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マブラヴ 転生者による歴史改変 21話
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2012/07/07(土) 15:24公開   ID:eoF2Dat1HnA
 なんとか無事に15歳になった。西暦は1989年だ。
 いや、本気で過労死するかと思った。
 帝都と柊町の往復に加えて、マブレンジャーどもの鍛錬、まりもの鍛錬、小塚さんへの技術提供用資料の作成、自分自身の鍛錬。
 成長期なんで睡眠時間だけは無理矢理にでも確保したんだが、そのせいで起きているときはかなりキツキツのスケジュールだった。
 その苦労の甲斐があって、マブレンジャー達は順調に感覚と精神の鍛錬ができている。このままの調子でいけば、まりもの時よりもはやく気制御を取得することも可能だろう。
 まりもについても自主鍛錬を行っているので、伸びは順調だ。まあ、真面目に学校に出ている分おれに比べると相変わらず伸びは遅いが、それでも十分だ。
 で、問題の夕呼なんだが、なんか知らんが時空因果律量子理論なる理論を発表して、一躍学会の注目の的になっているらしい。なんでも帝国大学からの誘いも来ているのだが、今のところはまだ移籍するつもりはないようだ。
 理由について聞いてみると、まりもやあんたといたほうが良い刺激になるのよ、べ、べつにあんた達と一緒にいたいからなんて理由じゃなんいだからね、などといっていた。若干耳が赤かったような気がする。
 「ツンデレ乙!」とからかったら、意味が通じていないはずなのにぼこぼこにされた。さすがは天才。侮りがたし。

 国内の動きなのだが、1986年に組織された帝国本土防衛軍とやらに、撃震弐型が正式採用されることが決まったらしい。
 F−15作ったアメ公、涙目、プギャー。などとお偉いさんがほざいたとか、ほざいていないとか。
 F−15の整備マニュアルと設計図を小塚さんに見せてもらったが、あれもなかなかのもんだと思うんだがな。ちょっと弄れば、初期の改良型・撃震弐型なみの数値はすぐにたたき出せるスペック持ってるし。
 まあ、費用面で見ると撃震弐型に軍配が上がるわけだが。管制ユニット周りについても、まるまる入れ替える必要があるしな。
 そういえば1987年、つまり一昨年なんだが日本帝国はめでたく国連の常任理事国入りを果たした。オーストラリアも同時期に常任理事国入りしたらしいんだが、こちらは拒否権が20年間凍結らしい。
 同時期に常任理事国入りしたのに日本の拒否権が凍結されなかったのは、各国への積極的な技術供与が高く評価されたためらしい。

 さて、ここから本題に入ろう。
 今おれの最大の懸念事項はいうまでもなくAL支配因果律、こいつだ。
 こいつをどうにかしないことには、最速で武が1998年に死んでしまう。
 武をのぞくマブレンジャーたちの死亡時期が同じことからいって、死亡確定にかかわるのは外的要因の可能性が極めて高い。
 もちろん、非常に強い毒性を持つウィルスが突如発生して、とかいう可能性もあるのだが、その可能性はほぼないだろう。
 AL因果律、これによる死亡確定に大いに関係すると予想されるのがBETAという要因だ。
 今までに死亡してきた人は数多くいた。寿命で死ぬ人、病気で死ぬ人、それぞれにすべてAL支配因果による死亡ということはなかった
 つまり、AL因果律死亡確定に記された人々は、AL支配因果律において何らかの意味を持つ死亡と言うことになる。
 AL支配因果律=なんらかの物語のシナリオ、という解釈をしているが、そうなれば死亡するということは物語に大きな影響を与える可能性があるからだ。
 そして前世では存在しなかったBETAと言う存在。これらを掛け合わせれば、自ずと答えはでるだろう。
 AL支配因果律の、とくに死亡確定に関しては鍵を握っているのはBETAではないかということだ。
 前世との違い、この世界ではBETAの存在が重要な位置を占める割合が非常に大きいと判断している。確かに日本国が、日本帝国になっているとかの違いはあるが、一番の違いやはりBETAの存在だろう。
 ALとBETA、まったくつながりがない単語同士だが、これが何らかなの意味合いを持ってることは間違いないだろう。
 そう考えれば、ある程度予測はつく。つまり1998年前後に武が死亡する、つまり日本へのBETA侵攻が予想される。
 次にマブレンジャー、まりもの死亡予定日付から、その2001年12月頃から2002年にかけてBETAに対する何らかの動きがある。とくに、マブレンジャーの死亡確定日が集中していることから、あいつらが参加する作戦中の死亡の可能性が高い。
 おまけにメインヒロインの純夏まで機能停止となっている。つまり実質的なクライマックスは2002年1月1日ということになる。
 そんなこんなでBETAに対する情報集を本格的に開始したおれは、まずは小塚さんからBETAの情報を仕入れた。その結果、おれは実際にBETAと接触する必要性を感じていた。
 ぶっちゃけ、資料だけではよくわからないのだ。
 やはり、おれは実践主義な訳だ。現場に行ってみて、実際に相手に触れて、そしてその能力を判断する必要があるだろう。大型種である、要塞級、突撃級、要撃級、小型種である戦車級、闘士級、光線属種である光線級、重光線級、こいつらの詳細なデータを見せてもらったが、データだけではあいにくと『現実世界脳内再現』での再現はできない、
 ついでにいえば、BETAの最大の驚異はその物量、そして予測できない箇所からの地下侵攻、そして航空戦力を無効化する光線属種だということを教わった。それだけあれば十分だ。
 おれは密かに作製していたフルフェイスで外部からは素性を伺うことが不可能な強化スーツを装着して、全速で大陸へと飛び立っていった。
 そう、そこがまさに人類と異種族生命体との命のやりとりが行われている現場であるという緊張感を欠如したまま。



 現在の巡航速度は800km/h、まさにユーラシア大陸まではひとっ飛びと言ったところだ。
 強化スーツにはステルス機能をふんだんに盛り込んであるので、目視以外での確認は難しいので、結構好き勝手に飛び回っていた。
 目標はカシュガル(喀什)ハイヴ、軍部内ではオリジナルハイブとか言われている場所だ。
 いやあまあ、無茶なのは分かっているんだが、一番近いんだよな、ここが。
 それに今回の目的は威力偵察。ようするに、BETA全属種のデータを取ることが目的で、ハイヴの攻略ではない訳だ。ということで、手っ取り早く近場のハイヴをターゲットにしたわけだ。
 もっぱらBETA戦の前線はEU圏に集中していることから、案外本拠地の守りが薄くなってんじゃないか、などという思いもあったんだが、こちらは完全に当てが外れた。
 中華統一戦線や、インド軍のがんばりと地形を生かしたい戦術、そしてなりふり構わない戦術核の運用によって何とかもっているだけだったらしい。
 核の冬とか大丈夫なんかな?などと思いながら、放射線除去剤を飲んでから、人類とBETAとの最前線におれは単身おりたった。気の守りと強化スーツだけで、放射線対策はほぼ万全なのだが、そこはそれ、念には念を入れてだ。なにせ、前世では唯一の被爆国の国民だったからな。
 こっちの世界では、ベルリンがそうなんだが、すでにBETAの支配領域下だからな。こっちは原爆被害の深刻さとか、それ以前に死ぬか生きるかの世界にぶち込まれたわけだ。まったく、ろくな世界じゃないな。
 要所要所で休憩を取りながら、8時間がかりでカシュガルハイヴに向かっている旅路の途中で、おれはそれに気づいた。
 戦闘音が耳朶を打つ。同時に人のあげる悲鳴も。気により強化されているため、近いように見えて距離的にははるか先だ。
 まだここはカシュガルハイヴの勢力圏内には入っていないはずなのになぜ?

 「ちっ、そうか、間引き作戦か!」

 定期的に行われているハイヴに対するBETAの個体数削減作戦。それが現在行われているのだと判断。
 おれは急遽機動を変えて戦闘音がするほうへと向かった。無論、地上すれすれまでの低空飛行へと変えておくのは忘れない。
 戦闘音が徐々に少なくなっていく。
 まずい、はやくはやくしないと。
 おれはリミッターを一時的に解除し、最高速度で現場へと向かった。
 最高速度は実に時速1100km/h、音速の一歩手前だ。気の制御が難しいために、戦闘機動時以外は極力使わないようにしている。が、今こそそれを使うときだ。
 戦火の音は徐々に近く、しかも徐々に収束に向かっている。
 気を探ると、へんてこな気、そう、へんてこな気としかいいようがないものが複数、人間のものと思われる気が複数。しかし幾つかはすでに虫の息、つまり死亡直前だ。

 「くそったれが、間に合え!」

 時間にして数十秒、それが異常に長く感じた。
 耳に聞こえる声は、凄惨の一言に尽きた。

 「く、くるな、くるなあ、うああぁあぁぁぁ!!」

 「おまえらのせいで、おまえらのせいで、くそ、死ね死ね死ね、ぎゃぁあぁ!」

 「ひぃっ、た、たすけ、ぐふっぅ!」

 「おねがい、やめてやめて、食べないで、私を食べないで、いやぁあぁあ!」

 聞くに堪えない、凄惨な声。悲痛な声。
 『思考制御』で冷静に思考を保っていなければ、この声に影響されておれにも動揺が走ったことだろう。だが、あいにくとそうはならない。良くも悪くも、おれは人外だ。
 冷徹に、冷静に、状況を分析する。
 戦闘区域が視界に入った瞬間、飛行を解除、全力疾走に移る。
 それでも実に時速150km/h、見た人間が正気を疑うレベルだ。
 現場にたどり着いたおれの眼前に広がっている景色に、一瞬で思考が沸騰する。
 BETAが人を蹂躙するその光景。おれは生まれて初めてそれを自分の目で見たのだ。
 戦術機の姿はまわりに見えない。どうも装備などをみると後方補給地点の役割を担っている部隊らしい。それが移動中にBETAの一段に奇襲を受けたといったところか。
 状況把握のために、改めて周囲の気を検索。
 へんてこな気が50弱、人間の気でまともなもの0、かろうじて生きている程度の気、3。
 自重する必要なし。
 下した結論のもと、おれは身体能力のすべてを開放する。
 うろついているBETA、資料と照合、闘士級か。
 相手が体制を整える前に、一瞬にして間合いをつめ気を込めたナックルの一撃でどてっぱらに風穴を開ける。
 こちらの気配に気づいたのか、複数のへんてこな気がこちらに向かってくる。
 いいだろう、てめえら、おれを怒らせたその報いをその身に受けろ。
 続けざまに迫りくるのは、先ほどしとめたのと同じ闘士級が4。
 一匹を気で吹き飛ばすのと同時に、残り3体を一瞬にして粉砕する。
 普通の人間では反応すらできないおれ動きの前に、闘士級も同じようになんの反応もできないままその場に崩れ落ちる。

 「あと43!」

 怒りがおれを満たしていた。BETAと人とその闘争をどこか遠くに感じていた自分に怒りを感じていた。人を無慈悲どころかなんのいともなしに作業的に排除するBETAに怒りを覚えていた。
 これがBETA戦争。BETAが仕掛けてきた侵略戦争。そしてそれに抗おうとする人々。その必死の決意を踏みにじるBETAの蹂躙劇。
 そんな中で違和感がひとつ。それはBETAの持つ気の性質だ。
 それは近いものをあげれば昆虫になるだろうか。自我もなく、ただ果たすべき目的を果たす存在。昆虫であれば、それは生存であり、繁殖である。ならば、こいつらBETAの目的は?
 まあいい、今はそんなことよりも、こいつらを駆逐する。
 気の性質から闘士級はあと20、それ以外の未知の反応が23。気の大きさからいって、おそらく同じ小型種、戦車級だろう。まあいい、おまえらの数がなんだろうと、おまえらの種類がなんであろうと、おれはただ蹂躙するだけだ。
 きさまらがそうしたように。


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