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ネギま!―剣製の凱歌― 第一章-第2話 ネギ・スプリングフィールドの初日
作者:佐藤C   2012/04/30(月) 23:58公開   ID:fazF0sJTcF.



《学園生徒の皆さん、こちらは生活指導委員会です。
 今週は遅刻者ゼロ週間。始業ベルまで10分を切りました、急ぎましょう》


 ドドドドドドド……!


『遅刻遅刻ーーーー!!』


 ――ドドドドドドドドドド……!!


『急げーー!!』


 ―――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド………!!


 大地を揺らすその轟音は、麻帆良学園・朝の風物詩(?)。
 校門へ繋がる大通りが、始業10分前になると「文字通り」学生で溢れ返るのである。
 その中には路面電車で移動する者、走りながら移動購買部なるものからパンを買う者など、急いでいる割には余裕こいた顔を実に多く見ることができる。
 しかし…遅刻しかねないというこの状況にしっかり危機感を持っている(比較的)まともな生徒も、毎日この時間帯に登校していては全くの無意味なのだが。


「やばいやばい――、今日は早く出なきゃいけなかったのにっ!」
「どんなに早く出ようとしても遅刻ギリギリなんやなーウチら〜」

 そんな遅刻生徒予備軍常習者が、ここにも二名走っていた。
 しかし直後、近づいてきた赤い髪の少年の発言に、その二名――…明日菜と木乃香は動きを止める事になる。


「あのー…あなた、失恋の相が出てますよ(にこっ)」

「え…………」



「な…何だとこんガキゃーーーーーーーーーーーっ!!!」
「うわぁぁああああっ!?」

 これが、この後も幾度となく諍いを起こして衝突することになる…彼らの最初の出会いだった。




 ・
 ・
 ・



『――以上を以て、メルディアナ魔法学校本年度の卒業式を終了する』


『…ネギ、卒業後の修行課題なんて書かれてた? あたしはロンドンで占い師よ!』
『ネギは一体何かしらね』
『うん、いま浮き出てくるトコ……あ、出てきた!』



 ・
 ・
 ・


「自己紹介が遅れました。今日からこの学校で英語の教師をすることになりました、
 ネギ・スプリングフィールドです。よろしくお願いします!」

 明日菜に吊るし上げられた少年にタカミチの仲裁が入り、
 赤い髪の少年…ネギは自己紹介し―――自分の生徒・・・・・……明日菜と木乃香に行儀よく頭を下げた。


「「え……ええぇ―――――――――っ!?」」









       第2話 ネギ・スプリングフィールドの初日









 ――キャッキャッ
 ―――アハハハハハ!


 朝のHR直前、2−Aクラスは今日も賑やかだ。
 部活の朝練を終えて着替える生徒、話に花を咲かせて騒ぐ生徒、肉まんを売る生徒など…(一部ヘンなのが混ざっている気もするが)ごく一般的な朝の教室の光景である。


「………ムスッ……」

 …その中に約一名、朝から不機嫌な空気を隠そうともしない生徒がいた。

「あれー? アスナ何でジャージ着てるの?」

 ―――ギロッ!!

「ひぃっ!?」びくぅっ!
「あー、まきちゃんこっちこっち」

 木乃香の手招きに従って、涙目になったまき絵はそそくさと避難した。

「あ、アスナ機嫌悪いねー」
「何かあったの?」
「あははー……」

 ………「新任教師になる子供のクシャミで衣服が弾き飛ばされた」など、誰が信じるだろう…。




 ・
 ・
 ・



『学園長先生!! 一体どーゆーことなんですか!?』

『まあまあアスナちゃんや。……それにしても修行の為に日本で学校の先生を………そりゃまた大変な課題を貰うたのー』

『は、はい。よろしくお願いします』

『しかし先ずは教育実習ということになるかのう。今日から三月までじゃ』

『はあ』

『ちょっ…聞いてるんですか学園長先生!子供が先生なんておかしいじゃないですか!
 しかもうちの担任なんてー…高畑先生も何か言ってください!!』

『いやぁ…知っての通り僕は出張が多いからね。君達に充分構ってあげられないから、ちゃんとした担任がつくことは良いことだと思うよ?ネギ君のことはよく知ってるから信用できるしね』

『そ、そんなぁ……』

『ふぉっふぉっふぉ。ネギ君、この修行はおそらく大変じゃぞ。駄目だったら故郷へ帰らねばならん。
 二度とチャンスは無いが―――その覚悟はあるのじゃな?』

『……はいっ、やります。やらせてください!』

『…うむわかった! それでは早速今日からやってもらおうかの。
 儂の隣に居る彼女が君の指導教員になるしずな先生じゃ。わからないことがあったら彼女に聞くといい』

『よろしくね。ネギ君』
『は、はい』

『そうそうもう1つ忘れとった。このか、アスナちゃん。しばらくはネギ君をお前達の部屋に泊めてくれんかの。
 ネギ君の住む所はまだ決まっておらんのじゃよ』

明日菜『げ。』
ネギ『え。』
木乃香『うん、ええよー』


『そんな―――学園長先生ーーーーーーーーーー!!』

『フォーフォーフォー♪』


『……ア…アンタなんかと一緒に暮らすなんてお断りよ――――!』




 ・
 ・
 ・


「……ちょっと新任の先生と揉めてなー」
「??」

 若干の冷や汗を流しつつ、木乃香は何とか言葉を絞り出した。
 そんな彼女の苦笑にまき絵は首を傾げるだけだったが、その言葉に反応して一部の生徒がガタタンッ!と席を立って詰め寄った。

「えっ会ったの!?」
「今日ウチのクラスに来るっていう!?」
「そいつは聞き捨てならないねこのか…その話もっと詳しく!」

「来たですー!」

 小学生のように背の小さい生徒が声をあげると、騒がしかった教室が水を打ったように静かになる。
 見ると廊下側の窓に人影があり、そこでの会話が聞こえてきた。


『授業の方は大丈夫?』
『は、はい。大丈夫です』
『あら頼もしいわね。それじゃお願いね……先生』



(((新任キタ――――――――――――!!!)))


(風香、トラップは!?)
(皆でちゃんと仕掛けたよ! 超りんの監修付きでね!!)
(あの程度の原始的な罠…赤子の手を捻るより造作もないネ。クク……ッ)

(……ええんかなー)
(フンっ)

 心配する木乃香と対称的に、明日菜の方は「少しくらい痛い目を見てしまえ」という黒い思いで入口を見つめている。


 ――――ガラッ!


 多数の思惑が絡み合う中―――戸が勢いよく開け放たれた。




 ◇◇◇◇◇




 ――ガラッ!―――ボフンッ!!


(…え?)

 何と古典的な仕掛けなのか、ネギの頭に黒板消しが落下して見事にヒットする。
 ――だが…それを見た明日菜は思わず目を剥いていた。


「ケホッゴホッ、いやーやられちゃったなーアハハ」

 わざとらしい笑いが明日菜の疑心を大きくする。
 彼女の目には…黒板消しがネギの頭上で一瞬「止まった」――頭の上で浮いた様に見えていた。


(あ、危なかった……!! そっか、魔法がバレないようにってこういうパターンもあるのか……)


 それは「魔法使い」の原則。魔法と、己の正体を一般人に知られてはならない。
 魔法使いは自分を守る「魔法障壁」を常に張っている……ネギはそれによって、黒板消しを不自然な形で遮ってしまったのだ。


(よし、これでもう大丈夫!)

 魔法障壁を解除し、安心してネギ少年は教卓へ向けて歩きだす。
 ……だが、このクラスでそんなカンタンに済むワケなかった。


 ――ビシィッ!


「へぶっ!?」


 ・TRAP1! 〜ロープ〜
 ネギは足元に張られたロープに足を引っかけて前方に転倒した!


「あぼっ!!」


 ・TRAP2! 〜バケツ(水入り)〜
 ネギは天井から降って来た水入りバケツをかぶってずぶ濡れになった!

 クリティカルヒット!! バケツがネギの頭部に命中したまま頭に嵌まった!!

 TRAP1とのコンボ発動!!
 バケツで前が見えなくなり、ロープで転倒した勢いのまま転がり始めた!!


「あああああああああああああ!?」


 ・TRAP3! 〜オモチャの矢(鏃が吸盤になってるアレ)〜
 頭や臀部に無様に矢が貼り付いた!!なんて辱めなのだろう!!


 ―――がっしゃーん!


「ぎゃふんっ!!」


 ………教卓に激突してようやく、ネギ少年は停止した。


しずな「………あらあら」

2−A「あはははははははははははは!!」


 ネギのあまりの姿にクラス中が笑いに包まれた。…この生徒達、何という鬼畜……!!


「はははは……………は? えっ?」

「こっ、子供ーーー!?」

「ごめんね君、てっきり新任の先生だと思って……!」


 事態に気づいた生徒達は、慌ててネギを介抱し始めた。
 だが君達。そもそも新任の先生に罠を仕掛ける事自体間違ってるだろう…。


「いいえ、その子があなた達の新しい先生よ。さ、ネギ君」
「は、はい」

 しずなに促され、ネギが教卓の前に立つ。
 そこからは…自分よりも年上の女子中学生が、じっとネギじぶんを見る姿が見てとれた。

(うわー…こ、これが僕の生徒さん達か……)


「…きょ、今日からこの学校でまほ……英語を教えることになりました、
 ネギ・スプリングフィールドです。三学期の間だけですけど、よろしくお願いします」


『………………………。』


 彼女達はネギの言葉に反応もせず、未だにじっと彼の事を見つめている。



(あ、あれ……? 僕…なんか失敗しちゃった……!?)



『―――か…かわいいい―――――――――――!!!』


(っええええええええええええええ!?)


 直後ネギが彼女達にもみくちゃにされ、質問責めに遭い、授業前にすっかり辟易し、その授業も途中で終わってしまうのは……また別の話である。




 ◇◇◇◇◇



「……ふぅ、やっと一段落だ」


 放課後。一通りの仕事を終えたネギは、女子校エリアの広場に腰を下ろした。
 彼の脳裏に、初授業での出来事が甦る―――。



 〜回想(ネギ主観)〜


 初めての授業………ま、まさか黒板に手が届かないなんて……。
 いいんちょさんが台座を持ってきてくれて助かったなー。いいんちょさんはいい人だよー。

 それにしてもあのカグラザカアスナって人、朝から何なんだろう!
 イジワルしたり、すぐ怒ったり……僕先生なのに。
 いいんちょさんとケンカまで始めちゃうし、結局そのまま授業が終わっちゃうし。
 初日から失敗しちゃったなぁ………。はあ。



「…………はあ〜。……ん?」

 思わず重い溜め息をついたネギの目に、ある女生徒の姿が映った。

「あれは確かウチのクラスの……『宮崎のどか』さん?」

 彼女はたった一人で大量の本を両手に積み上げて、よたよたと危なっかしく階段を下りていた。


「あんなにたくさん本を持って危ないな―――」


 ―――ズルッ


『あっ』
「あっ」


 のどかが足を滑らせて―――階段から落下した。


『きゃああああああああ!!!』

「ああっやっぱし! ―――――『杖よヴィルガ』」


 荷物から杖を引き抜いて言葉を紡ぐ。
 「始動キー」は要らない、初歩的な「魔法」ならば鍵がなくとも魔力のみちは容易に開く。
 杖を覆う布がネギの意思に従って、弾けるように解けていく―――!


「『風よウェンテ』!」


 ―――ぶわぁっ!!


 魔法で風を操作してのどかの体を吹き上げる。
 だがそれで彼女を支えられるのは一瞬だけ、風が止んで落下するのどかを受け止めるべくネギはすぐさま走りだす。


「――っあぶぶぶぶぶッーーー!!」

 ズシャァアアッ!と音をたてて繰り出すヘッドスライディング。
 ネギは盛大に地面とキスする羽目になったが…突き出した腕は何とか間に合い、のどかの体が地面と激突するのを阻止した。

「あたたた………」
「……う、ん………?」

 意識を失っているようではあるが、どうやらのどかに怪我はないようだった。

「大丈夫ですか?宮崎さ「………あ、あんた………?」 っ!?」


 ……その場にもう一人。ネギの目の前に、魔法すべてを目撃した人物が立っていた。


「…………。」
「……………」


「………………。」
「…………えっと…あの」


 ――――――神楽坂、明日菜。


「ん………せ……先生………? ッ!? せ、せんせ――――!?」


 のどかが目を覚ました時には、ネギを拉致して走り去る明日菜の背中しか見えなかった。




 ◇◇◇◇◇



 その後。

「あ、ああ怪しいとは思ってたけど! やっぱりあんた超能力者だったのね―――!!」

「ち、違います! 僕は魔法使いで………!」

「誤魔化したってダメよ!
 ちゃんとこの目で見た……ってどっちも同じよーなものじゃない!?」

「へうっ!?」


 ネギ・スプリングフィールド、赴任一日目で魔法がバレました(笑)




 ◇◇◇◇◇



 結局……正体については秘密にしてもらえることになったものの、何故かネギは『タカミチが明日菜のことをどう思っているか』読心術で調べることになってしまった。
 その実態は脅迫とか取り引きとか、そんな類の遣り取りである。
 ネギはがっくりと肩を落としながら明日菜の後ろを歩いていた。

(…な、何でこんなことに……)

「そうと決まれば早速実行よ!荷物取ってくるからちょっとそこで待っ…」


 ――ガラッ


『ようこそ!!ネギ先生―――ッ!!』


 教室の扉を開けると鳴り響く、クラッカーの弾ける音と拍手の音。
 二人は2−A一同によって祝いの声に出迎えられた。

「あ……そーだあんたの歓迎会するんだった」
「え―――っ!!」

「やあネギ君。初日の授業お疲れさまだったね」
「あ、タカミチとしずな先生」

(た、高畑先生!?チャンスよチャンス!!わかってるわね!?)
(は、はい!)

 こうしてネギは嫌々ながら、読心術でタカミチの心を読む事を試み始めた。




 ◇◇◇◇◇



 …その頃、放課後の喫茶店アルトリア。
 カウンター席に座るとある常連客が、疲れた様に溜め息を吐いていた。


「はあ……マジありえねえ」

(ウチのクラス…いや学校は変わってると前から思ってたが――)


「何だよ『子供先生』って………(げっそり)」

「ん? 今日はどうした千雨ちゃん」

 大きな丸眼鏡をかけた女子中学生・長谷川千雨に話しかけたのは、この小さな喫茶店の店長である衛宮士郎。
 この非常識な街にあって千雨が唯一信頼する常識人(と、少なくとも彼女は思っている)であり、彼が仕切るこの店は、荒んだ彼女の心を癒すオアシスなのである。
 要するに千雨はこの店の常連さんであり……新たにネギ少年が担任する2−Aの生徒でもあった。


「………店長。子供が教師に……私のクラスの担任になったって言ったら信じますか?」

「………………いや、おかしくないかそれ?」

 突拍子のない妙な質問に、士郎はコップを磨きながら苦笑した。

(そうだ、普通そんなことありえない!ああ店長、やっぱりあんたマトモだよ……!)

 この街はどんなおかしなことも「麻帆良だから」と済ませてしまう気質がある。
 それに違和感を感じ、日々孤独にストレスと戦う戦士。それが長谷川千雨である!


「ま、これでも食って元気出してくれ。良ければだけど」

 そう言って士郎は千雨に苺のムースを差し出した。士郎個人のサービスなので料金は無料である。
 時たま貰えるこのようなサービスも、この店の密かな人気の理由の一つだった。

「あ――…すみません。さっきまでその先生の歓迎会に(嫌々)出てたんでちょっと……。
 まあ途中で抜けてきたんですけど」
「ありゃ、お腹いっぱいか。うーん、お持ち帰りにしようか?」
「え?ここテイクアウトはやってないんじゃ…」
「うるさいヤツらがいるからさ、そいつらの要望に応えることにしたんだよ」

 具体的には、プリン好きの忍者とか、あんみつ好きの巫女スナイパーとか。

「まだ宣伝し始めてないから誰も知らない。千雨ちゃんがテイクアウトのお客様第1号だな」

 まだ持ち帰るとは言っていない。
 しかし士郎の料理が美味である事は常連故によく知っているので、千雨はありがたく頂戴することにした。


「…で、どんな子なんだ? その子供先生ってのは」

 士郎は興味本位の軽い気持ちで聞いたのだが…千雨はそれを訊かれた途端、思い出すのも不快といった様子で眉間に険しいシワを寄せた。

「ええ…赤い髪の外国人で、歳はホントに子供です。10歳くらいじゃないですか?
 オックスフォードを出たとか聞きましたけど……どこかの権力者の息子じゃないですかね」

「……………名前は?」

「……? ええと、ネギ・スプリングフィールドって名前ですけど」




 ・
 ・
 ・



 ムースひとつでは淋しいので、紙製のケーキボックスには他のお菓子も詰められる。
 それを見て千雨が(密かに)ご機嫌で店を出たのを見届けた後、士郎は遠くを見る目で呟いた。


「ってことは飛び級……二年か? 頑張ってるな、アイツ」


 士郎は嬉しそうにして、静かに口の端を上げた。




 ◇◇◇◇◇



(―――また失敗した!)


 嫌な出来事から逃げるように走る明日菜を、ネギは必死に追いかけていた。


(タカミチに読心術を使ったけど結果は良くなくて、アスナさんは教室を飛び出してしまった。
 タカミチがあんなこと考えてたのは僕のせいだ、なんとかしなくちゃ……!!)


「ま、待ってアスナさん!」
「ついて来ないでってば!しつこいわね、あんたには関係ないでしょ!?」

「で、でも僕のせいだし……それに、僕は今日からあなたの先生ですから……。
 ――ぼ、僕ホレ薬作れますから! 四ヶ月もあれば―――」

「なに?その惚れ薬を使えば上手くいくっていうの!?」

「……っ!!」



(……その通りだ。上手くいくわけない。
 人の心を操って好きにさせるなんて………間違ってる)


「……ううん、ゴメンなさい………。こんな時は魔法に頼ってもダメです………」


「………なによ、やっぱりダメなんじゃ――」


「おじいちゃんが言ってました。
 『わしらの魔法は万能じゃない。わずかな勇気が本当の魔法だ』って」


「――――…………。」


 その言葉が、その笑顔が余りにも眩しくて………思わず明日菜は見惚れていた。


(……ふん。)


「……わかったよ。私も………勇気出す」


 そう言って…出会って初めて、明日菜はネギに笑顔を見せた。




 ◇◇◇◇◇



「………はあ。」


 歓迎会が終わった頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
 冬の寒さが息を白く染める中、ネギは明日菜達と一緒に寮に向かって歩いている。


(結果的になんとかなったけど……授業は失敗しちゃうし、魔法はバレちゃうし。
 一日目からこんな感じで僕、やっていけるのかな…?)


「…なに落ち込んでんのよ?」

「あ、いえ、その……。
 ……一日目から失敗ばかりで、こんなのでやっていけるのかなって」

(……………。)


「さっきの言葉セリフ、ちょっとだけ……ぐっときたわ」
「え?」


「だから………このまま頑張れば、あんたもいつかはいい先生になれるかもね」

 明日菜は照れくさそうに髪を弄りながら、そう言ってネギを励ました。


「え……。あ…は、はい!ありがとうございます!!」

「アスナー、ネギ君ー、行くえー!」

 遅れる二人を木乃香が急かし、二人はそれに応えて駆ける。

「ほら行くわよ!」
「は、はい!」


(……お姉ちゃん。少し不安だけど……僕ここで頑張ってみます)

 「立派な魔法使い」になる誓いを新たに、ネギは冬の星空を見上げた。









<おまけ>

風香「皆でちゃんと仕掛けたよ! 超りんの監修付きでね!!」
超「あの程度の原始的な罠、赤子の手を捻るより造作もないヨ」

超(ネギ坊主は学園初日に酷い目に遭ったと聞いている……ククク…。
  ここは歴史通りに事を進めるために止むを得ぬナ! ふはははははは!!)

葉加瀬「……いいんですかねー…?」
古菲 「ム?超の奴どーしたアルか」
茶々丸「ええ、楽しんでいるように見えます」
五月 ―………?―

 仕掛けられしは天才の精緻な罠(笑)。



〜補足・解説〜
 小説内で描写されない、特に解説がない部分はほぼ原作通りです。

>「あれー? アスナ何でジャージ着てるの?」
 省きましたが、原作通りネギのくしゃみが原因です。

>喫茶店アルトリアと店長士郎と常連千雨
 初めて千雨がアルトリアに来店した時、当時の彼女が発する鬱屈したどす黒いオーラ(ストレスが原因)を見て、思わず士郎が干将・莫耶を投影しかけたという秘話があったりします。
 そんな千雨を元気づけようと士郎が親身になって話しかけていくうちに、めでたく彼女に「いいひと」認定されて常連客が一名増える結果に。
 良かったね士郎!
 しかし他のクラスメイトと顔を合わせたくない千雨は、(常連仲間である楓や真名、刹那を除く)賑やかな2−A(3−A)メンバーが来店している時はアルトリアに入店したがりません。



 次回、『ネギま!―剣製の凱歌―』
 「第3話 新たな日常」

 それでは次回!

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■作者からのメッセージ
 今回はほとんど原作通りだったので、読むのが辛い方もいたのではないかと思います。読了ありがとうございました。

 誤字脱字、タグの文字化け、設定やストーリーの矛盾点等お気づきの点がありましたら、感想にてお知らせください。

2012/11/8…文章を改訂しました。
2012/12/12…微細な変更を行いました。
テキストサイズ:15k

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