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マブラヴオルタネイティブ-フォーアンサー 【第玖話】天元山 無慈悲な王
作者:首輪付きジャッカル   2012/07/04(水) 17:41公開   ID:aJK45xIaU56
「あ〜あ〜ブースターがペンキ塗れだよ」
 ブラシや雑巾を手に、愛機の前に立ち愚痴をもらすキャエーデ。
 先刻の模擬戦でペイント弾をぶつけられた為、その部分の清掃だ。今まで被弾ゼロだった為、初めてのことになる。なんというか・・・悔しい気がしないこともない。
「こんな情けない結果になってもまだ本気は見せてくれないわけ?」
 90番ハンガーの入り口のほうから声がする。我らが副指令、香月夕呼だ。
 ペンキを落とす作業の手を止めずに答える。
「一応こっちも一生懸命やってるぜ?」
「誤魔化してもだめよ。その機体を調べた結果、アンタがまだぜんぜん力を出し切ってないことぐらいわかるんだから」
 確かに香月が言っていることは本当だ。彼はまだシィカリウスの力を半分も出していない。しかしそれには理由がある。至極単純な理由だ。それは、
「そんなに本気が見たいなら、各パーツの完全な複製品をさっさと作ってくれ。替えの効かない状態で本気なんて出したら下手したらパーツがイカれる」
そういうことだ。彼が自ら施した法外な改造は、あまりの力にフレームが耐えられないのだ。故に彼はほとんど全力を出したことが無い。数えて2回か3回ぐらい。
 それだけ言うと彼はひたすらペンキ落としに集中した。









「呼び出してどうしたんだ?ようやく代替パーツ完成か?」
12月1日の夜、香月に呼び出された。
「悪いけどそうじゃないわ。こっちの技術じゃ複製には時間がかかるわね」
「そうかい。で、用件は?」
 キャエーデも香月も面倒は好きではない。早速本題に入る。
「悪いけど依頼を受けて欲しいの」
「ほぅ」
 モニターに地図を出し、説明を始める。
「内容は至極単純。天元山山間部の旧天元町地域に散在する14名の住民を避難させること。
  BETA予報の安全保障は90%だけどあんまり高く飛ぶと光線級レーザーに撃たれるわよ?
 本州奪還作戦で使用された五次元効果爆弾、通称G弾の影響でここ数年日本中部の火山活動が活性化しているのは知ってるでしょう?」
「あぁ、座学で習った」
「もともとBETAの占領下にあった中部から関東甲信越地方は第1種危険地帯に指定されているんだけど・・・」
「出てけと言っても出て行かない、か?」
「そういうこと。今でも小規模な噴火も続いてるわけ」
「なるほどねぇ。救助に向かえと、そういうことか。でもなんでわざわざ俺に頼む?PAやAA使わなくてもネクストはコジマ粒子で環境を汚染してくんだぞ?」
「ネクスト一機の汚染量なんてたかが知れてるでしょ?何であんたに頼むは・・・白銀の情報に基づくものよ」
 白銀の知る未来で、この救助の関係で何かあったのだろうか?しかし依頼だというのであれは断るつもりもない。
「了解した。んで、報酬は?」
「三食、住居、整備にまだ要求するわけ?」
「もちろんだ。傭兵さんだからな」
「そうねぇ・・・ネクストの代替パーツ開発の優先度をもう少し引き上げてもいいわよ?」
「よーし契約成立だ。今から行けばいいか?」
「出発は明日、日が沈み出したらすぐに行って頂戴」
「人目につかないようにする配慮か?まぁいい、その救助活動だが・・・」
 キャエーデはわざわざ自分に依頼する別の理由を察していた。
立ち上がり、ドアに向かって歩きながら問う。
「やっぱその人たちも苦労してるだろうし、楽にしてやるべきだとは思わないか?」
「最悪、苦しみから解き放ってあげなさい」
 最早、人道など気にするなという暗黙の了解。キャエーデは自分が口元を緩ませていることに気付いていなかった。



「んじゃ、行きますか」
 時刻は19時。すっかり辺りは暗い。月と星だけが夜を照らしている。
 シィカリウスに乗り込み、AMSを接続する。
 外に出て、一度地図を思い出す。
 天元山の方向に向き、OBを使用する。時速2000km。すぐにつくだろう。



「ついた〜」
 OBで移動を始めてから実に9分。たかだか360kmの距離を時速2000kmで駆けたのだから早いのも当たり前なのだが。
 再び地図を思い出す。今度は依頼内容の説明を受けた時のモニターの地図。
「こっから一番近いのは一人もんのばーさん宅か?」
 シィカリウスで少し歩き回る。飛び上がればすぐに見つかるのだろうがこの辺は高度が高い。
下手したら飛び上がったところをレーザーが何てこともありえなくはない。

「見つけた」
 見ると生活には困らない程度の大きさの家があった。干し柿なんかが吊るしてある。
「さて、救助活動(笑)をはじめますかね?」
 極力静かに家に近づく。音もなく家の真横にたどり着き。
―――ザンッ!―――
 ブレードを振るった。二つに裂ける家。突然のことにパニックになったのか奇声を上げながら老婆が家を飛び出してくる。そこに・・・
―――ドンッ―――
何の躊躇もなくライフルを打ち込む。巨大な銃弾を喰らい、四散する老婆の死体。
それに見向きもせず、次の家を探しにいった。


「小規模な集落か・・・」
家が5件集まっていた。
大騒ぎにならないよう、少しはなれたところでシィカリウスを降りる。
武器は持たず、体一つで集落に向かう。
一軒目、静かに戸を開き、音もなく背後に忍び寄る。
「ッ!?」
―――グキッ―――
声を出される前に首を折る。あと片付けは最後にまとめてやればいい。

次の家に向かう、ここはまだ起きている。動いている気配が2つ。
ドアを蹴破り、押し入る。
「な、なんねあんた!?」
 その言葉に答える代わりに拳を突き出す。その拳はまっすぐに心臓の打ち抜いた。
 強い衝撃に心肺を停止させる老人。その姿に悲鳴をあげそうになる老婆。
しかし悲鳴を上げる暇も与えず、キャエーデは蹴りで老婆の首を折った。

「次の家は・・・」
ここもまだ起きている。明らかに鼻歌が聞こえる。
 しかし気配は一つ。
 気配の比較的近い側の壁を蹴破り、驚いている間に頭を踏み潰す。
数度頭を踏みつけると老人は動かなくなった。

次の家。
ここは既に寝ているようだ。
 静かに忍び寄り、首を絞める。
 老人は眠るようにその生涯を終えた。

最後の一軒
ここも気配は二つ。だが既に寝ているようだ。
二人とも首を折り、終わらせた。



シィカリウスの元に戻り、乗り込む。
「次はどの辺だったかな?」
記憶をたよりに集落を探す。
「あった」
思いのほかあっさり見つかった。
家は二件。
「めんどうだな」
一軒をブレードで粉砕し、もう一軒は念入りに踏み潰す。
ブレードで切ったほうはもしかしたら生きている可能性も無きにしも非ずなのでライフルを20発ばかり打ち込んでおく。



再び集落を探す。
最後の集落は家が3件あった。
万全を期す為シィカリウスを降り、生身で行く。
一軒目、寝静まっている。
静かに戸を開け、寝ているところを心臓に強打。
心臓は動きを止めた。

二件目、ここも既に寝ているようだ。
「老人てのはどうしてこう寝るのが早いのかねぇ?こっちは仕事が楽で助かるけど」
静かに進入し、心臓に一撃。
「あ゛があ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!??」
仕留め切れなかったようだ。
再三老人の胸に拳を打ちつける。程なくして老人は動かなくなった。

三件目は起きているようだ。
 関係ない。計算上ここでラストだ。騒がれても問題ない。
堂々とドアを蹴破り家に押し入る。
「誰だいあんた!?」
老婆が怒りと戸惑いの視線をぶつけてくる。そんなもの意に介さず、近づいてゆき・・・
―――ゴンッ―――
顔面を殴打した。
「がぁあ!?」
血を流し、倒れる老婆。そこに近づき再三殴る。
わざと力を抜いたため、20ほど殴ってようやく動かなくなる。
「これで全部だな」
家を出てシィカリウスに乗り込む。

「さて、後片付けだな」
すばらしいことにここは火山だ。証拠隠滅に最適な場所がある。
一つ一つの家の残骸、及び死体をシィカリウスで運び、火山火口に捨てる。
全ての作業を終え、彼は基地へと帰っていった。


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