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マブラヴオルタネイティブ-フォーアンサー 【第七話】天(そら)より飛来する物 空(てん)穿つ一撃 後編
作者:首輪付きジャッカル   2012/07/04(水) 17:37公開   ID:uFxsqFJnvGY
「何事も無く、翌日か」
 今日は珠瀬国連事務次官、つまり珠瀬壬姫の父上が横浜基地を視察に来る日だ。そしてメインイベントにはHSSTの落下がある。
 

「・・・ま、というわけでだ、オレと冥夜の会心作をたまが喜んでくれたのは誠にもってありがたいことであり・・・」
「本当にこの二人に任せてよかったのかしら・・・?」
「不安だなぁおい!」
「何だか冥夜さん、タケルに似てきてない?」
「ば、ばかな!・・・非常に遺憾だ」
珠瀬の腕には御剣が作ったという「分隊長」と書かれた腕章がついている。
「・・・でなければ自然体」
「冥夜さんって意外とお茶目だったんだね」
白銀やキャエーデがこの部隊に入るまではどこかいつもぎこちなかったそうだ。会話も少なく、いつも相手のことを気にしている。そんな状態だったらしいのだが、今はそんな面影も無く、打ち解けていた。
 その時、PXの入り口のほうから声がした。
「榊訓練兵!」
「はい!ここにいます!」
 神宮司教官の声に榊がこたえる。
「そろそろ事務次官を乗せた駆逐艦到着する時間だ。
私と一緒に来い」
「はい!」
「貴様達は待機だ。
特に白銀!大人しくしていろよ?」
 教官が白銀に念を押す。「珠瀬一日分隊長」作戦のことは既に教官には知られている。
(教官は真面目な人なのによくこんなことを許したな)
榊と教官が事務次官らを迎えるために駆けていった。
「なぁ、キャエーデ」
白銀が静かに声をかけてきた。まるで他のみんなに聞かれるのを嫌がってるかのよう。なので自分も声のトーンを落として答える。
「どうかしたか?」
「昨日変な奴に絡まれなかったか?武御雷のことでさ」
武御雷とはいつぞやの紫の戦術機のことだ。何でも将軍家とそれを守護する斯衛のみが乗ることを許された特別機らしい。それはあの少尉たちも気になって当然だろう。
「あぁ、あの二人ねぇ。医務室に行けば会えると思うぞ?たぶん話せる状態じゃないけど」
やったのは俺だし。
すると白銀は目を丸くし、一瞬思考したあと顔を引きつらせてみんなの場所へ戻っていった。
 


「敬礼!」
数分後、珠瀬国連事務次官が神宮司教官と榊を伴ってPXまで来た。
「事務次官、ここが横浜基地訓練学校の食堂になります」
教官が説明する。そこに緊張の色は見られない。さすがは教官と言ったところか。
「ほぅ」
「ご紹介します。彼らが第207衛士訓練小隊の訓練兵です」
事務次官が7人の顔を見渡す。
「諸君の双肩に人類の未来が懸かっている。
よろしく頼むよ」
「「「「「「「―――はっ!!」」」」」」」
「ここから先は、珠瀬訓練兵がご案内差し上げます。
珠瀬訓練兵!」
「あ!は、はいっ!どうぞこちらへ!」
珠瀬の姿は緊張がありありとにじみ出ていた。相手は父親なのだ。もっと肩の力を抜けばいいのに。
見たところ優しそうな方である。
珠瀬と事務次官が真剣な顔で見つめ会う。




「うんうん、頼もしいなぁ・・・
でもパパは甘えてもらえないの、ちょぉっと寂しいぞ・・・」
ズッコケた。これ以上に無く見事なズッコケ方だったと思う。さっきまで真面目な顔だったのに、一気にとろけた笑顔になってこんなことを言うのだから、ズッコケるなというほうが無理だろ。
「キャエーデ訓練兵!何をしているか!!」
教官に怒鳴られました・・・
「でででででは、こ、こちらへ!」
「うむ・・・パパ、今日はたまの小隊長っぷり、いっぱい見せてもらうぞ」
たまパパ・・・分隊長だぞ・・・



「こ、こちらが兵舎です」
珠瀬が事務次官を案内して周り、兵舎まで来た。ちなみにその間俺達はここで待機していた。
「・・・」
みんな珠瀬の号令を待っているのだがなかなか気付かない。
「たま、号令だ号令・・・」
白銀が小声で助け舟を出す。こうしてみていると白銀は本当にいい奴だと思う。
「あ・・・けっ敬礼!」
「「「「「「お待ちしておりました!」」」」」」
「やっ、休め!」
どうやら最初よりは緊張は抜けたようだ。
「うんうん、君たちもたまの部下かね?」
「たませ」だから「たま」なんだから事務次官も「たま」だと思うんだが・・・しかしこれを口に出す阿呆が居た。
「・・・あんたもたま・・・」
彩峰が何の躊躇も無く言い放った。しかも・・・
「・・・たまパパ」
まだ言うか―――!
「・・・ひげ」
よく躊躇無くこんなことが言えるものだ。
「し、私語を慎め〜〜〜!」
珠瀬が注意する。珠瀬ナイス!
「ぼけっとしてないで場所を空けないか!」
「・・・」
相変わらず彩峰は無表情だが俺にはわかる。こいつ今結構怒ってる。逆ギレな気もするけど怒ってる。
「・・・申し訳ありません。分隊長」
今は抑えてるけど間違いなく怒ってる。逆ギレな気(ry
「その凛とした姿、いいじゃないか〜〜〜
たまはいい子だ。
ほら、よしよし〜〜」
 そういって頭をなでる。この親バカ親父は〜〜〜
 白銀も考えてることは俺と一緒なのか表情が引きつっていた。
「たまが命令している姿、もっと見てみたいなぁ〜、ん?どうかな?」
事務次官がねだるような顔をする。
すると調子に乗ったのか珠瀬が、
「そこの!手が空いてるならトイレの掃除でもしろ!」
見るといつぞやのウサ耳不思議少女、社霞がいた。
社はウサ耳を一度ピョコっとすると、その場を後にした。
「掃除は適当でいいぞ―――」
白銀が社の後姿に声をかける。聞こえただろうか?
「ん?君はさっきまで一緒に居た・・・」
事務次官の目が榊に止まる。
「榊千鶴訓練兵です!」
「連中の相手は疲れただろう?官僚体質の無能ばっかりだからね・・・
ご苦労だったね」
「い、いいえ、とんでもありません」
「榊君もたまの部下だったんだね」
本当は榊が分隊長だけどな?
「はい!分隊長には毎日、ご迷惑をおかけしております」
昨日はうだうだ言っていたのに、なんやかんやで口裏を合わせてくれている榊。あいつはあいつで真面目だけどいい奴なのだろう。
「うんうん、知ってるよ。父上に似て、物分りが悪くて頑固で融通が利かないらしいね」
その瞬間、時間が止まった(様な気がした)
「・・・」
おそらく珠瀬が手紙で好き勝手書いたのだろう。
榊がかつてない怒りと殺気を珠瀬にぶつける。
「たまに迷惑ばかりかけないでくれたまえ」
「・・・は、はい」
―――ブルブルブルブルブルブルブルブル―――
珠瀬が小動物よろしく震えている。
「ん?君は」
事務次官の目が今度は鎧衣に向く。
「はい、鎧衣美琴訓練兵です」
「ほほぉ・・・君か、たまより平坦な鎧衣君とは」
「・・・」
た、確かに鎧衣の胸は平坦だよ!最初男かと間違えたぐらいだよ!でもそんな現実を容赦なく突きつけるなんて―――
「・・・ボクは・・・ボクは・・・
ひどいよ〜気にしてるのに〜〜〜〜〜〜!」
鎧衣が泣きながら走り去ってしまった。まぁ、そうなるだろうな。
「たけるさん・・・へるぷみ〜」
「すまん」
白銀に助けを求める珠瀬。かわいそうだから後で助けてやろう。
「ん?君は・・・」
「御剣冥夜訓練兵です!」
「そうですか、あなたが・・・」
「・・・?私には何もないのですか?」
「死活問題ですので・・・」
「そうですか」
「ふぅ・・・」
安堵のため息をつく珠瀬。しかし安心するなよ珠瀬。
死活問題ってことはこれ言ったら死ぬかもしれないようなことを手紙に書いたってことだ。
 そのことを御剣もわかってるようでさりげなく珠瀬を睨んでいる。
「ん?君は?」
「キャエーデ=スペミンフィーメン訓練兵です。事務次官殿」
「なるほど君が新しく入ったキャエーデ君か。本当に傷だね。たまがフランケンシュタインが来た見たいと表現した意味がよくわかったよ」
「・・・」
珠瀬を見るとものすごく震えている。おk、前言撤回。絶対助けてやらん。
「あまりたまを怖がらせないでくれ」
「・・・どうもすいませんでした」
(いっそ殺してやろうかこのジジィ・・・)
そして事務次官の目が白銀に向く
「・・・白銀武君だね」
さて、どんな悪口が書かれているのかねぇ。
「先ほどから見ていたが、うむ、なかなかの好青年だ」
あれ?
「は・・・ありがとうございます」
「顔も悪くない。性格もいいと聞いてる」
「は」
「おまけに座学、兵科共に成績優秀、冷静で頼りがいがあるという。
今のご時世で君ほどの男はそうそう居まい」
あれ〜べた褒めですか?
榊と御剣の怒りが白銀に向き始める。もちろん俺の怒りもね。
「うむ・・・君ならば・・・よかろう!」
「・・・」
「たまをよろしく頼むよ。傍で支えてやって欲しい。
今までも、そしてこれからもね」
その言葉で207のメンバーに衝撃が走る。その表情は驚愕。それに尽きる。
「いやいや、楽しみだ・・・わははははは」
「あ、あはははは・・・」
「いや、そろそろわしも、孫の顔が見たいかな、
ま、ご、の、か、お、が、な!わはははははは!!」
おk、シロガネコロス!
―――ガシッ―――
榊が白銀の左肩を掴む。掴む手が肩に食い込んでるのは言うまでもない。
「ちょっと、いいかしら?」
「あ、後にしてくれ!]
―――ガシッ―――
御剣が白銀の右肩を掴む。あの力の入り具合は肩を握りつぶそうとでもしてるんじゃないだろうか?
「タケル、そなたに話がある。なに、時間はとらせん・・・よいな?」
有無を言わせぬ迫力をまとった御剣の言葉。
その時、白銀の体が持ち上がった。
「よし彩峰、そのまま連れ出すのだ」
見ると彩峰が白銀を肩に担いでいた。
「離せ、彩峰!」
「もう離さない」
「やめてくれ〜」
「諦めてね。どうしようもないことってあるんだよ・・・人生には・・・」
みるといつの間にか鎧衣が戻ってきていた。しかしその目には諦めと怒りが混ざった微妙な光が。
―――ビー!ビー!ビー!―――
突然警報が鳴り出す。
(きたか・・・)
心の中でだけ笑う。
「こ、これは・・・」
「防衛基準体制2が発令されました!事務次官、地下司令室までおいでください!」
ものすごい勢いで走ってきた教官が言う。
「何事ですか、軍曹?」
事務次官が教官に問う。こんな状況だというのに、事務次官はひどく落ち着いていた。
「駆逐艦がコントロールを失い落下中です。詳細は調査中ですが、現在の軌道は横浜基地を直撃するコースです」
教官が現状を伝える。その時、
『207衛士訓練隊に告ぐ。直ちに第二ブリーフィングルームに集合せよ。
繰り返す・・・』
「今のは・・・博士の声か」
「一体どういうこと!?」
教官の顔に動揺が見える。こんな状況で自分の訓練部隊がブリーフィングルームに呼ばれたのだ。正規兵でなく、「訓練兵」が、だ。
「教官!」
いち早く我を取り戻した榊が教官に声をかけ、教官も我に帰る。
「―――全員、第2ブリーフィングルームに向かえ。全速力」



「―――ということよ」
昨日白銀に聞いた説明をまた香月の口から聞くことになった。
要約するとこうだ。
エドワーズから那覇に向かっていたHSSTが突如通信途絶。
遠隔操作による起動補正や自爆させることを試みるも全て失敗。
調査の結果、HSSTは電離層を超えたところでフルブーストによる加速をすることが判明。
中身は高性能爆薬満載。
BETAは空をとんだりしないので航空ミサイルもない。
 ということだった。
「さて、ここからが本題よ」
そういうとモニターの電源をつけた。
「こんなこともあろうかと用意しておいた「1200mmOTHキャノン」
これの固定準備が現在進められているわ」
「ちょ、ちょっと!超水平線砲は対地兵器でしょ!?」
「あったま固いわねー。対地だろうがなんだろうがこれしかないんだからしょうがないでしょう?」
「う………」
教官が口を挟むがあっさり一蹴されてしまう。
「一応説明しておくわ。この1200mmOTHキャノンは極超長距離からハイヴを直接砲撃するという目的で試作された対BETA兵器。 砲身内に多数配列された薬室に順次点火し砲弾を極超音速まで加速させる。 発射後は砲弾の火薬パレットを制御爆発させ、2回の弾道補正によって遥か彼方の目標を狙撃するという優れもの―――になるはずだったんだけど前線運用が疑問視されてお蔵入りになったモノよ」
正直意味がわからん(白銀の時を含めて二回目の説明だが)が、要するに恐ろしく射程の長い銃、ってことでいいのだろう。
「で、これがHSSTの軌道予測よ。スカンデイナヴィア半島上空で再突入を開始、3分後に日本海上空にて電離層を突破。その瞬間をこいつで狙うわ。ざっと計算すると高度60km、距離500kmの非常識な狙撃。もはや狙撃というより神業の域に達するわね」
「問題は初弾での迎撃に失敗した場合電離層を抜けたところでHSSTがフルブーストをかけてくるからそれ以降の砲撃の成功率がグッと下がることね。しかもチャンスは3回。それ以降は砲身が保つ保証はないし、仮に4発目を撃てたとしても耐熱耐弾装甲の強度を考えれば破片はほぼ原形を保ったまま帝国本土に落下することになるわね。そうなれば帝国にそれなりの被害が出る可能性が高いわ」
「で、この超水平線砲って戦術機での運用が前提なのよね」
「………まさか……待ちなさい夕呼!この子たちは訓練兵よ!?」
「シュミレーターの訓練記録をあたしに見せたのは、まりも・・・あんたよ?
あの数字が何を意味するか知ってた?」
「・・・」
「少なくとも極東一位のスナイパーが、この中に居る」
「あ・・・・あ・・・あぁ・・・」
珠瀬も気付いたようだ。その表情は驚愕、動揺、怯え。
「・・・再突入まで15分をきったわね。私達も行きましょうか」
そういうと扉のほうに歩き出す香月。その背中に教官が叫ぶ。
「夕呼!あなた一体何を考えているの!?」
「生き延びる方法よ。アンタ一体何のために教官やってんの?
こんなときに使えない奴なら要らないわ」
あっさりと言いくるめられる教官。
「あ・・・ああ・・・ああ・・・」
うろたえ、口も利けなくなっている珠瀬。
「・・・ほっとけば15分以内に1万人以上の人間が死ぬのよ?」
「私・・・私・・そんな・・・」
「その中には珠瀬、あなたのお父様・・・
珠瀬事務次官も入っているのよ?」
「いやあああああああぁぁぁぁっ!!!!!」
泣き叫び、止める間も無く部屋を飛び出す珠瀬。部屋に珠瀬の叫びの残響だけが残る。
「あらら・・・根性無いわね」
あっさりと吐き捨てる香月。
「一応正規兵も待機させてるけど、5分だけ待ってあげる。その間に珠瀬を16番ハンガーまでつれてきなさい。
それとキャエーデ、ちょっと来なさい」
そういって部屋を後にした。
「なんだ?みんながんばって探せよ?無駄死にだけはごめんだからさ」
そういって自分も部屋を後にし、香月を追う。
部屋を出ると廊下の少し向こうに香月の後姿があった。
急いで駆け寄り、声をかける。
「俺だけなんのようだ?」
「正直、いい話ではないわよ?」



「ハッ、ハハハハハ!!最高だ!ハハハハハ!!」
その話の内容に、俺は笑いを抑え切れなかった。
「んじゃ、いってくるわ」
そういって俺はシィカリウスを格納してある90番ハンガーに向かった。




「手分けしよう!オレは兵舎のほう見てくる!」
確か前回の時は兵舎の自分の部屋で泣いてたんだよな・・・
たまの部屋の前に着くと声が聞こえた。
「・・・私、どうしたらいい?」
やっぱり部屋に居た。静かに戸を開ける。
真っ暗な部屋の中にたまは居た。
「・・・たま」
「どうしたらいいんだろ・・・できないよ」
「・・・こわいよ・・・」
親父さんに種を貰ったって言う花に向かって話しかけているたま。
「こんなところでもちゃんと咲くんだな」
「たけるさん・・・」
「こんな地下なのにさ・・・
セントポーリアか」
「うん、ありがとー
これね・・・パパが種をくれたんだよー」
「そうか・・・」
「途中で病気になったりして大変だったけど、やっと花が咲いたんだー」
「なぁ、そいつは何て言ってくれた?怖い言ったら何て言ってくれた?」
「・・・」
「お前なら出来る・・・いや、お前にしか出来ないんだ」
「何でそんなこと言うの」
 前回のループで出来たからだ!何て言うわけにもいかないし。
でも、こんな無茶な距離で高速移動する物体を打ち落とすなんてたま以外に出来るはずがないんだ。
「何でそんなこと言うのっ!」
「・・・たま」
「やらなくていいよって!もう心配しなくていいよって言いに来たんじゃ・・・ないの?」
「・・・」
「―――私訓練兵だよ?ついこないだ本物の戦術機に乗ったばっかりなのに」
「・・・」
「―――私、ホントは凄いあがり症なんだよ?
みんなの前では・・・我慢して・・・いっぱい我慢して平気な顔して撃ってるけど!
―――ホントは・・・手がぶるぶる震えて胸がどきどきして頭が真っ白になっちゃうんだよ」
「知ってるよ」
「じゃぁどうして!?どうして私にやらせようとするの!?」
「後悔しないか?」
「・・・え?」
「たまにしか出来ないことをやらないでみんなが死んじまう・・・後悔しないか?」
「・・・」
「それにお前が失敗しても、しまった!って思った頃には怨まれる間も無く
みんな死んじまってるよ。そういう意味じゃ、今までで一番気楽だと思うんだけど・・・それは考え方の違いか」
「・・・」
「たま・・・?」
「・・・」
「・・・」
「―――やります」
「え?」
「私、やります!」
「たま!」
「みんなが死んじゃうなんてやだ!
この花だって、一生懸命やって咲かせたんだもん
狙撃だって、一生懸命がんばったからみんなに凄いって言って貰える様になったんだもん!」
「・・・頼むぞ」
「でも・・・一つだけお願いがあります」
「ん?」
「ちゃんと、最初から最後まで私がやるの見ててくれますか?」
「あぁもちろんだ!いくぞ、みんなが待ってる!」
「はい!」



「遅いぞタケル!」
 屋上に行くとやはり207のメンバーが揃っていた。まりもちゃん(神宮司教官のこと)もいる。
一人足りない気もするが今はそれどころではない。
「珠瀬一人に戦わせるわけには行かないでしょ?私達はチームなんだから」
委員長、お前は本当に最高の分隊長だよ・・・
「はい、通信機」
「教官・・・」
「大丈夫よ、あの子を信じましょう」
「そうですね・・・」



『珠瀬、準備はどう?』
「い、いつでもいけます」
『誰かさんが説得に手間取ったせいで時間がないから手短に説明するわね。
FCSに装備に関するデータは入力済み。気象条件は常時自動補正。衛星と早期警戒機のデータをリアルタイムで画像情報に変換しているから、照準は普通の感覚でできるはずよ。』
『目標、再突入開始』
『砲弾の自動装填に6秒かかる。次弾のデータ補正にコンマ4。いいわね?』
「はい」
『装弾は5発。でも3発以上は砲身が持つ保証はないわ。最悪、OTHキャノンが暴発する可能性もある』
「はい」
『もっとも時間的には3発が限界。さっきも言ったけど、それ以降は迎撃が成功しても破片による被害が出るからね』
「わかりました、3発でしとめます」
『お父様も隣でご覧になってるわ
いいとこ見せないよ、珠瀬分隊長』
「え、あ・・・はい!」
『たま・・・』
「たけるさん?」
『気楽にいけ』
「うん!」
『あ〜珠瀬〜聞こえるか〜?』
「キャエーデさん?」
『さっき白銀も言ってたけど気楽に行けよ?
ついでにお前の肩にかかってるのはここに居る全ての人間じゃなくて俺一人だから』
「え!?」
『お前が3発目はずしたら俺は今乗ってるこの新開発の戦術機で爆弾抱えてあれに突っ込むことになるんだ』
「そんな!?」
『所詮傭兵、雇い犬だからな。ま、これで少しは肩の荷も軽くなったろ
信じてるぜ?珠瀬壬姫分隊長』
「・・・」
『目標、60秒後に電離層を突破』
「・・・初弾装填・・・よし」
『初弾の装填を確認』
「照準・・・よし!」
『トリガータイミング同調。10・・・9・・・8・・・7・・・6・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1』
1発目の引き金を引く。着弾を確認する前に次の砲弾を装填する。
『着弾まで5・・・4・・・3・・・2・・・1―――目標健在!・・・目標加速開始。落着まで、142秒、高度60km、距離500km』
「照準補正・・・目標補足。弾道データ修正よし」
『トリガータイミング同調。10・・・9・・・8・・・7・・・6・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1』
2発目を撃つ。でもわかってる。これも外れるだろう。でもこれでこの銃の弾道はわかった。
「砲弾装填!」
『着弾まで5・・・4・・・3・・・2・・・1―――目標健在!目標第2迎撃ポイント通過!落着まで115秒、高度48km、距離405km』
『地表到達まで、残り80秒』
大丈夫。私なら出来る。
「この一発で―――」
「しとめます!」
最後の引き金を引く。
弾道はイメージ通り飛んで行き・・・
『目標撃墜、レーダーに反応なし』
「えへへ、やった。やったよたけるさん!」
『あぁ!すげぇ!すげぇよたま!」

こうして、横浜基地は危機を乗り越えた・・・






「まさかHSSTを打ち落とすとわな」
王大人ワン・ターレン!?」
「これはいよいよ持って、私が直々に出る日も遠くは無かろう」
王大人ワン・ターレンが直々にですか?」
「帝国軍に潜り込ませている連中に、動いてもらうとしよう・・・」
「わかりました・・・
あの女狐に、今の世に必要なのは第4計画ではなく、第5計画だということを知らしめてやりましょう」

不穏な影は、ゆっくりとその鎌首をもち上げていた・・・


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■作者からのメッセージ
何故この世界に王大人が居るかはだいぶ後でわかります
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