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マブラヴオルタネイティブ-フォーアンサー 【第伍話】牙を剥く山猫 闇を走る閃光
作者:首輪付きジャッカル   2012/07/04(水) 17:30公開   ID:aJK45xIaU56
「7機?前見たときは9機じゃなかったか?」
 今日は模擬戦の日。香月に告げられた模擬戦の概要は戦術機7機を相手にしろというものだった。
しかし初めてこの世界にきたときに見たあの部隊は9機いたはずだ。
『あぁ、BETA捕獲作戦の時に二人大怪我してね、今は7人よ』
 あのとき戦車タンク級にわらわらと群がられていた二人である。
「あのときの二人か。無事だったのか。死んでねぇなら幸いだ」
『意外ね、一億人も殺した人間が、たかだか二人の人間を心配するなんて』
「心配なんかしてねぇよ。さっきまで忘れてたぐらいだ」
口ではそういうが、そこそこに心配はしていたのだ。助けるつもりだったのに死なれては目覚めが悪いから。
 シィカリウスで指定された位置に着く。右手のライフルの弾は全てペイント弾。ブレードは出力を下げて戦術機を切断しない程度に威力を抑えられている。ちなみにミサイルは自ら進言して外した。



「7対1ぃぃぃぃ?まるで弱い者イジメじゃないですかぁ〜」
「だめだよ水月、決まったことなんだから文句は言わないの」
「でもさぁ〜」
時は数日前、キャエーデが配属される予定の部隊、A-01中隊でも彼との模擬戦の説明は行われていた。その模擬戦のないように呆れる女性、部隊のナンバー2、突撃前衛長、速瀬水月。そしてそれをたしなめるのはCP将校の涼宮遙。
「これは副司令の決定事項だ。どうやら新型機のテストと聞いているがな」
説明をする部隊長、伊隅みちるの脳裏にふと浮かんだのはあの時にみた変わった機体。しかし、あの時の状況はどこかおかしかったために「まさかな・・・」と考えを振り払った。
「どうやら香月副司令はその機体に相当の自信がおありのようですね」
「あら?美冴さん?顔が意地の悪いものになってますよ?」
 文字通り、意地の悪い笑みを浮かべている宗像美冴、そしてそれを見る風間梼子。彼女らもA−01のメンバーだ。
 香月夕呼直属の部隊A−01。元は連隊規模を誇る大部隊だったのだが、その損耗の激しさからいまは彼女らの他にCP将校の遙1人と新人5人を含めた8人しか残っていない。(怪我して入院中の二人は除く)
損耗の激しさは表立って国連が関与できない裏の仕事を遂行するため。そしてその構成員も並みの軍人では務まらない。新人組でさえ、将来性を感じさせる有能なメンバーだ。
 ちなみに中隊となってしまった近年では、女性ばかりが構成員になるため、戦乙女中隊ヴァルキリーズとも呼ばれている。もっぱら、彼女達もそれを自称している。
そういった関係もあり、ある程度腕には自信のある彼女らだ。みちるから伝えられた7対1の模擬戦は少々こちらをなめているのかと、どこか癪にさわるものがあった。
しかし命令は命令だ。速瀬はこの模擬戦を計画した香月をギャフンと言わせてやろうと意気込んでいた。


『もうすぐ始まるけど準備はいい?』
香月から通信が来た。
「ああ、万全だ。しかもこんな月夜だ。こりゃライフルいらねぇな」
207B分隊の座学で頭に叩き込んだ戦術機の知識を考慮しても負ける確立は無い。そう考えての発言だったのだが、回線を間違えたのかそれをA-01のメンバーに聞かれてしまう。
『ぬわぁんですってーーーーーー!?』
『随分と自信がありそうですね』
もちろんそれを聞いた彼女らも黙ってはいない。速瀬を筆頭に宗像なども対抗心をさらなるものとする。
『貴様ら!どうやら偶々混線した相手の通信によれば、中々になめられているようだ!ならば遠慮なくA−01の力を見せてやれ!!』
『『『『『『『『了解!!!!』』』』』』』』
伊隅みちるの叫びに部下たちも威勢の良い声を上げる。

『それでは、状況開始!』
判定役として参加しているピアティフ中尉の言葉で戦闘が始まった。



「貴様らに見せてやる。大虐殺者の力を。そして、この暗殺者シィカリウス暗殺者シィカリウスたる所以をよぉ!」
オープンチャンネルでこの模擬戦を見ている人間、相手、全てに向けて叫ぶ。このときは誰も気付いていなかった。シィカリウスが、レーダーに「映っていない」ことを・・・



「おっと・・・一人目見っけっと・・・」
闇に溶け込むような機体がビルの陰から敵を見つける。
「まずは・・・」
ビルの陰から一気に飛び出し、背後から近づく。
「一機終了だ!」
そして左腕のブレードを一閃した。


『高原機、管制部に被弾。致命的損傷、大破』
「何!?」
突然のことに驚く伊隅 みちる。
「ヴァルキリー1よりC小隊!敵の反応はあるか!」
『こちらヴァルキリー3、レーダーにも反応ありません!肉眼でも発見できませんでした!」
『こちらヴァルキリー6、敵機発見・・・きゃぁ!』
「どうした!?ヴァルキリー6、応答せよ!柏木!何があった!?」
『柏木機、機関部に被弾。致命的損傷、大破」
混乱する伊隅。当然だ。こちらは敵を見つけることも出来ていないにも関わらず、2機も撃墜を許してしまったのだ。



「ヌルイねぇ・・・ヌル過ぎるわぁ〜」
 たった今撃墜した柏木機の横でつぶやくキャエーデ。
『いてて・・・真横にいてもレーダーに映らない・・・どういう仕組みなの?』
横から柏木晴子が声をかけてくる。
やられた人間は本来喋ってはいけないのだが、聞かずには居られなかったらしい。
「ん?そいつは内緒だぜ、お嬢さん?」
そういうとまた闇に紛れ、飛び立った。
「さて、次の獲物は・・・おや?」
見ると三機が固まって行動していた。C小隊の生き残りである。
「なるほどねぇ、各個撃破への対策かい。でもそれじゃ足りねぇな!」
そういうと三人の前に飛び出していった。



「ヴァルキリー3、敵機発見」
『ヴァルキリー1了解。こちらも援護に向かう。敵の力は未知数だ。慎重にいけよ』
「了解」
ようやく見つけた敵機。その姿はやはりBETA捕獲作戦のときの黒い機体だった。
「ヴァルキリー4、5、牽制をかけるぞ・・・・・・・何!?」
さっきまで500はあった距離が、いまやほぼゼロ、懐まで潜り込まれていた。
とっさに後退すると、ついさっきまで居たところをブレードが通過した。一瞬でも遅れていたら斬られていただろう。
「くっ、ヴァルキリー3、FOX3!」
『ヴァルキリー4、FOX3!』
『ヴァルキリー5、FOX3!』
あわてて弾幕を張るが掠りもしない。
『なんで当たらないの〜!?』
涼宮茜が悲鳴混じりに言う。彼女達が下手なのではない。相手が「速すぎる」のだ。
「あの衛士、本当に人間か?」
宗像の言葉は見ていた誰もが思ったことだ。何せこの黒い戦術機は一瞬で時速1000km以上の速度を叩き出し、次の瞬間には横へ動いている。普通の人間ならGに耐え切れず死んでしまうだろう。
『涼宮機、機関部に被弾。致命的損傷、大破』
そうしてるうちに、また一機落とされた。


「よ〜し、これで3人。お?のんびりしすぎたか?」
見ると他の3機もこちらに向かっていた。
「ちょいと威嚇でもしてみるか?覚悟の程を見るために」
プライマルアーマーを展開し、空中高くジャンプした。


 突然敵は飛び上がり、その場で静止した。月を背景に空に浮く黒い機体は、まるで悪魔のようにも思えた。
「何のつもりかは知らんが、いい的だ!蜂の巣にしてやれ!」
『『『了解』』』
4機一斉に射撃をはじめる。それでもよけようともしない。
無数の弾丸が黒い戦術機を襲う。しかし、
『え・・・・・?』
『まさか・・・・』
『なんで・・・・・・』
「なんだと・・・・?」
その弾丸はただ一発として機体に届くことは無かった。見えない壁にでも邪魔されたかのように、敵ではなく地面をペンキ塗れにしていた。
 その時、その黒い機体を緑色の光が包んだ。
「ヴァルキリー1より各機!乱数回避!」
その直後、皆を強い衝撃が襲った。
吹き飛ばされ、その力に恐怖すら感じる。
『宗像機、および風間機、管制部に被弾。致命的損傷、大破』
見ると黒い機体が風間機の前で腕を振るったところだった。


「アサルトアーマーだぁ!」
攻撃が止んだ瞬間を狙ってアサルトアーマーを発動する。
爆風に吹き飛ぶ一機を空中で斬る。
「どうしたよ精鋭部隊!?一発ぐらい俺に当ててみろやぁ!!」
ビルを背に横たわる機体の管制部を狙ってまた腕を振るう。
『宗像機、および風間機、管制部に被弾。致命的損傷、大破』
「これで5機だな」
彼は面白そうに笑った。


「こんのぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!!!!!」
『やめろ!!!ヴァルキリー2!!!!』
速瀬水月の不知火が長刀を手に黒い機体に肉薄する。
ブースト全開。その勢いで長刀を振るう。しかし、
「え?」
その長刀は虚しく空を切った。
『ヴァルキリー2!後ろだ!』
あわてて振り返るとそこには今まさに自分を切らんと腕を振りかぶる悪魔が居た。


「お?あれを見てもビビらねぇたぁ大した度胸だ」
残った2機のうち1機が長刀を手に襲い掛かってくる。
「でもそんな大振りじゃぁあたんねぇよ」
相手が長刀を振り下ろしたその瞬間、クイックブーストを器用に使い、一瞬で後ろに回りこむ。
「I'm a thinker I could break it down♪I'm a shooter. A drastic baby♪」
鼻歌交じりに、振り返る敵にその腕を振るう。


『速瀬機、左肩、管制部に被弾。致命的損傷、大破』
(もはや私一人か)
目の前に居る黒い戦術機にBETA以上の恐怖を感じる伊隅。
静かに一歩一歩、敵が近づいてくる。
「貴様は・・・」
突撃銃を乱射するも見えない壁に隔たれて敵に届かない。
黒い戦術機が走り出す。
「貴様はいったいなんなんだ!!」



『伊隅機、管制部に被弾。致命的損傷。大破。
A-01全機撃墜、状況終了』


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