たちは怪獣達を頼む!!』
マックスとゼノンはそう告げると不時着した宇宙船へ一直線に飛んでいった。
『よし!!行くぞ!!』
ネオスの言葉にこの場のウルトラ戦士全員がファイティングポーズを構え、怪獣達に向けて一直線に駆け出していった。