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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第十話
作者:AST   2012/07/06(金) 21:18公開   ID:GaMBFwOFFuY
 シャルルと一夏はベッドに座っていた。
 
 しかし何も語らずにお互い沈黙したままだった。
 
 「シャルル・・いや、シャルロットと呼んでおこうか」
 
 ビクリとシャルル・・否、シャルロットの体が震える。
 
 先に切り出したのは一夏であった。
 
 「お前の大まかな事情は把握している・・・」
 
 「そっか・・仕方ないよね・・僕はもう「お前はどうしたい?」・・え?」

 諦めたように言うシャルロットの言葉を遮るように一夏は問う。

 「俺はデュノア社のシャルルでは無く、お前自身『シャルロット』に聞いている。」

 一夏はシャルロットの眼を見て続ける。

 「お前は『シャルル』では無く『シャルロット』だ。誰が如何言おうとも俺が認める。」

 「僕の事・・認めてくれるの・・?」

 シャルロットの声は震えていた。

 「お前は誰かはお前が決めろ・・やりたい事もな。安心しろ、お前の事は俺が守ってやる。」

 シャルロットを抱き寄せながら、一夏は言う。

 「ありがとう・・一夏・・僕は一夏と一緒に居たい、もっと沢山やりたい事だってあるよ。だから・・助けて」

 「ああ・・お前は俺が守る。」

 泣きながら一夏に縋るシャルロットを抱きしめたまま、黒騎士は彼女を守り抜くと誓う。

 そのまま、シャルロットは彼の胸の中でしばらく泣いていた。

 
 
 
              第十話
 
 
 
 「これからの事だが・・」

 「うん・・」

 一夏はシャルロットに告げる。

 「まずIS学園に居る三年間は安全だ。刺客も潰せば良い。」

 「け、結構物騒だね・・・」

 引き攣った表情を浮かべるシャルロットを無視して、一夏は続ける。

 「この学園に居る間に対策を考える。最悪の場合は亡命だ。」

 「亡命って・・何処に?」

 「聖槍十三騎士団だ。」

 その言葉に驚愕するシャルロット

 「そんな!?無理だよ!いくらザミエル卿が此処に居ても簡単に僕の事を受け入れるなんて国際問題になるよ!?」

 「今更の事だ。お前の情報は彼女等から貰ったのだからな・・」

 「ええッ!?一夏って何者なの!?」

 「正式にでは無いが・・非公式では、聖槍十三騎士団・黒円卓第七位『鋼鉄の腕ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン』だ。」

 「嘘ッ!!?聖槍十三騎士団で黒円卓の大隊長!!?」

 黒円卓は聖槍十三騎士団の幹部であり、世界最強の化け物が居ると言われている。

 その中でも双首領の第一位、第十三位、大隊長の第七位、第九位、第十二位は次元が違うと言われている化け物である。

 第七位と第十三位は不明もしくは空位と言われている。

 「まぁ・・矛盾が生じるが、そういう事だ。」

 一夏は懐から一枚の書類を出す。

 それは部屋を出るときにシュライバーから渡されたラインハルト直筆の書類であった。

 「正式な人員が決まるまで、俺は第七位の席に座る事が許されている。いわば代行扱いだ。」

 「でも、IS学園の特記事項・第二十一が・・」

 これこそシャルロットが学園に居る間は大丈夫な理由である。

 「問題ない、本人の同意が有れば良いのだからな」

 「どうして僕の為にここまでしてくれるの?」

 シャルロットが不思議に思っていた事だった。

 「俺も親に捨てられたからな・・放っておけなかった・・」

 「あ・・・」
 
 その言葉を聞いて思い至るシャルロット。
 
 「とにかくお前は此処に居ても良い・・お前が望めば俺は世界も殺す。」

 「______ッ!!!」

 遠まわしに『お前の為なら世界も敵に回せる』と言われたシャルロットはあふれる涙を抑える事が出来なかった。

 そんなシャルロットを一夏は優しく抱きしめるのだった。

 “僕の存在を、『シャルロット』を必要としてもらえた・・”

シャルロットは一夏に抱きしめられながら歓喜と愛おしさの感情に灼かれるのだった。



すると、部屋の扉がノックされた。

「一夏さん、いらっしゃいますか?」

どうやらセシリアがやって来たらしい

「ああ・・どうした?」

「まだ夕食を食べていらっしゃらない様なので、心配になって来てみましたの。」

「そうか、それは済まないな。」

「い、いえ、この位はどうって事ありませんわ。それにご一緒に食事をと思いまして・・」

ふむ、と一夏は考える。

シャルロットをこのままにして置く訳にもいかない・・

「済まない。シャルが風邪気味だからな・・手が離せん。」

「そうですか・・・」

少し残念そうな声で言うセシリアを可哀想だと思った一夏は彼女の元に向かう。

そして、扉を開けて彼女を労う

「セシリア、わざわざ来てくれて感謝する。済まないな・・」

そう言って彼女の頬にキスをする。

「いえ、デュノアさんにお大事にと伝えてください。それでは・・」

セシリアは何処か熱っぽい表情で言って、去って行った。

「ふぅ・・・・」

一息つく一夏にシャルロットが言う。

「一夏・・今、僕の事をシャルって・・」

「ああ・・シャルロットでは長くて日常で呼ぶわけにもいかないからな・・嫌だったか?」

そう一夏が問うとシャルロットは首を横に振って答えた。

「ううん!シャルって呼んでくれていいよ。」

その表情は何処か嬉しそうだった。

それで・・・とシャルは続ける。

「あの・・オルコットさんにキスしてたよね?」

「ああ・・外国では挨拶みたいなものだろう?」

「その・僕にもして欲しいなぁ・って・・あはは・・」

顔を赤らめて恥ずかしげに言うシャルは一夏の眼にも魅力的に見えた。

「良いぞ。」

一夏はシャルに近づき顔を寄せる。

「ん・・・・・・」

そして彼女は目を瞑って待つ。

「・・・・・・・・・・・・・・」

一夏は一瞬だけ唇にキスしていいかと思ったが、鋼の意志で自制して彼女の額にキスをした。

「・・・唇にしてくれないの?」

「・・・・いいのか?」

「うん。一夏になら・・・・いいよ?」

少し男としての感情が揺れたが動揺を微塵も見せないで置く

「それは・・・待て・・」

「・・・一夏の意気地なし。男なら据え膳食べろって言うのが日本の流儀でしょ?」

「間違っているぞ・・シャル・・」

結局観念した一夏がシャルの唇にフレンチキスする事で事態は落ち着いた。

「えへへ・・・・」

シャルがとっても可愛らしかったとだけ言って置こう・・

一夏はキスする時に一瞬だけ千冬を思い浮かべたのは・・多分、気のせいだろう・・




翌日、一夏は放課後にエレオノーレ達に呼ばれていた。

「ふん、お前も甘くなったものだな・・・・」

「俺は自分の心のままに生きるだけだ・・」

そう言ってエレオノーレに返すマキナ

「ハイドリヒやお前達には感謝している。」

「ふん、私はこの様な形で優秀な兵士が潰れるのが気に食わんだけだ・・」

「そう言って、大佐だって気にかけッ!!?」

バコン!とエレオノーレの拳が余計な事を言う副官の脳天に突き刺さった。

「・・・お前も甘くなったな」

「この世界に来てから軍人が何の為に有るのか考え直しただけだ・・・」

「そうか・・・」

「ボーデウィッヒの事も頼む」

「・・・分かった。」

どうやら此方の世界は元居た世界よりは平和的になりやすい様だ。


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