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IS インフィニットストラトス〜黒騎士は織斑一夏〜 第二十二話
作者:AST   2012/07/16(月) 15:13公開   ID:GaMBFwOFFuY
 八月、IS学園は遅めの夏休みに入る

 現在の所、世界中からやって来た学園生の半分程度が帰省中である

 そんな彼らの夏休みを見てみよう




            第二十二話




 「ここか………」

 太陽が肌を灼く真夏日、織斑一夏は郊外の教会に来ていた

 五年程前に建てられた教会は孤児院も兼ねており、様々な孤児たちが住んでいる

 一夏は教会へと向かう事にした
 
 扉を開くと、内装は一般的な教会と変わりなかった

 そして目の前には見覚えのある女性が居た

 「あら、お客様かしら?」
 
 眼鏡を掛けたシスター、青い髪を後ろで束ねた彼女

 一夏は知っている

 「…………『バビロン』いや、リザ・ブレンナーか」

 その言葉に彼女は少し驚いた様だったが、すぐに答えた

 「その雰囲気と喋り方……やっぱりマキナ卿なのね」

 「ああ………久しいな」

 かつて黒円卓第十一位『大淫婦(バビロン・マグダレーナ)』であった彼女

 現在も黒円卓に所属しており第十一位であるが魔名であり称号は『癒しの母(ヴォンハイデン・ムッター)』

 正反対の称号である

 彼女はラインハルトと結婚した後、イマイチ仲が上手くいかずに離婚

 その後、日本に渡って此処で暮らしている

 「それにしても変わったわね、マキナ卿」

 「何?」

 リザの言葉に怪訝そうにする一夏

 「前の貴方は話しかけにくい雰囲気があったけど、今の貴方はそれが少なくなってるし、結構話しかけやすいわ」

 「俺は織斑一夏だ。既に『マキナ』と決別した」

 「そう……じゃあ織斑君って呼んだ方がいいかしら?」

 「好きにしろ、シュライバーやザミエルからは『マキナ』のままだ」

 「じゃあ、一夏君って呼ぶわ」

 楽しそうな表情のリザ

 「…………なら俺も『ブレンナー』と呼ぼう」

 「やっぱり貴方は変わったわ」

 くすっと微笑む彼女は本当に聖母の様だった

 すると

 「わーお、人の母親を口説いているイケメンがいる」

 後ろから突然掛けられた声に振り向けば、十歳程の銀髪少女が居た

 「お前は……」

 「今度は私を口説くつもりなの?親子揃って貴方の毒牙に掛けるつもり?」

 「待て、何を言っている……?」

 いきなり会話が変な次元にぶっ飛ぶ

 「貴方から色んな女の匂いがするけど、貴方ジゴロの才能あるんじゃない?」

 “何故か否定出来ん……”

 「私の知り合いにもいるんだけど、仲良くなった女の子に片っ端からフラグを建てる節操無しで、薔薇っぽい気配も出してるよ」

 “何故だろう……他人の気がしない”

 「現在、私も含めて三人の女の子が夢中。男は三人べったりしてるし、その内二人は男の娘」

 何というか、十歳程度の少女の会話では無い

 「でも、貴方どちらかと言うと薔薇の雰囲気が似合いそう。『これが俺のデウス・エクス・マキナだ!』みたいな」

 「そのネタは止めろ。俺は同性愛者では無い」

 「え?嘘?」

 「……怒るぞ?」

 「こんな儚げな女の子を蹂躙するなんて……鬼畜な変態さんだね」

 ピキリと一夏の血管が浮かび上がる

 “落ち着け、相手はこれでも十代の少女だ……”

 ストレスがマッハ所か、光速で溜まるけど我慢する一夏

 「よく見れば、貴方は世の男共を差し置いて絶賛ハーレム中で有名な織斑一夏だね」

 「………何だ、その見解は」

 「女の園にただ一人だけ入学した男。うん、見事に学園ラブコメ主人公だよね。不幸になれば良いのに」

 今の一夏の気持ちを表すなら『もうヤダ、何この子……!?』

 一瞬、右手の待機状態にしてある『白式』を展開してしまおうかと考える一夏

 「もう止めなさい玲愛、彼はお客さんなんだから失礼でしょ?」

 リザが救いの手を差し伸べたお蔭で一夏の危機は一応去った

 「もう少し早く止めてくれ」

 「ごめんなさい。貴方が玲愛に振り回されるなんて初めて見る光景だから、つい……」

 そう言う彼女は実に楽しそうであった

 「貴方、やっぱりジゴロの才能あるよ」

 「黙ってろ」

  

 とりあえず、リザと玲愛の二人に案内され孤児院の方へと向かってみた

 そこは校庭の様な遊び場だった

 「蓮、遊ぼう!」

 「蓮君……一緒におままごとしよ?」

 「レン、私も交ぜてくれるか?」

 「僕も……」

 「はっ!コイツらより俺と一緒に遊んだ方が楽しいぜ!!」

 「大変だねぇ、蓮君」

 「ちょっ!?待て、お前等!!」

 何やら一人の少年を中心に騒がしかった

 視線を他の場所へやると

 「ロートスがお婿さんで、私がお嫁さん!」

 「お嫁さんならリザさんの方が良いから、リザさんの真似出来る?」

 「ちょっと誰か、パンツァーファウスト持って来い」

 何やら戦友を小さくした様な少年と、魔女を小さくしたような少女が何かやってた
 
 「………………………」

 花壇の方に視線を向けてみる

 「オラァ!男なのに花を育ててんじゃねぇよ!!」

 「わあああああッ!!?姉さん、止めてよぉ!」

 「もっと男らしくしろよ!このシスコン!(泣き顔のヴィルヘルム、ハァハァ……)」

 何やらキャラ崩壊を起こしている空間が広がっていた

 「何だこれは……!?」

 「あの中尉が姉の尻に敷かれている光景なんて初めてでしょう?」

 「本当に楽しそうだな……」

 そして木の陰には

 「くぅぅぅぅぅぅっ!!私だけ除け者にするとは許しません!ィ奴らァ、私に向かって『お前みたいなモブ男、俺の刹那(遊び友達)に加えるかよ。ぷげらwww 形成(笑)自意識過剰乙wwww』とまで馬鹿にしてぇぇぇッ!!」

 「ほら、シュピーネ。ならもっと偉そうにしなければいいでしょう?」

 「この私が犬役など許せる訳がないでしょう!!私に見合った役割で無ければ……そう『おままごと』の『旦那様』くらいで無ければ!!」

 「だから、嫌われるんでしょう?」

 世界が変わっても見事な小物っぷりを発揮するガリガリの少年と呆れた様子の金髪眼鏡の神父が居た

 「アレは変わりないな」

 「ええ、彼はああでなくちゃいけない気がするし」

 「流石だね。惚れ惚れする程、小物振りに磨きがかかってる」

 シュピーネはどの世界でも小物の様である。魂に刻み込まれた本質なのだろう

 「リザさん、洗濯終わりました!」

 爽やかな主人公オーラを振りまいてやって来たのは、エプロン姿の青年

 「お前は……」

 「お客さんかい?こんにちは、僕の名前は桜井戒。よろしく」

 見事なまでに爽やかだ。主人公オーラがパネェ

 「織斑一夏だ……」

 「君が世界で唯一ISを動かせる男か、会えて嬉しいよ」

 「薔薇が見えるよ。お二人さん」

 「お前は少し黙ってろ」

 「はは、じゃあ皆を紹介しようか。おーい皆」

 戒が皆を呼んで紹介させる

 「綾瀬香純です!」

 「さ、桜井螢です……」

 「藤井連、よろしく」

 「遊佐司狼だ。よろしくな」

 「イザーク・ハイドリヒだ。よろしく」

 「ヨハン・ハイドリヒです……よろしく」

 「ロートス・ライヒハートだ。よろしく」

 「アンナ・マリーア・シュヴェーゲリン。みんなのアンナちゃんで〜す」

 「ヴィルヘルム・エーレンブルグです。よろしくお願いします」

 「ヘルガ・エーレンブルグよ。この馬鹿の姉をしてるわ」

 「私はロート・シュピーネ。以後お見知りおきを」

 世間は意外と狭いモノである

 「私はヴァレリアン・トリファ・ハイドリヒです」

 「………織斑一夏だ」

 ぶっきらぼうに挨拶する一夏

 「織斑一夏って、あの世界で唯一ISを動かせる男の人!?」

 香純が吃驚した様にいう

 「ああ……」

 「マジかよ!じゃあISをマジで動かせんの!?」

 「ああ……専用機もある」

 司狼に応えて待機状態の白式を見せる一夏

 「スッゲェ!じゃあさ見せてくんねぇ?」

 「おい、司狼。いくら何でもそれは……」

 「いいだろう」

 一夏の体に光の渦が集まり、ISとなって体に装着された

 「これが俺のISだ」

 「スッゲェ!!」

 「カッコいい!!」

 「凄いね……」

 騒ぎ出した子供達に囲まれ一夏は困惑していた

 “……どうすれば良い?”

この様に子供たちに慕われる事に慣れていない

この後、皆を一人ずつ抱えて空を飛んだりするサービスをしてあげた



そして一夏はヴァレリアンとリザに連れられ、教会の地下に来ていた

「ここが騎士団の秘密施設です」

そこは広い研究所であった

更に会議室は円卓であり、中央には巨大なディスプレイが浮かんでいた

「この施設はIS関連の補給基地でもあるの」

「日本政府は知っているのか?」

「ええ、黙認されているわ。ハイドリヒ卿とヴァレリアンの手回しのお蔭で」

「いや、中々に苦労しましたよ」

ニコニコと頭を掻きながら笑っているヴァレリアン

「黒円卓第三位『神を運ぶ者(クリストフ・ローエングリン)』それが私です……」

彼に案内され、最深部の保管庫に着いた

「貴方には特別に見せてあげましょうか」

そして一際厳重なロックが掛けられている物凄い保管庫が開けられる

「これが我ら聖槍十三騎士団の最終兵器の一つ。究極の武装『聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)』です」

黄金の槍が一夏の目の前に現れる

「『聖槍』か……」

「ええ、これはIS用の武装としては核兵器をも超越するでしょう」

『聖槍』これは特殊な金属で出来ており未だに再現が不可能なモノらしい

エネルギーを凝縮した一撃を放つことが可能であり、誰が造ったのかは不明らしい

これに近い金属として桜井戒の一族だけが鍛練法を知っている特殊金属『緋々色金』があり、黒円卓のISは総て『緋々色金』で出来ている

『緋々色金』の産地は黒円卓が既に支配しており、他の国に渡る事は無い

現在『緋々色金』を扱えるのは

齢80を超えの老人『桜井武蔵』

戒と螢の叔母であり、騎士団に専属で雇われている黒円卓第二位の『桜井鈴』

それに戒と螢の両親である二人

ISが世界に出てから、桜井一族の元へはISの精密部品の注文が大量に来ており忙しい

『桜井鈴』は傭兵やって逃げたが戒の両親に『黒円卓に雇われてんなら、そっち頼むわ』と働かされている。出来高制の報酬なので一応は頑張っている

ついでに戒は修行中で、孤児院の日曜大工とかしている

「これの問題は誰も扱えないのですよ」

「やはりハイドリヒ以外は無理か」

「ですが、ハイドリヒ卿はISを使えません。現在リザの研究でハイドリヒ卿がISを起動できるように頑張っています」

「ここにもISコアがあるのか?」

「ええ、篠ノ之束が寄越してきた彼専用のISがね」

それの名が『聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)』

篠ノ之束が付ける名だと『金獅子』

「狙われる事は無いのか?」

「大丈夫です。情報はしっかりと隠蔽してあります」

「それに私のラファールもあるし」

「お前は後方支援型では無いのか?」

「ええ、そうよ。私は補給部隊だから、斃され無い為の特殊装備が豊富なの」

リザのISは黒円卓仕様の『ラファール・リヴァイヴ』であるが様々な特殊装備を持っている

ジャミング、ハッキング、ステルス、端末操作……etcと特殊船仕様である

彼女専用のバイザー型装備『青褪めた死面(パッリダ・モルス)』はハイパーセンサー兼超高性能演算ユニットであり、これによって様々な電子戦を行ったり、自立型攻撃ユニットを操作する

黒円卓でも彼女は天才的な頭脳を持っており、戦闘能力を頭脳でカバーしている

彼女なら自立兵器を操作しながら自分も動き回る事が出来るだろう

ISネットワークを介して相手の機体にハッキングも出来るから恐ろしい

厄介極まりない装備といえよう

「ここは私達の領域よ。もし此処に攻め込んで来られても問題無いわ」

「孤児院の方で人質を取られる場合の事は……」

「大丈夫です。孤児院は一番頑丈に作ってありますし、更にシェルターも用意してあります」

防備は万全らしい

「ハイドリヒ卿も私も大変ですよ。殆ど毎日激務ですから」

「それでも余裕でこなすのは、彼らしいのだけど……」

相変わらず忙しそうなヴァレリアンに同情する一夏だった




一夏はそろそろ帰る事にしたので、皆に別れを告げようと孤児院に向かった

するとロートスに出会った

「もう帰るのか?」

「ああ……」

「もっとここに居てくれよ!まだ別れたくない!」

ロートスは一夏ともっと一緒に居たいらしい

だから一夏は言う

「俺達は永遠にはなれない刹那だ」

「刹那?」

「一瞬、短い時間の事だ」

キョトンと聞き返してくるロートスに一夏は答える

「いつかは別れる時が来る。だが再会する時もあるかも知れん」

「また会えるのか?」

「さてな、長い人生だ。どうなるかは神しか知らん」

一夏はロートスの頭に手を置く

「永遠では無いからこそ、今の刹那を大切にしろ。」

知らず知らずの内に一夏は笑っていた

「分かった……」

少年は幼いながら何かを理解した様だった




そして別れの時

「じゃあな……」

「「「「「さよなら――――!!」」」」」

去ろうとする一夏にロートスが、彼の前に出て宣言した

「俺、絶対ISを動かす!!そしたらISについて教えてくれよな!!」

「あっ、俺も!!」

「私も!!」

皆の宣言に一夏は……………

「ふっ……ふふふふふふ…はははははははははッ!!!」

初めて声を上げて笑った

「ちょっ!笑うなよ!俺は本気だぞ!?」

「ああ、そうだな……その時を楽しみにしているぞ。ロートス」

「約束だぞ!」

「約束しよう」

未来に於いて、この約束が果たされるかどうかは誰にも分からない

だが一夏によって、少なくない影響を受けた少年少女達は、今この刹那の中で生きてゆくのだった




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