悪いのは鎧衣のおっさんだ、確かにそう言ったが、それは嘘じゃない。
だいたいが、「真・近接戦闘長刀」を作るときの会話からして、
「なあ、鎧衣さん、こいつを改造したいんだけどいいかな?」
「改造?ふむ、なにをするかはわからないが、いいんじゃないかね?現場の担当者である小塚という人物は、若いながらも出来る男だ。おまけに度量も大きい。君が少々無茶をしたところで問題はないだろう」
ってなもんだったし、「真・36mm突撃銃」「真・120mm滑空砲」のときも、
「なあ、状態によっては廃棄も可って書類に書いてあるんだけど、廃棄処分の扱いってことにしといて、好きに弄ってもいいか?」
「ふむ、書類上はなんの問題もないな。なに、以前話した小塚という優秀な者がいる。少々の無茶は問題ないだろう」
などと責任を小塚さんにぶん投げてたもんな。
いや、分かってるんだけどな、少々の無茶じゃなくて、すっげー無茶をしたってことは。
「鎧衣さん、鎧衣さん、なんかしらんけど、戦術機のパーツが整備品として入ってきたんだけど。例によって状態によっては廃棄も可って書類に書いてあるやつが」
「ふむ、そうなのかね?私には分からないが、そういうことなのだろう?」
「やっぱそういうことなのか?」
「ふむ、そういうことのなのだろうな。なに、いざとなれば小塚という傑物がいるからね、なんとでもしてくれるさ」
この辺りからだよな、小塚さんって苦労してんだろうな、っていう思いが湧いてきたのは。
「なあ、さすがにコクピット周りを弄くり回すのはまずいよな。なにせ、戦術機の中枢パーツだし」
「ふむ、確かに問題は大きいだろう。だが、小塚という偉大な漢なら、その程度のことなら気にしないと、私は思っているよ」
これが止めだったんだ。すまない、小塚さん。
改良したコクピットモジュールを積んだ撃震の上半身を納入した翌日に鎧衣のおっさんから、
「小塚という人物がいてね。彼は実に優秀で、職務に忠実な人物だった」
「小塚って、よく話に出てきた人だよな?なんで過去形なんだ?」
「ふむ、知りたいかね?」
「いや、なんかいやな予感しかしないからいい」
「実は彼は」
おれの意見をガン無視して、鎧衣のおっさんはしゃべり続ける。この辺りはさすがに慣れた。最初は、どんだけ突っ込んだことやら。それでもいっこうに堪えないんだよな、このおっさんは。
「納入された撃震の上半身パーツを見て、その出来に感銘を受けるあまり泡を吹いて倒れたそうだよ。職場復帰はしばらくさきになるとのことだ」
「小塚さぁぁぁぁぁん!」
以上、ことの顛末だ。
小塚さんの一刻も無事な回復を祈っている。
そんなこんなで、13歳のおれの状態をどうぞ。
基本情報
名前:立花 隆也
性別:男
年齢:13歳
身長:156cm
体重:49kg
身体能力情報
筋力:3734(284+6000)
体力:3637(290+6000)
俊敏:3499(287+6000)
器用:2929(223+6000)
感覚:812(731+600)
知力:1040(1001+300)
精神:1032(1129+300)
気力:3942(300+6000)
今のところ戦術機とがちでやり合うにはパワーが足りない。
気を込めて全力でぶん殴ると装甲を大破させることは可能なのだが、気を込めるのに時間がかかるせいで、その前に36mmで蜂の巣にされてしまう。
まだまだ精進が必要だ。
通常技能情報
・電算機制御言語:1404
・分子工学系勉学:989
・半導体工学系勉学:532
・剣術:867
・後方撹乱技術:391
・気放出:1703
・気混入:1655
・飛翔術:307
電算機制御言語はアビオニクスやらOSを改良しまくっていたら、一気に技能が上昇した。
分子工学は素材工学をいろいろとやっているうちに派生していた。
半導体工学は、鎧衣のおっさんに半導体工場を紹介してもらって、そのノウハウを吸収しているうちにいつの間にやら取得していた。
剣術はついにじいさんを超えた。
おかげで最近はじいさんが挑戦者としておれに突っかかってくるという立場の逆転が起こっている。
なんかじいさんがすっごい生き生きしているんだが、しかも殺る気まんまんで。すっげえ、命の危機を感じている今日この頃だ。
気放出、気混入については順調に成長中だ。
気放出は、『現実世界脳内再現』での検証結果から小さな丘くらいは消し飛ばせるくらいの威力を持つに至ったことが判明している。
気混入は、複雑な部品にまでその効果が及ぶようになっている。『現実世界脳内再現』での検証結果では、車一台の隅々にまで気を行き届かせて爆走させて突撃することにより、戦術機の装甲さえ簡単にぶち破ることが出来る。もちろん車には一切のダメージなしでだ。
で、肝心要なのが『飛翔術』だ。
うん、予想は当たっていると思う。
空を飛べるようになりました。
いやいや、マジで。
最初は、気放出を地上に向けて撃って、その反動で空中遊泳をしていたんだが、だんだんと物足りなくなくなったんだ。
それでどうにかして空を飛べないかと試行錯誤した結果、ある推測に思いが至ったわけだ。
以前話したと思うが『気配同化』というやつは、周りの気に同化することで自身の気配を消す技能だ。ということは、おれたちの周囲は気に満ちている。
そこでおれが思い至ったのは、陰陽の思想だ。磁石や陰陽の思想どおりに、気にもプラスとマイナス、陽と陰のような反発しあう属性があるのではないかという発想の元研究を続けた結果、予想通りの結論を得ることができた。
つまりは、おれの体の特定の部位に、周囲の気と反発し合う属性の気をまとうことで爆発的な推進力を得ることができたのだ。
気の属性の変換なんて離れ業を行えたのは、ひとえに『気制御』のおかげだ。ここまでくると後はこの応用だ。
進みたい方向の反対側に、周囲の気とは相反する気を纏うことにより移動することが出来る。つまり上に行きたいなら、下の方向の気の属性を弄ってやればいい。
そんなこんなで、空を飛べるようになりましたとさ。
我ながら馬鹿げていると思うんだが、実際に飛べたんだから仕方がない。事実は事実なのだよ。
特殊技能情報
【新規取得のみ抜粋】
・身体強化:LV3(VerUP)
・気強化:LV3(VerUP)
・剣の秘奥(剣術が800を超えて、瞑想をしてたらいつの間にか取得していた)
『身体強化』、『気強化』のレベルを上げた。おかげで完全に人外です。
剣の秘奥なんだけど、あれだ、昔の剣豪が神社にこもって開眼するのと同じ理屈だ。剣術が800を超えて、かつ感覚、精神が一定値を超えた状態で瞑想すると取得できるようだ。
効果としては、剣術系の技能に全て+50の補正がつくようだ。
おかげで一気にじいさんを追い越してしまった。そのときにじいさんと一悶着あったんだが、それについては思い出したくない。
こっちの準備は着々と整っている。
相手は未だその姿すらわからないBETA、そして覆すことが可能なのかすら不明な世界を覆う因果律。
だがおれは諦めない。
見るがいい、人の持つ可能性を。
そして思い知るがいい、おれの抱く反逆の意志を。