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正義の紅い魔王 第二話 紅い魔王の力
作者:愚か者   2012/07/25(水) 10:11公開   ID:/kAaBraqFOs

 士郎がそれに気付いたのは、天の鎖が現実に拒絶された時だった。

「何故、天の鎖が溶ける? まさか!? 宝具の優位性が失われているのか!」

 宝具が縛れるのは、その伝承に関係したモノだけで在り。“まつろわぬ神”の様に、多種多様な伝承が混ざった存在には――宝具の優位性が無い。

 例を挙げるなら――Aと言う神を殺した宝具が在っても、Aを殺した宝具ではBと言う神は殺せない宝具だったとしよう。

 この場合、Aと言う神は殺せても……Bと言う神は生き残る。

 これがもっと複雑化し、Aと言う神の伝承を元にB・C・Dの神の伝承が混ざり――“まつろわぬ神”として顕現した時、Aと言う伝承が殺されてもB・C・Dの伝承が再び元となるAと言う神を再構築する。

 つまり、“まつろわぬ神”を殺す場合――A・B・C・Dの神を殺したと言う共通の宝具が必要となるか、A・B・C・Dの神に対応した宝具を使用して一度の殺さなくてはならない。もしくは、再構築すら出来ない一撃の元に倒す必要が存在する。

 宝具もそうだが、魔術礼装などは大抵その効果が限定的である。

 その為に、必然的に士郎は相手である“まつろわぬ神”を知らなければならない。

 これが、士郎が考えた末に辿り着いた仮説で在り。

 事実、その通りだった。

 今回の場合は、ハトホル神は縛ることが出来たが。別の神の伝承で在る彼女には通用しなかった故の結果だった。
 
 士郎は、その仮説を合流した旅館で凛に伝える。それは、これからの“まつろわぬ神”に対しての対策を練る為でも在る。

「つまり、宝具で殺せる対象は――その宝具に関係した神だけって事?」

「ああ。そう考えるのが、妥当だろう」

 一方、護堂たちは士郎たちと離れてハトホルの神話・伝承を調べる。

「エジプト神話に出て来る太陽神ラーの娘で、雌牛と表されています。また、喜びと愛、美、結婚、歌と踊りの女神あり。後に中王国時代には全ての牛の姿をとる女神は、ハトホル神と習合してしまいました。恐らく、この辺りに先の――天の雄牛との関係が在るのでしょう」

「他にもハトホル神は命の育む生の女神と同時に、死者の守護神としての側面が存在するわ。死の神としての役割は、冥界に現れ、死者を導く、あるいは諭すと言うもの。これによって、生と死の両方を併せ持つ女神になったの。分かり易い例が、ハトホルの息子――イヒ神ね」

 護堂が、エリカの口から出た新たな神の事を訊ねる。

「イヒ神?」

 しかし、それに答えたのはエリカでは無かった。

「イヒと言う名前は、“楽師”・“子牛”を意味していたと推測されている言葉だ」

 答えたのは、つい先程まで凛と話していた士郎。

「それでエリカの続きだが、イヒが持つシストルムは、生と死を行き来する母神ハトホルを呼び、自らに誕生の命を与えて貰う為の儀式的な道具だと見られている。また、ハトホル神の、一般的な夫はホルベヘデティと呼ばれている。このホルべへデティと言う神は、別名エドフのホルスと呼ばれている神だ。恐らくこれがルーツと成り、ハトホル神はイシス神と習合をし。時にホルス神の妻と言う事になったのだろう」

 護堂は、士郎の言葉に感心しながらも疑問を口にする。

「あの、士郎先輩……なんで時に妻って事が付くんですか?」

 それを見て、士郎は少し考えた後に
「元々、ホルス神自体が時代によって様々な変化をしていった神だが……。イヒ神もまた、ホルス神の一つと言える。理由としては、イヒ神は時にハルポラクテスと同一神とされていて。このハルポクラテスはギリシア語風に訛ったものだ。元はホル・パ・ケレドと言う。古代エジプト語でホル・パ・ケレドと言うこの言葉の意味は、子供のホルスと言う。こう言った経緯を経て、ハトホル神はホルス神の母イシス神と習合したのだろう」
 と、護堂の質問に答える。

「まぁ、このハルポクラテス自体が時代を経て――ホルス神の子供時代だけを切り取って、別に神格化したものと言って良い存在になったがな」

「へー。良く知ってるね、髪の白い人。やっぱり、歳は伊達にとって無いね」

 恵那の一言によって、その場の空気が固まる。

「おまっ、なんて事を言うんだ! 士郎先輩は一つ上だぞ!」

「アハハハッ!」

「恵、恵那さん……」

「清秋院恵那、その一言に何か思う処は無いのか……」

「流石、太刀の姫巫女。ズバッと、物を言うわね」

 恵那の一言に慌てる護堂。

 恵那の言葉を聞いて、大笑いをする凛。

 驚きの余り、次の言葉が出ない裕理。

 非難の一言を向ける、リリアナ。

 我関せずを貫く、エリカ。

「良いのか、凛。私が……歳を取っていると言う事は、君も年を取っていると言われているのだぞ」

 士郎は、せめてもの切り返しに凛に言葉を掛ける。

「アハハハ……あっ!」


 ――◆◇◆――


 あの後、当然――凛が怒鳴り出し、状況はぐたぐたに成ってしまい。結局、小一時間の休憩を挟んだ後に仕切り直すと言う事になった。

 俺はその休憩の際に、旅館の温泉で一息付いて居る。

 すぐ後ろから、護堂の声が掛かる。

「隣、良いですか。士郎先輩」

「ん、構わないぞ」

「それじゃ、失礼します」

 そう言って、湯船に浸かる護堂。

 俺はこの機会に、他の【魔王】について知っているか訊ねる事にした。

「なぁ、護堂。お前は、他の【魔王】について知っているのか?」

「まぁ、四人ほど……」

「その人達は、護堂から見てどんな人物だ」

「そうですね……。二人ほど駄目な奴と、やたらプライドの高い姐さんに、少し変わった仮装趣味の男と会いました」

「その二人ほど駄目な奴と言うのも気になるが……姐さん?」

 護堂には、姉が居るのか?

「あっ、姐さんと言っても義姉弟の契を結んだ関係です!」

「ああ、なるほど」

「そう言う、士郎先輩が仕えるアーチャーと呼ばれる【魔王】は如何言う人物なんですか?」

 俺は、護堂の質問に対して当たり障りのない事を答える。

「そうだな。アーチャーの名が指すように、弓に長けている。剣も使えるが、此方は才能が無い。護堂も努力さえすれば、アーチャーと同等の剣術を身に付けられるさ」

「そうなんですか?」

「ああ。昔、俺の剣の師匠がアーチャーの剣は、努力の末に手に入れたモノだと言っていた。事実、アーチャーの剣はその類の剣だった」

 そう、俺には剣の才能は無い。本来、使える魔術も一つ。投影や強化、変化の魔術は全て固有結界から漏れた副産物だ。

「全く、才能の無い身が恨めしくなるよ」

「士郎先輩とアーチャーと言う人を比べても、意味無いと思いますよ」

 護堂に声を掛けられて、初めて俺は自分が知らず知らずの内に言葉を漏らしていた事に気付く。

「くっくっくっ、そうでもないさ。俺はアーチャーの奴にだけは、負ける訳に行かないのさ」

「その言葉って、士郎先輩がアーチャーに勝ってる様に聞こえるんですけど。もしかして、士郎先輩とアーチャーと言う人には何か関係が在るんですか?」

「在ると言えば在るし、無いと言えば無い」

 俺とアーチャーの奴は、元が衛宮 士郎と言う人物だ。

 そう意味では、関係は在るだろう。

 しかし、同時に俺が俺である以上――俺にとってのアーチャーとは、既に超えたモノでしかない。

 そう言った意味では、関係が何も無いと言える。


 ――◆◇◆――

 私たちは休憩が終わると、再び“まつろわぬ神”の素性を調べる。

「それじゃ、休憩前に分かった事だけど。ハトホル神はイシス神としての神格も有している事から、今度はイシス神について考えましょう」

 私がそう言うと、裕理が疑問の声を掛けて来る。

「遠坂先輩。ですが、私達はもっとハトホル神について調べればそれで良い様に思えるのですが?」

「甘いわよ、裕理。もっと視野を大きくしなさい。別方向から調べて見て、初めて分かる事も在るのよ」

 この私の言葉を聞いて、裕理はわかりましたと言って頷きを返してくる。

「それじゃ、イシス神だけど。私が知っている事を話すわ。まず、有名なのがオシリスとイシスの伝説かしら。これは……まぁ、簡単に言っちゃえばお家騒動よね」

「……凛。幾らなんでも、簡潔すぎだ」

「うるさいわね。時代背景まで、説明する必要在るの?」

 この私の言葉に護堂が
「あの、俺の権能の中に『剣の言霊』が在って、それの使用条件が相手の神様の事を深く理解する事なんで、簡単にでも良いんで説明して貰えませんか」
 と言って来る。

「……分かったわよ。良い、この神話は在る意味歴史的に存在した戦いなの。それと言うのもね、当時のエジプトは上エジプトと下エジプトの覇権争いの最中だったの」

「この覇権争いで上エジプトは、ホルス神を。下エジプトは、セト神をそれぞれ立てて戦争をしていたんだ。で、この神話の中でホルスの母神イシスはホルスの誕生から、王座取得まで大なり小なりの差は在れど、ホルス神に王座を獲得まで色々と手を尽くしているんだ。更に言うと、このホルス神を抱くイシス神がキリスト教のマリア信仰の元になったと言われている」

「ついでに言うなら、このイシス神とハトホル神を同一視する神が居るわよ」

「その神様の名前って、何ですか」

「嵐の神バールの妹にして、ティルスの王メルカトの母――アシュタルテ神。元は愛と戦争の神、けれど時代が経つに連れて戦争の力は弱まり。愛と豊穣と性的活力の女神と、成って行ったの。これがのちに時代にエジプトに伝わり、習合されるわ。これも、ハトホル神とイシス神の関係を強めているわね」

 私の説明を続ける様に士郎が
「他にも、アシュタルテ神はメソポタミア人は愛と戦争のイシュタル。ギリシア人は愛の女神アプロディーテー、ローマ人は最高神のユーノなどが、同一視しされている。多分だが、彼女が持つ楯と槍はこの辺が習合された事によって再び戦争の女神としての側面が強くなった事が理由だろう」
 と、言葉を続ける。

「後、イシュタルやアプロディーテーは起源を同じとするアスタルテ神がエジプトに居る事からこの神とも関係が在るし。尤も、このアスタルテ神はホルス神よりも敵対するセト神との関係が深いんだけどね」

「更に付け足すなら、アプロディーテー神とハトホル神は後に同一視されている。それにアスタルテ神は外来の神とは言え、戦争の神だ。恐らくこの辺も、今回現れた“まつろわぬ神”には習合されているのだろう」

 私と士郎が此処まで話し、護堂に『剣の言霊』が使えるか訊ねる。

「……すみません。知る事は、出来たんですが――理解は出来ませんでした」

 まぁ……確かに知る事と、理解する事は違うわね。

「それじゃあ、今まで如何やって『剣の言霊』を使ってたのよ?」

 私の声に、護堂は目を逸らして言い淀む。

 けれど、その答えは意外な処から返ってきた。

「あっ、それは恵那たちがキスをして教えてたんだよ」

「………………………………」

 キス? あのキスで…………。

「ふっざけるなぁぁぁぁぁ! そんなんで、簡単に覚えられ訳在るかぁぁぁぁ!!」


 ――◆◇◆――


 士郎は、凛をなだめ。場が落ち着いてから再び話しだした。

「さて、ここまでの話でハトホル神とイシス神の関係を話してきたが。この関係を更に強める、一つの説が在る。その関係を強める神の名は、セクメト神。もしくはバテスト神」

「どちらの神も、ハトホル神の死の神としての側面を強くしているわ。何故、この神がハトホル神と同一視されるようになったかと言うと。アぺプ神――分かり易く言うなら、アポピシ神かしら。この神はエジプト神話に於ける悪の化身で、これの討伐の際にハトホル神がセクメト神ないしバテスト神を擁護した結果、同一視される様にもなったのなの」

「では、セクメト神やバテスト神に対しても調べた方が良いでしょう」

 リリアナの言葉に賛同し、エリカが続きを述べる。

「そうね。この二柱の神は、太陽神ラーの娘とも言われているの。また、イシス神も幾つか在る神話の中には――太陽神ラーの娘と言う説も在るくらいよ、護堂」

「また、セクメト神はその誕生から疫病などの死の神の側面を持ち。守護する側に立った場合、強力な守護者になると言う雌ライオンと雌猫の二面性を持っています。これはセクメト神が、ライオンの引いてはネコ科の動物の顔を持っている事に由来しているのでしょ。古代エジプトでは、猫がネズミを退治する一種の守り神の様なモノでしたから」

「そう考えると、ハトホル神は幾つの顔が在るんだ?」

 ここで、護堂が疑問に思ったことを述べる。

 それに対して士郎が
「古代エジプトでは、七は沢山と言う数字を現す概念で。理由は、三と四を足した数だから。この三には、複数と言う意味が在り。四は、あまねく全てと言うニュアンスでもある。そしてこのハトホル神だが、神話の中で“運命を告げる七人のハトホル”引き連れるとされている。この事から、ハトホル神は幾つもの顔を持つ神と言えるだろう」
 と、護堂の質問に答えた。

「実際、もっと詳しく調べれば――かなりの数に及ぶ筈よ。今回は、イシス神・アシュタルテ神・アプロディーテー神・アスタルテ神・セクメト神・バテスト神と関係が深いと知っていれば良いわよ」


 ――◆◇◆――


 一夜明けて、護堂たちは再び湾岸の貨物集積所でハトホル神と対峙をしている。

 しかし、今度は教授の魔術によってホトホル神の事を深く理解しているので『剣の言霊』が使用できる状態だ。

「此処に居ても良いんですか?」

 甘粕さんが、小さな声で俺に問いかけて来る。

「ええ。いざとなれば、俺が前に出ます。幾つか、あの“まつろわぬ神”に対して幾つかの対策も在りますし」

「そうですか。しかし、昨日の鎖は何ですか? 少し溶けただけで、霞の如く消えてしまいましたが」

「ああ、アレは偽物だからですよ」

「偽物? アレだけの呪力を秘めた鎖が偽物なんですか?」

「ええ。ただ、俺の魔術で作った刀剣類の贋作は、真作と言っても何の問題も無いほどの精度ですけどね」

 流石に宝具の事を言われていない以上、此方から宝具の存在を明かす必要は無い。

 しかし、宝具の存在は“まつろわぬ神”の口からその存在がバレてしまった。

「邪魔をしないで下さい、神殺し。私は貴方よりも、もう一人の神殺しが使った宝具の存在の方が重要なのです。貴方は、もう一人の神殺しを屠った後にお相手しましょう」

「宝具? 何だよ、それ」

「知らないのですか。人間の幻想を骨子にして、作り上げられた武装の事ですよ。【英霊】と呼ばれる存在が生前持っていた武器や固有の能力・魔術・特徴など。【英霊】を【英霊】たらしめる伝説や象徴が具現化したモノとして有しているモノです」

「今度は、【英霊】って……? ああ、もう、訳分かんねぇ」

「それなら、そこの男と女に訊いてみたら如何ですか。幸い、彼らは知っている様子ですし」

 そう言って、“まつろわぬ神”は視線を俺と凛に向ける。

「えっ、衛宮先輩たちは知っているのですか!?」

「はぁ、仕方無いか。いい、【英霊】って存在はね――過去・現在・未来の時間軸から切り離された英雄たちの霊で。其処に実在したか、如何かは関係ないの。重要なのは、偉大な功績を上げて――後の人々の信仰を得たか如何かよ。人々の信仰を得た英雄の霊格は、神霊・精霊・聖霊の域まで昇華した結果、“【英霊】の座”と呼ばれる領域に取り込まれるわ」

「そう。我らは、世界の理の外より顕現する際に幾つかの伝承を取り込むのは――“【英霊】の座”より、直接顕現することが出来ぬから。故に、座に近い伝承のみで顕現した者ほど――より強い、力を有している。しかし、そんな我らでも――【英霊】の象徴たる宝具は、持ち合わせて居ない。しかし、先の戦いでは――在りえぬ筈の物が、天の鎖と言う宝具が私の映し身たる天の雄牛を縛った。分かりますか、神殺し。私にとっては、貴方よりもあの宝具の使い手こそ脅威なのです」

 凛は、早々と【英霊】の存在を説明した。

 それは、言外に
「士郎、もう【魔王】だと話しちゃいなさい」
 と、言っている。

 確かに、これからも【魔王カンピオーネ】として動くならば――今、この場で話すのも丁度良い機会だった。

 俺は魔術回路を開き
「始めまして……に、なるのかな。七人目の神殺し、草薙 護堂。私が八人目の神殺し、アーチャーこと衛宮 士郎だ」
 と、護堂たちの前で宣言する。

 それに驚きの声を上げたのは、当然エリカ達だった。

 しかし俺は、エリカ達に苦笑いを向けた後――“まつろわぬ神”と話す。

「さて、“まつろわぬ神”。この場で戦うのなら――覚悟をして貰うぞ」

 俺は頭の中に既に描いた、二十もの神殺し・・・の特性を持つ宝具を頭上に展開する。

 一つは、ヴァジュランダ。これはインドの神話で、神々の化身の猿たちの王スグリーバの兄――猿王バーリを倒した、雷の牙と呼ばれる投げ槍。

 一つは、十拳剣。これは日本神話で父神イザナミノミコトが、子神カグヅチノミコトを斬り殺した劍。

 一つは、ハルぺー。ペルセウスが女神の神格を持つメデゥーサの首を切り落とした、鎌とも剣とも言われる鎌剣。

 一つは、ミストルテイン。北欧神話に出て来る、オーディンの息子バルドルを死に追いやった剣。

 一つは、ロンギヌス。キリスト教に於ける神の子キリストを貫いた槍。真名解放を行えば、神に近い者ほど死に繋がる深い傷となる。

 などなど、“まつろわぬ神”に対して効果のある剣や槍などを待機させる。

 更に、手には丹弓とうきゅうと呼ばれる弓を持つ。この弓は中国神話で、太陽を射落としたと言われている。


 ――◆◇◆――

 その光景に護堂たちは驚きを隠せなかった。

「な、何アレ!?」

「……どの武器も、信じられない量の呪力を内包している」

「そうみたいね。……アレの凄さは、魔女の資質を持たない私でも理解できるわ」

 裕理は、その内包する余りの魔力量に言葉が出なかった。

「さて、君に対しての的確な宝具の類を私は知らないので……とりあえず、神殺しの特性を持った武器を構えさせて貰った」

「良く言いますね。それだけの宝具の特性なら、私を屠れると考えているのでしょ」

 士郎は“まつろわぬ神”の言葉に対して
「それは如何かな。正直に言ってしまえば、私は君たち“まつろわぬ神”と戦いうのは今回が初めてだ。果たして、どれだけの効果が在るかは――私には想像がつかないのでね」
 そう答えた。
 
 この言葉には、“まつろわぬ神”も護堂たちも驚きを隠せなかった。

「えっ! 衛宮先輩は過去に“まつろわぬ神”を殺して、【魔王カンピオーネ】に成ったんじゃないんですか!?」

「それは、早計だ護堂。確かに私は【魔王】だが、別に“まつろわぬ神”を倒した訳じゃない。私が戦ったのは、在る儀式で呼び出した【英霊】だ」

 その一言によって、齎された驚愕は並大抵のモノでは無かった。

「しかし、解せませんね。貴方……何者です」

「何、只の贋作者フェイカーさ」

「答える気が無いのなら、良いでしょ。ならば、私は全ての力を持って貴方を屠りましょう」

 “まつろわぬ神”がそう言うと同時に、貨物集積所に魔力が満ち。“まつろわぬ神”は、七人に増える。

「行きますよ、紅い神殺し!」


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■作者からのメッセージ
ミストルテインですが、フロームンド・グリフゥソンのサガとやらの四章に出てくる名剣と書いてありました。よって、この話の中では剣にしようと思います。

次に士郎の権能の説明と名前です。
士郎の権能
『シール・イッサヒル・アメール』
これは、老人が若返るの意。とネットで調べていたら在ったので士郎の権能にしました。
老朽化した剣も、打ち直せばまた使用できると言う意味で“一定の時間の逆行”にしました。

最後に、今回話に出て来たようにウンチクぽっいのを載せます。
ネットで個人的に調べたモノなので、正しい所や間違っている所、自己解釈等が含まれますがお許しください。
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