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ひぐらしのなく頃に 〜結殺し編〜 第二話『お弁当と部活』
作者:虫歯菌   2012/07/09(月) 09:25公開   ID:vIRnTPy8yiU




〜結殺し編 お弁当と部活〜


 授業は、とても難しかった。なぜなら自分が教える立場だったから。教えてもらう立場の気楽さを思い知った気がする。というか、勉強を教えるという行為自体、ぼくにとって初体験なのだから、難しくないほうがおかしいのではないだろうか。脳を使うということは必然的に体力を消費するという行為となんら変わりない。そしてなにより、栄養を消費することでもある。
 だからこそ、この時は至福の時間となるのだろう。
 そう、ぼくは思っていた。
 園崎さんに、《お昼一緒にどうかな、裕ちゃん》なんて言われて、実際にお昼を一緒に食べるまでは。
「おーっほほほ! レナさんのハンバーグ、いただきですわ!」
「うん、いっぱい食べて! 食べて! は〜うぅぅ! ハンバーグ食べてる沙都子ちゃんかぁいいよぉ〜!」
「むぐぅ……!」
「レナ、沙都子が抱き締められて苦しがってかわいそかわいそなのです。もぐもぐ」
「はうぅぅぅ! 沙都子ちゃんが嫌いなかぼちゃを代わりに食べてる梨花ちゃんもかぁいいよぉぉ〜! お持ち帰り〜!」
「みー……」
「……なんか怖い」
「あはは……。かぁいいモードになったレナを止められる人なんて、そういないからね」
 園崎さんですら顔を引き攣らせている。しかしぼくはそれ以上に顔を引き攣らせているだろう。変顔をしているのかと訊かれて《いいえ違います》と言っても信じてもらえないレベルだと思う。
 しかし、どうやらこれも日常茶飯事のことらしい。沙都子ちゃんはもがき苦しんでいるが、梨花ちゃんはそのレナの腕の中で優雅にお弁当をつついている。第一印象が猫だった梨花ちゃんは、やはりどうしても猫のようにしか見えなかった。こう、なんていうか、……自由気儘? いや、そういうわけでもないか。ただ、猫を被ってるのは、多分、確かだろう。
「ああ、そうだ。竜宮さん――」
 今度の日曜日とか空いてるかい?
 そう聞こうとした時、園崎さんと竜宮さんの鋭い目線がぼくを射抜いた。何故だ。というか、竜宮さんはさっきまで暴走――所謂かぁいいモードになっていたはずなのだが、こんな素早く目を覚ますとは。案外かぁいいモードも危険なものではないのかもしれない。いや。そもそもぼくはなんでこんな可愛い子のことを危険だと判断したのだろう。
「沙都子と梨花ちゃんは名前で私たちは名字って、なに、喧嘩売ってんの、裕ちゃぁん?」
 なんか不気味だ。
「喧嘩とかはしたくないけど、できれば私も名前で呼んでほしいかな、かな」
「はあ……」
 そんな溜息とも相槌ともとれるであろう一言しか、ぼくの口からは出なかった。というのも、同年代の子を名前で呼んだことなど一度もないのだ。さて、これはなかなかの難関だ……。
「……そ、そんなに悩むことなのかな、かな」
 竜宮さんが不安そうに、上目使いになりながらも言う。おふ……。
「竜宮さ――いや、レナなら、いいかなって」
「ふえ!? な、なにがいいのかな、かな!?」
 竜宮――いな、レナの頭を撫でながら言うと、案の定。レナはお花畑へと飛んでいった。彼女の瞳を覗き込むと、どこぞの家の中でレナとぼくが夫婦になっているビジョンが浮かんでいる。おい。……いろいろおかしい。
「へぇー、じゃあおじさんのことも呼んでみな?」
「委員長さん」
「なんでレナは名前で私だけ名字――ってアレ!? 名前どころか名字すら呼ばれてない!? いいよ、分かった! こうなったら、《部活》で勝負だ!」
 そんな、ぼくにとって意味不明な発言をされたのだった。
 その後、残り僅かな昼休みの時間をレナの弁当を食べるということで時間を潰した。未だレナに捕まっている沙都子ちゃんと梨花ちゃんがレナの弁当がどんどん消費されるのを遠い目で見ていたが。いや、梨花ちゃん。君はレナの弁当食べれるだろ。沙都子ちゃんはどうか知らないけど。




「それで、部活って?」
 午後の授業も終わり、外からは遊んでいる子供達の喧騒が聞こえてくる。サッカーボールが蹴られる音が聞こえてくる。女の子が縄跳びをしているのか、一定のリズムで数字が数えられていく。都会では放課後と言えば家に帰って休んでから勉強、或いは休まず勉強という、あまりにも退屈な人間ばかりだった。その点、この雛見沢村の子供達は本当に楽しい人間だ。いや、子供なんだから、あれが普通か。今思えば小学生の頃なんて家で勉強してなかったし。
「部活……これは、最早戦争だよ!」
 委員長が大声を張り上げながら言った。
「おーっほほほ! 祐二さんにこの私のトラップ、かいくぐれるかしら?」
 相変わらず演技臭い台詞だと思う。
「叩き潰してあげますなのですよ、みー」
 可愛い顔して怖いこと言わないでくれるかな、背筋が凍るって言葉を実感せざるをえないんだ。
「つまり、皆で楽しくゲームをしようってことだよ、祐二君」
 つまり、じゃねえよ。今の台詞のどこにゲームなんて単語があったよ。戦争って言ってたぞ。
 しかし、ゲーム。ゲームか。ゲームと言っても、その幅は非常に大きい。例を挙げるならば、トランプなどの机上でするゲームもあるし、鬼ごっこなどの外でするゲームもある。この教室に残ってるのは、ぼくも含めたこの五人だけ。つまり、この五人が部活メンバーだろう。その中に下級生が二人。なら、鬼ごっこもありえなくはない。かくれんぼだってするかもしれない。そう思うと、体力が少ないぼくが圧倒的に不利になるだろう。
「……で、部長は?」
「この私、園崎魅音が部長だよ。なにか質問?」
「うん。……君は戦争と称したけど…………。戦争には必ずしも勝者には利得が、敗者には不利益を背負わされることになるのは、知ってるよね?」
「な、なんだか怖いこと言ってるけど……賞品と罰ゲームのことを言ってるのかな、かな?」
 レナが笑顔でそう言った。台詞の前半だけ、少し顔を引き攣らせていたけど。
「へぇー……いいとこに目をつけたね。確かに、この部活には罰ゲームが存在するよ」
「それは決まってたりするのかい?」
「いや、決まってない。その場その場で考えることにしてるよ」
 ぼくは少し、不安になった。罰ゲームが決まっていて、それを教えてもらえれば覚悟のつけようもあるというものだ。だが、その場その場で罰ゲームを考えるとなると……。
「裕ちゃん、罰ゲームのこと考えてると、負けるよ?」
「おーっほっほっほ! 最早祐二さんの負けは決まったようなものですわね!」
「なにを言うか。……つまり、あれだろ?」
「そう。あれだよ」
「あれですわね」
「あれなのですよ」
「うん、あれだね!」


「――勝てば問題はない」





 と、ぼくはかっこよく決めたわけなのだが。
 ぼくは既に肩で息をしていた。
 ゲームは《高鬼》。体力には自信がなかったが、トランプは不利になるだけだからと、レナが言ってくれた。何故トランプで不利になるのかは分からなかったが、ぼくはとりあえず、これからどうするかを考えていた。
 今ぼくらがしているゲームは《高鬼》。ぼくも小学生の頃に良く遊んだものだ。ルールは至って簡単。普通の鬼ごっこだ。ただ、高いところにいれば鬼に捕まらないという、逃げる側にとってはとても有利なルールが付与されただけ。勿論、ずっと高いところにいるのは禁止だ。言ってしまえば十秒ルール。十秒間同じところには留まれないという、鬼にとって有利なルールだ。
 つまり、フェアであるということだ。
 しかし、ぼくは鬼の方が有利だと思っている。まぁ、何故そう思うのかは簡単に予想できることだろう。というか、ぼくが鬼だから、少しでも鬼の方が有利だと思わないとやってられない。じゃんけんとは時に無情なものである。
 この《部活》というゲームには、一つの一定ルールがあると見た。それが経験上のものだ。制限時間は一時間と指定され、既に三十分が経過している。これだけの時間があれば、部活メンバーの特性はつかめてくるものだ。

 まず一つ。沙都子のトラップには引っかかってはいけない。遂先ほど、トラップに引っかかったら五分以上抜け出せなかった。
 二つ。レナのかぁいいモードは相手にするな。顔面を潰される。神速のパンチと神速のダッシュは脅威だ。
 三つ。梨花ちゃんは策士だ。レナのかぁいいモードを上手く使ってくる。レナとの連携は部活メンバー随一だろう。
 四つ。部長である委員長はそもそもスペックが違いすぎる。正しく桁違い。体力、思考力、共に申し分なし。ぼくでは到底敵いそうにない。

 しかし、この中で最も捕まえやすい部活メンバーがいる。梨花ちゃんだ。梨花ちゃんは先ほど言ったとおり、策士である。小柄な体を活かす動きや、体力が意外と多いところはさすが田舎の子供だと言えるだろうが、それでもぼくよりは体力も少ないだろう。弱いところを突いていくのは、戦術の内だ。どんな手を使ってでも、勝利する。そうでもしないと、ぼくは罰ゲームを喰らう羽目となるのだから。





 校庭の隅っこ。体育倉庫の上。そこに梨花ちゃんは上っている。十秒の時間制限ののち、捕まえる。しかし、体育倉庫の上なのだから、壁という隔たりがない。東西南北どの方角にでも逃げられるのだ。彼女の予備動作をしっかり見なくてはいけないだろう。ぼくの体力が少ない、というのは、どうも体質からきているらしく、どれだけ体力づくりをしても結果は変わらなかった。そこで、ぼくの父親は、動体視力を上げるトレーニングをした。ボクシングだ。ジムには通ったが、一戦したら最早戦闘不能。そんな中でも、ぼくは一撃も喰らわずに――喰らわせることもできなかったが――、一つの試合を終わらせることも可能な俊敏力、動体視力を手に入れた。視力やら動体視力やらには自信があるのだ。
 その動体視力を活かせば、梨花ちゃんは簡単に捕まえることができる。梨花ちゃんを捕まえたら、後はレナを捕まえるのみだ。
「梨花ちゃん、降参してくれないか? 後三秒だよ」
「御免なのですよ、祐二」
 梨花ちゃんはそう言いながら、駈け出した。北の方向に。ぼくはしかし、北には行かなかった。先回りしたほうが有利であるのは当然。ただ、見えたのだ。梨花ちゃんがこっそり、東の方向へと進行方向を変えたのを。
 ぼくは東へと先回り。梨花ちゃんは驚いた顔をしながら、体育倉庫の屋根から下りた。本来なら、引き返せただろう。引き返して、西の方へと逃げることもできた。だが、梨花ちゃんが東へと歩みを進めた頃には既に残り二秒もなかった。梨花ちゃんは詰んだのだ。
「みー……捕まってしまいましたなのです」
 梨花ちゃんの敗因は、時間ぎりぎりまで屋根の上にいたことだろう。時間に余裕を持って逃げる素振りをすれば、その小さな体と俊敏性を活かした動きで逃げれただろうに。
 そんな梨花ちゃんの頭を撫でながら、ぼくは梨花ちゃんに訊いた。
「お疲れ様。後は簡単だね……。梨花ちゃん、今部活メンバーがそれぞれどこにいるか把握してるかい?」
 ぼくがそう言うと、梨花ちゃんは少し考える素振りを見せる。
「全てを把握しているわけではありませんが……まず、沙都子は校舎の裏庭で罠を作ってると思いますです。レナと魅ぃは、もしかすると一緒に行動してるかもしれません。さすがに魅ぃの行動は読めませんが……」
「それだけ分かれば十分だよ」
「……本当ですか?」
「ああ、十分に十全と言ったところだね」
 ぼくはそう言うと、梨花ちゃんを抱きかかえた。所謂、お姫様だっこだ。梨花ちゃんはもう一度だけ驚愕顔になり、しかし、すぐに納得したように、《みー》と鳴いた。
 ぼくはそのまま、梨花ちゃんと共に歩みを始める。気配は感じないが――視線は感じる。背後だ。もしかすると、梨花ちゃんがいた体育倉庫の中にいたのかもしれない。体育倉庫から十分な距離を取ってから、ぼくはそちらの方を見た。
 そして小さな声で梨花ちゃんに《よろしく》と言った。
「みー……連れ去られちゃうのですよ……。レナ、助けてーなのです」
 そんなに大きくない声。その声がレナに聞こえていたかどうかは怪しい。だがしかし、演技であろう涙目で、チワワのような可愛らしい梨花ちゃんを見て、レナが反応しないはずがない。そう。暴走モードへと突入だ。
「はぁぁぁあぅうぅぅうううう!」
 そんな声とともに、体育倉庫の扉が大きな音を立てて吹っ飛んだ。それは放物線を描き、ぼくらの眼前に落下する。校庭の砂塵が舞い上がり、その先には一つの影。そして、鋭い眼光。
 恐らく、レナパンチを使用したのだろう。実は、レナパンチは既に喰らったことがある。昼休みの時、沙都子ちゃんに《レナの弁当、食べたい?》と訊いた。レナに束縛されていた沙都子ちゃんは弁当が食べれなかったのだ。物凄い勢いで頭を縦に振る沙都子ちゃん。だけどぼくはそれを《ふぅん》の一言で済ませた。そして、どんどん弁当の中身を口の中へと押し込んでいく。
 それを見た沙都子ちゃんは、レナに涙目になって《レナお姉ちゃん、祐二さんが苛めますの……》と言ったところ、次の瞬間にぼくは吹き飛ばされていた。神速のレナパンチには、注意すべきだ。
 体育倉庫の扉が吹き飛ぶことは、まず間違いがないと思った。引き戸をスライドさせる猶予なんて、今のレナにありはしない。
 神速の速さでレナはぼくのことを吹き飛ばし、その代わり、梨花ちゃんを抱き締めた。レナパンチが梨花ちゃんに当たっていないのが凄いなーと考えながら、ぼくは校庭にその体を滑らせた。
「はぅ〜! 梨花ちゃん、レナお姉ちゃんが守ってあげるからねぇ!」
「レナ、捕まえたのですよ、にぱー」
 梨花ちゃんに頬ずりしていたレナの動きが止まった。
 そう、梨花ちゃんは今、鬼だ。ゾンビルールなのだ、この《高鬼》は。鬼が増えていく、ゾンビ式。それを知っていたにも係わらず、レナは梨花ちゃんに触れた。同じ地面で。梨花ちゃんに触れた。
 それはつまり。
「あ、あ……そういうことなんだ……」
 レナは渋い顔をした。梨花ちゃんは満面の笑み。ぼくも、少し口角を緩ませているだろう。暫時渋い顔をしていたレナだったが、梨花ちゃんを抱き締めているという現実をもう一度確かめ、かぁいいモードへと落ちていった。






 梨花ちゃんが言うには、沙都子ちゃんは校舎の裏庭にいるらしい。裏庭は少し湿っている。校舎で影となった部分が大多数を占めるその敷地には、確かにトラップが仕掛けてあった。しかし、視線を感じない。もし手動式トラップならば沙都子ちゃんがこちらの動向を見なくてはならないだろう。ということは真の意味でのトラップを仕掛けているということだ。しかし、ここに沙都子ちゃんがいないのであれば、トラップに引っかかる意味はなくなる。だがしかし、ぼくは敢えて、引っかかる。
「ゆ、祐二君!?」
 レナが驚きの声を上げる。
 まず一つ目、ピアノ線がピンと張られた罠だ。そこに足を引っ掛けると、どういう原理か知らないが、頭上から五つほどのこんにゃくが降ってきた。それに大した攻撃力はない。しかし、沙都子ちゃんのトラップ。ぼーっとして受け止めていると、なにをされるか分からない。こんにゃくになにかしらの細工を施されていてもおかしくなどない。故に、逃げた。前方へと。
 問題はその先だった。そのこんにゃくを避けた先にはもう一本のピアノ線が張られており、勢いに任せて避けていたぼくは必然的にこけることとなる。そしてこけた先には――墨汁が敷かれていた。
 べちゃっと、音がした。




 ぼくが引っかかった音を聞いたのか、沙都子ちゃんが姿を現した。その瞬間、レナと梨花ちゃんが沙都子ちゃんをひっ捕らえるという結果に終わった。ぼくが墨汁まみれになるという犠牲がありながらも、なんとか沙都子ちゃんを捕まえられた。
 残りは、委員長だ。
「祐二さんも、ざまぁないことですわね、おーっほほほ!」
「うん、してやられたよ……。沙都子ちゃんには罠師の才能があるんだね」
 右手でごしごしと、摺るように頭を撫でてやる。少しだけ《え?》みたいな疑問顔になったが、一瞬で笑顔に咲き返った。可愛らしい八重歯が見え隠れする。
「ついでに言うとぼくの右手は墨汁だらけだ」
「っ!! 祐二さん、レディーの頭を墨汁で汚すなんて、あり得ませんわ!!」
 レディーが男性を墨汁まみれにするのもあり得ないことだろう。
 ぼくがそう言うと、沙都子ちゃんは少し黙った後、頬を膨らませてしまった。

 ちなみに、本当はあのトラップは見せかけのもので、右や左に避けていたところでそれぞれ別のトラップが起動したそうだ。剣呑剣呑。
 さぁ、残る委員長さんはどこに行ったのやら。
 これはもう、レナに頼るしかないだろう。
「レナ、ちょっと」
 手招きをした。
「……? どうしたのかな、かな」
 自分の容姿に自信はない。だが、ぼくに撫でられてかぁいいモードになるのだから、きっと、なってくれるだろう。そう思いながら、純粋な子犬のような瞳でこちらに近づいてきたレナの顎を、指でくいっと持ちあげた。
「レナ、お願いだ。園崎さんを――いや、委員長を探し出して捕まえてくれ。ゲームのルールを守りながら」
 言いながら、レナの顎を持ちあげていた手を頬に添える。そうしてレナのおでこに軽いキスをしてから、
「園崎さんを捕まえてきたら、御褒美をあげるから」
 なんて囁いた。――いや、嘯いたと言うべきかもしれない。
 結果。ぼふん、と蒸気が発生した。レナが茹でダコになった。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁあうぅぅぅぅうううううううううううう!」
 予想以上だった。
 暴走機関車とは正にこのこと。レナは人間離れした嗅覚と視覚と聴覚を持ってして委員長を発見。委員長はぼくたちが全員鬼であることに気付いたのか、舌打ちをしてから校庭のど真ん中へと走っていった。レナ一人を捌くには充分だと思ったのだろう。だがそれは、勘違いだ。
 今のレナは人すら超えた存在。
 不可能は、ありはしない。
「はぁぅぅぅぅううううう!」
「なんか、いつもより、暴走してない!?」
 レナの速度は委員長よりも速い。このまま走っていけば、勝つのはレナだろう。
 委員長は校庭を突っ切り、しかし途中で急カーブ。校舎の方へと走っていく。凄い速度で走っていたレナは少し足を滑らせながら、それでも委員長に影のようにはりつこうと必死だ。
 そして、あともう少しでレナの手が届くというところで、委員長は跳躍した。校庭の片隅にある重機の上に乗ったのだ。
 あともう少しで届くところだったレナはバランスを崩し、盛大にこけて大袈裟に滑った。いや、あの速度で走っていたのだから、大袈裟ではないのだろう。そして、滑った際に砂埃が巻き上がる。その中から、レナの眼光だけが見える。
「魅ぃちゃあああん。下りてきなぁよぉおお。祐二君の御褒美はうぅ!」
「ひぃっ!! なんか怖い!! 裕ちゃんレナになにしたのさぁあ!!」
 ぼくはなにもしてません。ええ、してませんとも。
 ……後でレナと委員長に謝っておこう。
「不潔なのです」
 梨花ちゃんのそんな一言が、軽く心を抉った。
「大人になるとね、皆不潔になるんだよ、梨花ちゃん」
「みー。なら僕はずっと子供のままがいいのですよ……」
「そうだね。それが、理想的だ」
 と、後数秒で十秒が経過しようというところで。
 ――ピピピピピピピピピピ!
 電子音が鳴った。
 それは、恐らく、タイマーの音。一時間が経過したという、証拠。
「勝っっっっったぁ!」
「は、はぅぅぅ……。負けちゃった……」
 レナが凄く落ち込んでる。ぼくの御褒美とやらがそんなに欲しかったのか。まぁ、御褒美なんて、母親の手作りクッキーくらいなものだけど。
 こうして、今日の部活が終了。
 いつの間にか、ぼくの部活生活が始まることとなったのだった。

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■作者からのメッセージ
なんか早速スランプになってる気がする。

というわけで第二話。学校に行く前に投稿――するはずだったんだけど、いつの間にか授業始まってる時間になってーら!
遅刻乙……。

どうも、描写力というものがないせいで読みづらい小説になってる気がする。できるだけ空白による文字稼ぎはなくしていこうとは思ってるんだけど……。台詞と字分の間には空白入れたほうが良いのかな?

まぁ、ね。ひぐらしのなく頃には実は皆殺し編の漫画を途中までとDSのゲームを一個だけしか持ってません。アニメはぴらぴらーっと見たんだけど、内容を詳しく把握しているのかと訊かれると自信なさげに「あー、はい……」みたいな返事をする感じです。

なので原作と違うところが出てくるかもしれません。その際には指摘してくださると嬉しいです。大きすぎるミスはむしろオリジナル設定とさせて活用しますが、小さなミスであれば随時修正していこうと思っています故。

そういえば、感想の返事ってあとがきでするものなんですか?
感想のススメのところ読むと「あとがきにて返信」ってあるんですが……。
新しいサイトに来ると分からないことばかりですたい……。
まぁ! 感想来てないから今のところ困ってないんだけどネ!

では、ご感想、誤字脱字指摘、質問など、いつでも受け付けておりますので、気軽にどうかよろしくお願いします。
では、これにて失礼。
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