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マブラヴオルタネイティブ-フォーアンサー 【第拾話】国を思うが故 この力は何のために? 後編・乙
作者:首輪付きジャッカル   2012/07/04(水) 18:10公開   ID:aJK45xIaU56
『冷川における殿下の御奉迎成らず。繰り返す、冷川における殿下の御奉迎成らず』
「すでに箱根には増援を送ったはずだ!そちらはどうなっている!?」
『小田原西インターチェンジ跡に展開している国連軍部隊と接触・・・
第一陣は全滅です!』
「なんだと!?」
 クーデター部隊は拠点で大騒ぎになっていた。最重要ポイントを殿下に抜かれ、増援部隊第一陣は全滅・・・
落ち着けというほうが難しい。そんな中、一人の女が立ち上がった。
「ここは私が出ます。大尉は厚木へお急ぎください―――
殿下をよろしく頼みます」
あの時の秘書風の女だ。彼女は衛士としての実力もすばらしい。



「来るぞ・・・
相手は帝都守備連隊の精鋭。この日本を守護する最強の集団だ。
一筋縄では行かんぞ博士」
「ご心配なく―――
第4計画直属部隊の名に箔をつけるいい機会です。『伊隅戦乙女中隊イスミ・ヴァルキリーズ

―――このような場を制してこそ彼女達の存在意義は証明されるのですから」


「ヴァルキリー1よりHQヘッドクウォーター
、帝国軍を下がらせろ!ここで消耗する意味は無い!!ヤツらの相手は我々がする!!」
「ここから先は行かせないよッ!!」
速瀬中尉が叫ぶ。A-01のメンバー皆、気合は十分だ。

「ここを確保すれば南に増援を送り込める!―――全機突撃!!戦力を集中し、一気に突破するぞ!!」
「「「「「「「「「応!!」」」」」」」」」
 クーデター部隊、この中隊の指揮官・・・秘書風の女・・・駒木中尉が仲間を鼓舞する。そしてそれに答える仲間達。
死さえも覚悟し、戦っているクーデター部隊。いかな敵が立ちはだかろうと、足を止めることはない。
今ここで、2つの精鋭部隊の戦いが始まった・・・


―――ドドドドドン!!―――
 最初に攻撃を仕掛けたのはクーデター部隊。突撃の勢いをそのままに、突撃銃で攻撃する。
しかしA-01は四方に散開し攻撃をかわす。一瞬見失いそうになるほどの速さ。
「速い!?」
―――ドン!!―――
避けざまに柏木が攻撃を仕掛けた。ものすごい角度からの射撃。
「やった?」
しかし爆煙の向こうにはその攻撃をしっかりと盾で防御した不知火の姿があった。

「敵陣に誘い込まれるな!向こうの目的は時間稼ぎだ!楔壱型アローヘッド1で左翼に突入!端から一気に削り落とすぞ!!」
「「「「「「「「了解!!」」」」」」」
駒木中尉の言葉で連携を取り戻すクーデター部隊。再度攻撃を仕掛ける。

「そのままの陣形を維持!機動性を活かして攪乱するんだ!!
あのキャエーデ中尉さえも打ち破った我らならやれるぞ!!」
「「「「「「了解!!」」」」」」


「ブエックション!!」
ん〜誰かが俺の噂してる気がする・・・それより俺も戦闘に参加したいよ〜
「香月〜まだ無理か〜?」
『もうちょっと待ってなさい』
 俺は一人寂しく待機・・・

「くぅ!ちょこまかとぉ!!」
射撃攻撃を上へ左へ右へ動き回り回避するA-01の戦術機に歯噛みするクーデター兵士。
飛び上がって銃撃をかわした戦術機が重力を味方に斬りかかって来る。
「くっ!」
それを見越して回避行動に移る。しかし、

「もらった!!」
XM3の特性の一つ、キャンセル。着地寸前、別の動きを入力。たった今回避に移った敵不知火に一気に接近する速瀬機。
―――ザンッ!―――
長刀が敵不知火を一閃。爆散する敵不知火。


「く!何だあの機動は!?」
 さっきのもそうだが、体を地面と並行にして攻撃してきた機体もある。倒れこみそうになり、操作を受け付けなくなるタイミングを狙ったのに攻撃されたりもした。
本来なら戦術機は倒れ込みそうになると全操作を受け付けなくなり、受身を取ろうとする。しかしこの敵の戦術機はそれが無いのだ。
「こんな動きが不知火に・・・いや・・・戦術機に出来たのか!?」


「そこ!」
―――ドン―――
動揺し、一瞬硬直した隙を狙って射撃、敵を討ち取った高原機。
「―――いける!この新OSがあれば、帝国の精鋭とも渡り合える!!」
その時、真後ろに長刀を携えた影が・・・

「ふん!」
一気に接敵し、長刀を振る動作に入る駒木中尉。彼女達は元々動きの予想できない敵(BETA)との戦闘を想定して訓練している。今回も、姿が不知火なだけで、まったく別物と考えればまったく問題は無い。
そして長刀を振り下ろす刹那、彼女は気付いていなかった。
真横からものすごい速さで接近する黒い塊に。

「オラァ!!」
OBの勢いに乗ってMOONLIGHTを一閃する。間に合うか微妙だったが高原機は健在だ。
『キャエーデ中尉!?あなたは待機のはずじゃ・・・!?』
「命救われた人間は黙ってな。この借りは今度飯のおかず一品で許してやる。
それよりヴァルキリーヌルより全ヴァルキリー!ついさっき香月副指令が衛星へのハッキングに成功。映像は止まってる。よって俺も見られる心配は無いので交戦許可が下りた!一緒に遊ばせて貰うぜ!!」
そう言って機体を走らせた。

「こ、駒木中尉いいいいいいい!!!!!」
指揮官を失い、錯乱するクーデター部隊。それでも戦闘の動きを止めないのは日々の訓練のおかげだろう。
「何だあの黒い機体。該当データが何も無いぞ!?」
そう言ってるうちにその黒い機体にまた一機落とされた。戦術機とは思えない速さ。そして力。
「お、落ち着け皆!動きの予想できない敵との戦いこそが我らの本領ではないか!?あの黒いヤツを優先してやるぞ!」
「り、了解」
残ったメンバーで何とか落ち着きを取り戻し、黒い不明機に攻撃を仕掛ける。しかし、
「ばかな!?攻撃が通らない!?」
銃弾は見えない壁に阻まれた。長刀で切り付けに行けば、あの謎のブレードで一閃される。
「化け物め!化け物めぇ!!」



「掃滅完了か・・・」
『ちょっとキャエーデあんた今まで手を抜いてたわね!なによ今日の機動は!?』
速瀬が怒鳴りつけてくる。そういう自分たちだって模擬戦のときより明らかに動きがいいくせに。
 それよりも大事なことがある。シィカリウスの高性能FCSには見えている、ここに向かう大隊規模の敵。
「伊隅大尉、大隊規模の敵がここに向かってる。指示を」
『ん?なぜわかる?』
「俺の機体のレーダーにははっきり映ってるからな」
『・・・わかった。ヴァルキリー各機、気を抜かず楔形弐陣楔弐型(アローヘッド2)を崩すな』
『『『『『『「了解」』』』』』』
皆が陣形の再構成に入る中、ただ一機、高原機が近づいてきた。
『あの・・・キャエーデ中尉・・・』
「ん?どうした?高原少尉」
『あの・・・さっきはありが―――』
そこまで言ったところで言葉は遮られた。
3つの・・・銃声によって
「な!?」
―――ゴシャッ!ドン!ドン!―――
飛来する3発の銃弾。1発はシィカリウスのライフルを、そして後の2つは高原機を・・・高原機の機関部を打ち抜いていた。
―――ドォン!!―――
目の前で炎上し、爆発する戦術機。
『高原ーーーーーーーー!!』
誰かが叫んだ。しかしその声はもう聞こえない。別のことで頭がいっぱいだ。
目の前に居てなぜ守れなかった!?何が大虐殺者だ!世界の脅威が聞いてあきれる!!
自分を叱責し、銃弾の飛んできた方向を確認する。そこにいたのは・・・
「は・・はは・・・マジか、マジかよ笑えねぇぞこりゃよぉ!!」
『キャエーデ中尉!何だ?何があった!?』
伊隅大尉の声がする。これだけは伝えなければ・・・
「ヴァルキリーヌルより全ヴァルキリー・・・
山岳部に俺と同系統の機体・・・ネクストだ!」
言うが速いか彼はネクストの居る場所へと向かった。


(思ったよりスピードが出ない!?フレームがだめか・・・)
かなり精巧に造られているとは言え緒戦は模造品。
強度や柔軟性、あらゆる面で劣っている。
ブースターは元のものなのでかなりの出力を出している。
しかしフレームがそれに耐えられないのだ。
(スピードはせいぜい450〜1800が限界か・・・)
改めて自分の機体の再確認をしているうちに程なくして敵ネクストが見えた。最初から予想はしていたが・・・
「ストリクス・クアドロ・・・小龍のくそじじぃかあああああああああ!!!!」
『久しぶりだな大虐殺者よ。また会うとは考えもしなかった』
通信で聞こえるは確かにかつて自分で殺した男の声。
「そうだなぁ!も一回死ね!!」
目の前までたどり着き、ブレードを振るおうとするその瞬間、邪魔が入った。
―――ダダダダダダダダダ―――
2機のF-15Eが突撃銃を携え、攻撃してきた。
『私が一人で来てるとでも思ったか?』
しかしそれではっきりわかった。こいつのバックは米国だ。とすると最初の歩兵の攻撃も・・・
思案している中、ノイズが走る。甲高い声。
『ハッハー!妨害だ!悪くないぜお前らーーー!!』
2機の戦術機の片方だ。しかしこの声に俺は覚えがある。
「まさか・・・ヴァオーか!?」
『ヴァオー!?誰だそりゃ?俺の名はアルドラ=シュターゼンだ!覚えときな!!』
「そうか、では死ね」
『!?』
飛び掛ってきた2機の戦術機を両手のブレードで真っ二つにする。しっかり管制部を切断したので2人の衛士も真っ二つ。その後戦術機の爆発と共に四散した。
ブレードを前に掲げ、問う。
「今ので米軍が裏で暗躍してるのはわかった。最初の歩兵の攻撃もそっちの手のかかった者か?目的は何だ?」
ここでバカ正直に王小龍が答える必要は無いのだが彼は答えた。
『その通りだ。我々の目的は日本での米国の立場の向上。そして可能であれば将軍の暗殺だ。
こちらはオルタネイティブ5推進派なのでな、そちらのオルタネイティブ4は邪魔なのだよ』
オルタネイティブ・・・白銀の話で聞いた。4については詳しくは知らないが5・・・
10万人を地球から逃がし、残された人間は滅びを待つ。人類の敗北の証。クレイドルに似たもの。
「知りたいことはわかった。じゃぁ死んでくれ!」
一気に接近し、ブレードを振るう。しかしそのタイミングでQBで後退され、かわされてしまう。
『どうした?先ほどのクーデター軍中隊との戦闘を見ている時も思ったが動きが悪いぞ?』
回避と同時に銃弾が撃ち込まれる。最大射程1500の長距離砲が300の距離で繰り出される。しかし、
「あいにくとPAは絶好調なんでなぁ!死にさらせ!!」
PAで弾丸を受け止め、右手のブレードで斬りに行く。QB直後のクイックリロード(以下QR)中ならばQBは使えない。
しかしその刹那、一筋の赤いレーザーが間に割ってはいる。そしてその直後、間に立つ白い機体。
ストリクス・クアドロと同じBFF社製のネクスト・・・アンビエントだ。
『下がってください、王大人』
「リリウム・・・王小龍の人形がぁ!!」
構わずブレードを振るう。しかし手ごたえは無い。
『リリウムは人形ではありません』
ブレードを上に跳んでかわしたアンビエントがミサイルを撃ち込んでくる。それをQBで横にかわす。見るとストリクス・クアドロは既にOBで自分にとって有利な距離まで移動していた。重四脚の狙撃戦特化のストリクス・クアドロ。中量二脚の中距離戦に特化したアンビエント。ブレードとミサイルしかない自分は離れられれば勝機は無い。
すぐ近くに居るアンビエントを再度狙う。QBで接近しブレードを振るう。しかし難なく避けられてしまう。
(くそがぁ!こんなまがい物に付け替えてきたのが失敗だったか)
相手が戦術機だけなら今のままで十分だっただろう。しかし相手はネクスト。それも2機。あまりに不利な状況である。
 まがい物のパーツが過負荷に耐えかね、火花を発する。このままでは持たない・・・
―――たく、なさけねぇな坊主!―――
(!?)
何かが聞こえたような気がする。頭に直接、何かが語りかけてきたような・・・
『もらった!』
「な!?」
一瞬の隙。別のことを考えていたせいで動きが止まっていた。その隙を逃さず、アンビエントが右手のレーザーライフルを撃つ。損傷自体はほとんど無いがPAが大きく削られる。
『今です、王大人』
―――ドン―――
爆煙。PAが薄れたタイミングを狙った完璧な狙撃。
しかし、
―――ビューーーーーン―――
煙の中からOBで一気にストリクス・クアドロに接近せんと駆けるシィカリウスが出てきた。
さっきの爆煙は、直撃する直前、シィカリウスの背中のミサイルを発射し、それに着弾させたことによる爆発だったのだ。
『逃げてください、王大人』
落ち着いているようだがいつもよりあせっている様子のリリウム。
完全に勝利を確信した。距離残り800。ストリクス・クアドロの後ろには山。逃げ場は無い。このままブレードを振るって終わりだ。
しかしその直後、勝利の確信は崩れ、絶望する。
ストリクス・クアドロの右手の長距離ライフルが自分ではないものを捕らえていることに。
(あの銃口の先は・・・まさか!)
『悪いが一人でも多く削らせてもらうぞ?』
銃口の先でははA-01が戦っている。奴のことだ。はずすことは無いだろう。
脳裏に目の前で爆発した高原の戦術機が映る。
「これ以上死なせるかよおおおおおお!!!!」
QBを用い、一瞬でA-01とストリクス・クアドロの間に入る。刹那、銃声。
先ほど自ら爆発させたミサイルの爆風でも削られていたPAはこれで完全に消滅した。
―――コッ―――
嫌な音。嫌な感触。
見ると目の前にはOBで接近してきたストリクス・クアドロ。そして胸部にピッタリと突きつけられた長距離砲の銃口。
『この距離ならばPAも関係ないな?』
「おいおいゼロ距離かよ。それって狙撃って言うか?」
―――ドン!―――
銃声。無慈悲な銃弾はシィカリウスの胸部を・・・管制部を貫いた。



「キャエーデ機、胸部被弾!!」
「何ですって!?キャエーデは無事なの!?」
オペレーターの言葉にあわててキャエーデのバイタルモニターを確認する香月。
しかしそのバイタルモニターは・・・
既にキャエーデの反応は無かった・・・
「ちょっとキャエーデ!返事しなさい!!キャエーデ!!」
香月の悲痛な声が司令部に木霊した・・・


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