交戦を中断したソレスタルビーイングはプトレマイオスを着艦させ、艦を降りる。
「君があの艦の艦長か。」
コウゾウがスメラギに問う。
「いかにも。」
スメラギは凛とした表情で答える。
「君たちはどこから来たんだ?」
「その前に、ここがどこなのか教えていただけると、こちらとしても答えやすいのですが。」
スメラギは出来るだけこちらの素性は明かしたくないようだ。
「どうする、碇?」
「彼らは【使徒】とは関係なさそうだ。教えてやれ。」
「やれやれ・・・上にあった街が第三新東京市、ここはその地下にある特務機関【NERV】だ。」
「ネルフ?」
スメラギが不思議そうに応答する。
「詳しい事までは言えない。名前ぐらいは教えることは出来るものの・・・」
コウゾウは少し黙った。
何か言いたくないことでもあるのだろうか。
「その情報は正しいのですか?」
「それ以外に何がある。」
ゲンドウは動揺する素振りを見せない。
「ならばいいでしょう。私たちはソレスタルビーイング。あの艦(ふね)プトレマイオス2に乗って宇宙を飛んでいました。」
「宇宙ですって?」
ミサトが驚いた様子で聞き返す。
「ええ、私たちは宇宙の調査を行っていました。ですが、途中で変な【赤い渦】に巻き込まれてこの場所に来たんです。」
「要は元いた場所からこの第三新東京市に飛ばされてきたと、そう言いたいのだな?」
「ええ、その通りです。」
それからスメラギはこれまでの経緯を話した。
それと同時に、攻撃したことを謝罪した。
「まぁ、こっちもエヴァを出しちゃったわけだし、お互い様よね。」
「そう言ってもらえると助かるわ、それとエヴァというのは・・・」
「それは私から説明させていただこう。」
ゲンドウが割って入る。
「碇指令・・・」
「構わん。」
「汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。」
「人造人間ですって?」
「そうだ、この世界には我々の敵となる【使徒】というものがいる。」
「使徒?」
「この第三新東京市に突如襲来した謎の生命体だ。」
「その使徒を倒すために我々はエヴァを作ったんだ。それ以上のことは何も言えない。」
「いえ、構いません。あれがなんだったのか、今分かりましたので。」
スメラギは頭を下げる。
「さて、そちらの機体のことを教えてもらおう。」
「・・・」
スメラギは黙り込む。
「スメラギさん・・・」
フェルトが心配する。
「いえ、問題ないわ。」
「教えましょう、あれが何なのか。」
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刹那たちはシンジたちと対面する。
「(なぁ、ティエリア、挨拶ってするもんなのか?素性は明かさない方がいいんじゃないか?)」
ロックオンがティエリアに耳打ちする。
「(スメラギさんからは名前だけなら構わないと言われている。しかし、ガンダムに関しては喋るなと口止めされているがな)」
「(そーかい、了解だ。)」
「ねぇ、アンタたち?さっきのロボットに乗ってたのは?」
アスカが声を荒げる。
「アスカ、初対面の人たちにそんなこと言ったら失礼だよ・・・っ!」
「何言ってんの!?あいつらは私たちを攻撃してきたのよ!?初対面も何もあったもんじゃないわ!!」
「そのことに関しては、申し訳ないと思っている。」
「君は?」
「俺は刹那・F・セイエイだ。」
「ロックオンストラトス。」
「僕はアレルヤ・ハプティズム、彼女はマリー・パーファシーだ。」
「よろしくお願いします。」
「ティエリア・アーデだ。」
「あ、僕の名前は碇シンジです。こちらこそ、よろしくお願いします。ってほら、アスカも自己紹介しないと。」
「ああ、もうめんどくさいわね、惣流・アスカ・ラングレーよ。」
ここにいる一通り全員の自己紹介が終了したところで、このロビーに誰かが入ってきた。
「あら?碇にアスカやん、ここでどないしたん?」
陽気に二人に挨拶したのは鈴原トウジ。彼もエヴァンゲリオンのパイロットだ。
「トウジ、なんで来てくれなかったのさ。」
「いや〜、ワイも急いだんやで?でも流石に走ってここまで来るのはキツかったわー。ところで、そこにいるのは誰や?見たことない奴らばっかりやん。」
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「へ〜、じゃあアンタらは別の世界から来よったんか。」
鈴原は刹那たちがここに来たこと。先ほどの戦闘についての話を聞いた。
「なんか空が紅いな〜、とか思っとったら、思わず足止めてしもうてな、そこから目が釘付けになってしまったんや。」
「ともかく、悪い奴らやなさそうやな!!」
鈴原は別の世界から来た人に対してもフレンドリーだった。
「碇シンジ、ここの場所についての情報が欲しい。」
ティエリアがシンジに聞く。
「え、場所って言われても・・・実は僕たちの上司の人から『名前以外のことについては何も言うな』って言われてるんです・・・すいません。」
「そうか、なら構わない。こちらも同じ条件なのでな。」
「そうですか、助かります。」
シンジは内心ホッとしていた。
「なぁ、シンジ君よぉ、あそこのカワイ娘ちゃんはなんであんなに厳しいんだい?」
「アスカですか?あいつは昔からあれなんで気にすることはないですよ。」
「そうかねえ・・・もっとおとなしくしてれば普通に綺麗だし―――」
「何か言ったかしら?」
アスカは地獄耳だった。
「おお、怖い怖い・・・」
さすがのロックオンでも狙う気にはなれなかったようだ。
「それにしてもすごい設備だね。パイロットが休む場所にしては十分な気がするよ。」
アレルヤは、NERVの設備に関心を示していた。
「それほど、パイロットに対して気を使っているんじゃないかしら。戦えるのはパイロットだけ。大切にしなきゃ、勝てる戦いも勝てなくなるもの。」
マリーはアレルヤの問に回答する。
「そうですかね・・・昔からこうだったので、僕も来た時は驚きましたが、もう慣れてしまいましたね。」
「碇・・・」
「えっと、刹那・・・君?」
「刹那でいい。」
「うん、わかったよ、それでどうしたの?」
「あの機体に関してだが――――――――」
『緊急自体発生!緊急自体発生!パターン青!使徒が襲来しました!繰り返します!パターン青です!』
「こんな時に限って・・・!」
「碇、使徒とはなんだ?」
「まずはついてきて!あとに説明するから!!」
シンジは真面目な表情で刹那に言った。
「・・・了解した。」
刹那もそれに了承する。
「(この世界には何が起こっているんだ・・・使徒とは、一体なんだ?)」
刹那は疑問を浮かべながら、プトレマイオスに向かった。