11歳になりました。西暦でいくと1985年か。
相変わらずBETAははっちゃけているようだ。
なんでも去年のうちに2つもハイヴとかいいう、前線基地のようなものを作ったそうだ。
ちなみに情報源は、あのおっさんだ。
それにしてもいいのか、おっさん。そんな情報を年端もいかない子供にほいほい話しても。
そういえば、おっさんの名前は鎧衣左近というらしい。
本人曰く、「謎めいた子持ちの紳士」だそうだ。よくわからん。おまけに子持ちを名乗るところがなおさらよくわからない。
ちなみにまりもとの関係は今のところまったくなし。将来的になんらかのつながりが出来る可能性はあるが、今のところは不明だ。
というわけで、とりあえずはつかず離れずの関係を保っている。
最近変わったことと言えば、工房に戦術機の部品が運び込まれるようになった。
いやあ、前から戦術機用の武器が運び込まれてくるから、本体の方にも興味があったから願ったりかなったりなんだが、どうにも作為的なものを感じる。
だってここ、普通の町工房だぜ?
あきらかに、あのおっさんが何か裏でうごいているよな。
戦術機に関しては、この時代でよくもまあ、これだけのものを作り上げられたな、的な技術の固まりだった。
そりゃおとうさんに整備マニュアルをせがんでも、
「すまいない、隆也。軍事機密に関わるから持ち出しはできないんだ」
と言われるわけだ。あのおれにだだ甘のおとうさんにそう言わせるだけあって、機密の固まりといっていいだろう。
それがこんな町工房に運び入れられるとは、なんかあのおっさんだけの思惑じゃないような気がする。
思えば、最初の頃に持ち込まれた戦術機用の兵装におれの魔改造意欲がいたく刺激され、それを実際に施したこと物を納品したことが、今に至っている要因の一つなんだろうけどな。
その1
「やはり刀というからには、かくあるべきだな」
おれは持てる限りの素材工学、加工技術の粋を尽くして作り上げた一振りの刀を見てつぶやいた。
まず最初におれが衝撃をうけたのが、74式近接戦闘長刀だ。
スーパーカーボンなる素材を使い、確かに攻撃力、斬撃力ともに申し分ない。
だがしかし、だがしかしだ。
刀と名乗るからにはこれではたりない。
まずなによりも優美さがたりない。おまけに用法も切り裂くよりも、叩き斬るに重きを置いている。そこからして気にくわない。
折れず曲がらず刃こぼれせず、古刀のごとく優美と機能を兼ね備えた、そんなすばらしい物にこそ刀の名はふさわしい。
というわけで、持ち込まれた74式近接戦闘長刀の魔改造を行った結果が、おれの目の前にある、真・近接戦闘長刀だ。
刀身の素材自体はさすがにいじれなかったので、刀身のデザインを変更し、焼きに使う素材と、刀身自体を覆うコーティング素材に工夫を施した。
脳内シミュレーションの結果によると、74式近接戦闘長刀とおれの真・近接戦闘長刀とで打ち合わせると、100本の74式近接戦闘長刀を切断してようやく刀身の歪みと切断力の低下が見られるという結果になった。
おまけに重量は10%減だ。
ふっ、さすが真の名前は伊達じゃない。
素材開発の協力は、いつもの会社のいつもの社長を頼った。新素材の特許とか面倒なことを全て任せる代わりに、おれのことを一切表に出さないことを約束させている。
もちろん保険のために、今度は特殊な性癖を満たしている現場を押さえておいた。
そのあたりに抜かりはない。
そもそも刀とは侍の心だ。武家なんてものがのさばっていると言うことは、すなわち侍も未だ健在なのである。
たとえ戦術機の兵装の一つとはいえ、刀と名が付く限りはおれの目の黒いうちは妥協は許さない。
あ、なんか今思えば、これを納品した頃から、いろいろと戦術機用の兵装が工房に持ち込まれるようになったんだよな。
その2
「WS−16Bねえ…」
つるし上げられている巨大な銃を見ながらおれは思案していた。
なんというか、その、中途半端だ。
120mm滑腔砲の機能が付いているおかげで汎用性が増しているように見えるが、そのために機構が少々複雑になっている様に見える。
単純に36mmチェーンガンだけにしたほうがいいんじゃね?
というわけで120mm滑腔砲の機能の機構をオミットして、真・36mm突撃砲の作成を開始した。
結果として、装填弾薬数の80%アップ、機構の簡略化による整備性の向上が可能になった。
次に目をつけたのが炸薬だ。なかなかにいいが、これでは36mmもの弾丸をぶっ放すのには少々力不足だろう。
というわけで、もっといい炸薬がないかと脳内シミュレーションで実験を繰り返すうちに、通常の炸薬にくらべてかなり性能のいい炸薬の製法が確立してしまった。
欠点としては少々発熱量が大きくなってしまっため、従来の銃身ではすぐにへたってしまうって言うところか。
おかげで放熱効率のよい素材の開発が急務になってしまった。例によって脳内シミュレーションで、新素材の製法を確立して無事問題解決。
いやあ、すげえな脳内シミュレーション、なにせ資金と資源と労力の制限がないせいで、恐ろしいまでに効率的な開発が行えてしまう。
真・36mm突撃砲については、36mm弾しか撃てなくなってしまったが、代わりに弾数向上および威力の底上げには成功した。
その流れで真・120mm滑腔砲の作成にも着手した。
こちらは120mm滑腔砲を単体で運用できるだけの装填数を確保するのが第一の課題だ。
なにせWS−16Bだと、6発しか装填できない。
いや、こりゃあんまりだろ。
というわけで、まずは120mm用のマガジンの開発、および装填機構の検討を行った。
結果としては、200発入りマガジン装填、炸薬と素材は真・36mm突撃砲と同程度の真・120mm滑腔砲が完成した。
両方ともサイズ的には変わっていないが、使える弾頭が制限されている。このあたりは運用でカバーできる範囲ではないかと思っている。
なにせ話に聞いたところでは最大4つの突撃銃を使用できるらしいからな。
そんな一年を送ってきた今のおれの身体情報をさくっとお見せしよう。
基本情報
名前:立花 隆也
性別:男
年齢:11歳
身長:142cm
体重:40kg
身体能力情報
筋力:2017(220+3000)
体力:2107(220+3000)
俊敏:2104(220+3000)
器用:1989(220+3000)
感覚:746(672+300)
知力:998(968+300)
精神:987(1062+300)
気力:2211(220+3000)
身体能力についてはもはやなにも言うまい。
見れば分かるだろう、おれだってびっくりだよ。でもまあ、戦術機っていう相手ができたからな。がちでやり合えるようになるまでがんばるぜい。
通常技能情報
・機械語学:593
・電算機制御言語:695
・機械工学系勉学:1023
・電子工学系勉学:804
・素材工学系勉学:904
・剣術:801
・機械系整備:1239
・電子機器系整備:635
・兵器系整備:653
・素材開発:709
・武器開発:702
・内偵技術:539
・潜入技術:179
・情報工作:231
・破壊工作:121
・気放出:973
・気混入:1034
etc…
機械言語から、いつのまにやら電算機制御言語が分化していた。アセンブラ言語と高級言語の違いと言ってもらえればわかるだろうか。
機械工学と電子工学と素材工学、もはや世界トップレベルではなかろうか?特殊技能の恩恵があるぶん、地道に努力している人に対して申し訳なく思うが、使える物は使える主義だしな。
剣術の修練は最近サボりがちな性でほとんど伸びていない。おかげで、じいさんがうるさいうるさい。
とはいっても今は剣術修行よりも、別のことに夢中なんだよ。
というわけで、整備系と開発系の技能だ。いずれもすばらしい技能を身についている。特に機械系の整備なんて我ながら神がかってる。
開発系については、兵器開発に夢中になっていたらいつの間にやら素材開発と一緒に上がっていた。
つぎになんか物騒な技能がならんでいるんだが、これはおっさんの紹介でとある養成所に夏休みを利用して通っているうちに身についた。
いろいろと忙しくって、初心者コースしか受講できなかったが、なかなかに得る物があった。そのうち本格的に習ってみるか。
気の放出と混入については順調に向上している。
まりもにも見せたが気放出については気を放出後に固定化、および維持、そしてそれを操作して目標へぶつける、なんて芸当まで出来るようになった。
気混入については、いろいろと成果がでている。モデルガンを撃ったときなんだが、プラスチック弾で木に大穴が空いたときはどうしようかと思った。
単純にモデルガンを撃っただけといったが、実際にはモデルガンそのものに気を混入することにより、強度のアップ、その後気を込めたプラスチック弾を発射するという手順を取っている。
なんでこんな面倒くさい手順を踏むかというと、モデルガンだけに気を込めると、その発射速度にプラスチック弾が耐えられずに、内部で破裂してしまうのだ。
それを防ぐために、プラスチック弾にも気を込めて強化する必要があるわけだ。そうなると当然気が込められたプラスチック弾が発射されてしまうわけだが、この弾の威力が半端ない。
最低限の気を込めた弾でも、ヘビー級ボクサーなみの威力がある。ましてや全力で気を込めると、先ほど言ったように木に大穴を開けてしまうほどの威力になる。
これが本物の拳銃だったらと思うと、さすがに少々わらえないな。
特殊技能情報
【新規取得のみ抜粋】
・思考並列化:LV3(取得消費経験:8,000)
というわけで、思考並列化をLV3にしました。
なんかもう、肉体的にも精神的にも規格外になってきたな。
ちなみにLV3にすることにより、同時に3つの思考が可能になった。
今のところ1つは日常でつかい、1つは新理論、素材、技術の考案、1つは考案されたものの実験に脳内シミュレーションを行っている、といった使い方をしている。
自分が人としての禁忌を軽くぶち破っている自覚はある。
だがそれでも止まれはしない。止まる気なんてさらさらない。
人としての禁忌がおれになにをしてくれる?まりもの未来を保証してくれるのか?
そんな役にも立たない禁忌なぞに縛られるつもりは毛頭ない。
今のおれを縛れるとしたら、それおそらく、おれ自身にほかならないだろう。
いや、違うな。
まりも、おまえが笑って教師をしていられる、そんな世界が約束されているんだったら、いつだって止まってやる。
たとえ、止まることでこの命が尽きるとしても。