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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第十五話
作者:AST   2012/07/14(土) 00:04公開   ID:GaMBFwOFFuY
 チュンチュンと朝の目覚めを促す様に外ではスズメが鳴いている。
 
 IS学園の中庭では織斑一夏が鍛錬をしていた。





                 第十五話





 
 「っ!」
 
 轟ッ!と空気が薙ぎ払われる音と共に一夏の拳が振りぬかれる。
 
 「ふッ!!」
 
 更にもう一撃
 
 そこで一旦動作を止めて、傍らに置いてあったタオルで汗を拭く。
 
 早朝から鍛錬をしていた様で、汗が結構出るので上半身は裸、下はジャージの恰好である。
 
 ちなみに早朝である為、一夏しかいない筈なのだが、最近は妙に視線を感じる。
 
 “…………敵意が無い様だから放っておいてもいいか”
 
 校舎の窓からハァハァしながら半裸の一夏を見ている女子生徒達を無視して一夏は鍛錬を続けていた。
 
 そこへ

 「一夏」
 
 「箒か」
 
 剣道着姿の幼馴染がやって来た。
 
 「どうした?」
 
 一夏が不思議そう彼女を見ると、顔を紅くしながら横に向けていた。

 「その……だな……お、おはよう」
 
 「ああ、おはよう」
 
 赤くなっている箒と平然としている一夏

 両者の状態は対極であった。

 「ふ、服を着てくれると助かるんだが……」
 
 「それもそうだな。済まなかった」
 
 一夏は体の汗を拭うと、脱ぎ捨てていたTシャツを着る。
 
 「お前も朝早くから鍛錬しているのか?」
 
 「そうだ。」
 
 その言葉に大きなアドバンテージを得ようと箒が攻めに入る。
 
 「ででででで、では私と一緒に鍛錬をしないか?」
 
 その言葉に一夏はふむ、と顎に手を置いて考えると
 
 「良いぞ、剣の相手も必要だ」
 
 脳内で“いよっし!!”とモッピーがガッツポーズをしている。
 
 「では、明日からで良いか?」
 
 「構わん」
 
 見事に上手くいった箒に脳内軍師モッピーが助言を加えた事を言ってみる。
 
 「そ、それでだ。私がお前の事を起こしに行こう」
 
 そう、起こしに行くと言う大義名分があれば一夏の部屋の合鍵を入手する事が可能
 
 最終手段、夜這いを行う事が可能になる。
 
 しかし、そう簡単に物事は上手くいかないのが世の常である。

 「いや、自分で起きられる。」
 
 「そ、そうか………」
 
 流石に合鍵を入手する事は出来なかった。
 
 すると、今度は
 
 「むっ、そこにいたか」
 
 「ラウラか……」
 
 長い銀髪に眼帯を付けた少女ラウラ・ボーデヴィッヒがやって来た。
 
 「嫁よ。夫婦とは一緒に寝て、一緒に起きる物だ。」
 
 「ああ……」
 
 ぶっきらぼうな返事を返す一夏
 
 「私を置いて一人で起きるのは酷いじゃないか」
 
 「裸で人のベッドに侵入するのもどうかと思うが」
 
 冷静にラウラに言い返す一夏
 
 その発言に箒が詰め寄ってくる。
 
 「一夏!!どういう事だ!この女と同衾したのか!!?」
 
 箒の表情は憤怒に満ちていた。

 「ラウラが俺のベッドに侵入していただけだ」
 
 「全裸でか!?」
 
 「ああ」
 
 その答えを聞いた箒が今度はラウラに詰め寄る。
 
 「貴様、どういうつもりだ!?」
 
 「私と一夏は夫婦だ。夫婦が共に寝るのは当然だろう?」
 
 「誰が夫婦だ!そんなの私は認めないぞ!!」
 
 ラウラに食って掛かる箒、対するラウラは全く気にしていない
 
 箒が怒りの余りラウラに真剣を振り下ろそうとするのを一夏が羽交締めにして抑える。
 
 「く、放せ!!一夏!」

 「落ち着け、箒」
 
 箒の気を静める為にも彼女の頬にキスをする。
 
 赤くなって力の抜けた彼女から真剣を取り上げて鞘にしまうと、諭すように言う。
 
 「お前の悪い癖だ。すぐに感情的になって暴力を振るう。」
 
 「う……」
 
 しゅん、と小さくなる箒
 
 「しかも真剣を人に振り下ろすなど、お前はその手を血で染める気か?」
 
 「……………」
 
 完全にショボンとなる箒

その様子はまるで親に怒られた子供の様だった。
  
 はぁ、と溜息をつきながらラウラの方を向く一夏

 「大丈夫か?」
 
 「ああ、だが不公平だ」
 
 「何がだ?」
 
 「私にもキスをしてくれないのは不公平だ。」
 
 その言葉に箒が再起動する。
 
 「なっ!?貴様は一夏の唇を奪っただろう!!」
 
 「ついでに俺の初めてだ」
 
 「わ、私も……初めてだったぞ。うむ……嬉しくは、あるな」
 
 「無視するな!!」
 
 急に頬を染めて一夏にそう言うラウラは可愛かった。
 
 無視された箒は怒っていた。
 
 “頭が痛くなってきた………”
 
 やれやれ…と再び騒ぎだす二人に頭を抱える。

 最近、自分の周りから平穏の文字が遠ざかってゆく気がする一夏だった
 
 キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴ってSHRが始まる。
 
 珍しく寝坊したシャルを抱えて一夏は猛ダッシュして、二人は間に合っていた。
 
 その時、シャルはお姫様抱っこされていたので嬉しそうな表情だった。
 
 代わりに箒やセシリアの表情が怖いモノになっていたが一夏は気にしないでいた。

 「今日は通常授業の日だったな。IS学園生とはいえお前達も扱いは高校生だ。赤点など取ってくれるなよ」

 授業数自体は少ないが一般教科もIS学園では履修するし、中間テストは無くとも期末テストはある
 
 それで赤点を取ろうものなら夏休みは連日補修となる。
 
 一夏の成績は基本的に優秀なので問題は無い
 
 「それと来週から始まる郊外特別実習期間だが、全員忘れ物などするなよ。三日間だが学園を離れる事になる。自由時間では羽目を外しすぎない様に」
 
 七月の初頭には臨海学校がある。
 
 そして初日が丸々自由時間なのでクラスの女子達はテンションが上がりっぱなしなのである。
 
 臨海学校について一夏は“大した興味は無い”とセシリアや鈴に言ったら、マシンガンの如き言葉の弾幕で猛注意を受けた。
 
 シュライバーは海を楽しみにしているらしく、浮き輪や熊手などを用意していた。

熊手や刃物は貝とか潮干狩りでもするつもりなのだろうか?
 
“………そういえばシュライバーは泳げるのか?”
 
 ふと、一夏はそう思っている内にSHRは終わっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 週末の日曜日、天気は快晴である。
 
 来週に迫った臨海学校の準備もあって一夏はシャルと二人で街に繰り出していた。
 
 何故、シャルと一緒なのかと言うと
 
 一夏はシャルが男子として学園に送り込まれてきたの事を思い出し、水着の事を聞き、無いなら一緒に買いに行こうという事になった。
 
 原作の様にただ“付き合ってくれ”という勘違いさせる流れでは無い
 
 「行くぞ、シャル」
 
 「うん。って、えっ!?」
 
 一夏はシャルとはぐれたりしない様に手を握って歩き出すが、シャルが妙な声を上げた。
 
 「どうした?」
 
 「い、いや何でもないよ!大丈夫!」
 
 「そうか」
 
 急に歩き出すシャルにつられて一夏も駅前へと進む。

 “柔らかいな……”
 
 握った掌から伝わってくるシャルの手の柔らかさや体温から女であるという事を改めて思う一夏だった。

そして
 
 
 
「「………………………………………」」
 
 
 
 駅前へと向かう二人を物陰から見つめる二つの影が。
 
 二人が人ごみに消えると頃合いとばかりに茂みから姿を現す二つの影
 
 セシリアと鈴であった。
 
 「……あのさあ」
 
 「……なんですの?」
 
 「……あれ、手ぇ握ってない?」
 
 「……握ってますわね」
 
 セシリアは引き攣った笑顔のまま、持っていたペットボトルを握りつぶす。
 
 「そっか、やっぱりそっか、あたしの見間違いでも無く、白昼夢でもなく、やっぱりそっか。―――――――――――――――――よし、殺そう」
 
 握りしめた鈴の拳は、ISアーマーが既に部分展開されており衝撃砲発射までのタイムラグは約二秒という所である。
 
 二人の瞳からは光、ハイライトが消えていた。

 なんとも恐ろしい十代乙女の純情であった。
 
 鳳鈴音、彼女にはヤンデレの属性がついているのかも知れない
 
 「ほう、楽しそうだな。では私も交ぜるがいい」
 
 「「!?」」

 いきなり背後から掛けられた声に、驚いて振り返る二人
 
 そこに立っていたのは、先月二人に衝撃を与えた相手ラウラ・ボーデウィッヒであった。

 「なっ!?あ、あんた何時の間に!」
 
 「そう警戒するな、今の所、お前達に危害を加えるつもりは無いぞ」

 「そうそう」
 
 ひょっこりとラウラの背後からシュライバーまで現れる。
 
 ニコニコと笑顔なシュライバーの登場で毒気を抜かれる二人
 
 ラウラ自身も原作の様に二人をボコって無いので猜疑心は大してそこまで強くなかった。

 「と言う訳で私は一夏を追うので、これで失礼するとしよう」
 
 「それじゃあね♪」
 
 そのまま一夏の向かった方角へとラウラとシュライバーは行こうとする。
 
 「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」
 
 「そ、そうですわ!追ってどうしようといいますの!?」
 
 「決まっているだろう。私達も交ざる。それだけだ。」
 
 「そう言う事」

 あっさりと言われて、逆に怯んでしまう二人。こうまでストレートに言われると、何だか悔しいのか、羨ましいのか分からない。

 「ま、待ちなさい。待ちなさいよ。未知数の敵と戦うにはまず情報収集が先決。そうでしょう?」
 
 「ふむ、一理あるな。ではどうする?」
 
 「ここは追跡の後、二人の関係がどのような状態にあるのかを見極めるべきですわね」
 
 「成程な。では、そうしよう。良いかシュライバー?」
 
 「う〜ん、それはそれでいいんじゃないかな?……面白そうだし」
 
 かくして、よく分からない内におかしな追跡カルテットが結成されたのであった。





 「水着売り場はここだ。―――――――――むっ?」
 
 背中に走った妙な悪寒に呻く一夏
 
 「どうしたの?一夏」

 「なんでもない」

 二人は現在駅前のショッピングモールの二階にいた。
 
 ここは交通網の中心である為、電車、地下鉄、バス、タクシーと交通に関して何でもござれのそろい踏みである。

 そして周囲の地下街すべてと繋がっているショッピングモール『レゾナンス』は食べ物は欧・中・和を問わずに完璧、衣服も量販店から一流ブランドまで網羅している。その他にも各種レジャーはぬかりなく、年齢問わず幅広く対応可能。曰く『ここで無ければ市内のどこにも無い』と言われるほどだ。

 一夏は中学生の頃、弾と鈴の三人で放課後に繰り出した事を思い出した。

 「あの、一夏はさ、その………僕の水着姿、見たい?」

 「ああ」
 
 「ほ、本当!?」
 
 ガバッと迫って聞いてくるシャルは迫力があった。
 
 「本当だ。」
 
 「そうなんだぁ………えへへ……」
 
 幸せそうな表情のシャル
 
 “あんな期待された目で聞かれたら、そう言うしかないだろう……?”
 
 一夏はそう思いながらヘブン状態のシャルを温かい目で見守った。

 「じゃあ、僕は水着を選んでくるね♪」
 
 「ああ」
 
 三十分後にここで会おうと約束し、シャルは上機嫌で女性用水着売り場に向かっていった。
 
 「俺も選ぶか……」
 
 とりあえず並んでいる水着を見てみる。
 
 金色なブーメランパンツ、所々返り血が付いている様な柄の水着、虎柄の水着、紅い蜘蛛の模様が入った水着
 
 「奇抜だな……」
 
 とりあえずシンプルなネイビー色の水着を手に取る。
 
 “これでいいか”
 
 そう思ってレジへと向かった。
 
 流石に金のブーメランパンツや返り血柄は選ばなかった。
 
 虎柄は悪くは無かったが…………

 
 
 
 
 先程、別れた場所に向かうと既にシャルが立っていた。

 
 「早いな、もう終わったのか?」

 「あ、ううん。ちょっとね、一夏に選んでほしいなって思って」

 「そうか、分かった。」

 一夏はシャルと一緒に女性用水着売り場に足を踏み入れる。
 
 すると
 
 「そこのあなた、そこの水着、片づけておいて」
 
 「………自分でやれ」
 
 突然、見ず知らずの女性から言われた。
 
 女尊男卑の風潮が浸透してからと、どの国でも女性優遇制度が設けられた事もあって、こういう事は偶にあるのだ。

 「ふうん。そういう事を言うの。自分の立場がよく分かっていないみたいね」
 
 「下らん、ISを使える訳でも無い女が偉そうな事を言うな」
 
 「何ですって!?」
 
 一夏の尤もな発言に女性はヒートアップして警備員を呼ぼうとする。
 
 「あの、この位でもういいでしょう?彼は僕――私の連れですから」
 
 タイミングを見計らってシャルが口を挟む
 
 「あなたの男なの?躾くらいしっかりしなさいよね」
 
 まったくこれだから男は…とブツブツ言いながら女は去って行った。
 
 「ごめんね一夏。やな思いさせちゃって」
 
 「別に構わん」
 
 「じゃあ、水着を見てくれるかな?」

 「ああ」
 
 一夏はシャルと一緒に試着室へと入る事になった。
 
 「……………」
 
 衣擦れの音が一夏の耳に入ってくる。
 
 一夏自身、自分に違和感を感じていた。
 
 前世の時よりも女性を意識するようになっている。
 
 “どういう事だ?”
 
 自分が徐々に違う存在になってゆくような気がした一夏は考える事を止めた。
 
 「い、いいよ」
 
 「むぅ……」
 
 シャルが着ている水着はセパレートとワンピースの中間の様なデザインで、色は夏を意識した鮮やかなイエローだった。
 
 意外と大胆に胸を強調する様なデザインの水着なのでシャルは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
 
 「……似合っているぞ」
 
 ぽんと頭に手を置かれてそう言われたシャルは嬉しそうな表情になるのだった。
 
 「じゃ、じゃあ、これにするねっ」
 
 「ああ」
 
 とりあえず一夏は試着室から出て行こうとドアを開けたら
 
 「む?」
 
 「えっ?」
 
 「ええっ?」
 
 自分のクラスの副担任、山田真耶がそこに居た。
 
 彼女の後ろでは千冬が頭を抑えていた。
 
 「何をしている。バカ者が……」

 次の瞬間、軽いパニックになった真耶の悲鳴が響いた。






数分後、二人に事情を説明した一夏は現在千冬と二人で水着を選んでいた。

シャルは物陰から出てきた鈴とセシリアに連れて行かれていた。
 
 「どっちの水着が良いと思う?」
 
 彼女が見せてきたのは二つのビキニ
 
 黒い方はスポーティーでありながらメッシュ状にクロスした部分がセクシーさを演出しており

 白い方は対極に一切の無駄を省き機能性のみを重視していた
 
 「……黒だ」
 
 そう言ってから一夏は気づいた
 
 “これを着たら碌でも無い男が寄って来るのでは?”
 
 すると、一夏の内心を読んだかの様に千冬は言う
 
 「安心しろ。私がその辺りに居る男になびく様な女に見えるか?」
 
 “それに私も男がいるからな”
 
 その言葉を理解するのに数秒の時間を要した。
 
 「誰だ?」
 
 再起動した一夏は真剣な表情で千冬に問う
 
 その目は“碌でも無い奴だったら殺す”と語っている。

 「まぁ……その……ラインハルトだ。」
 
 照れながら言った千冬の言葉を聞いた一夏は再びフリーズする。
 
 “アレが義兄?……アレが!?アレが義兄!!?”
 
 脳内でリフレインされる兄と言う言葉
 
 そして
 
 『長い付き合いとなるだろうが頼むぞ、義弟よ』

 「____________ッ!!!!???」
 
 何か途轍も無く大変な未来予想図が完成してしまった。
 
 “ラインハルトが碌でも無い男と言う訳では無い、だが何か複雑だ”

むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜と一夏が悩んでいると千冬は
 
「お前は彼女を作らないのか?」
 
そう聞いてきた。

そこで一夏は考える。
 
千冬にはラインハルトという最強の恋人がいる

なら恋人位を作っても良いだろう?

だが、誰を?

そもそも自分に女が必要なのか?

そこで思考の渦に入り込んでしまう

そんな一夏に千冬は苦笑して聞いてくる。

「ラウラなんかはどうだ?色々と問題は有るだろうが、あれで一途な奴だぞ。容姿だって悪くはあるまい」

「一途云々は分からないが、容姿については可愛いと思う」

「まんざらでも無いか?」

千冬は微笑をたたえていた。

「………分からん。恋と云うものが分からん。」

自分は常に孤高の英雄であった。

故に恋愛感情が理解できない、分からなかった。

「成程、これはラウラと似た様なモノか……」

孤高であった弊害とでも言うべきか

それに気づいた千冬はこう言うのだった。

「お前が隣に立って共に居て欲しいと思える奴がいたのなら、それがお前にとっての恋なんじゃないか?」

「共に居て欲しい奴か………」

その言葉が一夏の心に何らかの影響を与えたのか、一夏は何かを探し求める様な目をするのだった………







“か、か、可愛い……?私が可愛い……可愛い……”

帰ろうとしていたラウラは一夏の言葉を聞いて、顔を紅くして脳内で一夏の言葉をリフレインしていた。

その後、彼女はキョロキョロと辺りを見回してからISのプライベート・チャネルを開いた。



同時刻、ドイツ国内軍施設。

そこでは現在、IS配備特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』

通称『黒ウサギ隊』

ここの隊長がラウラである。

「何をしている!現時点で三十七秒の遅れだ!急げ!」

怒号を飛ばしているのは部隊最年長で『頼れるお姉さま』である副隊長のクラリッサ・ハルフォーフであった。

彼女の専用機『シュヴァルツェア・ツヴァイク』に緊急暗号通信と同義のプライベート・チャネルが届いた。

「―――受諾。クラッリサ・ハルフォーフ大尉です。」

『わ、私だ』

本来なら名前と階級を言わなければいけないのだが、

向こうの声が妙に落ち着きが無い為、クラリッサは怪訝そうな顔をする。

「ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長、何か問題が起きたのですか?」

『あ、ああ………とても、重大な問題が発生している……』

その様子からただ事では無いと思ったクラリッサは、訓練中の隊員へとハンドサインで『訓練中止・緊急招集』を伝える。

「――――部隊を向かわせますか?」

『い、いや、部隊は必要ない。軍事的な問題では、無い……』

「では?」

『クラリッサ。その、だな。わ、わ、私は、可愛い……らしい、ぞ』

「はい?」

理解できずに聞き返すクラリッサ

『い、い、一夏が、そう、言っていて、だな……』

「ああ、織斑教官の弟で、ストイックで、隊長が好意を寄せているという彼ですか」

ついでに、この部隊でラウラは人間関係に多大な問題を抱えていたのだが、VT事件の直後に好きな男が出来たとクラリッサに相談を持ちかけた時から総てのわだかまりが消えていた。

『う、うむ、それでだ。今、水着売場なのだが……』

「ほう、水着!そういえば来週は臨海学校でしたね。隊長はどのような水着を?」

『う、うん?学校指定の水着だが――――』

「何を馬鹿な事を!」

『!?』

くわぁ!!と目を見開いて言うクラリッサの言葉の迫力にビックリするラウラ

「確か、IS学園は旧型のスクール水着でしたね。それも悪くない。悪くは無いでしょう!男子が少なからず持つというマニア心をくすぐるでしょう。だが、しかし!それでは―――」

『そ、それでは……?』

ゴクリとラウラが唾を飲む

「色物の域を出ない!」

『なッ……!?』

「隊長は確かに豊満なボディで男を籠絡というタイプではありません。ですが!そこで際物に逃げる様では『気になるアイツ』から前には進まないのです!!」

『な、ならば………どうする?』

「フッ。私に秘策があります」

クラリッサの目がキュピーンと光った。

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■作者からのメッセージ
おまけ

一夏は目の前にある水着を見て絶句していた。

「これは……裸より恥ずかしいだろう……」

一夏の前にある水着

それはブラジル水着、スリングショット、紐ビキニとか過激なデザインの水着だった。

「………………………」

もし、これを千冬が着たら、いや、体のスタイルが凄まじく巨乳のセシリア、箒、真耶が着たら………

「凄く……一撃必殺です」
テキストサイズ:15k

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