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マブラヴ 転生者による歴史改変 3話
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2012/07/07(土) 14:46公開   ID:eoF2Dat1HnA
 「なーなー、まりもん、強くなりたい?」

 「もー、まりもんっていわないでよ。あたしのなまえはまりもだよう」

 「なに、気にするなまりもん。誰がなんと言おうと、おまえはまりもんだ!かわいいよ、まりもん!」

 そう、某国民的RPGのポケなんとかのように実にすばらしいニックネームではないか。
 後にありとあらゆる人たちから言われるおれのネーミングセンスのなさの片鱗は、このころからすでに姿を見せ始めていた…

 「え?かわいい?えへへへ。あ、でもあたし強くなんてなりたくないよう。かわいいお嫁さんになるんだもん」

 「ばかもの!お嫁さんになるためには強くあらねばならんのだ。なぜなら、嫁は家庭を守らなければならないからだ!」

 「え?そうなの?」

 「ああ、お嫁さんっていうのはな、時にやさしく、時に強くあらねばならないんだ。旦那が留守の時は家庭を守る必要がある。そのための強さだ!」

 うん、ぶっちゃけてきとーな理由。だって結婚したことなんてないんだもん、おれ。
 あーあ、リア充な人生を送っておきたかったな、前世。

 「うん、わかった。じゃあ、強くなりたい」

 こくりとかわいらしくうなずくまりも。ふっ、所詮は小学生低学年のお子様。おれの完璧な話術の敵ではないわ。
 …まだまだ未来の話になるが、このやりとりを夕呼に話したら、まりもってほんとうにお馬鹿さんだったのね、なんていいながら、まりもを哀れみの目で見ていた。何だったんだろう、あれ。

 と言うわけで、本人の許可を得たおれはまりもの魔改造計画に着手した。
 強くなるといっても、特殊能力を得るには経験値が必要になってくる。
 その上ある程度検証が行われていて、有効な能力を効率的に取得するのが一番能率がいい。
 そんなわけで、まずは経験値の獲得に有効な知力系補助の特殊能力を取得させることにしたんだけども、そこで驚くべき事実が判明する。

 神宮司まりも、『思考制御』に必要な経験値、200。

 そう、『他者状態管理』を使ってまりもにまずは思考制御を覚えさせようとしたんだけど、なんと消費経験値がおれのときと比べて実に五分の一なのだ。
 え、なにそれ、差別?
 ほかにも取得可能な特殊技能を見てみるが軒並みおれの五分の一になっていた。
 ひでえ…なんたる格差社会。
 ちなみに能力に必要な経験値についての1:10のレートは同じだった。少し安心。
 不審に思ってまりものデータを再度調査すると、気になる項目があった。
 それがこれだ。

 特殊属性
 マブラブExサブキャラクタ
 マブラブALメインキャラクタ(メインヒロインではない(笑))

 なんだこれ?
 メインキャラクタ?
 いや、それより突っ込むところは(笑)のところか。
 いやいやそれより、メインヒロインとかメインキャラクタとか、これじゃまるでゲームじゃないか。しかもギャルゲー。
 今更ながらこの世界についての考察を行う。
 おれが生きてきた世界ではありえない。ならば別の世界だろう。そう、それは確実だ。
 そしてこの世界はAL因果律なるものが存在する。
 それまあはいい。転生によるおまけ能力がなければ気づかなかっただけで、前世の世界にも同じようなものがあったのかもしれないしな。
 だがこの特殊属性については、少々考えざるを得ない。
 そう、この世界がゲームの中の世界ではないかという可能性。
 ならば合点がいくこともある。
 すなわち、AL因果律=ゲームのシナリオ。

 絶望がおれを襲う。
 ちょっとまて、それはあまりにもあんまりだ。
 だってシナリオってのはつまり、絶対の確定事項じゃないか。
 この世界がゲームだってのは全然ではないが、たいしてい気にならない。もともと多次元解釈支持者だ。前世だって誰かの何かの物語の一篇だったのかもしれない。でもおれは自分の意志で生きて、そして死んでいった。
 そこに悔いがないと言えば嘘だが、誰を恨むでもなく納得のいく生き様だった。
 だがこの世界ではどうだ?
 まりもはこの世界を構成する物語のメインキャラクタ。
 そして決定付けられている死の因果。
 救いようがない。どうしようもなく救いようがないじゃないか。

 負のスパイラルに陥る寸前、おきまりの『思考制御』が炸裂する。
 そうだ、世界がなんだ。定められた因果が何だ。
 おれは、おれは『因果律への反逆』だ。
 これが物語であれば、そんな物語は破綻させてやる。
 これが因果であれば、そんな因果は破綻させてやる。
 あがいてあがいてあがき抜いてやる。
 誓いは鋼。
 想いは深く、しかし決して沈まず、錆びず、腐らず。

 まりも、絶対におまえをこの因果(物語)の犠牲になんかさせない。

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