「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明する」
三時間目の授業は千冬が教壇に立っている。
(頭が痛いけどノートに言われたことを書いておこう……)
一夏はとりあえず聞こえた言葉をひらがなでノートに書くことにした。
「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
「ああ、そのまえにさらいしゅ……ん? 代表?」
ノートに言われたことを書いていると何かを代表を選ぼうとしていることを理解した。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点で各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」
教室がざわつきだす……
(そりゃ、誰もなりたくないだろう。面倒そうだし……)
とにかく自分はならないと心に決め、一夏はクラス長が決まるのを待つことにした。
「はいっ。織斑君を推薦します!」
(ん?)
何かおかしな声が聞こえる。
「私もそれが良いと思います!」
(ん? ん?)
「では候補者は織斑一夏……他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」
「あ、俺はセシリアさんが良いとお……」
一夏、やばいと思いセシリアを推薦しようとしたその時。
「待ってください! 納得がいきませんわ!」
机をたたき音を響かせ、セシリアが一夏を否定する。
「おぉう。オルコット」
一夏が神に祈るがごとくセシリアを見つめる。
「そのような選出は認められません! 大体ISの事を何も知らないこんな男がクラス代表だなんて言い恥さらしですわ! わたくしに、セシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
セシリアはクラス中に響く声で怒鳴る。
(よくそんな言葉を千冬姉に言えるなぁ……)
一夏はその言葉にただ感心していた。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。野球なんて野蛮でサーカスのような見せ物で遊ぶのが大好きな方はずっと遊んでればいいのですわ!」
セシリアが一夏を挑発するようにさらに大きな声でしゃべる。
「おい、今、何て言った? 何ていったよオルコット〜!」
「あら? 極東の猿が起こりましたかしら?」
「よくわからないけど馬鹿にしてるだろお前!」
「あらあら意味がわからないなんてさすがはお猿さんですわね」
セシリアと一夏はにらみ合う。
「もう怒ったぞ!」
「あらお猿さんが真っ赤になりましたわ」
「むむむ……」
「ならば決闘で決着をつけましょうか!」
その時一夏の帽子が落ちる。
「やってやる。やってやるよ!」
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い―――いえ、奴隷にしますわよ」
「ならおれが勝ってお前を奴隷にしてやるよ!」
「いいますわね! まぁ、ありえないですけど。万が一、万が一ですがわたくしに勝てたら一生奴隷になって差し上げますわ!」
目の前の状況についていけないクラスメイトとロリ巨乳メガネはざわ・・ざわ・・としている。
「と、とんでもない展開を目の前で見ることになってしまったでやんす……」
平次はごくりと息をのむ。
「よし。千冬姉! 決闘でいいか!」
「ふ……いいだろう。それでは一週間後の月曜。放課後、大三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」
そう言ってセシリアは余裕の笑みを浮かべながら席に座る。
一夏はやる気に満ちたまま席に座り、授業の内容を何も聞かずにその時間は終わった。
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「授業の内容を全然覚えていない……」
放課後、一夏は机の上でぐったりとうなだれていた。
「一夏君。ほらオイラの教科書読みが中板から一夏君のと取り替えっこするでやんす」
「へ、平次君! ありがとう!」
平次の手を掴み一夏は涙を流しながら礼を言う。
それを見る女子の声は荒い。
「おい、織斑」
「千冬姉?」
涙を流していると千冬がやってくる。
「今朝していた野球についての話だ。運動場に来い」
そう言って千冬はその場を後にした。
「野球か……そうだな、野球か……野球だ!」
「とにかく運動場に行くでやんす!」
そして二人は運動場に向かった。
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「ここが」
「運動場でやんすか」
「そうでやんす」
「「ん?」」
運動場についた二人は何か違和感を感じる。
「えーと、1」
「2」
「3」
「「あれ?」」
違和感を感じる二人以上いる。
「オイラを言ないものとして扱う気でやんすか!?」
「うわぁっ! だ、誰?」
「オイラの名前は荷田 幸浩でやんす」
「兄ちゃんにそっくりでやんす……」
そう言いながら平次は驚く。
「そう。ここに集められたIS学院数少ない男子で野球をしたいメンバーってことさ」
「そう言うこと」
するとさらに二人の男が現れる。
「男子がまだいたのか!」
「これはもしや」
二人は期待に満ちた目で声を上げる。
「そう、その通り」
「そ、その声は!?」
一夏の聞き覚えのある声がする。
「そう、IS学院初の男子野球部設立。そして部外顧問で監督は俺」
全員の視線がその男に集まる。
「元プロ野球選手。小波一真だ!」
次回に続く