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ネギま!―剣製の凱歌― 第二章-第13話 修学旅行一日目・中
作者:佐藤C   2012/06/19(火) 00:36公開   ID:CmMSlGZQwL.



 嘗て、正義の味方を目指した男がいた。
 理不尽に、無意味に、無価値に命が奪われていくのが許せなくて。
 だけど彼には全てを救う力なんてなくて。理想を恨んで、絶望したけど諦めきれなくて。

 彼は正義の執行者になった。

 誰よりも人間の幸福を愛した男は、誰よりも公平に人々に悲劇をばら撒いた。
 いずれ零れ落ちる命を速やかに切り捨てて、生き残るであろう命を守るために。

 彼は間違いなく正義の味方だった。そうならざるを得なかった。

 ある人が言った。正義の女神は娼婦であると。
 それが意味するのは、「勝った者が正義である」という世界の真実。
 だから。正義の神さえ公平さを持たなかったから。


 ―――無謬の天秤は、彼が担い手となった――――。









 第二章-第13話 修学旅行一日目・中









『ひゃあああーーーーーーーーーっ!!!』

 ネギ達が修学旅行で訪れた京都。
 宿泊先であるホテル嵐山の浴場に突如響き渡る、甲高い悲鳴!

「今の悲鳴は…このかさん!?」
「まさか奴等、お嬢様に手を出す気か…!?」

「「………お嬢様?」」

 ネギとカモが刹那の台詞に呆気に取られていると、彼女は慌てて悲鳴がした方へ駆けだした。

「お嬢様っ!!」

「兄貴、脱衣所の方だ!追うぜ!!」
「う、うん!!」

 刹那を追って、ネギとカモも脱衣所へ走る。


 ――ガラッ!!

「お嬢様っ!!」

 刹那は脱衣所の扉に手をかけ、勢いよく開け放った。

「………っ!?」
「これは…!」

 ……そこに広がる凄惨な光景に、ネギは思わず息を呑む。刹那は言葉を失った。
 そう…其処には……!!


「ちょ、ちょっと――っ!!何なのよこのおサルーーー!?」

《ウキッ》(・ω・)ゝ


 ……サル。

 ………おサル。

 …女性用脱衣所の中では。
 ヌイグルミの様なファンシーな風貌をした小ザル達が、明日菜に集団で襲いかかって彼女の服をひん剥いていた。

 …カエル、ツバメ、そしてサル。まさにアニマルパニックである。
 ああ、作者の言葉のセンスが古いとか言わないで。

「ネ、ネギ!!このかがおサルに…ッ!!」
「ええっ!?」

《ウキーーーーッ!!》
「ひゃぁあ〜〜〜っ!?」

 明日菜が言った途端、ネギと刹那の横をサルの群れが通過する。そして再び響く木乃香の悲鳴。
 それは彼女が今まさに、猿達に抱えられて連れ出されようとしている所だった。
 彼らは浴場に飛び出して、そのまま木乃香を何処かへ連れ去ろうとする。

「ああっ!?このかさ…」

「――この…子猿共…」

「へ?」

 ―――チャキ…

 ネギの隣から、ドスの利いた低い声が漏れ聞こえた。


“―――――――神鳴流奥義”


 一瞬。僅か一足で間合いを詰めた刹那は両手で愛刀「夕凪」を構え――――


「お嬢様に――――何をするッ!!!」


 ―――、一閃。

《ウキッ!?》

 ――――二閃。

《ウキィー!!》

 三閃、四閃、五閃、六閃、七閃八閃九閃十閃十一閃十二閃十三十四十五十六十七十八十九二十二十一二十二閃閃閃閃閃閃閃閃閃閃閃閃閃閃閃閃――――――――――――!!!!!!



“――――百烈桜華斬――――――!!!”


《ウキーーーーーーーーーーッ!!?》


 刹那は狙いを寸分たりとも違える事無く、激しく動き回る子猿達全てに一刀ずつ与えて薙ぎ払う。
 神鳴流に伝わる、対多数・広範囲攻撃用の剣技―――"百烈桜華斬"。
 子猿を模した式神は、その全てが例外なく紙型に還された。


「………あ……?」

 花弁と化した刹那の"気"が、斬られて紙片となった紙型と共に宙を舞う。
 その幻想的な光景に、助けられた木乃香は思わず感嘆の声を漏らした。


「このか――――っ!!」
「このかさん大丈夫ですかーーー!?」

 遅れながら明日菜とネギが、風呂の傍に膝をつく二人のもとへ駆けつける。

(……チッ。術者は逃げたか)

 刹那は去っていく気配に気づきながら木乃香の肩を抱きかかえた。

「………せ、せっちゃん。
 何かよーわからんけど…助けてくれたん?……あ…ありがとう」

「っあ………! い、いや、その…………!」

 ようやく今の自分の状況に気づいたのか、刹那は顔を赤くして言い淀む。
 彼女の口を突いて出るのは、言葉にならない声だけだ。

 耐えきれず、刹那は木乃香から手を離す。

「あっ」


 ―――せつな は にげだした!


アスカモネギ(((ええーーーーーーっ!?)))

「せ、せっちゃん!」

 刹那は木乃香の制止に構わず脱兎の如く脱衣所へ走り去った。



 …浴場に残されたのは。
 今の出来事は何だったのか分からない明日菜と木乃香、そして刹那の事情が分からず混乱するネギ(+カモ)の三人のみ。

「あ・あの、このかさん!あの刹那さんって人は何なんですか!?
 このかさんのことお嬢様って呼んでましたけど……」

「…………。このか……。」

 その事・・・について、明日菜もある程度は知っている。
 しかしここで下手な事も言えず、彼女はただ木乃香に視線を向けるだけだった。


「…………そういえば、アスナにもきちんとは話しとらんかったね……」

 そう言って俯く木乃香の顔には、隠しようのない陰があった。




 ◇◇◇◇◇



 同じ頃、R毘古社。
 士郎は詠春の言葉に困惑していた。


『あなたの実の父親、衛宮切嗣について―――』


「………どういうことだ…?」

 その声色は困惑に染まり、普段の彼からは考えられないほど弱いものだった。


 ――近衛家と衛宮家は血縁関係にある。
 ――詠春と切嗣は友人だった。

 これらの事から詠春が、切嗣…士郎の父親について知っていても全く不自然ではない。
 しかし……ここまで畏まって話すべき何かとは……、一体何があるというのだろう。


(仮にそうだとして、何で父さんは今日まで…それを教えてくれなかった……?)

「………君が不安定だったからです」

 心を読んだかのように詠春は、士郎の疑問に句を継いだ。

「近衛家に来たばかりの頃の君は……とてもそれを話せるような状態ではありませんでした。それに何より幼かった…この話をしても理解できるか不安があった。
 …ですから士郎。君が成長し、話しても大丈夫だと思えるその日まで。私は………私達は・・・それをずっと胸に秘めてきたのです」

「………爺ちゃんも、知ってたんだな」

 士郎は俯きがちに頭を傾けて、静かに言葉を吐き出した。


(そういう事かよ、京都に行かせた理由は……)

 士郎は知らぬうちに拳を握り、その手は微かに震えていた。


「まだ、早かったですか?」

 そう言って士郎を気遣う、眼鏡の奥から覗く詠春の瞳は、じっと息子を見定めている。
 だから士郎はそれに応えた。


「いや、いい。…話してくれ」

「……分かりました、いいでしょう。これから私が知る限り全ての事をお話します。
 切嗣のこと、そして君のご家族のことを………」

 部屋を照らす灯篭の火は、今も静かに燃えている―――。




 ◇◇◇◇◇



 ホテル嵐山、浴場前の休憩所。
 そこで木乃香はネギと明日菜に、刹那との関係を静かに語り始めた。


「……ウチ、麻帆良に来てアスナと暮らすまでは京都に住んでたんや」


 小さい頃、えらく広くて静かなお屋敷で育ったんやけど……
 山奥やから友達なんて一人もいーひんかったんや。

 そんなある日、父様の知り合いの人と一緒にせっちゃんが来たんや。

 ウチらはすぐ友達になってな、せっちゃん・このちゃんて呼び合うよーになったんや。

 せっちゃんがウチの…初めての友達やってん。

 そのうち士郎もうちに来て、三人で遊んだりして仲良くしとった。

 家に来たばっかの頃の士郎はボーっとしてて、危なっかしくてな。
 ウチもちょっと抜けてるトコあるし…二人して似たようなもんやった。

 せっちゃんは剣道やってて、そんなウチや士郎をよく助けてくれたんや。
 恐い犬を追い払ったり……危ない時は守ってくれた。


(へ――…)

(……やっぱり。刹那さんはこのかさんを守ってたんだ)


 何やらウチが川で溺れそうになった時も一生懸命助けようとしてくれて…
 結局、二人とも士郎に助けられたんやけど……。


『ごめん、このちゃん。ウチ……もっと強おなる』

『え? そんなんええよ、一緒に遊んでくれるだけで』


 …その後せっちゃんは剣道の稽古が忙しくなって、あんまり会わんようになって……。

 それで中一の時せっちゃんも麻帆良に来て、ようやっと再会できたんやけど………。



「……何かウチ…悪いコトしたんかなぁ………?
 せっちゃん、昔みたく話してくれへんよーになって………。」

 そう言って力なく笑いながら、木乃香は目尻に涙を浮かべた。





 ◇◇◇◇◇



 灯篭の火が揺らめいた。
 詠春は妙な緊張に支配された和室の中で、静かに沈黙を破って語り始めた。

「衛宮という家は歴史こそ浅いものの、近衛家の血筋です。
 その縁で彼の父・衛宮矩賢のりかたは京都神鳴流に属しており、切嗣も神鳴流の門下生として過ごしていました。私と彼が友人になったのもその頃です。
 …しかしある出来事をきっかけに、彼は神鳴流を抜けてしまった」

「彼の父・矩賢は実力も高く、魔を滅するという神鳴流の崇高な精神で剣を振るっていました。
 ……ここからは私も伝え聞いた話になりますが………彼はいつしか、強さのみを求めるようになっていったといいます。
 彼は宗家ゆかりの者にしか伝えられない秘剣を望み、神鳴流や呪術協会の上層、重鎮、実力者に接触しましたが、その望みは叶わなかったそうです」

「そしてその出来事の後―――彼は、亡くなりました」

「…この事については、極僅かな記述しか記録に残っていません。
 なぜ、どのようにして矩賢氏が亡くなったのか……誰も詳細を知らないのです」

「そして切嗣は……その後神鳴流を脱退し、西から姿を消しました」



 ・
 ・
 ・
 ・


 …同時刻。
 夜も更けて明かりの消えた麻帆良学園校舎に、一室だけ明かりの点いた部屋が見える。
 それは女子中等部の―――学園長室。

「それで、実のところはどうなんだ?」

 その部屋のソファに座る二人のうち片方が、目前の老人に話の続きを促した。

「わしも詳しいことは知らぬ。じゃが、幹部から秘剣わざを無理矢理奪おうとしたからだとも、強さのみに執着し始めた矩賢を恐れた誰かが手を下したとも言われておる」

「…ハ。くだらん。そんな些細な事で他者の命を奪うか。
 ま、弱い人間というのは己の感情もロクに制御できんからな」

「……そうじゃのう。強さに溺れた矩賢も、そんな彼を恐れた者たちも。
 人間という生き物は容易く間違える」

 本心からの侮蔑を籠めて、エヴァンジェリンは口の端を嫌らしく吊り上げる。
 近右衛門は反論できず…反論する気もなく、その顔に刻まれた皺を深くして首肯した。

「まあ、貴様は人間でもマトモな部類だが…安心しろ。
 もし貴様が間違えた時は、この私が直々に殺してやる。貴様には借りがあるからな」

 嫌みたらしく金の少女が口にしたその言葉は、冗談ではあるが酷い台詞である。老人に「ボケたら殺す」と言っているようなものだ。
 しかし言われた当人といえば、意外そうに少しだけ目を瞠り…少し嬉しそうに返答した。

「ほ、おぬしがそんなコトを言うとはの。じゃがそれには及ばんわい、優秀な部下がおる。
 それに曾孫の顔を見るまでは耄碌などしておられんよ!ふぉふぉふぉ♪」

 近右衛門は、その長い顎鬚を撫でながら目を細める。
 彼とは孫ほどに歳の離れた外見を持つ先達は…その姿を少しだけ羨ましそうに見つめた。

「そうか。ではこれで詰みだ」
「ふおっ!?」

 応接用ソファから身を乗り出して、近右衛門は将棋盤を凝視する。
 するとエヴァの傍に控えていた茶々丸が盤上を一瞥し、抑揚のない声で事実を告げた。

「………王手です学園長。王を逃がしても、その先最大三手…マスターが相手という事を考慮すれば二手までが限度だと推測されます。
 ではマスター、お茶の時間に致しましょう」

「ああ、勝利の美酒とはいかんが、代わりに美味いのを頼むぞ茶々丸」

「…む、む…むむむ……!」

 学園長はこの数十秒後、往生際悪く抵抗するも…茶々丸の予想通り黒星を喫した。




 ◇◇◇◇◇



 ホテル嵐山、夜も遅く人影のなくなった玄関ロビー。
 そこではネギとカモが見守る先で、明日菜が刹那にずいっと詰め寄っていた。

「で?どーなのよ桜咲さん。このかのコトどー思ってるの!?」

「そ…そんな、私のような者がお嬢様の友人など……!
 わ、私はお嬢様をお守りするだけでいいんです!お嬢様を守れれば………満足なんです」

 返って来た的外れな返答に、思わず明日菜は声を荒げようとした。
 守るとかそんな事はどうでもいい、木乃香が望んでいるのはそんな事ではないと。
 ……しかし。

 「木乃香を守る」と口にした刹那の顔を見て……自分が口出ししてはいけない様な気がして、明日菜は言葉を呑みこんだ。


「………いろいろ言いたいコトはあるけど。
 あんたがこのかのこと嫌ってないっていうのはわかったわ」


(……だったら、今はそれで充分!)


「よし、友達の友達は友達だからね!私も協力するわよ!!」

「わっ。か、神楽坂さん…!」

 明日菜が刹那の肩をバンッと叩く。いきなりの友達宣言に刹那は、少し照れて頬を染めた。
 場の雰囲気が和らいだのを見て、そこでネギは彼女達の手を取った。

「じゃあ決まりですね!3−A防衛隊ガーディアンエンジェルス結成です!!
 関西呪術協会の嫌がらせからクラスの皆を守りましょう!!」

「なにその名前……」

「そういや刹那の姉さんよ、さっき俺っち達が来た時は何やってたんだ?」

 ロビーの端にどけられた、先程まで刹那が使っていた脚立を見ながらカモが訊く。

「ああ、あれは式神返し…敵の式神の侵入を防ぐ結界を張っていたんです」

 言われて見ると、ホテルの自動ドアの上に一枚の白い紙が張られていた。

「敵の嫌がらせが大分エスカレートしてきたので、これくらいは必要かと」


 未熟な自分にはない刹那の手際の良さに、思わずネギは舌を巻いた。


(う〜ん…スゴイなぁ桜咲さんは。この人とアスナさんがいれば百人力だ。
 これで後は、親書を西の長さんに渡せれば……!)


「そうだ、敵は夜中にもまた襲ってくるかもしれませんね!
 それじゃあ僕、旅館の外に見回りに行ってきます!!」

 言うや否や、ネギは二人の返事も聞かずにドアの方へ駆けだした。

「あ、ネギ――?…いきなり張り切っちゃってどうしたのかしら」

「いえ構いません、私達は班部屋の守りにつきましょう。ホテルの至る所に式神返しを貼りましたが油断はできません。
 …無理はしないでくださいねアスナさん。アスナさんは一般人ですから…」

「ありがと、でも私は大丈夫よ!」

 ネギはホテル周囲の見回りを、明日菜と刹那はクラスメートと木乃香の護衛を開始する。
 こうしてホテル嵐山に、3−A防衛隊(笑)による夜を徹した警戒網が展開された。




 ◇◇◇◇◇



「彼はその後麻帆良の門を叩き、お義父さんに弟子入りして西洋魔術…魔法を学んだそうです。
 切嗣は無辜の人々を救う「立派な魔法使いマギステル・マギ」という思想に魅かれ、呪術協会では悪い意味で有名な西洋魔術師のお義父さんに白羽の矢を立てたと聞きました」

「お義父さんの下で修行を経て魔法使いとなった彼は、紛争地域の人々を救う為に魔法使いのNGO活動に参加し始めたといいます」

「……しかし、彼の目指した正義は実現できなかった」

「父親の死の所為か………彼は『命が不当に奪われる』ことに憤りを感じていたそうです。
 彼はそんな人々総てを救おうとした。でも、できなかった」


『詠春、僕は馬鹿だった。
 「正義の味方」なんて夢物語で………そんなものになれるわけなかったんだ。
 その時、やっと気づいたんだよ』



「彼は挫折しました。けれど、そうしている間にも罪なき命が失われていく。彼は理想を諦める事など…到底できなかった。
 そして彼は……………手段を変えました」


 全ての人を救うことができなくても、紛争の拡大を防ぐ事で、いずれ戦火に掻き消されるであろう命を守ろうとした。

 魔法使いは国連NGOに参加して紛争難民を支援する。または非公式で話し合いの場を設けさせ、平和的に講和を結ばせる。
 フリーの魔法使いによる民間NGOは独自に、争いを続けるどちらかの陣営に肩入れして、戦争の決着を促進させて紛争を終わらせる。
 しかしそれはどちらも容易ではない上に、少なくない時間を必要とした。しかもフリーの魔法使いは個々人による干渉のため、資金や資材・人材が圧倒的に不足している。彼らの影響力は微々たるものに過ぎなかった。


「これでは紛争拡大は防げないと、切嗣は考えた」


 魔法使いは公式にしろ非公式にしろ、停戦を促す程度までしか人間界に干渉できない。
 /枷にしかならない掟に縛られた組織ならば、そんな仲間は不要。

 難民支援は根本的な解決に至らない。
 /足手纏いは戦場から去るがいい。

 フリーの魔法使いによる微力な干渉は、むしろ紛争を拡大悪化させる事すらあった。
 /無駄に戦火を拡げる馬鹿は、僕がこの手で排除してやる。


「……彼は戦争に参加する者、全てを敵とした」


『そう、席は限られている。幸福という椅子は、常に全体の数より少な目でしか用意されない。
 その場にいる全員を救う事などできないから、結局は誰かが犠牲になる』

『だから』


 ―――それを。被害を最小限に抑える為に、いずれこぼれる人間を速やかに、一秒でも早く切り落とした。



「自分が戦場の全てを殺す事で、戦争そのものを攻撃する。そして戦争を終わらせる。
 それが切嗣の選んだ手段正義
 戦争に携わる全ての者が、彼が憎むべき敵だった」


 不幸な事に切嗣は、自分の思想に共感する後援者を得る。
 資金と資材の調達を彼らに任せ―――彼は行動を開始した。

 他国の利益を奪い、自国を潤すため。
 虐げられる自国を守るため。
 宗教に殉じるため。
 古来より対立してきた民族を滅ぼすため。
 自分達を虐げる政府を倒すため。
 戦争で失った家族の仇を討つため。
 紛争から自分の村を守るため。
 巻き起こる紛争。勃発する内戦。戦争が呼ぶ戦争。

 正義。使命感。利益。欲望。信仰心。掟。防衛。生存。復讐。
 戦争に参加した理由の善悪を区別せず、彼はただ全てを殺し続けた。

 戦争が起きれば何処からともなく戦場に現れ、見境なく目につく人々を殺してゆく。
 戦場が生まれる度に姿を現す暴虐の徒。
 それは神話か、御伽噺か。まるで物語に登場する悪魔の様な存在だ。


 彼独自の魔法と近代兵器を併用した超火力は、衛宮切嗣という独りを軍勢に仕立て上げた。


 “戦場にいる者だけを殺す、正体不明の殺害者”。
 その噂が浸透し始めると、人々は“ソレ”を恐れて士気を下げ、熱気は冷め、狂気から覚め始めた。
 彼を危険視し始めた各陣営の上層部も、迂闊な行動を控えるようにその動きを鈍らせた。

 悲しい事に彼の行動は、一定の成果を得ていた。
 衛宮切嗣という劇薬は、間違いなく紛争規模の縮小に作用してしまった。

 正義の味方ヒーローを目指した男は…いつしか天災システムとして完成していた。




 ◇◇◇◇◇



「命を救う為に命を奪う、か。とんだ正義があったものだ。
 だがそれも真理のひとつ。人の幸福は、他者の不幸の上に成り立っている」

 切嗣の行為により戦火の拡大を免れ、本来なら紛争に巻き込まれて失われる筈だった命が生き延びる。それは切嗣によって救われた命があると言っていい。
 そして同時に……切嗣の手により多くの命が奪われた。

「切嗣に救われた者達の幸福は………切嗣に殺された者達の不幸の上に成り立っている、と?」

 分かっている事をわざわざ口にして、近右衛門は憮然とした態度で言う。

「なんだじじい、幸福量保存とかいう面白い法則があるのを知らんのか?」

「…そのようなもの、あってたまるものか。
 我々魔法使いは、不幸ソレを無くす為に人間界に関わっておる」

「――は、ご高説感謝するよ。ま・悪の魔法使いである私には馬の耳に念仏だがな。
 …茶が無くなったか。茶々丸」

「はい、マスター。……それで学園長、切嗣氏はその後どうなったのですか?」




 ◇◇◇◇◇



「連合の魔法使いが、そんな彼を見逃しておくわけがなかった。
 彼らは切嗣を捕らえる為に挑みましたが…悉くが戦死。
 立派な魔法使いマギステル・マギを目指す多くの若き魔法使いが切嗣に殺されました。
 本国が「捕獲」ではなく「殺害」を許可しても……その結果は変わらなかった」

 そして切嗣の噂は、裏の世界を通じて関西呪術協会にも伝わる。
 魔法使い達を悉く返り討ちにしていくその姿は、西洋魔術師を憎む者が少なくない西日本で次第に英雄視されていく。彼らは畏敬を籠めて彼を「魔術師殺し」と呼んだ。

 いつしかその二つ名は連合の魔法使いにも定着し……衛宮切嗣は、“魔術師殺しマーダー・メイガス”となった。



 ・
 ・
 ・



「…む、美味いのぅ茶々丸(ズズ…ッ)」

「ありがとうございます」

「…たった一人で国家クラスの軍隊と渡り合っただと?そこまで強かったのか士郎の父親は?」

 エヴァは紅茶のカップを傾ける手を止めて訊いた。

「いや、切嗣は魔法使いとしてはそこそこ優秀という程度じゃ。単純な戦闘力なら彼奴より強い魔法使いも大勢いたじゃろうな。
 だがアレは「戦争の天才」じゃった。戦術と戦略で不利を容易く凌駕した。罠や暗殺など日常茶飯事、兵士の―――」

「―――アハハハハハハハハハハッ!!何だそれは!!
 面白い、面白いぞ衛宮切嗣!!罠や暗殺に長けた魔法使いか…それはいい!
 "偉大な魔法使い"とやらを目指す輩とは抜群の相性だったろうよ!!」

 ……楽しそうに、邪悪に笑いだした少女を前に、近右衛門は溜め息を吐きながら話を続けた。

「しかし、“魔術師殺し”という名はあながち間違いではなかったらしいのう。
 切嗣と戦った魔法使いは呪文が使えなくなる、という噂が実しやかに囁かれておった」

「ほう?戦闘中の強制的な魔法禁止か。アーティファクトを含めてもかなり高位の術ではないか。
 確かに…魔法剣士はともかく魔法使いタイプに対してこれ以上ない切り札だったろうな。だが、たった一人の勢力がそれだけで生き残れる筈がない。
 他にどんな隠し玉があったのか……ククク、流石はあのバカの父親だな!!」

(ああ、マスターがあんなに楽しそうに………)




 ◇◇◇◇◇



「そして切嗣とアイリスフィールさんは結ばれたのです」

「………………………はい?」


 ………何でしょう詠春お父様。
 いま軽くスカイツリーを飛び越えるくらい話が飛躍した気がするのでせう。


「いえですから、切嗣と貴方の母君が―――」
「いやいやいや待て、いま随分はしょったろ!?」

 士郎は慌てて身を乗り出して詠春を制止する。
 すると詠春は居心地悪そうに口元を歪めて苦笑した。

「いや……馴れ初めは恥ずかしいからできれば誰にも話すなと、切嗣に釘を刺されていたものですから。知っているのは私とお義父さんだけでしょう。
 以前麻帆良で集まった時、彼を酒で酔わせて無理やり聞き出したんですよ、ははは」

「………ここまで来たら全部話してくれよ」

 正直すごく気になる。
 もはや記憶はだいぶ薄れているが、士郎は自らの母親がとてつもない美人だった事は覚えている。
 それがあの父と一体どうやってくっついたのか……。

「そうですか……。わかりました、言いましょう。一目惚れだったそうですよ」

 士郎は佇まいを整えて座布団に座る。
 さあ、一体どのようにしてあの二人は出会――――

「ってはいぃぃぃぃぃぃ!?」

「国連NGOに参加していた魔法使いのアイリスフィールさんは、戦場で偶然切嗣と出会い……両方とも一目で好きになったと」

「一目惚れ!?ていうか待ってくれ父さん!!
 そんな一言であっさり済ませられて逆にびっくりするぞ!?」

 ちなみに切嗣の方は「雷が落ちたようだった」と、アイリスフィールは「この人しかいないと思った」と言っていたとか何やら詠春が話しているが、それは士郎の耳に入らない。

 戦場とはどのような場所か。
 前触れ無く砲弾が降り注いで爆ぜ、銃弾が縦横無尽に行き交い、銃声と砲撃音が鳴り響き、轟音が絶え間なく耳を叩き続け、煙が沸き立ち充満し、辺りには殺し合う狂気が満ちる。いつ自分が死んでもおかしくない、一秒先の未来すら見えない圧倒的な恐怖。
 そんな…血と火薬の匂いが充満する戦場で………「一目惚れ」?

 …………そう、ありえない。


「その出会いをきっかけに切嗣は戦場から足を洗い……数年後、お義父さんの前に現れました。
 子供ができた。自分は父親になるんだと、そう言ったそうですよ。
 それが貴方の姉………イリヤスフィールさんです」

「…………。」

 士郎は神妙な面持ちで、その話に聞き入った。

「更にその数年後…切嗣はまだ幼かったイリヤさんと赤ん坊の君を連れて、私とお義父さんに会いに来ました。
 麻帆良でお義父さんに、京都で私に。そしてまた別の機会に麻帆良で両方と会いました。
 その時三人で酒を交わして、馴れ初めを聞き出したんですよ」


“……ああ、本当に懐かしい―――”

 儚げな笑みを浮かべて、詠春は独りごちた。




 ◇◇◇◇◇



「あの時のイリヤちゃんと士郎は可愛かったの〜。
 おおそうじゃ。確かあの時の写真が残っておったハズ………え〜と」

「―――ぴくっ」


(……士郎の赤ん坊の頃の写真………。)

(マスター、興味津々ですね)


 机の引き出しをゴソゴソと探る近右衛門の背後で、エヴァンジェリンはそわそわと肩を揺らし始める。
 やがて目的の物を発見した近右衛門は、それを見た途端に頬を緩ませた。

「お?おお!!あったあった、これじゃ。いや〜懐かしいのぉ」

「じじい、ちょっと見せろ。早く見せろ。いや、もうよこせソレを。」

「なんでじゃい!?わしだってこれ一枚しか持っとらんのじゃぞ!!
 そんなに欲しいなら後で焼き増ししてあげるから……」

「いやだ。いま欲しい。さあよこせ、さあ!!」

 拡げた右手を無遠慮に突き出し、駄々をこねる聞かん坊のように彼女は写真の受け渡しを要求する。

「くっ…目の色を変えおって……!ふむ、ならば碁で勝負を着けようぞ!!」

 駒が乗った将棋盤を接客用テーブルから乱雑にどかし、近右衛門は碁盤と碁石を新たにテーブルの上に載せる。
 豊かな眉毛から覗く彼の鋭い眼光が、ギラリとエヴァンジェリンを射抜いた。

「ほう?将棋で負けたら次は囲碁か。浅はかに過ぎるなジジイ!
 いいだろう―――この私に挑んだ事を後悔するがいいっ!!」


 盛り上がってソファに座った二人を尻目に、茶々丸は近右衛門がテーブルに置いた写真をこっそりと手にとった。


(これが赤ん坊の士郎さんですか…。そして士郎さんを抱いているのがアイリスフィールさん、その隣にいるのがイリヤスフィールさん。そして彼女達の肩を抱いているのが……)

 くたびれた黒いスーツを着て、その黒髪はボサボサで、少し痩せこけた頬をして―――優しい笑みを浮かべているその男性。


「……彼が、切嗣氏ですか」

「あん? な、茶々丸ズルイぞ!私にも見せろっ!!」
「ぬぉおおっ!?いかん、イカンぞ茶々丸!エヴァには決して渡すでない!!」

 弾かれるように飛び出して自分に迫る二人を見て、茶々丸は―――

「――The Ready……Fight」

「「あっ!?」」

 二人の頭上、天高くに写真を放り投げた。



 ◇◇◇◇◇




「アイリさんと出会って戦場から足を洗った切嗣でしたが……そこで買った恨みは膨大なものでした。いつどこで誰に襲われてもおかしくなかった。
 君たち一家は転々とした生活を送り……あの日、アメリカに渡りました」


 ………そうだ。そしてあの日に……あの<事故テロ>が起きて………。


 ―――――――――――地獄は、生まれた。



<其処は■■。または■■。或いは■を■く■■■――――。>




 ―――――――俺だけが、生き残った。



「……話は、これで全てです」

 詠春は静かにふぅっと息を吐いて佇まいを正す。

「…………そうか。」

 士郎はそんな、そっけない返事を返すことしかできなかった。

「…大丈夫ですか?」

「……ああ。」


 ああ…確かにショックは受けてる。
 実の父親がテロリストで大量殺人犯なんて聞かされたら大抵の人は困惑することだろう。
 だが、俺がショックを受けたのはそこじゃない。……そこじゃないんだ・・・・・・・・




 ―――――――――――――――――同じだ・・・


 同じなんだよ。


 <アーチャー>の記憶の中で見た…並行世界の<衛宮切嗣>と、おんなじなんだ。



 その事実が、俺の頭から離れなかった。





 ◇◇◇◇◇




 夜も更けた学園長室。そこに凄惨な光景が広がっていた。



「か……返せ………わしの、孫の写真………」

「往生際が悪いぞじじい。フハハ、この写真はもう私の物だ―――っ!!」

 床に倒れ伏した学園長の右手が、ぷるぷると震えて空を切る。
 その先には、もぎ取った写真を両手で頭の上に掲げてホクホク顔をしているエヴァが立っており。
 そしてそんな二人を、達観した目で見つめる茶々丸がいた。

(今頃この話を聞いている士郎さんはどうしているでしょう……?
 ネギ先生はお疲れでないでしょうか………?)

 少しはこのロボを見習うべきだ、この二人は…。




 ・
 ・
 ・



「兄貴兄貴!杖とカードは持ってるか!?」
「うん大丈夫!仮契約カードもしっかり持ってるよ!」

 ネギが玄関ロビーから外に出て行く時、とある女性従業員とすれ違った。
 彼女はカートに積んだシーツやタオルをホテルに運び入れていく。
 その後ろで自動ドアが閉まると……その女性は懐から、眼鏡を取り出して目にかけた。


「フフ……カワイイ魔法使い・・・・ね………」

《…ウキッ♪》

 子猿の式神・・・・・が、彼女の肩に登って小さく鳴いた。


(式神返しを貼られた時はどないしよ思たけど…)


 指定した対象の侵入を阻む結界は、内側から招き入れた場合には例外として入室を許してしまう。
 ネギが自動ドアを開けて出てきた事は、彼女にとって僥倖だった。


「入れてくれておおきに、坊や。さて、お仕事始めましょか……♪」

 駆けて行くネギを一瞥して嘲笑い、呪符使いの女は悠々とホテルに侵入した。








<おまけ>
・学園長室、その後。

学園長「……うぅ」ぴくぴく…
エヴァ「さて、もう夜も遅いし帰るとするか、思わぬ収穫もあったしな。では行くぞ茶々丸、邪魔したなジジイ」すたすた…
茶々丸「お邪魔しました、学園長」ペコリ
学園長「……ま、待つのじゃエヴァよ」ぷるぷる…
エヴァ「何だ、まだ何かあるのか?言っとくが私の写真は渡さんぞ」
茶々丸(無理やり奪ったものを自分の物と言い張りますかマスター…)
学園長「そ…そうではない。ただ……」

学園長「…もう少し子供らしいぱんつを履いた方がいいんじゃないかのう」
エヴァ「―――。」

 …いま近右衛門は床に倒れ伏した状態であり…逆にエヴァは立ち上がっている状況である。
 麻帆良女子中制服である赤いチェックのミニスカートから覗く、エヴァの黒いレースの下着が彼の視点から丸見えだった。

 ―――げしゃあっ!!(近右衛門が顔面を蹴られた音)

エヴァ「誰が子供だ、誰が!!」げしげしっ
学園長「おぶっ!ゲハァッ!!ちょっ、ただの冗だ…あだっ!!」
茶々丸「マスター。せめて下着を覗かれた事に怒るべきではと思いますが…」げしっげしっ

 およそ三時間後、校舎を巡回していた警備員により、顔を腫らして倒れている学園長が発見された。



〜補足・解説〜

>嘗て、正義の味方を目指した男がいた。
>彼は間違いなく正義の味方だった。
 冒頭のこの人物は切嗣のことを指してはいますが、それは「この小説の切嗣」ではなく「Fate原作の切嗣」のことです。この小説の切嗣は「正義の味方」ではなく「殺害者」とか「天災」と呼ぶべきき人なので。
 ちなみにウチの切嗣は反英雄として根源に記録されても不思議じゃないレベルです。何故なら「虐殺によって個人で・・・戦争を縮小させた」偉業があり、その上で「悪行により(結果的に)人を救う」「悪行による善性の証明」など、反英雄の条件は満たしているからです。

>「正義の女神は娼婦である」
 これは法学者・長尾龍一氏の言葉を参考にしています。出典はWikipedia。
 「正義の女神は娼婦であり、戦いの結果が明らかになった段階で勝者の胸に抱かれる。また闘争が起こり勝者が入れ替わると新たな勝者の胸に抱かれる。正義の女神は腕づくで押さえこまねばならない」
 要するに「勝てば官軍、勝った奴が正義」という意味。正義の実力的側面に着目したもの、とされています。
 ちなみに正義の女神として比較的有名なのはアストレイアでしょうか。少しマイナーながら正義の女神として正統なのはユースティティアやテミスが挙げられます。ギリシャ神話では戦神アテナに気に入られた勢力が勝利する、ともされています。

>アスナにもきちんとは話しとらんかったね……」
 刹那との不和とか、昔は友達だった辺りは話しましたが、その他の詳細は明日菜も知らなかったという設定です。

>先達は…その姿を少しだけ羨ましそうに見つめた。
 不老不死のエヴァンジェリンにとって、正しく歳をとって死んでいくという当たり前の事に、ある種の憧れがあると思います。自らの老いを受け入れる近右衛門の姿が、彼女には少し眩しく見えたのかもしれません。

>お嬢様を守れれば………満足なんです
 木乃香の気持ちを汲んでない台詞なんですよね、これ。でも木乃香の為には、自分なんかが傍には居ない方が良いという(独善的ながら)思いやりであるという……。ままなりませんね、人間てのは。

>詠春、僕は馬鹿だった。
 その後の選択と行動の方が……よっぽど馬鹿だよ……。

>魔法使いは国連NGOに参加して〜
>フリーの魔法使いは独自に〜
 この辺りは独自設定によって構築されています。
 またこの小説では、原作の『四音階の組み鈴』も、この「フリーの魔法使い」達が紛争に参戦する(国連所属でない)NGO団体の一つとしています。

※『四音階の組み鈴カンパヌラエ・テトラコルドネス
 原作中で名前のみ登場した、魔法使いによるNGO団体。幼い真名や、彼のマスターだったコウキ・Tが所属しており、世界中の紛争地域を渡り歩いて活動していた。
 原作において彼らの活動内容の詳細は不明だが、当時から真名は仕事道具をギターケースで持ち運んでいたことから、荒っぽい場面に遭遇していたことは間違いないようである。
 同時に、真名のような元少女兵が正式メンバーとして前線で戦闘を行っていたらしき様子から、人材不足・層の薄さ・規模の脆弱さが推察され、国連NGOではなく完全に民間のNGOだと思われる。

>魔法使いは公式にしろ非公式にしろ、停戦を促す程度までしか人間界に干渉できない。
>我々魔法使いは、不幸ソレを無くす為に人間界に関わっておる
 ネギま世界における魔法使いの本分とは、影ながら人々を助けること。ただし現代ではそれが実行されているとは言い難い側面が多く、それゆえに「立派な魔法使い」「偉大な魔法使い」が尊敬されているのでしょう。

>切嗣は自分の思想に共感する後援者を得て
 構想としては、ドイツ人発明家とアラブ人石油王の二人としています。
 それぞれ名前はアルブレヒト・シュヘンベルグ(Albrecht Schenberg)とシャーフィウ・イブラヒム(Shafiu Ibrahim)。※シャーフィウはイラン国籍。
 切嗣が「引退」する際は、賛成もしないが反対もしませんでした。
 彼が歩くのが修羅の道と分かっていたので、そこから抜け出る事をこの二人も止める気は無かったようです。

>衛宮切嗣という劇薬は、間違いなく紛争規模の縮小に作用した。
 現実的にそんな事が可能なのかと言われれば、もちろん無理です。
 ただし切嗣には「魔法」という超常の能力があるという点を考慮すると、この小説世界では「難しいが不可能ではない」としておきます。
 …そもそも、たった一人で国家レベルの軍隊(×複数)に戦いを挑むという馬鹿がいな………いたよ、ラカンとかナギとか。…まあ彼らなら可能でしょうが、それでも厳しいものがあるでしょう。

>それは切嗣によって救われた命があると言っていい。
 しかしこれについて、生前に切嗣と同じ行動をとったFate/EXTRAのアーチャー(赤)は、「それは命を守っただけだ。結果的には、誰の命も救っていない」(←うろ覚え)と自身の行いを否定しています。
 ちなみにこの小説世界の久宇舞弥(となる人物)は、切嗣が紛争規模を縮小させた事で少女兵にならずに済み、今もどこかで平和に暮らしているという設定です。

>幸福量保存とかいう面白い法則
>「幸福という椅子は、常に全体の数より少な目でしか用意されない。その場にいる全員を救う事などできないから、結局は誰かが犠牲になる」
 本来はアーチャーの台詞ですが、この小説では切嗣の発言です。彼らは間違いなく、ある種の真理に辿り着いてしまったんですよね……。
 ただ、そこで絶望して諦めたのが切嗣とアーチャーで、それでも諦めたくなくて意地を張り通すのが士郎だと思います。……その善し悪しは別ですが…。

>だがアレは「戦争の天才」じゃった。
 罠や暗殺など日常茶飯事。兵士の食料には毒、塹壕には毒ガス、進軍ルートには必ず地雷。この小説の切嗣は破壊工作スキルAランク保持者です(後に設定話で記述予定)。
 地雷には引っかからなくても無問題、地雷にビビって敵勢力の行動が鈍化するのは、紛争の拡大を防ぎたい切嗣にとっては成果でしかない。その隙に他の工作を進めるなり、司令官を狙撃するなり好き放題やりたい放題。数年かけて魔法を修めた癖に、その手腕は清々しいほどテロリスト。
 「正義の味方」を夢見た男は、、誰よりも戦争ひとごろしに秀でていた。

>"偉大な魔法使い"とやらを目指す輩とは抜群の相性だった
「うわぁあっ!!」
「なっ!?くそ、罠とは卑怯な、姿を現せ!!」
「じ、地雷!?これが魔法使いの戦い方か!?」
 ……という感じです。戦争や殺し合いに卑怯とかねーよ、と。
 高音さんをイメージしてくれれば分かりやすいと思います。ガンドルフィーニの場合はそこそこ場数を踏んでそうなので「卑怯」とは言わないと思いますが、罠にあっさり引っ掛かって死亡するパターンでしょう。

>強制的な魔法禁止か。アーティファクトを含めてもかなり高位の術ではないか。
夕子
「うん?」
裕奈
「誰か呼んだー?」
七色の銃・魔法禁止弾
「気の所為さ」
明石
「………。」

>いま軽くスカイツリーを飛び越えるくらい話が飛躍した気がする
 ツイストバック転宙返りでスカイツリーを飛び越える姿を想像してください。

>その出会いをきっかけに切嗣は戦場から足を洗い
 随分あっさりしてんなオイ!!と思ったかもしれませんが、人間とはそういうものだと思います。
 この切嗣の場合はアイリのために戦場に背を向けました。「大事な人の為に正義を捨てる」という選択ができた辺り、どっかの並行世界のキリングマシーンさんや某ルートの剣製バカより「人間としては」マシだと思います。そのお陰で彼はこのあと数年間、家族と幸せな時間を過ごすことができました。
 ただし因果応報。彼はその後、士郎を残して逝ってしまう……。

>少しはこのロボを見習うべきだ、この二人は…。
 二人がこうなった原因も彼女ですがね!

>もう少し子供らしいぱんつを履いた方が
 「パンツ」ではなく「ぱんつ」と書く方が、エロジジイである近右衛門らしいと思いまして。
 ただし彼曰く「エヴァのぱんつなぞ見えても嬉しくないわい」とのこと。中身は自分より歳上(の高齢)であり、また外見が幼女なので趣味ではないご様子。
 ばっちり見ておいて……ケンカ売ってんのかジジイ?(▼д▼#)あ゛?

>せめて下着を覗かれた事に怒るべきでは
>げしっげしっ
 茶々丸も乙女ですのでw乙女の怒り炸裂ww
 ホント人間らしくなったなぁ……。

 切嗣が戦場で活動した具体的な時期は設定していません。
 ただおそらく、魔法世界の大分裂戦争の頃になると思います。
 なので連合も切嗣の事は重視しておらず、また彼の討伐に優秀な魔法使いを送り込む事はしなかった模様。ナギや詠春と違い大戦に参加しなかった、地球に残った魔法使い達が切嗣と戦いました。


【次回予告】

 関西呪術協会の刺客・呪符使いの侵入を許してしまった3−A防衛隊(笑)!
 はたしてネギは、明日菜は、刹那は…
 迫り来る魔の手から木乃香を守りきる事ができるのか!?
 そしてその時、士郎は!?

 次回、「ネギま!―剣製の凱歌―」
 第二章-第14話 修学旅行一日目・下

 それでは次回!

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 今話はまあ…突っ込みどころ満載かもしれませんが、どうかご容赦を。
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