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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第六話
作者:AST   2012/07/06(金) 20:58公開   ID:GaMBFwOFFuY
パーティーの翌日、一組の教室では噂が広まっていた。

その事について、隣の席の谷本癒子が一夏に聞く

「ねぇ、織斑君は転校生の話、聞いた?」

「いや、知らん・・」

「何でも、中国の代表候補生が二組に転入して来て、クラス代表になったらしいんだって」

「そうか」

「あら、私の存在を危ぶんでの転入かしら」

相変わらず自身満々にポーズを決めて言うセシリア

もしISが無い世界であったならば、彼女は女優になっていたのだろうか?

“中国か・・・・まさか、な・・”

「む、やはり気になるのか?」

「一応、戦う相手ともなれば、少しは気にもなる。」

「・・・むぅ」

不機嫌そうに複雑な表情になる箒

「来月にはクラス対抗戦だ。それまでに相手を知る事に損は無い」

「それよりも私と二人きりの訓練に付き合ってもらえませんこと?あれのうまく発動させられる様になりたいんです。」

確かにセシリアの言うとおりだった。

彼女はあれ以来、創造を上手く発動し切れていない

何故なら渇望を強靭な意志で維持しなければならないからだ。

創造は、どれだけ強く渇望し続けていられるかと言う事が決め手となる。

簡易術式である為、創造を発動し維持するには強靭な意志で渇望を支える必要がある。

故に集中を切らしてしまうと即座に解除され、それまで麻痺していた疲労が一気に襲ってくるのだ。

故に嘗ては必殺技だった創造も、使い所を誤れば逆に敗北してしまうことも有り得る。

しかも彼女の創造は覇道型である為に効果空間内にいる者達の影響を受ける為、求道型よりも強靭な意志を持って自分の渇望を維持しなければならないのだ。

創造について、千冬達に問い詰められたが一夏は束が仕込んだシステムだと説明した。

「今の所、展開時間が20秒前後、箒を加えると12秒が限界か・・・」

「はい・・ですから、一夏さんのご教授を」

セシリアが一夏に聞くが

「生憎だが、お前は覇道型の創造だ。俺の求道型とは違う」

「覇道型?」

不思議そうに聞いてくるセシリアに説明をする。

「覇道型は周囲を変える物だ。多数を相手に向くが、渇望を強固に維持している必要がある。」

「求道型の方は何なんだ?」

箒も気になる様だった。

「求道型は自分を変化させる創造だ。一対一に向いている。渇望も自分のみに向けられるために覇道型よりは維持しやすい」

「では、求道型の方が良いのか?」

「いや、そういう訳でも無い・・要は使い方だ。」

そう言って、簡潔に纏める一夏

「織斑君、頑張ってね!」

「フリーパスの為にも!!」

クラスメイト達も応援してくれるのは良いが、少しは欲望を隠したらどうか?と思う一夏

「今の所、専用機持ちは一組と四組だけだから余裕だよ。」

クラスメイトの鷹月静寐がそう言った直後に

「その情報、古いよ」

教室の入り口から聞こえてきた声に全員が眼をやると

先程思い出していた小柄なツインテールの少女が、そこに立っていた。

「二組のクラス代表も専用機持ちになったの、そう簡単には優勝出来ないから!」

「お前・・・鈴か?」

一夏は何と言うご都合主義の展開か・・と思いながらも、久しぶりの友に話しかける。

「そうよ。中国代表候補生、鳳鈴音。今日は宣戦布告に来たって訳」

ビシィ!と指を指してきた彼女を見て、一夏は・・

「・・・・似合わんぞ」

「んなっ!?何てこと言うのよ、アンタは!!」

いきり立つ彼女の後頭部から、ゴスッと言う音がした。

「痛ぁ〜、何すんの・・ふぇ!?」

彼女が振りかえれば、千冬が立っていた。

「もうSHRの時間だぞ?」

「ち、千冬さん・・」

流石の彼女も千冬の登場にたじろぐ

「織斑先生だ。早く行け、馬鹿者」

「す、すいません・・また後で来るからね!逃げないでよね、一夏!!」

そう言って自分のクラスに戻ってゆく鈴

“まさか、代表候補生になっているとは・・・”

二年前に別れた彼女からは想像も出来ない事だった。



第六話



午前中の授業が終わった後、昼食を食べる為に鈴と共に食堂に来ていた。

一夏は日替わり定食、鈴はラーメンを食べていた。

「しかし、驚いたぞ。お前が二組の転入生で代表候補生になっているとはな」

「こっちだってテレビ見て吃驚したわよ。なんでIS動かして、ここに居るのよ?」

「会場間違えて、触ったら起動した。」

「何それ・・・あいつ等は騒がなかった?」

「ああ、騒いだ。」

思い出すのは自分を慕い、兄貴と呼んでくれた中学時代の舎弟達の事だ。

彼等は一夏の為なら何でもすると言っていた彼等は、マスコミの取材を交代交代でシャットアウトしてくれていた。

労ってやったら“兄貴にそう言って貰えるなら何でもしますぜ”と言って張り切っていた。

彼等の事は後に語るとして・・・

「一夏、そろそろ説明してほしいのだが?」

「そうですわ、一夏さん。もしかして、此方の方と・・つ、付き合っていらっしゃいますの!?」

テーブルを叩いて、箒とセシリアが厳しい表情で問い詰めてくる。

「べ、べべべべ別に私は・・」

「違う、二人目の幼馴染だ。」

慌てふためく鈴の代わりに、至極冷静に一夏は言った。

「二人目・・?」

「お前が小学4年まで、鈴が小学5年から中学2年までだ。」

箒に説明する一夏、その様子を見て鈴は溜息をついた。

「はぁ・・アンタは相変わらずのハードボイルドね。」

「む?・・彼女が箒、前に話した道場の娘だ。」

「ふぅん、そうなんだ・・」

鈴は箒を見定める様にジロジロと見る。負けじと箒も見返している。

鈴の視線が彼女の一部に来た時、一瞬だけ頬が引き攣った気がしたが気にしないで置く

「初めまして。これから宜しくね。」

「ああ、此方こそ・・・」

お互いの背後に相対する龍虎が見えるのは気のせいだろうか?

「んんっ!私の事も忘れて貰っては困りますわ。私はイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットですわ。」

「ごめん、アタシ・・・他の代表に興味ないから」

「なッ!?」

そう言って一夏の方を向く、鈴

「ねぇ、アタシがISの操縦見てあげようか?」

「一夏と訓練するのは私の役目だ!!」

「そうですわ!貴方は二組でしょう!?敵の施しは受けませんわ」

「アタシは一夏と話をしてんの、部外者は引っ込んでてよ」

「「むぅ・・・・・」」

不敵に微笑む鈴と彼女を睨む箒とセシリア

「貴方こそ、後から出てきて何を仰ってますの!?」

「後からじゃ無いんだけどね。アタシの方が付き合い長いんだし」

「それを言うなら、私の方が早い!!」

お互いに牽制しあう乙女達、その様子を興味深そうに見ている生徒達

そして修羅場の真っ只中にいる一夏は・・・

「・・・・ふぅ」

のんびりと茶を飲んでいた。

「「一夏(さん)!!」」

「・・・・・・・?」

怒ったように箒とセシリアが一夏に迫る。

が、当の一夏はそんな事構わずに鈴を見る。

「お前の父親は元気か?」

「う、うん、元気・・だと、思う」

「・・・・・・・そうか」

どこか暗い調子で返した鈴に何かあったと察する一夏

そこで昼休み終了のチャイムが鳴る。

「じゃ、じゃあね、一夏。また後で」

「ああ・・・」

何か誤魔化すような様子で去って行く鈴

それを見て、一夏は

“一度、話を聞く必要があるか・・・”

またお父さん的な事を思うのだった。




放課後、第三アリーナでは一夏が箒とセシリア相手に訓練していた。

「ハァァァァッ!!」

やっとISの使用申請が通った箒は打鉄を纏って、一夏に切りかかっていた。

「ふん!」

ガギィン!と彼女の持つブレードを雪片弐型で受け止める。

「そこっ!!」

そこへセシリアがレーザーライフルを撃ちこんでくるが

「っ!!」

「ぐぅっ!?」

箒を凄まじい脚力で蹴り飛ばし、一回転して剣でレーザーを切り裂く

「まだまだ甘いぞ・・来い、セシリア」

「はい!」

一夏と距離を置き、攻撃を躱しながら詠唱をするセシリア。

箒もすぐに持ち直し一夏をセシリアに近づけまいとする。

___Creu ___創造
Seren golau dydd teimlad syrthio mewn cariad ___星光降り注ぐ、恋慕心情

異空間が展開され、雨粒の如き弾幕が一夏に襲い掛かるが

「おおおオオォっ!!」

零落白夜を使用して弾幕を薙ぎ払い、彼女への道を切り開く一夏

そこへ箒が切りかかってくる。

「ハアアアッ!!」

「くっ・・」

「まだですわよ!」

消し切れ無かったレーザーの雨粒が四方八方から襲い掛かる。

が、一夏の寸前でレーザーが霧散した。

すると一夏は一旦訓練を止めて、セシリアに近寄る。

「・・・25秒、記録更新だな。」

「はぁ、はぁ・・そうですか・・まだまだの様ですわね・・」

「ああ、だが箒も加えた状態では大幅に長持ちしている。」

「そう言って頂けると、幸いですわ・・」

喋るのも億劫なのか、荒く息を吐きながらへたり込むセシリア

「今日はここまでだ。箒も良いな?」

「・・・私はまだ行けるぞ」

遊び足りないような子供の様な表情をする箒に一夏は言う

「創造を加えた訓練は相当消耗する。ある程度の余裕を持たんと明日に響く」

あの弾幕を躱すのに箒も一夏と同じ様に挑んでみたが、かなり複雑かつ高速の機動で回避しないといけないので、見た目以上に体力を消耗するのである。

創造を展開するならば尚更だ。

「セシリア、立てるか?」

「ええ・・何とか・・」

一夏は彼女の手を取って立ち上がらせる。

すると、一夏は二人を抱え上げた。

「な、何をする!?」

「い、一夏さん!?」

二人が驚いた様に声を上げるが、一夏は気にも留めない

二人は一夏の腕を椅子代わりに、彼の首に腕を回している状況だ。

「余り無理をするな。箒も結構、疲れているだろう?」

「だからと言って、この体制は・・・・」

箒が最後まで言わなかったのは、脳内軍師モッピーが何か助言したからだろう・・

「一夏さん。その・・重くないですか?」

ゼシリアの質問は、乙女にとって結構気になる質問である。

ここで原作の一夏なら、二人を比べたりして失礼な事を言ったりするだろうが

この一夏はそんな真似はしない

「大した事は無い・・」

そう言ってマキナ一夏はアリーナから彼女等を抱えたまま出て行くのだった。




二人を反対側のピットに運んだ後、一夏は自分が出てきたピットに戻って来ていた。

そこへ鈴がタオルとペットボトルを持ってやって来た。

「お疲れ、一夏。飲み物はスポーツドリンクでいいよね?」

「ああ、待っていたのか?」

「えへへ、まあね・・」

どこか嬉しそうに答える鈴からタオルを受け取り、汗を拭う一夏

「ね、ねぇ、一夏。」

「何だ?」

「やっぱ、アタシがいないと寂しかった?」

「・・・・そうだな」

「や、やっぱり、一夏はアタシが居ないとダメみたいね!」

何か凄く嬉しそうな顔をして言う鈴

だが、どこか空虚さや寂しさを感じさせる何かがあった。

「・・・・・鈴」

「何?いち___ッ!!?」

突然、一夏に抱き寄せられた鈴は一気に顔が真っ赤になる。

「いいいいいいい、一夏!?」

混乱する鈴に一夏は語りかける。

「何があった?」

「ッ!?・・な、何を」

彼女の体が強張り震えた声で一夏に返す。

一夏は鈴を優しく抱きしめると、耳元で囁く様に言った。

「無理をするな・・お前に何があったのかは知らん。だが、お前は一人じゃない」

「い、いちかぁ・・・・」

そのまま鈴は一夏の胸の中で泣き出す。

一夏は胸の中の彼女が泣き止むまで、優しく撫で続けていたのだった・・




「ごめんね、一夏。カッコ悪い所、見せちゃったね・・」

「気にするな。お前が笑顔になるなら構わん」

「一夏・・・・・」

ある程度、泣いて落ち着いた鈴は様々な事を一夏に話してくれた。

両親が些細な事で喧嘩して離婚し、母親の方へと引き取られた事

寂しさを紛らわす為に必死で努力して代表候補生になった事

「鈴、別れる前に俺が言った事を覚えているか?」

「うん、覚えてる。」

“例え別れる事になっても、お前がまた会いたいと願えば、いつかまた会える。”

彼女との別れる時に言った一夏の言葉である。

「私ね、あの言葉があったから今まで頑張ってこれたんだよ・・・?」

「そうか・・・」

「うん、そうして一夏とまた会えた。」

「ああ・・・」

すると、鈴は一夏に抱きついて来た。

「会いたかった・・会いたかったよ、いちかぁ・・・」

「鈴・・・」

そんな彼女を一夏は抱き返すのだった・・・・



「俺は部屋に戻る。また明日だ。」

「うん・・・そういえばさ」

「何だ?」

「一夏は誰かと一緒の部屋なの?」

その質問が引き金となってしまった。

「ああ、箒とだ。」

「それって、どういう事・・・?」

先程のしおらしさは何処へ行ったのやら・・

妙に冷たく低い声で聞いてくる鈴の眼はハイライトが消えていた。

一夏は事情を説明した。

「ねぇ・・それって、あの子と寝食を共にしているって事?」

「そうだ、幼馴染と同室で助かった。」

俯いた鈴からは何か黒いオーラの様な物が出ており、ブツブツと何か呟いている。

「_____ったら、いいわけね・・」

「何だ?」

「だから!幼馴染だったら良い訳ね!!?」

「ッ!?」

凄まじい鈴の気迫に思わず、一歩下がってしまう一夏

“この俺を退かせるとは・・・”

女とは時に神すらも超える恐ろしさを発揮するのだ。

「一夏!!」

「・・・何だ?」

「幼馴染は二人いるって事、覚えておきなさいよ・・」

そう言い残し、鈴はピットを去って行った。




「と、言う訳だから部屋代わって?」

突然、部屋にやって来た鈴が言った言葉である

「ふざけるな!何故私が!!」

寝巻に着替えた箒が鈴に怒る。

「いやぁ、篠ノ之さんも男子と同室なんて嫌でしょう?」

「べ、別に嫌とは言っていない!!」

女の争いを遠巻きに見ている一夏は、下らんと言った様子でいた。

「とにかく、私もここで暮らすから」

「ふざけるな、ここは私の部屋だ!!出て行け!!」

「ところでさ、一夏。約束を覚えてる?」

「無視するな!こうなったら力づくで・・・」

部屋に立てかけてあった竹刀を取り、鈴に振り下ろそうとした箒の腕が一夏に掴まれていた。

「落ち着け、箒。鈴も無駄に煽るな」

「「う・・・・」」

二人共しょんぼりするのを見て、一夏は話す。

「箒、お前は頭に血が上ると、すぐに竹刀を振るうのは止めろ・・」

“分かったな?”と目で叱りつける一夏

「分かった・・・」

今度は鈴の方へと向く

「約束の事だったな・・料理が上達したら毎日酢豚を食べてくれる。だったか・・」

「そう、そうよ!!」

その言葉に箒は目を見開き、鈴は賭け事で逆転リーチが来た時みたいな調子になる。

「もしかして、あれはプロポーズか?」

「え、えええええっと・・その・・・」

ここまでストレートに聞かれるとは思ってなかった鈴は混乱してしまった。

「そそそそそ、そんな訳無いじゃない!!か、勘違いしないでよね!ただの味見係なんだからね!!」

ああ・・・悲しきかな、ツンデレの性・・・・

「一夏の馬鹿!アタシの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

そう言って泣きながら部屋から出て行く鈴であった。

「・・・・・何だったんだ?」

「馬鹿者が・・・・・・」

流石の箒も鈴の哀れさに涙を流すのだった・・・・




翌日、生徒玄関前に張り出された『クラス対抗戦日程表』

そこに書かれていた一夏の相手は二組の代表となった鈴だった。



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