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マブラヴオルタネイティブ-フォーアンサー 【第捌話】模擬戦再び 新OSの力
作者:首輪付きジャッカル   2012/07/04(水) 17:38公開   ID:aJK45xIaU56
「えくせむすりぃ〜〜〜?」
「そ、XM-3」
 香月に呼ばれ、地下の博士の部屋まで来て見ると今度A-01の不知火及び207Bの吹雪に搭載される新OSの説明をされた。
 自分で言うのもなんだが俺は理解力が悪い。
 長ったらしい説明の果てに理解できたのは結局、白銀の元の世界のゲームが元になっているということだけだ。
「そんなのが役に立つのか?」
「そりゃぁ役に立つわよ。このOSがあれば全ての新兵の・・・ひいては全ての衛士の寿命を延ばすことになるんだから」
「ふ〜〜〜ん」
 「死の八分」・・・BETAと初めて闘った衛士の平均生存時間から出来た言葉らしい。
座学でこの話を聞いた時は鼻で笑ったものだが本当らしい。そのことから考えるとこの「XM-3」とは非常にすばらしい物と言う事になる。
「で、その話を聞かせてどうしろと?」
「今夜A-01と模擬戦ね」
 毎度のことながら香月は何もかも突然言う。わかると思うがこの模擬戦の話も今、初めて聞いた。
しかし口答えしたところで何も変わらないので、
「わかった」
短くそう答える。
 ここまでのA-01との模擬戦の回数は5回。最初の一回目以降、プライマルアーマー(以下PA)及びアサルトアーマー(以下AA)禁止という条件で模擬戦をしているが・・・今のところキャエーデの全勝。戦闘最長時間は4分58秒だ。ついでに被弾0。
 OSを変えたところで、どうなるとも思えない・・・



「で、何で俺だけ見学なんですか教官!?」
今日は207Bを2つの部隊に分けて模擬戦闘訓練のはずだった。NA・NO・NI!
いざその時になって「お前は不参加だ」ってどういうことなの!?
「見学ではない。不参加だ。副指令の命令でな、模擬戦の様子も見せるなとのことだ。まったく、夕呼ってば何を考えて―――あ、いや、なんでもない」
 神宮司教官と香月博士が若い頃から(今も十分若いけど)の友人関係だという話は聞いたが・・・間違いなく教官が振り回されてたんだろうなと普段の様子からわかる。
 しかし見学もさせてもらえないのか・・・仕方ないので部屋で時間を潰すことにする。空いた時間に出来ることはいくらでもあるのだから。



「ふ、ふ、ふ〜。今日こそアンタを倒してやるわ!」
 昼間、結局寝てました。で、起きたらもう夜ですよ。ハンガーに向かう途中、速瀬中尉に鉢合わせして現在に至る、と。
「その台詞、これで5回目だな」
2回目の模擬戦のときから毎回言われる台詞。いい加減聞き飽きたというものだ。
 普段ならこの態度を余裕と取って噛み付いて来る速瀬中尉だが、今日は違った。
「あ〜ら余裕じゃない。でも今日の私達の動きを見ればその余裕も消し飛ぶわよ?」
「へぇ、そいつは楽しみだ」
言葉を交わし、それぞれの機体のある格納庫へ向かった。



『模擬戦開始5分前です。キャエーデ中尉は毎度のごとくPA及びAAは禁止です』
判定役のピアティフ中尉から宣告されるいつものルール。ちなみにピアティフ中尉は本当にオペレーターだ。本職なのだから板についていて当然だろう。
「こっちは配置についてるぜぇ」
『ふふふ、A-01の動きに注目よ?』
香月の楽しそうな声が聞こえる。
よっぽど新OSとやらに自身があるらしい。
『開始1分前です。各自戦闘の用意をしてください』
大丈夫、昼間がっつり寝たから眠気はない。AMSの感度も良好。体も軽い。強いて問題を挙げるなら月が出ていないということぐらいだ。



『状況、開始してください』
その声と同時に、全ての機体が動き出した。



(今日は月が出てないからな・・・一気に攻めないと囲まれる)
シィカリウスのレーダーに映らない能力は月夜にしか発生しない。理由はよくわからないがそういうものなのだ。で、今日は曇り空。月は出ていない。レーダーにしっかり映ってしまうのだ。
(3、4で二手に分かれたか・・・3の方から一気に叩く!)
 シィカリウスを一気に敵に向かって右方向に走らせる。その姿は闇に紛れて見えづらいが、赤い眼光だけが閃光のように闇を裂いた。



「こちらに来たか・・・ヴァルキリー1より各機、動き回りかく乱しつつ攻撃だ。このOSは動いてなんぼなんだからな」
『『『『『『了解』』』』』』
 この新OS、最初はあまりの反応のよさに手間取ったが慣れればこれほど素晴らしいものは無い。
「ヴァルキリー1よりヴァルキリー2、第一撃はお前が喰らわせてやれ」
『ヴァルキリー2了解。派手に行きましょう』
 今日は月が出ていないから敵もレーダーに移っているため見つけることは容易。
向こうもこちらに向かって来ていた事もあってすぐに敵を眼前にとらえる。
「各機、兵器使用自由。囲んで潰せ!」
『『『『『『了解』』』』』』



「お、来たな・・・第一撃は・・・ありゃ速瀬機だな」
5度も闘えば何となく行動パターンで誰かはわかるようになる。
 切り込んできたタイミングでブレードをお見舞いしてやる。
―――距離残り500―――
こちらからも前に出る。
―――250―――
こちらは止まり、回避のタイミングを取る。
 その時、驚くべきことが起こった。
直角に曲がった。まっすぐにこちらに向かっていた速瀬機が、突然横に曲がったのだ。
驚いてブレードを振るってしまった。
「やべぇ!!」
長刀で切られる寸前、何とかクイックブースト(以下QB)で回避する。
しかし息をつく暇は無い。よけた先で銃弾の雨が降り注ぐ。速瀬機の後ろで控えていた2機、伊隅機と涼宮機だ。
 しかしこちらも黙ってるわけにはいかない。QBを駆使し、涼宮機に接近する。攻撃中だ、回避できまい。ゼロ距離でブレードを振る。
「獲った!」
しかし、
『涼宮機、左腕損傷。機能停止』
ばかな。仕留めたはずだったのに。これまでなら今ので一機終わっていた。なのに・・・
しかし考える時間はくれないようだ。涼宮機をカバーするように伊隅機の攻撃。
銃撃が止まったと思ったら速瀬機の長刀による斬撃。
「こりゃぁライフルなしとか言ってらんねぇな!」
一瞬の隙を突き、ライフルを撃つ。そのペイント弾は涼宮機の管制部をペンキで染めた。
『涼宮機、管制部に被弾。致命的損傷、大破』
ようやく一機。これは・・・きついかもしれないな。



「ヴァルキリー3、敵機発見。支援します」
敵機を捕らえた時、既に涼宮機がやられていたが今までのようにブレードによるものではなくライフルによるものだった。今までは頑なにブレードのみで闘っていたのにライフルを使ったということはそれほど追い詰めたということだろう。
「ヴァルキリー3、フォックス3」
『ヴァルキリー4、フォックス1』
『ヴァルキリー6、フォックス3』
『ヴァルキリー8、フォックス3』
 祷子の自律制御型多目的ミサイルで牽制した後、36mmの突撃銃で弾幕をはる。
これだけやれば1発ぐらい当たるだろう。PAとやらも無いことだし。
―――ドンッ―――
弾幕の中から一発の銃弾が飛んでくる。
『キャエーデ機、右サイドブースターに被弾。機能停止。
柏木機、管制部に被弾。致命的損傷、大破』
「あれだけ撃ってサイドブースター1つ壊したに留まるなんて」
一体どうやってよけたのか疑問だった。



「し、死ぬかと思った・・・」
いや、ペイント弾だから死ぬことは無いんだけどね。よける時のGとかGとかGで内臓がつぶれるかと思った。
(反撃と行こうか)
首を回し、気合を入れる。
空中高く飛び上がり、敵を確認する。
比較的孤立しているのは風間機か。
オーバードブースト(以下、OB)を用いて一瞬で近づく。ブレードを振るうも避けられる。しかしそこまでは予想済み。
右手のライフルは既に避けた先に銃口を向けている。
「これで3機」
引き金を絞る。
しかし空中で飛ぶ方向を急激に変えそれを避ける風間機。
そこにQBで近づき、左手で敵を掴む。
そして風間機を支援すべく自分に向けて撃ってきていた銃弾に風間機をぶつける。
『風間機、機関部に被弾。致命的損傷、大破』
「わざわざ代わりにありがとよ!」
外部スピーカーで敵に向かい叫ぶ。風間機を撃ってしまった機体が動揺で硬直している。
その隙に再びOBでそいつに近づき、目の前でQB。一瞬で後ろに回りブレードを振る。
『高原機、機関部に被弾。致命的損傷、大破』
これで残り3だな。



「くっ!さすがにサイドブースター1つ潰したぐらいでは崩れてくれないか・・・
ヴァルキリー1よりヴァルキリー2!敵をひきつけてくれ。ヴァルキリー3は私とヴァルキリー2を支援!」
『ヴァルキリー2了解』
『ヴァルキリー3了解』
「最初にも言ったが機動を生かせ。動かなければ今までと何も変わらん!」
『『了解』』
速瀬が敵に切り込む。A-01の中で一番このOSを使いこなしているのは速瀬だろう。だがその速瀬ですら、致命打を与えられないか・・・



「よりにもよってきつい3人が残ったな」
ヴァルキリーズの上から3人が綺麗に残ってしまった。中でも速瀬機は本当に相手にするのが厳しい。
 速瀬機を相手にしながら、他の2機にも射撃を試みる。しかし独特の機動でかすりもしない。
「こりゃド肝抜かれたわ」
想定以上に敵が強くなっているために、対応が追いつかない。
―――ドンッ―――
伊隅機の放った一撃がライフルをペンキで染めた。
『キャエーデ機、ライフル被弾。使用不能』
使えないライフルなど死重量デッドウェイトでしかない。即座にパージする。
本来ならここで格納武器を出すべきなのだが、今は出さない。奇襲に使えそうだからだ。
 速瀬機が退がり、他2機の射撃が来る一瞬の間にOBで宗像機に接近。避ける暇も与えずブレードを振るう。
『宗像機、管制部に被弾。致命的損傷、大破』
これで残るは2機か



「宗像もやられたか」
ここまでの攻撃は無駄ではなく、数発被弾させることも出来た。
中でもバックブースターに当たったものは有効だった。短い距離を一瞬で潰すQBは使えなくなったのだから。これで前後のQBは消えた。
「ヴァルキリー2、右側から攻撃しろ。気は抜くなよ?」
『ヴァルキリー2了解!しとめて見せますよ!』
速瀬機が長刀を手に前に出た。



「そっちから来ることぐらい予想済みだ!」
正面や背後からの攻撃ならサイドブースターによるQBで避けられる。ならば側面。そして右手に武器はない。なら右側から攻めるだろう。
 即座にクイックターンし、速瀬機を左に捉える。間髪いれずブレードを振る。
しかし速瀬機は空中に飛び、それを避ける。
「その避け方は何度も見たんだよ!!」
自分も飛び、正面に捕らえた。はずだった
飛び上がり、前を見るとそこには荒野が広がっているだけ。速瀬機の姿はどこにも無かった。
長年の傭兵の勘で即座に振り向くとやはりそこに速瀬機が居た。いつぞやの自分のように、速瀬機の不知火は自分に向けて長刀を振り下ろすところだった。



「やった!」
その瞬間、あたしは勝利を確信していた。
初めての模擬戦のときのおかえし。やられた時と同じ様に振り向き様を斬り付ける。
しかし・・・



「自分の戦法にやられるほど阿呆じゃねぇ!」
開いた右腕で長刀の柄を掴む。ネクストと戦術機だ。力負けはしない。
そのまま長刀を奪い取り、斬り付ける。
『速瀬機、管制部に被弾。致命的損傷、大破』
そして最後の1人の姿を探す。上手く使えないので長刀は即破棄。
そして、一気に自分に詰め寄る機体の姿を捉えた。



「速瀬を仕留め、気を抜いているであろう今なら!」
一気に間を詰め、長刀を振り下ろす。
突然のことに反応が遅れたのか、左腕を肩口から切りつけることに成功する。
『キャエーデ機、左腕損傷、機能停止』
ピアティフ中尉の声が聞こえる。
「あの一瞬で回避に入るとは・・・しかし!」
即座に返す刀で止めを刺しに行く。もはや武器はない。決まる!
『武器がもう無いとか思ってんなよ!!』
外部スピーカー越しに聞こえるキャエーデ中尉の声。
見るとシィカリウスの右手にはさっきまでなかったはずのブレードがあった。










『キャエーデ機及び伊隅機、管制部に被弾。致命的損傷、大破
全機、機能停止。模擬戦を終了します』


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■作者からのメッセージ
いやぁつかれた。
書いてる時かなり眠かったからぐだぐだかもしんない。
誤字あったら教えて。直すから
ネクストが弱すぎる気がする人も居ると思うけど大丈夫
その辺の事情は次の回で書くから
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