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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第十二話
作者:AST   2012/07/10(火) 21:12公開   ID:BDCE5W2kfjg
 ある月曜日の事だった・・・
 
「え、本当ですの!?」
 
 「嘘じゃないわよね!?」
 
 「本当だよ〜〜」
 
 「そうそう!この噂、学園中で持ち切りなのよ?月末の学年別トーナメントで優勝したら織斑君と交際できるんだって!」
 
 「「ゴクリ…」」
 
 その言葉に一夏に恋する乙女の二人は息を呑む
 
 その横では箒が頭を抱えていた。
 
 発端となった箒の今の気持ちを語ると…
 
 “…どうしてこうなった?”
 
 この一言に尽きる。
 
 
 
 
 第十三話
 
 
 
 
 「むぅ・・・・?」
 
 一夏は得体の知れない悪寒に身を震わせた。
 
 「どうしたの?」
 
 「いや、なんでもない」
 
 シャルにそう返して教室へ入ると、何やら視線が自分に集中している事に気づく一夏
 
 シュライバーがニヤニヤと面白いモノを見る様に、他の女子達は何故にか顔を紅くしながら見てくる。
 
 “何だこの状況は?”
 
 とりあえず一夏はセシリアと鈴に話しかけようとするが…
 
 「あっ、い、一夏。おはよ。そ、それじゃ、あたし、自分のクラスに戻るから!」
 
 「そ、そうですわね!私も自分の席につきませんと。おほほほほほほ」
 
 明らかに怪しい様子の二人、おまけに他の女子も何処か余所余所しい様子で戻ってゆく。
 
 「・・・・・・・?」
 
 一夏は不思議に思ったが気にせず、いつも通り授業を受けるのだった。
 
 
 
 
 その日の午後、一夏は部屋に押しかけてきた女子たちの誘いを断っていた。
 
 何故かというと、学年別トーナメントでは二人一組のタッグマッチとするという告知がなされた為に、大勢の女子生徒が押しかけてきたのだ。
 
 しかし一夏はシャルの事情も考えて、彼女とペアを組んだと言って断っているのだ。
 
 “ありがとう、一夏”
 
 “別に構わん”  

シャルと一夏は目線で会話するのだった。
 
 
 
 
 
 「で、ロシア代表で暗部の貴様が何のようだ?更識楯無」
 
 「流石は、黒円卓の赤騎士と言った所かしら?」
 
 エレオノーレは副官ベアトリスと共にIS学園生徒会会長の更識楯無と生徒会室にいた。
 
 彼女の傍には生徒会会計の布仏虚もいた。
 
 「下らん戯言は不要だ。単刀直入に話せ」
 
 「直球過ぎます。大佐」
 
 エレオノーレの言い様にベアトリスが突っ込む
 
 しかし楯無は気にした様子も無く
 
 「話が早くて結構よ。貴方に聞きたい事があるの」
 
 「話してみろ」
 
 そこで楯無は真剣な声で言う。
 
 「カール・クラフト・メルクリウス」
 
 「________」
 
 その言葉にエレオノーレの眼が僅かに細まる。
 
 「彼も言っていた名前よ」
 
 彼とは間違いなく一夏の事だろう
 
 「私たちでも篠ノ之束の協力者にして、あの科学的に説明出来ない『創造』と呼ばれるシステムの開発者とだけしか分からなかった。さらに本人の素性は不明」
 
 しかも、と楯無はエレオノーレに言う
 
 「それは彼から得た情報で私たちは存在すら知りえなかった。」
 
 そこが問題なのである。
 
 何も知らないはずの一般人だった彼が知っていて、暗部である自分達が知りえないという事が。
 
 「そして私見だけど彼は黒円卓の代行になる以前に、貴方達と黒円卓と繋がりを持っている。それもかなり深いモノをね。」
 
 流石は暗部の人間と言うべきだろう
 
 「……中々の洞察力だな。」

 「これでも人を見る目はあるわよ」
 
 ニヤリと笑う楯無をエレオノーレは素直に賞賛した。

 彼女の様な人間に隠し事をして、余計な事をされるのも面倒なので彼女は情報を与えることにした
 
 「カール・クラフト・メルクリウス、奴は化け物だ。」
 
 エレオノーレは語る。あの詐欺師の事を
 
 「聖槍十三騎士団副首領・黒円卓第十三位『水銀の王(メルクリウス)』カール・エルンスト・クラフト。正真正銘の化け物だ。」
 
 「第十三位は空席では無いの?」

 「公式ではな。実際には奴が副首領かつ最大の怨敵だ。」

 「副首領が最大の怨敵?」
 
 不思議そうに問う楯無
 
 「ああ、黒円卓の同胞は皆、奴の存在を無かった事にしたい程だ。」
 
 「裏切ったの?」
 
 「違う。入団する際に呪いを受け、そして全ての元凶だった。」

 「全ての元凶?」
 
 「その辺りは教えられん」
 
 エレオノーレは深く聞いてこようとする楯無を留めた。
 
 「じゃあ『創造』と呼ばれるアレは一体何かしら?」
 
 楯無がもう一つ気になっている事を聞くと
 
 「詳しい事は分からんが、簡潔に言うならば魔術だ。」
 
 「……………魔術?」
 
 予想外の言葉に呆けてしまい、オウム返しをしてしまう楯無
 
 「まぁ、信じられないだろうがな」
 
 「……いえ、よく考えてみればISも魔術(オカルト)の様な物だもの」
 
 「確かにな」
 
  量子化などオカルトと大差無い
 
 楯無は更に問う
 
 「貴方程の人間が化け物と言うのだから、カール・クラフトは余程の存在なのね」
 
 「ああ、私でも傷一つ付けられん」
 
 その言葉に驚愕を眼を向ける楯無
 
 「……そこまでの実力なの?」
 
 「そうだ。核でも死なないな」
 
 「人間じゃないわね」
 
 「当たり前だろう?」
 
 何を今更?と言った表情でエレオノーレは楯無に言うのだった。
 
 舞台裏の一幕、赤騎士は学園最強と密談。
 
 
 
 
 
 
 そして、六月の最終週
 
 本日は学年別トーナメントの第一回戦が始まる日だ。
 
 IS学園の混雑具合や慌ただしさは予想以上に凄く、生徒達は様々な仕事に忙殺されていた。
 
 シャルと二人きりで更衣室にいる一夏はモニターからアリーナの観客席の様子を見ていた。
 
 そこには各国政府の関係者、研究所員、企業エージェント等が揃い踏みだった。
 
 しかし一夏が見ているのは彼等などではない。

 来賓の中でも一際目立っている存在、多くの中にいて圧倒的な存在感を放つ者
 
 「彼が……」
 
 「ああ、そうだ。」
 
 隣でシャルが呟き、一夏は頷く
 
 彼ら二人の視線はモニターに写る黄金の君に向けられていた。
 
 「聖槍十三騎士団・黒円卓第一位『愛すべからざる光(メフィストフェレス)』ラインハルト・ハイドリヒ中将
数十年前のナチスドイツの高官と同姓同名所か、容姿もカリスマも能力も同じ。世界最高の男と称されるのも頷けるよ。」

 一度、資料で見た事があるシャルは余りのチート振りに溜息をついていた。
 
 各国の要人と会話をするラインハルトの態度は傲岸不遜である。
 
 彼のカリスマが凄過ぎるのか、各国の要人達も彼の前では萎縮してしまっている。
 
 この世界で彼と気軽に話せるのは一夏の知る限りでは、千冬、自分、水銀、束の四人位である。
 
 束は実際に会ったことが無いから予想だが。
 
 すると画面が切り替わって対戦表が表示された。
 
 「あ、対戦相手が決まったみたい」
 
 そこには______
 
 「…………………」
 
 「…誰か仕組んだ?」
 
 シャルの呟きに“私は本当に何もしていない”と水銀の声が聞こえた気がした。
 
 自分達の相手はラウラ・ボーデウェッヒ、篠ノ之箒のペアだった。


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