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マブラヴ 転生者による歴史改変 16話
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2012/07/07(土) 15:14公開   ID:eoF2Dat1HnA
 昔の偉い人は言いました。

 「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」

 というわけで、今おれの前にいる紫髪女を見たんだけど、おじさんが思わずびっくりするような情報が羅列されていた。

 基本情報
 名前:香月 夕呼
 性別:女
 年齢:13歳
 身長:137cm
 体重:乙女の秘密により検閲されました

 まあ、ここまでは普通だ。
 体重の「乙女の秘密により検閲されました」ってやつは、まりもが12歳になったときから、年頃の女の子の情報を見ようとすると表示されるようになっていた。
 なんでだろう?
 まあ、おれにとっては体重なんてどうでもいいんだが、女の子にとっては死活問題なのだろう。

 身体能力情報
 筋力:181(263)
 体力:194(269)
 俊敏:193(267)
 器用:207(273)
 感覚:133(273)
 知力:749(301+900)
 精神:233(289)

 知力の高さに思わず吹いた。
 なんだよ、749って。
 世界でも有数の頭脳だぞ、たぶんこれ。
 ちなみに、身体能力の限界値だが、12歳を境目に自分の素質に見合った数値に成長するように上昇するようだ。
 それにしてもすごいな。
 優等生のまりもでさえ249、おれの学校に講習に来た帝国大学のお偉いさんが637だったことから、どれだけすごいかは押して知るべしだ。
 それ以上に限界値の上限補正がすごい、なにせ+900だ。このまま行けば、1,000の大台を超えることだって可能だ。
 ちなみにおれ自身の数値は、転生補正があるんであまり当てにしないほうがいい。知力1,010ってのは、はっきり言って異常だからな。

 通常技能情報
 ・母国語学:473
 ・外国語学:321
 ・文系勉学:499
 ・理系勉学:412
 ・物理系勉学:738
 ・因果律考察:471
 ・平行世界考察:437

 これについても、一部おかしなことになっている。
 以前にも説明したかもしれないが、専門職の人間で一人前といわれるレベルが400台だ。
 こいつ、13歳にしてすでに大人顔負けの能力を持っている。
 その中でも物理系勉学が飛びぬけている。これたぶん世界中で上から数えて2桁のうちに入るほどの数値だぞ。
 繰り返すようだが、おれとまりもについては、考えるだけ無駄だ。一般人と比べるほうがおかしい。まりもの外国語学なんて799だからな。
 それにしても因果律考察と平行世界考察っていうのが興味深いな。なんだろうこれ?
 読んで字の通りだとは思うんだが、〜〜考察っていう技能は始めて見た。おまけに因果律と平行世界だ。興味は尽きないがとりあえず次に行ってみるか。

 特殊技能情報
 ・狂気の科学者(Ver.Ex)
 ・狂気の科学者(Ver.AL)
 ・天才
 ・知の探求者

 うん、なんだこれ?
 天才ってのはわかる。知の探究者ってのもまあわからんでもない。
 こいつらがたぶん知力の補正に関っているんだろう。
 だが、狂気の科学者ってのはなんだ?おまけにこいつ、Ver.ExとVer.ALがある。
 Ver.Exはまりもと同様に灰色表示されており、Ver.ALについては逆に有効になっている。
 このあたりはまりもとまったく同じだ。それにしても、まりもの狂犬といい、こいつの狂気の科学者といい、Ver付のやつはなんかろくな特殊技能がないな。
 もしかして、まりもとこいつって似たもの同士だとか?まさかとは思いたいが、かなりの確率でそうなんだろうな。
 なにせ次の項目が項目だけにな…

 特殊属性
 マブラブExサブキャラクタ
 マブラブALメインキャラクタ(ある意味裏のヒロイン)

 まりもと同じくALメインキャラクタなる特殊属性をもっているんだな、これが。なんか変な括弧書きまでついているし。
 ついでにExサブキャラクタってところまで属性がかぶっている。
 こりゃあ、出会うべくしてであったって感じだな。
 だが、問題はそこじゃない。そう、次に記された情報こそが、もっとも重要なものだった。

 AL支配因果律規定事項
 ・2001年12月02日 平行世界への干渉
 ・2001年12月10日 親友殺しへの干渉
 ・2001年12月11日 聖母生誕

 親友殺しへの干渉、日付はまりもの死亡確定日時とかぶる。
 これがなにを意味するのかは、簡単に予想がつく。
 意外なところでまりもに覆いかぶさる因果律への突破口が見えてきたが、それは同時に疑問も一緒に持ってきやがった。
 こいつは確かに性悪なところはあるが、まりもが懐いていることから性根が腐っているわけではない。まあ、本人は否定しそうだが。
 そんなやつがまりもの殺害に手をかすのか?
 時間は人を変える。おそらくそれは真実だ。ならばまったく考えられないわけではないか。
 いや、少々短絡的だな。干渉としか記されていないから、直接手を下すことになる訳じゃないはずだ。
 なんらかのきっかけでまりもが巻き込まれる事故を起こす?十分にありえそうだ。なにせ狂気の科学者だからな、こいつ。
 とりあえずまりもの死亡確定となんらかのつながりはあることは9割がた確定だが、それがどういう形かはまだなんともいえない。
 おまけに平行世界への干渉だの、聖母生誕だの、わけがわからないことだらけだ。
 いったん整理する時間が欲しい。

 「ねえあんた、いい加減に答えなさいよ。ネタはすでにあがってるんだから、男らしくゲロっちゃいなさい」

 夕呼のいらだった声が聞こえてきた。
 しょうがないので、考え事を別の並列思考に丸投げして、夕呼の対応をすることにした。

 「その前に、まず自己紹介から始めようぜ、おれは立花隆也だ」

 「アタシは、香月夕呼。さ、名乗ったわよ。さっさとしゃべりなさい」

 こいつ、あくまで主導権は離さない気だな。まあ、いいんだが。

 「へいへい、で、なんだっけ?おれとまりもの関係だっけ?」

 小指で耳をほじりつつ聞き返す。

 「それと、まりもの持つ特異性についての説明ね」

 冷静な目でおれを見つめつつ、補足をつけてくる。安い挑発には乗ってくれないか。

 「関係といわれてもな…なあ、まりもん。おれとまりもんの関係ってなんだろう?」

 「え、ええ?えーと、お、お友達、かな」

 いきなり話を振られてあわてるまりもだが、答えは無難なところが返ってきた。
 ここで「いつも隆也くんのおもちゃにされています」なんて答えが返ってきたら、おれはきっとかなりひどいことになっていただろう。

 「ということだ。特に特別な関係ってわけじゃないな。でだ、逆に聞きたいんだがまりもんの特異性ってなんだ?おれはこいつと長い付き合いだが、そんなもんないぞ」

 「ふーん、しらばっくれるわけね。いいわ、それじゃ少し話してあげる」

 にやりと邪な感じの笑みを浮かべると、夕呼は話し始めた。

 「まず最初に気づいたのは、アタシが英語の童話を貸したときのことね。英語の勉強用に持っていたんだけど、それにまりもが興味を示してね、貸してあげることにしたの」

 「あ、まさかあのときの?」

 「そう、あの本よ。まりも、あなたすぐに本に夢中になったでしょ?あなたはいい暇つぶしができたからいいでしょうけど、アタシは逆に手持ち無沙汰になってね、ちょっとした意地悪のつもりであなたに話しかけたのよ」

 「あ、うん、覚えてるよ。最初は家族の話だったよね?」

 なんでそれでまりもの秘密がばれるんだ?とちょっと考えて、すぐにおれは思い至った。「思考並列化」だ。おそらくまりもは、本を読みながら、普通に夕呼との会話を行ったのだ。
 なにやってんだ、まりもよ。あれだけ、一人のとき以外はひとつのことに集中しなさいって言い含めておいたのに。
 まあ理由はわかる。夕呼が貸したって言う英語の童話だ。英語はまりもの大好物、おまけに読んだことのない童話となればまりもは我を忘れて読みふけったに違いない。そこに運悪く、性悪女こと夕呼が話しかけてきたわけだ。

 「あら、どうやら心当たりがあるようね。そうよ、あなたが考えている通り、まりもは本を読みながら普通にアタシと会話をしていた」

 「それくらい誰だってできるんじゃないか?」

 「いいえ、できないわね。最初は確かに他愛のない話だったわ。でもね、まりもは生返事ではなく、ちゃんと答えを返してきたわ。そのことに気づいたアタシは、会話をより高度なものへと徐々に摩り替えていった。でもまりもはそんなことは関係なく対等の見識を持ってアタシと会話を続けたわ」

 「ぬ、それじゃ、本のほうに集中してなかったんだろ」

 「アタシもその可能性を考慮して、まりもが読み終わった後に、細かく感想を聞いたんだけど、淀みなくすらすら答えたわよ。おまけに誤字の指摘までしていたわね」

 まりもぇ…
 ジト目でまりもを見ると、小さく縮こまっていた。あぅあぅ、とかうめいている。
 まあ、反省はしているようだ。

 「それじゃ、そういう特技を持ってたんだろ。おれはそれに気づかなかっただけの間抜け、それだけだろ?」

 「そういう可能性もあるわね。それだけなら」

 なかなか逃がしてくれない。めんどくせえ、一撃かまして記憶をふっ飛ばしてやろうか?
 などと物騒なことを考えているところに、夕呼が畳み掛けてきた。

 「まりもの本を読むスピードね。すごく早いのよ」

 そりゃそうだろう。思考の早さにあわせて読んでいるんだから…あ。

 「気づいた?まりもの読む速さは、ありえないほど早い速度だったわ。ああ、ちなみに速読術を使っていたなんていうのはなしよ。知り合いにそういうのができる人がいるんだけど、集中力を必要とするからとてもじゃないけど、人と会話をしながらなんてできないって言ってたわよ」

 伊達に天才じゃないってわけか。観察力がはんぱねえ。

 「とどめは悪戯でおこなった、まりもへの尋問ね。それでまりもから、あなたに不思議な力を貰ったって言う言質がとれたわ。ふふ、最初は特異な能力を持つだけの不思議な子だと思っていたんだけど、背後にはその力を与えた人物が潜んでいるっていうじゃない?これで放っておくなんて、科学者の知的好奇心への冒涜よね」

 「ま〜り〜も〜ん〜」

 「ごめんなさい〜」

 怒りはするが、今回はあきらかに相手が悪かったとしかいいようがない。そもそも悪戯で、弛緩剤までつくって相棒を尋問するようなやつがこいつ以外にいるとは思えない。

 「で、もしそうだったとしてどうするんだ?」

 「そうね、解剖でもさせてもらえればいいんだけど」

 ちらり、とおれの隣のまりもへと目を向けると、

 「そんなことしたら、まりもが悲しむから、それはなしね」

 こいつ、本気だったのか?
 ちょっと、恐怖が芽生えてきた。

 「あなたのもつ力。それについて教えてもらえるかしら?」

 うーむ、どうするべきか。
 夕呼はおれに不思議な力があることを確信している。
 まりもの証言が致命的だったとはいえ、そもそもまりもの相棒がこいつになることを放置していたおれにも責任はある。
 なにせ人脈には困っていないからな。相棒を普通の特待生とすりかえることくらい造作もない工作だ。そんなわけでまりも一人を責めるわけには行かないだろう。
 おまけに、どうやってもいつかはめぐり合うことになっていたんだろう。
 用はばれるのが早いか、遅いか、だけの違いでしかない。
 ある程度の情報公開は、やむを得ないか。

 「わかった。だがこっちにも都合があるんでね。こっちの質問に答えてもらって、それでおれが納得したら教えてやるよ」

 「あら、そんな上から目線でいいのかしら?こっちは他の人に教えまわってもいいのよ?」

 「いらんハッタリや駆け引きをする必要ないだろう?そんなことを触れ回ったところで、おれたちは痛くも痒くもないことくらいわかっているだろうに」

 「え?そうなの」

 まりもよ、純真なのはいいが、少しは駆け引きや疑うことを覚えようぜ。
 まりもができることは単に、特異な才能だけで片付けることができるし、おれのことについてはまりもの証言だけで物証なんてあるわけない。そんなことを触れ回ったところでなにが起こるでもないのは自明の理だ。

 「ちっ、わかったわよ。それで、質問はなに?」

 「目の前で死んでいこうとする人がいる。おまえには助ける方法がある。おまえはそいつを助けるか?」

 「は?なに馬鹿なこといってるの、助けるに決まってるでしょ?」

 「たとえそいつの死が運命で定められていても?」

 「意味が分からないわね。運命で定められているんなら、アタシが助けることなんてできないじゃない」

 「できるんだよ、それが。代償を払うことで。その代償は自分の命かもしれない、見知らぬ誰かの命かもしれない。多くの人の死の上で得られる奇跡かもしれない。それでもおまえは助けるか?」

 「はん、馬鹿にしないで欲しいわね。助けるわよ、助けてやるわよ。そいつも、その代償になる誰かの命も。もちろん自分の命だって誰にもくれてやらないわ」

 夕呼の目を見つめる。そこに揺らぎはない。
 若さゆえの蛮勇だろうが、心の芯にその想いがあるのだけは間違いない。
 ならばいいだろう。お前を認めよう。
 すべては明かせない。だから、たった一つだけプレゼントを。

 「これが答えのひとつだ」

 夕呼の肩を叩く。同時に「他者状態管理」で夕呼のポイントを使って、「思考高速化」を取得させた。

 「ちょっと、なに気や…す…く…!?」

 急速に加速した思考に驚いたのだろう。夕呼のポカーンとした顔が妙につぼにはまり、おれは思わず吹き出した。

 「なにこれ、考えが、加速していく?」

 夕呼は、そんなおれに怒る様子もなく、自分の身に起きた現象に呆然としている。

 「じゃあな、まりもん、あとはよろしくたのむぜ」

 夕呼を放置したまま、おれはその場を後にした。
 だって、正気に戻ったらまた詰問されるに違いないもんな。

 さて、因果律さんよ。あんたの手の内は未だに見えないが、断片は覗き見ることができるようになってきた。
 いつまでも安穏としていられるとは思わないことだな。


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