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Ultraman saga -three light warries- 第4話 アスカ記念日
作者:ソウ   2012/06/09(土) 11:38公開   ID:M5QsyOzFGqA
21世紀。大いなる試練を乗り越えた人類は今、母なる星、地球を飛び出し、未知なる世界、宇宙へと進出した。純粋な憧れと探究心に満ちた地球人類の旅立ちであった。

そんな宇宙開拓時代、《ネオフロンティア時代》が始まって約20年弱。地球平和連合 《TPC》は既に太陽系の殆どの惑星を、人類が移住可能な環境へと整える事に成功していた。

特に目覚しい発展を遂げたのは太陽系第4惑星、火星であった。

TPCが1番最初に開拓に着手したというのもそれの理由にあるが、それを差し引いても火星の環境開発のスピードは他の惑星と比較しても群を抜いており、特に植物栽培に関しては地球と異なる惑星で植物を栽培させることは非常に困難な試みであったが、火星の植物栽培の研究チームは他の惑星よりも進んでいた。

研究チームには、TPC創立当初の特捜チーム、GUTSの隊員であった《マドカ・ダイゴ》元隊員がチーフに就いており、失敗などを繰り返しつつも、彼の優秀さもあって植物栽培の研究が順調に進んでいたのだ。

ここ、TPC火星基地にもそれなりに規模の大きいバイオパークがあり、多くのTPCの職員や民間人達が心の安らぎを求めてバイオパークへ足を運んでいる。

そしてこの火星基地のTPC職員や民間人は、この日を非常に楽しみにしていた。それは火星だけでなく、全ての地球人類がこの日を祝おうと心待ちにしていた事だろう。

別に今日はクリスマスやお正月などではないが、人類からすればそれに匹敵する記念日だ。

何せ今日は、"己の身を犠牲に太陽系の危機を救った伝説の英雄"を称える日なのだから。








カフェテリアのテーブルでは、1人の長髪の女性が薫り高いコーヒーを口にしていた。カップを口から放すと、テーブルにゆっくり置くと同時に声を掛けられた。

「隊長。」

隊長と呼ばれた女性、《ユミムラ・リョウ》が振り向くと、自分と同じ服をした2人の男女がこちらを見て敬礼しており、リョウもそれに対して返礼する。

「ご苦労様。でもちょっと硬くなりすぎ。ある程度は肩の力を抜く事も大事よ。」

「ハ・・・しかし」

「ユミムラ隊長の言うとおりだぞ。」

今度は男性の声が2人の若い隊員に向けて掛けられ、隊員達はその人物に緊張しながら敬礼で返す。

「コウダ参謀!!」

TPC宇宙開発局参謀、《コウダ・トシユキ》はそれに気さくな笑顔で返礼しながら再び口を開く。

「真面目に勤務する事も大事だが、少しはリラックスするといい。君達もこの日を楽しみにしてたんだろ?」

リョウとコウダの言葉に促されるまま、2人の隊員はリラックスしようと息を一つ吐き、笑みを浮かべながら2人へ口を開く。

「はい・・・もうすぐですね、ヒビキ総官のスピーチは。」

その言葉にああ、ええ、と2人が返すと、女性隊員の方が2人へ聞いてきた。

「ユミムラ隊長やコウダ参謀は、ヒビキ総官にミドリカワ教官と一緒にスーパーGUTSに所属していたんですよね。どんな人だったんですか?」

その問いに少し考えるそぶりをするリョウとコウダ。そして先に口を開いたのはリョウだった。

「そうね。隊長…いや、ヒビキ総官は豪放磊落な性格で、何かあるたびにバカモン!!って叱れてたわ。ホント、何だかお父さんみたいな人だった。」

「マイは君達も見ての通りの性格だが、あの時は最年少と言う事もあって、少し甘えん坊な所もあったが、優秀な人物だったぞ。」

その言葉に2人がへぇと納得したようにうなずいた時、施設内に大きく響くアナウンスが流れた。

「あ、始まりましたよ!!」

その場の4人が映し出された大きなホログラムへと視線を移すと、そこにはかつてTPCの荒鷲の異名を持ったスーパーGUTSの元隊長でありTPC総官、《ヒビキ・ゴウスケ》が映し出されていた。

『皆さん、TPC総官、ヒビキ・ゴウスケです。今日で、15回目のアスカ記念日を迎えることが出来ました。』

リョウとコウダはあれからそんなに経つのかというような表情でじっとホログラムを見つめながら15年前のこの日に繰り広げられた戦いを思い返していた。

ネオフロンティア時代が始まって間もない頃、人類の宇宙進出を快く思わない者がいた。

それは、球体宇宙生命体 《スフィア》。

スフィアは度々人類に対する妨害や破壊行動を行い、最終的には自身を巨大なブラックホールへと姿を変え、太陽系全てを消滅させようと目論んだ。

当時スーパーGUTSの隊員であったリョウやコウダ、ヒビキや現在訓練生の教官を務めているミドリカワ・マイ達もその脅威に真正面から戦いを挑んだ。"伝説の英雄となって消えた1人の戦友"と共に。

『15年前、謎の宇宙生命体 スフィアによる太陽系消滅の危機を救うべく、戦いを挑んだ1人の男。』

するとヒビキのホログラムが消えると、スーパーGUTSのスーツを着用し、笑みを浮かべながらサムズアップを作っている1人の青年の画像が映し出され、そして今度はこの世界で知らぬ者はいないといっても過言ではない、巨人の姿が表示された。

『アスカ・シン・・・ウルトラマンダイナ!!彼は自らを犠牲に、全ての命、全ての人間を救ってくれた。』

そう。ウルトラマンダイナ=アスカ・シンこそ、この世界を救った英雄であり、自分達の戦友でもあったのだ。

スフィアとの最終決戦時、自らの正体を打ち明けた彼は、仲間達とともにスフィアへの最終攻撃を開始し、攻撃は見事に成功し、スフィアは爆散。太陽系消滅の危機を避ける事ができたのは彼のお陰だと言ってもいいだろう。

だが、スフィア撃破と同時に発生した大規模な重力崩壊によるワームホールは、最も近い場所にいたウルトラマンダイナを飲み込もうとした。まるでスフィアが道連れにしようとしたように。

ダイナはスフィア撃破を確認すると同時にその場を離れようとしたが、光の速さでも振り切る事が不可能な重力から逃げ切る事はできなかった。

ダイナ=アスカ・シンは行方不明となってしまったが、彼が人類を救う為に己を犠牲にしたこの日を、《アスカ記念日》として称えているのである。

『皆さん、その事を忘れることなく、今日を生きていきましょう。』

ヒビキはその後締めくくりの言葉を口にすると同時に、ホログラムは消滅した。

2人の隊員はリョウとコウダに再び顔を向けて口を開こうとした。恐らく、共にに戦い、さらにウルトラマンでもあるアスカ・シンという人間についての質問をしようとしたのだろう。

だが2人の開こうとした口を止めるような言葉が4人の耳に届いた。

「フン。全てじゃねぇだろ・・・全てじゃよ・・・っと。」

1人の茶髪の青年、《タイガ・ノゾム》がテーブルに座り、表示された3Dパズルゲームを素早い手つきでプレイしていた。

「彼は確か・・・」

「ええ・・・新人です。マイが是非ウチにって推薦してくれました。」

コウダの問いにリョウがそう答えると、再びタイガの独り言が聞こえてきた。

「世界は常に動いてるんだ。"伝説の英雄"か何だか知らないが、何時までも過去を振り向いてばかりじゃ、進化なんか出来ない。そんなに称えるモンかね、"伝説の英雄"さんとやらを。」

最高難易度であるベリーハードのパズルゲームを1つ、また1つと簡単に進めながら口にする彼の言葉に、男性隊員が怒りの感情を表に出した顔で詰め寄ろうとする。

「タイガ・・・・あの野郎ッ!!」

女性隊員がまあまあと抑えるが、彼の表情は穏やかになるのは難しそうだ。

男性隊員はこの世界に存在していた2人のウルトラマンの事を心から尊敬していた。そんな彼らを蔑にするようなタイガの発言は許しがたい物だったのだろう。

タイガは気づいていないのか無視してるのか、変わらぬ見事な手つきでパズルゲームをクリアし、CONGRATULATIONSの文字が表記されると同時に、ゲームのハイスコアランキングの1位に自分の名前が表記されているのを見て喜びの声を挙げた。

「よっし!!フィニッシュ!!」

口癖の言葉を発するタイガの元に、同じスーパーGUTSの服を着た男性が歩み寄り、同じテーブルの席に着席するや否や、声を掛けた。

「本当にそう思うか、ルーキー?」

タイガはその人物に目を向け、声を返す。

「どういう意味すか?フドウさん。」

スーパーGUTSの先輩隊員であるフドウ・ケンジは余り類を見ない経歴の持ち主であった。

彼は15年前まで存在していた警務局の特殊部隊であるブラックバスター隊(15年前に起こったF計画事件もあって現在は解体されている)に所属していた人物だ。スーパーGUTSに匹敵するほどの精鋭部隊のエースであった彼は突然除隊し、隊員の養成機関ZEROへ戻って再び養成過程を経て、スーパーGUTSに入隊するという少々変わった経歴を持っていた。

「確かにお前の言うとおりだ。いくらウルトラマンでも、万能って訳じゃない。怪獣災害で毎回犠牲者が0だったわけじゃないからな。」

フドウは言葉を一旦切ると、先程までタイガがやっていた3Dパズルゲームを起動させ、プレイを始めた。難易度はタイガと同じ最高難易度のベリーハードだ。

「でもな。あいつが、アスカが頑張ってくれたお陰で、今のこの世界があるんだ。過去があるから今がある。だからこそ前に目を向けつつも、過去を忘れないようにしなきゃ行けない無いんじゃないか?」

その言葉を聴いてタイガは理解したようなそぶりを見せるが、完全に納得した様子ではないようだが、フドウはそれに構うことなく続ける。

「実際あいつに会うまでは、俺もウルトラマンに対しては微妙な考えを持っていたさ。だが、俺達の為に頑張ってくれてる奴の存在を改めて知った時、俺達もそれに答えなきゃと思ったのさ。ほれ、記録更新してやったぞ。」

「えっ!?」

その言葉にタイガは表示されているゲームのスコアランキングを確認すると、自分の名前が表記されていた1位の場所にはフドウの名が記され、自分は2位にランクダウンしていた。

呆然とするタイガを勝ち誇った表情で見つめるフドウ。このまま引き下がっていられないタイガは再び1位を取るべくゲームを起動させた。

そんなやり取りを4人はほくそ笑みながら見つめていた。

「なかなか面白い奴だな。フドウ隊員もちゃんと先輩としての役割を果たしている。」

「ええ。アスカが入隊したばかりの頃にそっくりですよ。」

コウダとリョウの言葉に2人の隊員が補足する。

「悔しいけど、戦闘機の腕はあいつがトップだったんですよねぇ。」

「模擬戦闘訓練であなた真っ先に落とされちゃったからね。」

女性隊員が茶化すように口を開いて4人の間で笑いが起こる。

その時、記念日には到底相応しくない大きな警報が響き渡った。6人は何事かという表情を浮かべるが、隊長であるリョウは引き締まった表情で目の前の2人に指示を下す。

「直ちに司令室に集合ッ!!」

「「ラジャーッ!!!」」

「行くぞタイガッ!!」

「ラジャーッスッ!!」

多くの職員が慌しく駆け回る中、その言葉に4人は司令室に向けて走り出し、タイガもフドウの言葉に返事をしながら机に置かれたアイスコーヒーを口に流し込み、4人の後を追った。






司令室に入った6人は状況を確認しようとする。

「カリヤ副隊長!!何があったの!?」

スーパーGUTSの副隊長を務めるカリヤ・コウヘイに詰め寄るリョウ。彼も15年前の死闘を共に潜り抜けた優秀な人物である。

「突如飛来した生命体によって、無人衛星による防衛ラインが突破されました!!」

「何ですって!?」

その時、端末をいじっていたTPCの一般隊員がリョウ達の方へ顔を向ける。

「映像、回します!!」

その言葉に頷くと、前方の大きなスクリーンに監視衛星のライブ映像が転送される。

そこに映っていたのは、網目の掛かった数十体の青色の生命体。見間違えるはずもない。特にリョウ、コウダ、カリヤは15年前にこの生命体と戦った事があるのだ。

かつて人類に幾度となく破壊行動を仕掛け、太陽系を消滅寸前まで追い込み、滅んだと思われていた生命体。

リョウは怒りを堪えた口調で、スクリーンに映っている忌むべき生命体の名を口にした。

「スフィア・・・・!!」




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