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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第十一話
作者:AST   2012/07/06(金) 21:20公開   ID:GaMBFwOFFuY

一夏がシャルロットの事をシャルと呼ぶようになってから四日たった。

一夏は箒、セシリア、鈴にシャルを加えた面子でアリーナに来ていた。

いつも通りの訓練内容で

セシリアは集中して創造の維持練習をしているが、創造が上手くいかず追尾性も弾幕分散も、かなり雑だった。

鈴も創造の練習をしているが、まだイマイチ感覚が掴めてないのか、発動するのにも一苦労し、やっと展開できたと思ったら糸はすぐに切れた。

箒は二人の相手をして・・というか、一夏の訓練相手を誰がするかという事で女の争いが発生し共倒れ。





第十一話





現在、三人は疲労でぐったりしていた。

「あ゛〜〜〜〜しんどい…」

「……(気絶中)」

「くうぅ・・・・」

そして、一夏はシャルが纏っている専用機『ラファール・リヴァイブ・カスタムU』の五十五口径アサルトライフル『ヴェント』を借りていた。

何発か撃って、一夏は前世での射撃訓練を思い出していた。

するとシャルが不思議そうに聞いてきた。

「一夏って何処かで銃を使ったことあるの?」

「何故だ?」

「射撃する構えもしっかりしてるし、命中率も悪くないし、とても初めてには思えない」

確かにその通りだと一夏も思う。

一夏が騎士団第七位の代行に任命されているとはいえ、全くISに関わることも無い一般人だったのだから。

故に一夏はこう言う。

「前世で軍人だった。」

「……そ、そう」

反応に困る答えを返されて困惑するシャル。

彼女は冗談だと思っているが、事実である。

二人で練習していると、アリーナにいた他の生徒達のざわめきが聞こえてきた。

「ねえ、ちょっとアレ……」

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」

アリーナの入り口を見ると、黒い装甲を纏った転校生ラウラ・ボーデウィッヒの姿があった。

その後ろには真っ白な装甲を纏ったシュライバーの姿もある。

シュライバーの方はその愛らしさと人懐っこさから、クラスメイト達とは仲が良いが、ラウラの方は誰とも関わろうとしない

「おい」

ISの開放回線からラウラの声が飛んで来た。

「何だ?」

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い、私と戦え。」

「断る。貴様の気持ちも分かるが、今は戦う時ではない」

一夏は冷静にラウラへ言い返す。

「…貴様がいなければ、教官は決勝を棄権することも無かった。」

「………」

その言葉に一夏の拳が強く握られる。

「貴様さえいなければ、教官は大会二連覇の偉業を成し得て、現役を引退することも無かった・・・だから、私は貴様を――――貴様の存在を認めない」

ラウラの怒りを受けて、一夏は怒りを堪えるのでも無く、ただ悲しんでいた。

自分が不甲斐無かった為に誘拐された挙句、姉の名誉を傷つけてしまった。

彼にとっての黒歴史。

嘗ては一騎当千の猛者であった彼が何も出来ない

どうして、こんな時に力が無いのか!?

彼はあの時ほど力を渇望した事は無かった。

あのマキナであった彼が、黒騎士であった彼が、

織斑千冬の胸の中で己の無力さに泣いていたのだから

「だが、今は戦うときでは無い」

そう言って一夏はラウラを見据える。

「ふん…ならば、戦わざるを得ないようにしてやる!!」

ラウラの纏っているIS『シュヴァルツェア・レーゲン』の左肩に搭載された大型カノン砲が火を吹く______事は無かった。

何故なら

「シュライバー…貴様」

「ザミエルに言われていた筈だよ?規律は守れって」

シュライバーの纏う白きIS『暴風纏う破壊獣リングヴィ・ヴァナルガンド』の腕がカノン砲の砲身を抑えていた。

華奢な外見とは裏腹に凄まじいパワーである。

「チッ、いいだろう。織斑一夏、貴様を潰す機会はまた今度だ。その時までに首を洗って置くが良い」

そういい残して、ラウラはアリーナから去っていった。

「はぁ〜〜〜やれやれだよ…」

「助かった。」

一夏がシュライバーに感謝の言葉を告げる。

「別にいいよ。」

シュライバーは一夏に語る

「あの子は元落ちこぼれだった。それをブリュンヒルデの指導を受けてトップになった…つまりブリュンヒルデは恩師って所だね」

「だからこそ、姉さんの名誉に泥を塗った俺が赦せないか…」

「そういう事、でも今のままだと何時かは壊れるよ。」

“ボクみたいにね…”と最後に付け加えるシュライバー

「ボクの場合は本質を見抜かれて壊れたけど、あの子は中身が無いよ。」

シュライバーは“分かるだろう?”と言う眼で一夏に言う。

「兵器として生まれたけど、結局は人間だ。中身の強さも重要だけど、あの子にはそれが無い」

“だから一度でも敗北すれば壊れるよ”

そう言ってシュライバーはアリーナを去っていった。

「シュライバー、お前も変わったな…」

“あの殺人狂が優しくなるとは…”と思い、ラウラのことも考える。

ラウラ・ボーデウィッヒ、昔のシュライバーにも似ているが

“いや、あれはアイン・ゾーネンキントの方だな…”

城の心臓になり、自分達を打ち破った彼らに諭させられるまで自分が部品であることに人間らしさを持たなかった黄金の息子

ならば、と一夏は思う

自分が兵器としての彼女を殺し、兵器としてでは無く、一人の人間としての強さを持って生きて欲しい

それが自分の贖罪の一つだと彼は決意するのだった・・・・

それを近くで見ていたシャル

「…一夏」

シャルには一夏が何を考えているのかは分からない。

だが、これだけは言える。

“例え彼がどんな苦難に襲われようとも自分は彼の傍にいて支えてあげるんだ”

シャルもまた一つの決意をするのだった・・・

その後、一夏はまたエレオノーレに呼ばれていた。

「何の用だ?」

「お前がボーデウィッヒと戦うかもしれんのでな、警告だ。」

「警告だと?」

そうだ。と苦々しい表情をしながら彼女は言う

「我が国に亡国企業と繋がっていそうな者が居る。」

「それがどうかしたのか?」

「そいつ自身はすでに始末されていた。が、そいつは軍に顔を出していた。」

「つまりISか」

その言葉にコクリと頷くエレオノーレ

「そうだ。今の所、騎士団には何も無い。ならば考えられるのは…」

「ボーデウィッヒの黒兎部隊か…」

これはまた波乱が有りそうだと一夏は思った。


そこは軍の司令室の様な場所に其れはいた。

「これが粗悪な模造品を生み出すシステムか…ふむ」

その影法師の様な男は司令室のコンピューターに触れると

ドロリ、と水銀の様な何かが機械の隙間から内部へと入り込んでゆく

それを愉快そうに男は哂っていた。

「ふふ…これで模造品ではない違った物になる。」

“精々楽しませてくれよ?…ニグレド”

そう言い残して、その男:メルクリウスは消え去っていった。

後に残ったのは、何の変哲もなさそうな司令室の光景だった。

だが、確実に水銀はその世界を侵食していた・・・・・・・・・・・・・




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