「ひえ〜おれが一人暮らししてたアパートよりも豪華だ」
千冬が結婚してからもと住んでいた家は売り払われ、一人暮らしの
安いアパートに一人で暮らして一夏にとっては小さくても豪華な部屋だった。
「おお、シャワーがちゃんと付いてる。銭湯に行かなくていいのか〜」
ペタペタとシャワー室の壁を触る一夏。
「布団じゃなくてペットだしふかふかだあ」
ベットの上でぴょんぴょん跳ねる。
「男子寮って何人かで一部屋でその部屋にいる先輩から理不尽な扱いを受けると思ったらそうでもないんだなぁ」
どこかの世界のお話である。
「ああ、縛られることのない自由って素敵だなぁ」
ただ一夏は今の自由をかみしめるだけであった。
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とある部屋の女子
とある部屋に人が入ってくる。
するとシャワー室から声が聞こえる。
「誰かいるのか?」
その声に部屋に入ってきた人がその声の方向を向く。
「ああ、同室になったものか。これから一年よろしく頼むぞ」
そして目の前にバスタオルで体を隠した少女が現れる
「こんな恰好ですまないな。シャワーを使っていた。私は篠ノ之 箒だ」
その言葉に対し部屋に入ってきた人はこう答える。
「私は、水沢 ××っていうのよろしくね」
それは少女の運命を揺るがす出会いだったのかもしれない。
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「朝ご飯がうまいでやんす」
「しかし男だけというのもなんだかむさ苦しい感じがするでやんすよ」
「むむっ! 兄ちゃんに似た顔手変なこと言うなでやんす。このニキビ!」
「むむっ! 人が気にしていることをさらりと言うなんて!」
男子寮のやんすやんすとうるさい朝食となっていた。
「お前らは静かに食えないのか?」
「おれもそう思うよ、赤坂」
男子寮の食堂は規模が小さいので騒がれると静かに食べることもできない。
「家なら母さんと父さんと弟たちとゆっくり食事できるのに」
「佐藤もか……そういやお前達何組なんだ?」
「俺と佐藤は3組だ」
「ふぅん……」
と何げない話を男子たちで話す。
「ぼちぼち教室に向かわないと千冬姉が煩そうだ……」
「時間的にもうそんな時間か……」
そう言って赤坂と佐藤は立ち上がり食堂を後にした。
「平次君に荷田君もちゃっちゃと用意したほうがいいよ」
そう言って一夏もその場を後にした。
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あれから時間がたち、2時間目が終わっていた。
「むむむ」
一夏は何も理解していなかった。
「大丈夫でやんすか?」
「ああ、君も出席簿クラッシュの痛みは?」
「少しましになった感じはするでやんす……」
頭を押さえながら矢部は呟く。
「とにかく頑張る」
「でやんす」
そして授業は始まり進んでいく。
「というわけで、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアーで包んでいます。また、生体機能を補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどがあげられ――――」
(なんでも助けてくれるかぁ……それなら勉強しないで起動しても何とかなるかも)
と、一夏は軽い考えの答えにつく。
「先生、それって大丈夫なんですか? なんか、体の中をいじられているみたいでちょっと怖いんですけども……」
そんな時、真耶の発言に女生徒が聞く。
「そんなに難しく考えることはありませんよ」
真耶はそういう。
「そうですね、例えばみなさんはブラジャーをしていますよね。あれはサポートこそすれ、それで人体に悪影響が出ると言うことはないわけです。もちろん、自分にあったサイズのものを選ばないと、型崩れしてしまいますが―――」
そういった時に真耶はあるものを見てハッとする。
平次が真っ赤になって頭を押さえていたのだ。
そしてさらに横には心配そうに平次を見る一夏がいた。
「へっ平次!? あっえっと、あわわ!?」
平次の状態を見て真耶は通常状態を維持できない。
生徒達はそんな麻耶を見てクスクスと笑っていたりしている。
「え、えっと、いや、その、お、織斑君達はしていませんよね。わ、わからないですね、この例え。あは、あははは……」
真耶は心を落ち着かせて一夏たちに喋る。
しかし何も変わらない。
クラスは気まずい雰囲気に包まれていく。
平次は気を持ち直し始めてはいるが……
「んんっ! 山田先生、授業の続きを」
「は、はいっ」
千冬の声によりクラスの雰囲気が元に戻っていく。
「そ、それともう一つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話―――つ、つまり一緒に過ごした時間で分かり合うというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」
真耶はそう言う。
(つまり自分の戦い方を理解して成長するって感じかな。なら勉強が分からなくても……)
一夏は勉強をしなくてもいけるという考えを持ち始める。
「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして意識してください」
その言葉を聞き一夏はたぶん大丈夫と結論してうなずいていた。
そんな時クラスの雰囲気が変わっていた。
一夏は何が起こったのか理解できていなかった。
「…………」
「? 何ですか?」
そんな時一夏の顔を真耶が見つめていたので話しかける。
「あっ、い、いえっ。何でもないですよ」
「そうですか」
よくわからないが何もなかったようなので一夏は気にしないことにした。
《キーンコーンカーンコーン》
「あっ。えっと、次の時間では空中におけるIS基本制動をやりますからね」
そしてその時間の授業は終わった。
次回に続く