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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第七話
作者:AST   2012/07/06(金) 21:01公開   ID:GaMBFwOFFuY
クラス対抗戦の初戦で鈴と当たった一夏は考え込んでいた。

わずか二年の間で一般人だった鈴が代表候補生になったのだから、その実力はセシリアと同等か、それ以上か

「む・・?」

すると廊下の曲がり角から鈴がやって来た。

「おはよう、鈴」

「っ!」

何故にか紅くなってプイと顔を背けられてしまった。

「・・・・?」

“何故だ?・・・・嫌われたのか?”

さっぱり理由が分からない一夏

それが彼たる所以だろう

「直接、聞いてみるか・・・・?」

そう考えたが彼女の問題だと思い、止めておいた。




               第七話




それから数週間が過ぎたが、鈴の機嫌はよく分からない状態のままだ。

とりあえず一夏は“女はよく分からん”と言う結論に至った。

クラス対抗戦を一週間後に控えた日の放課後、箒とセシリアを連れてアリーナに向かっていた。

「一夏、来週からいよいよクラス対抗戦が始まるぞ。アリーナは試合用の設定に調整されるから、実質特訓は今日で最後だ。」

「ああ・・・だが、箒も上達したな」

「そ、そうか?」

その言葉に少し照れる箒

“後は渇望を理解さえすれば、創造も使えると思うが・・”

創造は専用機の特権みたいなものである。

誰もが使用する量産機では上手く発動はしない

一次移行する事で創造は使用することが可能になるのだから

「一夏さんも上達してますわ。動きに無駄が無くなってきてますもの」

「要は慣れ、と言う事なのだろうな・・・」

二人の相手をしながら、アリーナのピットへと向かう

重厚なドアが開くと中には鈴が居た。

「待っていたわよ、一夏!!」

腕組みして不敵な表情を浮かべながら立っている。

「貴様、どうやってここに!!」

「ここは関係者以外立ち入り禁止ですわよ!!」

「はん!私は関係者よ。一夏の関係者。だから問題無しね」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ三人を余所に一夏は

「こういう騒がしさも悪くは無いか・・・・・」

と、しんみりしていた。

粗方口論が終わった後、一夏は鈴に話しかけた。

「鈴、大丈夫か?」

「えっ?」

「もう無理はしてないな?」

一夏としては彼女の心の傷が心配だった。

「うん、大丈夫・・ありがと」

「なら、良い・・」

「鈴・・・」

「何?」

一夏は戦士の表情で鈴に言う

「お互いに有意義な試合をしよう」

「ええ、アタシの強さを見せてあげるわ」

「それは楽しみだ。」

鈴の自信満々な表情を見て、やっと調子が戻ったなと実感する一夏

「なら、ここで戦って手の内を晒すのは面白くない」

「そうね、楽しみは当日にね。」

そう言って鈴は去って行く

「セシリア、箒・・」

「何だ?」

「何ですの?」

一夏は二人に言う

「俺たちの強さ、見せるぞ」

「ああ!」

「ええ!!」

三人はしっかりと決意した。



試合当日


第二アリーナ第一試合、織斑一夏と凰鈴音の試合は注目度も高く、観客席は満員だった。
 
この試合は各国の要人からも注目されている試合だ。

一夏は腕を組みながら、その時を待っていた。
その視線の先に居るのは、中国第三世代のIS『甲龍(シェンロン)』を纏った鈴

赤紫の機体色にゴツイ装甲、明らかにパワー型な外見である。

肩の所に浮いた非固定浮遊ユニットが気になるが・・

“そろそろか・・・・・”

一夏が腕を降ろし、拳を握りしめる。
 
『それでは両者、既定の位置まで移動して下さい』

アナウンスに従って、両者とも地上5メートル程上空に飛び、向かい合う。

「一夏、代表候補生の実力見せてあげるわ」

「ああ・・見せてみろ。お前の力を」

『それでは両者、試合を開始して下さい』

アナウンスが聞こえたと同時に動いたのは、どちらだったか・・・

二人は一気に己の得物を展開して切りかかり、鍔迫り合いになるのを避けるため。

力を上手く利用して、後ろへと下がり宙返りして体制を整える。

「へぇ・・流石、一夏ね。その化け物じみた強さはISでも変わりは無いのね。」

でも・・と鈴は両手の青龍刀、双天牙月をバトンの様に回して、あらゆる方向から切りかかってくる。

「くっ・・・」

その変幻自在な斬撃の嵐に流石の一夏も捌ききるので手一杯だった。

“接近戦は不利か・・この俺が防戦一方とは・・・・”

一夏の判断は素早かった。

___Briah
___創造

Ich gebe eigenen Weg Die Welt des Bruders
___我捧ぐ・姉弟世界

即座に高速詠唱で創造を発動して技量を上げ、彼女の斬撃をいなして隙を作る。

「ッおおお!!」

片方の双天牙月をいなし、もう片方を足で刀身を横から蹴り飛ばす。

「ッ!!」

突然、一夏の技術が上昇し、二振りの青龍刀が弾かれてしまい、隙を見せてしまった鈴。

しかし、その表情に焦りは無い

気が付けば、甲龍の肩アーマーがスライドし、そこから出てきた球体が光った直後

一夏は見えない拳に殴られたかのような衝撃に吹き飛ばされた。

「ぬぅ・・!!?」

そのまま、鈴との距離が引き離されてしまう

更に目に見えない衝撃が次々と一夏に襲い掛かる。

が、一夏は持ち前の勘で次々と回避して行く

「良く躱したわね。この“龍砲”は砲身も砲弾も見えないのが特徴なのに・・」

“成程、確かに厄介だ・・しかし、まだ未熟だ”

確かに見えないのは厄介だ。

ならば、撃つ人間を見れば良い

人間には必ず予備動作が存在する。

そして、この場合は・・・

「目線だ。」

彼女の目線が自分を捉えている瞬間を測って躱す。

「嘘、もう対応したって言うの!!?」

「・・射撃武装を使うのならば、目線無しで狙うんだな」

そう言って砲撃の合間を勘と視線だけで掻い潜って一気に距離を詰めて行く。

「この!!」

それを迎撃せんと龍砲を最大チャージで放とうとするも

「甘いな」

彼女の視界から一夏が消える。

「____ッ!!?」

一夏は瞬時加速(イグニッションブースト)を使用して彼女の上へと飛び上がったのだ。

そのまま“零落白夜”の刃を振り下ろす。

「オオオッ!!」

その刃が彼女を捉える直前______

閃光が彼等の戦いに割って入った。

「何・・・!?」

一夏は口元を歪ませて、それを見る。

それは異形の姿だった。

巨大で異形、それからは人の気配は感じられない

しかし、それから感じるモノを一夏は知っている。

「何故・・・貴様が・・」

ソレは自分たちを嘲笑うかの如く、腕から強力なビームを放ってきた。

「試合は中止よ!一夏、アンタ狙われている!!」

「分かっている!!」

一夏がいつもよりも声を荒げている。

その表情もいつもの無表情では無く、口元を歪ませて腹立たしげな表情である。

「どうしたのよ!?アンタがそんな顔をするなんて・・・」

鈴の言葉など耳にも入らない

「何故だ・・・何故貴様がここに居る!!」

_______カール・クラフト = メルクリウス!!

“ふふふふ、さて・・何故かな?”
頭の中に直接響いてくる声を不快気に聞く一夏

「何故ここに居るかなど聞く必要は無かったな・・・お前は殺す。」

“やってみるがいい・・”

「オオオオオオオオオッ!!!」

咆哮を上げながら一夏は異形のISに切りかかる。

対する相手も腕からビームを連射して寄せ付けない

が、しかし一夏は全てのビームを躱して突撃する。

“やはり、元々の性能では歯が立たないか・・では、これはどうかな?”

次の瞬間、敵の姿が消えた。

「___ッ!!?」

その感覚は覚えている。

これは・・・

「一夏、後ろ!!」

自分の後ろでは奴の腕が光っている。

しかし、対応しようにも体が重く動いてくれない

“不味い・・・”

その光が放たれる瞬間、それは聞こえた。

___創造




鈴には何が何だかよく分からなかった。

あの無表情な一夏が怒りの表情で異形のISに切りかかって行く。

「一夏!!?」

敵の腕から放たれる高出力のビームの隙間を掻い潜るようにして突撃してゆく一夏

しかし、そこで異変は起きた。

敵のISの雰囲気が変わったと思ったら、一瞬にして一夏の後ろに回り込んでいたのだ。

「一夏、後ろ!!」

思わず声を上げるが、一夏はまるで重力に縛られているかの如く動かなかった。

敵の腕が光、至近距離でビームが放たれようとしてる。

それを見た瞬間、ありとあらゆる物が彼女の中で停止した。

“一夏が死ぬ?・・・また別れるの?・・・・二度と会えなくなるの?・・”

彼女は恐怖する。織斑一夏との別れを

“嫌だ!もう別れたくない!!また会えたのに今度は二度と会えなくなると言うのか!?”

彼ともう一度別れる事など耐えられない

故に彼女は渇望する。“彼と別れたくない”と

そして、彼女の創造は完成する。

好花不常開  
___よき花常には咲かず

好景不常在  
___よき運命(さだめ)常にはあらず

愁堆解笑眉  
___愁い重なれど面(おもて)に微笑み浮かべ

涙洒相思帯
___ 涙溢れてひかれる想い濡らす

今宵離別後
___今宵別れてのち

何日君再来
___いつの日君また帰る

喝完了這杯
___乾しませこの杯を

請進点小菜
___召しませこの小皿

人生難得幾回酔
___人生幾度酔う日有らんや

不歓更何待
___ためらうことなく歓びつくさん

来来来、喝完了這杯再説吧
___さささ、この杯乾して いまひとたび語らいましょう

今宵離別後 
___今宵別れてのち

何日君再来  
___いつの日君また帰る

創造
___創造

告別無永恆世界
___告別無き永遠世界


次の瞬間、一夏は敵の動きが停止している事が分かった。

それは・・

「鈴!」

「一夏と、また別れるなんて許せないんだからぁ・・」

甲龍の龍砲から不可視の糸が伸びており、それが敵の動きを停止させていた。

“成程、やはり面白いな・・”

「ッ!!?」

どうやら、その声は鈴にも聞こえたらしい

彼女の“別れたくない”という渇望から生まれた創造の効果は停滞と引き寄せる事だ。

「うぁぁァァァァァッ!!!」

一気にその糸で敵の機体を引き寄せた鈴は、そのまま双天牙月で切り裂いた。

胴体から両断される敵のIS

しかし、その銃口から光は消えていなかった。

「鈴!!」

一夏は真の創造を発動する。

____発動、単一使用能力:零落白夜

そして彼は詠唱する。

彼の嘗ての創造を発動するために

BGM:Einherjar Nigredo

Tod! Sterben Einz‘ ge Gnade!
___死よ 死の幕引きこそ唯一の救い

Die schreckliche Wunde, das Gift, ersterbe,
___この毒に穢れ蝕まれた心臓が動きを止め

das es zernagt, erstarre daS Herz!
___忌まわしき毒も傷も跡形もなく消え去るように

Hire bin ich, die off‘ ne Wunde hier!
___この開いた傷口 癒えぬ病巣を見るがいい

Das mich vergiftet, hier fliesst mein Blut:
___滴り落ちる血のしずくを 全身に巡る呪詛の毒を

Heraus die Waffe! Taucht eure Schwerte.
___武器を執れ 剣を突き刺せ

tief, tief bis ans Heft!
___深く 深く 柄まで通れと

Auf! lhr Helden:
___さぁ 騎士達よ

Totet den Sunder mit seiner Qual,
___罪人にその苦悩もろとも止めを刺せば

von selbst dann leuchtet euch wohl der Gral!
___至高の光はおのずからその上に照り輝いて降りるだろう

Briah
___創造

Miðgarðr Völsunga Saga
___人世界・終焉変生

一夏の両腕が雪片弐型と一体化する。

そして輝くは彼の両腕

「______オオオオオオオォッ!!!」

凄まじい速度と共に一夏が鈴の命を狙う敵へと幕引きの一撃を放つ

“ふっ、見事だ・・・黒騎士・・また会おう”

そう言って水銀の気配は異形から消えて行くのだった。

「う・・・」

久しぶりにこの創造を使った反動か猛烈な疲労感が彼を襲った。

そこで一夏は気を失うのだった。





「む・・・・・?」

「ようやく気が付いたか・・」

気が付けば、自分は保健室で寝ており、近くに千冬が居た。

「それと・・お前は言ったな・・カール・クラフト = メルクリウス・・」

「・・・・・」

「誰の事だ?」

「篠ノ之束に協力し、創造を付けた張本人だ。」

「成程・・・束の関係者か・・・だが、お前と何の関係がある?」

「・・・・・・」

その言葉に一夏は目を逸らす。

「お前があれ程、怒った所は見たことが無い・・」

「・・・いつか、話せるときが来たら話す。」

そう答えるのが精一杯だった。

「・・・まぁ、良い・・お前が無事ならな」

すると、直後に三人が保健室に飛び込んできた。

「一夏、無事か!!?」

「一夏さん、お身体の方は!?」

「一夏、大丈夫なの!?」

騒がしくやって来た三人に拳骨を喰らわせた千冬は

「一夏、休めよ」

そう言って、三人を連れて出ていくのだった。

ベッドに横になりながら考える一夏

“まさか、あの男がやって来るとは・・何が目的だ?”

そう考えている内に一夏は眠りに就くのだった・・・・・



その翌日

「織斑君、お引越しです。」

真耶にそう言われて、一夏は一人部屋に来ていた。

すると、ドアがノックされた。

「私だ。一夏。」

「どうした?箒、入るか?」

ドアを開けて彼女を中に入れようとすると

「いや、ここでいい・・・・」


「一夏!!」

「何だ?」

「ええと、だな・・その・・」

珍しく箒が言い淀んでいる。

「何だ?」

「ら、来月の学年別のトーナメントだがな・・」

「ああ・・それがどうかしたか?」

「わ、私が優勝したら___」

「?」

「付き合ってもらうッ!!!」

その言葉を理解するのに一夏はしばしの時間を必要とした。

「は?」

「で、ではな!!」

そう言い残して箒は自分の部屋にすっ飛んで行った。

残された一夏は・・・

「・・・・・・何処にだ?」

全く意味を理解してなかった。

駄目だこりゃ・・・

しかも・・・・

「ふ〜〜〜〜〜ん、これは良い事聞いちゃった〜〜」

着ぐるみの様なパジャマを着た少女に聞かれていた。



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■作者からのメッセージ
早めに出てきちゃいましたマッキーパンチ
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