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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第十八話
作者:AST   2012/07/15(日) 14:53公開   ID:GaMBFwOFFuY
 合宿二日目、この日は丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。

 特に専用機持ちは大量の装備が待っているのだから大変である

 今、全員がいる場所はドーム状のIS試験用のビーチで、四方を切り立った崖に囲まれている

 まるで秘密のビーチみたいな所である





                   第十八話





 「ああ、篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

 「はい」

 箒は千冬に呼ばれ、彼女の元へと向かう

 「今日からお前は専用_________」

 「ちーちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!」

 スドドドドドドドドドドドドドドドド!!!と砂煙を上げながら人影が走ってくる

 「………束」

 千冬の言った通り、その正体は稀代の天才にして天災の篠ノ之束であった

 堂々と臨海学校に乱入してくる辺り、Going My Wayな彼女らしいと言えよう

 「やあやあ!会いたかったよ、ちーちゃん!さあ、ハグハグしよう!愛を確かめ___ひそうてんッ!?」

 飛びかかって来た束の顔面を片手で掴む千冬

 しかも思い切り指が食い込んでいた

 「うるさいぞ、束」

 「相変わらず容赦のないアイアンクローだねッ!!」

 するりと拘束から抜け出した束は箒の方を向く

 「やあ!」

 「どうも……」

 「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年振りかなぁ?大きくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが_」

 がすッ!!と箒の持つ日本刀の鞘が束の脳天を直撃した

 「殴りますよ!?」

 「な、殴ってから言ったぁ……し、しかも日本刀の鞘で叩いた!ひどい!箒ちゃんひどい!」

 「篠ノ之、今は授業中だ。殴るのは後にしろ」

 「すみませんでした」
 
 「私を殴る事に関しては問題ないんだね!!」

 頭を抑えながら束は千冬の無情な言葉にどばー!と滝の様な涙を流して叫んだ

 「おい、束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒達が困っている」

 「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」

 そう言って、くるりと一回転する束

 「そう言えば、私が頼んでいたものは………?」

 やや躊躇いがちに箒が尋ねると、束の目がキラーンと光った

 「うっふっふっ。それは既に準備済みだよ。さあ、大空をご覧あれ!」

 すると激しい衝撃を伴い、金属の塊が砂浜に落下してきた

 銀色のそれは正面らしき壁が倒れると中身を見せる

 「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿(あかつばき)』!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 真紅の装甲に身を包んだその機体は、束の言葉に応えるかの如く動作アームによって外へと出て来る

 一夏は束の言葉を聞きながら思う

 “最新鋭にして最高性能機か……姉が妹に与える贈り物にしては大層な代物だな”

 仕方ないのだろうとも思う

 初めて愛しい妹が自分に強請ったのだ。嬉しいのだろう

 それが兵器なのは哀しく思えるが

 「さあ!箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズを始めようか!私が補佐するから直に終わるよん♪」
 
 「……それでは、頼みます」

 「堅いよ〜。実の姉妹なんだし、こうもっとキャッチ―な呼び方で__」

 「早く始めましょう」

 箒は束の言葉を取り合わずに行動を促す

 箒が『紅椿』に乗り込むと、束は空中投影のディスプレイを六枚呼び出し、同時に空中投影のキーボード六枚を同時に叩いて行く

 天才の実力なのか恐ろしい速度でフィッテイング作業が為されてゆく

 「はい、フィッティング終了〜。超速いね。さすが私」

 滑らかな動きで束の手は休む事無く動き続けている。

 数秒単位で切り替わってゆく画面にもしっかりと目を通している

 ふと、一夏は周囲を見回す

 “篠ノ之束が出てきた時点で動くと思ったが……”

 あの忌々しい水銀と関わっているだろう束が現れれば、エレオノーレは彼女を捕獲しようとするだろうと一夏は思っていた

 しかし辺りを見渡してもエレオノーレの姿は見つからない、シュライバーも素直に装備のテストをしている

 「いっくん」

 「む?」

 「白式見せて。束さんは興味津々なのだ」

 「ああ……」

 何処と無くメルクリウスの口調っぽく言う束、水銀に汚染されているのだろうか?

 一夏は右手のガントレットに左手を添えると念じる

 “来い、白式”

 すると光の粒子が発生し、幾重もの輪になって形を成す

 近接戦闘特化型IS白式、その名とは逆に装甲の色は黒く、他の部分は赤紫色に輝いている

 「データ見せてね〜。うりゃ」

 束が白式にぷすりとコードを刺すと、空中にディスプレイが浮かび上がる

 「ん〜……不思議なフラグメントマップを構築してるね。なんだろ?見た事ないパターン。いっくんが男の子だからかな?」

 フラグメントマップとは各ISがパーソナライズによって独自に発展してゆく道筋の事であり、人間でいう遺伝子である

 「束さん、何故俺がISを使える?」

 「ん?ん〜………どうしてだろうね。私にもさっぱりだよ。ナノ単位まで分解すれば分かる気がするんだけど、していい?」

 「白式は構わんが、俺自身は断る」

 「にゃはは、そう言うと思ったよん。ん〜、まあ、分かんないなら分かんないでいいけどねー。そもそもISは自己進化するように作ったし、こういう事もあるよ。あっはっはっ」

 そして誰にも聞こえない声で束は呟く

 「ただ、あの人なら全部知っていそうだけどね……」

 「何か言ったか?」

 「何でも無いよ〜」

 「…………………」

 すると一人の女子が束に声をかけた

 「あ、あのっ!篠ノ之束博士のご高名はかねがね承っておりますっ。もしよければ私のISをみていただけないでしょうか!?」

 声をかけたのはセシリアだった

 「んん?あ〜、君は露出狂な渇望を持つセッちゃんか〜」

 「な、なぁッ!!?」

 その言葉にセシリアの顔が真っ赤に染まる

 「うんうん、いっくんに総て見て貰いたいなんて、変態さんなのかな?もしかして今も見られただけでアソコが___」

 「きゃああああああああああ!!言わないで下さいぃぃぃぃぃッ」

 束のセクハラ発言に羞恥の余り物凄く慌てるセシリア

 「おんやぁ?否定しないって事は自覚しているんだねぇ〜。やっぱり変態さ_はじゅんッ!!?」

 「うちの生徒にセクハラするな」

 セクハラマシーンと化した束は千冬の拳骨で黙らせられた

 ぐおぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜と頭を抑えて屈む束に一夏は質問する

 「何故、セシリアの渇望が分かった?」

 「イタタ……それは、いっくんとセッちゃんの戦いを見てたからだよ?」

 「そうか……だが、それだけでは無いのだろう?」

 一夏の言葉に束は笑う

 「色々と教えてくれたからね、あの人が」

 誰を指しているのかは分かっている

 「奴は何処に居る?」

 「さぁ?束さんでも見つけられないよ。神出鬼没、すぐそばに居たり居なかったりするし」

 流石の束でも正確な位置を特定できないらしい

 「ただ、こう言っていたね“私は何処にでもいるし何処にもいない”シュレディンガーの猫だね」

 この謎が解ければ見つけることが出来るのだろうか?

 「そう言えば、俺や姉さんや箒以外に興味など無い貴方が良くセシリアと話せたな」

 「だって創造の取得者だからね。自分の渇望で世界を変えたり物理法則を無視できるんだよ?」

 エイヴィヒカイトは束の興味を引いた様だ

 「ならば貴方自身も……」

 「うん、持ってるよ?創造」

 「種類は?」

 「覇道型」

 「……そうか」

 限られた人間にしか興味のない束だ。その創造が恐ろしく感じた

 何故だか『唯我』という言葉と三つ目を思い出したのはどうしてだろうか?

 「大丈夫だよ?私の創造は間違っても『唯我』みたいなモノじゃないから」

 「………?」

 唯我がどのような感じになるのか分からなかったが、まともなモノでは無いと予測は出来る

 「まぁ、そんな事よりセッちゃんは覇道型の創造だから維持の練習をすれば、偏向射撃のデータも集まるし、練習あるのみだね」

 『ブルーティアーズ』のデータを見ながら束はセシリアにそう言う

 「分かりましたわ。それと覇道型の維持のコツなど教えていただけませんか?」

 「ん〜、とにかく願う事だね、自分の渇望を揺るぎない我を持って支えるしかないよ。それこそ狂信者みたいにね」

 「ご教授有難うございます」

 現在、覇道型の創造を持つのは束、エレオノーレ、セシリアの三名のみである

 その後、箒の『紅椿』の試運転が順調に進めていた時だった

 「たっ、た、大変です!お、おお、織斑先生っ!!」

 何時もよりも慌てた様子の真耶が千冬の元へ駆け寄る

 「こ、こっ、これを!」

 渡された小型端末の映された内容を見て千冬の表情が曇る

 「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし……」

 そして真耶と千冬は何かしらの会話を行った後、一夏達へと声をかける

 「専用機持ちは全員集合しろ!織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、鳳、シュライバー!____それと、篠ノ之も来い!」

 「はい!」

 箒が気合の入った返事をして上空から降りてくる

 “……不味いな”

 大きな力を得た新兵の様な感じになっている箒に一抹の不安を覚える一夏だった




 アメリカの軍用IS『銀の福音』暴走




 二人の女性が崖の上に立っていた

 「大佐、篠ノ之束を捕獲するんですか?」

 「ああ、奴はあの詐欺師と組んでいる。所在を知らないとはいえ大きな手掛かりにはなるだろう」

 赤騎士は己の副官にそう答える
 
 「各国もあの女を捕まえようと躍起になっているからな、早いうちに保護をしておく必要もある」

 「IS技術の独占をハイドリヒ卿は考えて?」

 「いや、無いだろうな。世界の均衡を揺るがして戦争を起こす訳にもいかん」

 「昔の黒円卓とは全く違いますね」

 ベアトリスが苦笑しながら呟く

 「この世界と永劫回帰の世界は違うからな。ハイドリヒ卿も今の人生に満足しておられる」

 「大佐はハイドリヒ卿を盗られて不満だらけですけどね」

 いつもの如くベアトリスは地雷を踏む

 「キルヒアイゼン、貴様は後で扱いてやろう」

 「ヒィィィィィィィッ!!?」


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