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竜人とマッドの弟子は赤龍帝 誤解される赤龍帝
作者:ゼクス   2012/07/18(水) 23:59公開   ID:sJQoKZ.2Fwk
 兵藤家正門前。
 ベルフェモンとオーフィスの気配を感じた一誠はアーシアを担ぎながら全力疾走を行ない、家に帰り着いていた。あのままレイナーレ達との戦闘の場に残っていれば、十中八九間違えたと言ってベルフェモンは一誠を攻撃していただろう。
 一見ベルフェモンは常に眠っているように思えるが、オーフィスに対して邪な感情を持って近づきでもすれば即座に鎖の攻撃が飛んで来るのだ。
 オーフィスに気に入られている一誠もまた、ベルフェモンは余り良い感情を抱いていない。もしもあのまま戦いの場に残っていればレイナーレ達だけでは済まず、一誠も巻き込んで攻撃して来ていただろう。

「ハァ、ハァ、ハァ・・危ないところだったぜ・・ベルフェモンの攻撃に巻き込まれたら、絶対に俺なんて死んでいたぞ」

(確かにそうだな。奴の攻撃は三勢力の上級連中でも耐えるのは難しい・・『禁手化バランス・ブレイク』していない状態の相棒では一撃でミンチ・・いや、跡形も無く消滅してしまうだろう・・・ところで相棒・・そろそろ肩に担いだままの小娘を降ろした方が良いぞ。今の相棒の手の位置と小娘の服装は要らぬ誤解を生むぞ)

「ん?」

 自身の内に宿っているドライグの忠告に改めて一誠は、肩に担いだままのアーシアに目を向けてみる。
 迫っていた状況が状況だった為に慌てて一誠はアーシアを担いだのだが、アーシアの体格は小柄に分類される。それ故に慌てて一誠は担いでしまったのでアーシアの体を押さえている一誠の左手の位置は、丁度アーシアのお尻の位置に置かれていた。つまり、一誠は知らず知らずの内にアーシアの染み一つ無い純白のパンティに包まれているお尻に触れていたのだ。
 そして現在のアーシアの服装は一誠の上着を羽織り、破れたシスター服を着ている状態。どう考えても現在の一誠は、他人から見たら『純真なシスターの少女に襲い掛かり、服を破って連れ去ろうとしている強姦魔』にしか見えない。
 改めて自身の現状が犯罪者にしか見えない状態にあることを理解した一誠は、全身から冷や汗を流して固まってしまう。すると、担がれたままのアーシアが恥ずかしそうに顔を赤らめながら一誠に声を掛ける。

「あ、あの・・一誠さん・・そろそろ降ろして貰っても良いですか?」

「ご、ごめん!!」

 アーシアの恥ずかしさに溢れている声に、一誠は慌ててアーシアを地面に降ろす。
 そのまま二人は互いの顔が見られないと言うように赤くなりながら横を向いて、二人の間に気まずい空間が作られる。

(やばい!本気で何を言って良いのか分からない!!ウゥゥ・・さ、流石にお尻を触っていたのは不味いよな・・謝って赦される問題じゃないし・・ほ、本気でどうしたら良いんだ!?ドライグ!?)

(フム・・・フリート達辺りだったら、責任とれと言うだろう)

(俺まだ学生だぞ!?責任なんて取れない!!オォォッ!!本気でどうした良いんだよ!?)

(ど、どうしましょう・・・い、一誠さんに裸同然の姿を見られて・・そ、それに・・お、お尻にも触れちゃいました・・ハゥゥゥッ!!恥ずかしくて一誠さんの顔が見られません!!)

 互いに戦いの場から離れた事によって自分達の状態を再確認したことによって、一誠とアーシアは恥ずかしさと気まずさに溢れて何を言ったら良いのかも分からなくなっていた。
 このまま二人は恥ずかしさと気まずさにその場に留まり続けると思われたが、上空からレイナーレ達の後始末を終えたオーフィスがベルフェモンを腕の中に抱えながら降りて来る。

「ん?・・・一誠・・アーシア・・家に入らない?」

「オ、オーフィスさん!?え、えぇぇぇっ!?今空から降りて来ませんでした!?」

「ん・・我、空を飛べる。それよりも・・家に入らないの何故?」

「い、いや!今入るところだったぞ!?な!アーシア!!」

「は、はい!そうですよね!一誠さん!」

 一誠とアーシアはそれぞれ今まで自分達の間に在った恥ずかしさと気まずさを晴らすようにオーフィスに向かって叫んだ。
 その二人の様子にオーフィスは僅かに首を傾げるが、そろそろ眠気が強くなって来たのか、目を擦りながら先に家の入り口の方に歩き出す。
 一誠とアーシアはその後を付いて行くが、アーシアは一誠の肩に担がれている時に追って来ていたレイナーレ達の前に立ち塞がった小柄な影とオーフィスの後姿が重なり、オーフィスに質問する。

「あ、あの!オーフィスさん?」

「何?」

「あの・・私と一誠さんを追って来ていたレイナーレ様達を止めたのは・・オーフィスさん何ですか?」

「そう・・我とベルフェが堕天使達止めた。フリートに連絡したから、もう回収終わっているはず」

(あぁ、合法的に堕天使の体を治療と言う名の行為で調べられる事に歓喜している、フリート先生の姿が簡単に思い浮かぶな・・可愛そうに)

 アーシアを利用していた事に対しては思うところは在るが、フリートのマッドぶりを知っている一誠は回収されたレイナーレ達に対して僅かに哀れみを持った。
 フリートは常識を理解しているが、そんなモノは研究意欲の前には紙くず同然でしかない。先ず間違いなくフリートの研究心が満たされるまで回収されたレイナーレ達は悲惨な目にあうだろう。

(一応オーフィスの話だと、堕天使の総督からの依頼らしいから酷い事はされないと思うんだけど・・・いや、やっぱり無理だよな・・せめてリンディさんが居たら違うだろうけど・・確か先生・・『天使が堕天使になるシステムを調べたいですね』とか言ってたもんなぁ)

 フリートに回収されたレイナーレ達の行く末を思って、一誠はアーシアに気がつかれないように目尻に浮かんでいた涙を服の袖で拭き取る。
 先ず間違いなくフリートがただで依頼主にレイナーレ達を返すとは考えられない。この世界の事を研究し尽くしたいと考えているフリートは悪魔、天使、堕天使、そして神族などの生態にかなり興味が在る。
 『禍の団カオス・ブリゲード』とフリート達が敵対しているのは、自らの欲求を満たす為には敵対していた方がフリート達としては利益が在るからだ。ブラックは自らの戦闘欲求を満たす為に。
 フリートは己の研究心を満たす為に。二人は積極的に『禍の団カオス・ブリゲード』と敵対している。
 一誠はもはや無事には絶対に戻れないレイナーレ達の行く末を哀れみながら、オーフィスの後をついて家の中にアーシアと共に上がる。

「ただいま」

「あら・・オーフィスちゃんにベルフェちゃん、外出していたの?」

 トイレにでも行くつもりだったのか、偶然玄関の近くを通りかかった一誠の母親はパジャマ姿で家の中に入って来たオーフィスとベルフェモンに気がついて声を掛けた。
 オーフィスはゆっくりと一誠の母親に向かって頷き、そのまま自身の寝室に向かう為に家の中に上がって階段がある方へと進んで行く。
 一誠の母親はその様子にオーフィスとベルフェモンは寝るつもりなのだと思い、玄関の扉を閉める為に扉の方に目を向け、自身の息子の横に上着を羽織っている半裸の金髪美少女が居るのを目にする。

「・・・・・・」

「か、母さん・・ご、誤解しないでくれよ・・アーシアはちょっとした事情でこんな姿になっているだけなんだから・・お、俺は何もしていないから!!」

「・・・・ねぇ、一誠」

「は、はい!!」

「昨日リンディさんが訪れた時に、私とお父さんは何を聞いたのか覚えているかしら?」

「アッ・・」

 昨夜行なった自身の所業を思い出した一誠は呆然とした声を上げた。
 昨日の夜にも一誠は三人の女性を裸にしたと言う、如何考えても犯罪者としか思えない行動をしている。そして今、一誠の母親の視線の先には如何見ても破られたとしか思えない服の残骸を纏っているアーシアの姿が映っている。
 事前にリンディからは一誠が受けた依頼について知らされていたが、連れて来るにしても普通の格好で来ると考えていた一誠の母親は不信感に満ち溢れた視線を一誠に向けながらアーシアに質問する。

「質問しても良いかしら?」

「は、はい!!」

「家の息子の一誠に何か変なことされなかったかしら?」

「そ、それは・・・その・・・え〜と」

 先ほどお尻を触られたまま此処に来たことを思い出したアーシアは、恥ずかしそうに目を一誠の母親から逸らした。
 その様子にやはり自身の息子は何かをやったのだと悟った一誠の母親は顔を青褪めさせている自身の息子に不信の眼差しを向けながら、寝る為に階段を上がろうとしていたオーフィスに質問する。

「オーフィスちゃん・・・聞きたい事が在るんだけど?」

「ん・・何?」

(頼む!オーフィス!!誤解を解いてくれ!!)

 この場の窮地を切り抜けられる最後の可能性であるオーフィスに向かって、一誠は内心で祈っていた。
 アーシアに説得して貰うのは現状では不可能。どうみても被害者にしか見えない状態なのだから。
 自身の言葉は既に己の所業のせいで信頼されることが無いと分かっている一誠は、『無限の龍神ウロボロス・ドラゴン』であるオーフィスに向かって強く祈るが、返って来た答えは正しい答えだった。

「一誠・・アーシアを肩に担ぎながらお尻を触っていた。家につくまでずっと」

「オーーーーフィスさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!確かにあっているけど!今、それは不味いぃぃぃぃ!!!!」

「一誠」

「はぃぃぃぃい!!何でしょうか!?お母様!!」

「・・・・家族会議をすぐに行なうわよ・・オーフィスちゃん。お外に出たんだったら、もう一度お風呂に入っておくのよ。それとアーシアちゃんも一緒に入れて上げてくれないかしら・・パジャマの方は準備するから」

「分かった・・アーシア来る」

「あ、あの私は大丈夫です!!し、失礼…」

「そんな格好で夜更けに出たら危ないわ。貴女みたいな可愛い子がそんな格好で出て行ったら、家の馬鹿息子のような性犯罪者に襲われるわ」

「母さん!!俺はアーシアには何もしていない!!って言うか、息子を犯罪者呼ばわりしないでくれよ!!」

『・・・・・・』

「えっ?何?その哀れむような視線は!?オーフィスまで!?いや、確かに『洋服崩壊ドレス・ブレイク』とか編み出したけど、アレは相手の服を弾き飛ばす技だから、犯罪じゃないだろう!?」

「ふ、服を弾き飛ばす!?い、一誠さん!そんな破廉恥な事をしたらいけません!!」

「やば!!墓穴を掘った!!やめて!!!アーシアさぁぁぁぁん!!その純真な眼差しは本当に止めて!!俺には明る過ぎる!!」

 一誠はそう叫ぶが、自身が行なって来た所業ゆえに全く信用される事は無く、この後に深夜まで再び両親と話し合うことになるのだった。
 因みにアーシアはオーフィスに連れられて、一緒に家の中に入ってお風呂に入り、そのまま案内された部屋でオーフィスとベルフェモンと共に就寝してしまったのだった。





 別世界のマッドの居城である研究室。
 その部屋の主であるフリートは、一誠の世界で知り合った友人に分類される人物-堕天使の組織である『神の子を見張る者グリゴリ』のトップ・アザゼル-に頼まれた依頼が終わった事を報告していた。

「と言うわけで、グレモリーの縄張り内で勝手な行動をしていた連中の捕獲は終わりましたよ。連中は“後日”其方に送りますので安心して下さい」

『分かった・・急な依頼ですまなかったな』

「なに言っているんですか、アザゼル。偶然にも別の依頼と内容が一致していたから、序でに受けただけですよ」

『天界の連中からの依頼か・・ハッ!ちゃっかりしてるな、フリートよぉ。まぁ、俺がやろうとしている事へのマイナス要素が減ったことで今回は良いさ・・・・・そうそう・・お前の所の竜人にヴァーリの奴から伝言だ。『必ず次は勝つ』だとよ。あの戦闘狂に弾薬を投げ込んでくれたんだ。報酬の方は少し減らしてくれ。何せ急だったからシェムハザの奴に説明が出来なくてな・・俺のポケットマネーから報酬が出そうなんだよ』

「フ〜ム・・・まぁ、良いですよ。どうせ貴方の依頼は次いでしたしね。こっちはこっちで天界から送られて来るモノの研究が楽しみですから」

『そいつは助かる・・で、ソレとは別の依頼を頼みたいんだ。本当はヴァーリの奴に頼むつもりだったが、アイツは当分動けねぇ。それにそっちとしては嬉しい依頼だ・・・俺に隠れてコカビエルの奴が『皆殺しの大司教』と手を組んで怪しい動きをしてやがる。探ってくれ』

「・・・・・聖書に名を残すほどの大物ですね・・ブラックも喜ぶでしょうし、良いですよ。それにこっちに居る子の“殻”を破ってくれるかもしれせんからね」

『『赤い龍ウェルシュ・ドラゴン』か?』

「そうですよ。困った事にあの子の殻は凄く分厚いんですよ。あの子自身が自らの道を決めていないことも原因ですけど・・殻の鍵が中々に見つからないんですよね」

 現在一誠は成長の壁と呼ぶべき部分にぶつかってかなり伸び悩んでいる。
 己を鍛えるのならば誰もがぶつかる壁だが、一誠の壁はブラックとフリートを持ってしても中々砕けない。切っ掛けと呼べるモノが必要なのだとは分かっているのだが、一誠の性格上、何となく一般的に在りえないことで覚醒しそうな予感がフリートはしていた。
 好奇心が湧き上がると同時に不安な面もかなりあるが、そろそろ一誠の巣立ちが近づいて来ていることをフリート達はおぼろげながらも悟っていた。

「まぁ、その内貴方も会う時が来ますよ。其方の『白い龍バニシング・ドラゴン』といい。今代のニ天龍は情報で集めた歴代の者達とは違う成長を見せてくれるかもしれませんね」

『ハハハハハハハッ!!お前が其処まで言うぐらいかよ!こりゃ、面白くなって来たな・・・じゃ、依頼の方は頼むぜ。コカビエルの奴は死ななきゃどうなっていても構わないからよ』

「ホホホホホッ!!嬉しい言葉をありがとうですよ、アザゼル・・それじゃ、また会いましょう」

 そうフリートは通信先に居るアザゼルに告げると、通信を切る。
 そのままゆっくりと背後を振り向き、楽しそうな笑みを浮かべながら治療カプセルに入っているレイナーレ達四名の堕天使と、先ほど天界から届いた鞘に納まっている一振りの“聖剣”を眺める。
 フリートはゆっくりと椅子から立ち上がると机に乗っていた鞘に納まっている“聖剣”を鞘から抜き取り、白銀に輝き神々しいオーラを発する刀身を楽しげに見つめながら呟く。

「フッフッフッフッ・・・さぁ〜て、色々と一誠君の周りで動き出しそうですから、それに応じた準備をしないといけないですよね・・リンディさん」

「そうね。オーフィスちゃんもあの世界に戻った今、間違いなく事態は動き出すわね」

 フリートの声に何時の間にか研究室内に入って来ていたリンディは答えながら、ゆっくりとフリートの横に立って、フリートが持っている“聖剣”を見つめる。

「ブラックとルインさんから連絡が届いたわ。『禍の団カオス・ブリゲード』の研究資料内にオーフィスちゃんに唯一対抗する手段を見つけたと言う情報が記されていたらしいわ。しかも最悪な事にその対抗手段はブラックにとってもかなり相性が悪いらしいの」

「ブラックでもですか・・・と言う事は、龍に関わる全てに対する対抗手段を『禍の団カオス・ブリゲード』は見つけたと言う事は…」

「えぇ・・一誠君にとっても危険な力と言う事でしょうね」

 オーフィスと言う絶対的な力を持った君主を失った『禍の団カオス・ブリゲード』は、何時内部分裂を引き起こしても可笑しくないのが現状。
 フリート達はその為にオーフィスから説得したのだが、多くの反勢力が集まっている『禍の団カオス・ブリゲード』はしぶとく生き残り、遂にオーフィスとブラック、そして一誠と言う“竜の因子”を宿す者にとって絶対的な対抗手段を発見していた。

「その対抗手段はそう簡単には手に入らないでしょうけど・・・和平を嫌う者は沢山居るわ」

「ですよね」

 一誠達の世界で便利屋紛いの仕事を行なっているフリート達は、その関係で各勢力の現状なども理解していた。
 その中でブラック達に対抗する絶対的な手段を手に入れる為に必要な方法が存在していることをリンディ達は悟っていた。何れにしてもその手段をオーフィスにだけは絶対に使用される訳にはいかない。
 もしもオーフィスが本格的な危機に追い込まれた時、その時に“破滅”が覚醒してしまうのだから。

「『禍の団カオス・ブリゲード』の連中は知りませんからね・・今のオーフィスちゃんには究極の護り手がついていることを」

「かと言って、その情報も知られる訳にはいかないわ・・・ベルフェモン君が起きる事態だけは何としても避けないといけないのだから」

「七大魔王の覚醒なんて絶対にもう見たくないですからね・・・・で、一誠君の方はグレモリー関係と接触したそうですけど」

「そっちの方も大変ね・・当分の間は謝罪の代わりに一誠君に彼らの為に働いて貰いましょう。どちらにしても、私達の下以外でのこともそろそろ経験すべきだったから良い機会よ」

 そうリンディはフリートに告げ、フリートは頷くと共に持っていた“聖剣”を鞘に戻して、治療カプセルに入っている堕天使達の治療を開始する。
 見た目では余りダメージを負っていないように見える堕天使達だが、ベルフェモンの一撃によってそれぞれ内臓に甚大なダメージを負っているのだ。早急に治療しなければ、間違いなく後遺症を残してしまう。最もベルフェモンがかなり手加減していたのは間違いない。本来の力でベルフェモンが一撃を加えていれば、上級の堕天使でも大ダメージは免れないのだから。
 万が一ベルフェモンが“覚醒”してしまったら、もはや最上級に位置する者達でもベルフェモンに勝つことは不可能に近い。
 無論“覚醒”だけはオーフィスが絶対にさせないようにするだろうが、オーフィス自身ではどうすることも出来ない危機に追い込まれてしまえば、ベルフェモンは必ず覚醒する。
 そうなってしまえば最後、オーフィスにベルフェモンと共に居ることを認めた四聖獣やロイヤルナイツが危機感を覚え、ベルフェモンは封印される。七大魔王に関する案件は、リンディ達の世界で起きた『大戦』の経験から最優先に解決される問題になっているのだから。
 リンディ達としては仲が良いオーフィスとベルフェモンを引き離したくはないが、七大魔王の存在の危険性は経験から嫌と言うほどに理解している。

「一誠君がもう少しスケベな子じゃなかったら安心出来たのだけど」

「九割以上がスケベで構成されているような子ですからね。ハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

「笑い事じゃないわよ!!フリートさん!!ハァ・・・・ルインさんに『洋服崩壊ドレス・ブレイク』をしてしまった時の事を思い出してみなさい」

「アァ〜・・・・アレは凄かったですよね。ブラック一筋のルインさんからすれば他の男性に裸を見られてしまうこと自体赦せないことですからね・・・あの時は良く一誠君助かりましたよね。無数に近い砲撃魔法や射撃魔法に、空間破壊魔法を連発されて、クレーターが数え切れないほどに出来ましたからね」

「即座に一誠君とルインさんを無人世界に転移させていなかったら・・・・今頃日本は消滅していたかもしれないわ。ブラックがルインさんを止めてくれなかったら、一誠君はこの世から完全に消えていたかもしれないわ」

 因みにその事件は『ルイン暴走事件』としてリンディ達の間では、絶対にルインの前で話題にしない禁止事項に分類されている。
 それほどまでにルインの怒りは凄まじかったのだ。怪我の功名と呼ぶべきなのか、その時に一誠は『禁手化バランス・ブレイク』に至ったが、それからと言うもの一誠に対してルインはかなり厳しく、尚且つ嫌っているのだ。

「あの子のその部分にも困ったものね・・・・・とは言っても、私達が何をやっても根本的に治らなかったのだから」

「三勢力陣営の前に本格的に出たら、『変態龍帝』なんて最悪な呼び名で呼ばれてしまいそうですよね。プププッ!!」

「本気で笑い事じゃないわよ、フリートさん・・・ハァ〜・・とにかく、勉強も兼ねてグレモリーさんの手伝いを当分させましょう・・サーゼクスさんとグレイフィアさんに連絡しておくわ」

「まぁ、それで今回の件は穏便に終わらせましょうか。しかし・・・・・大丈夫なんでしょうかね?」

「何がかしら?」

「最近リアス・グレモリーに婚約の話題が出ているらしいんですよ。どうにも先方側が早急に彼女との結婚を終えようと動いているらしいです」

「・・・・・・・・そう言えばリアスさんって・・一誠君の好みに当て嵌まっているのよね・・ちょっと不安を感じて来たわね」

 一誠のスケベさを知っているリンディとフリートは、一誠をリアス・グレモリーに預けることに不安を覚える。
 一応一誠に対してある程度は信用しているが、それを裏切るほどのスケベ心が一誠には宿っているのだ。これ以上出来るならば女性関係で問題は起こして欲しくないとリンディは頭を痛そうに手で押さえていると、フッと治療カプセルの中に堕天使達だけしか居ない事に気がつく。

「あら?・・・フリートさん・・・今日の件で暴れた『はぐれ悪魔祓い』は如何したの?」

「はい?・・・居たんですか?あの場に『はぐれ悪魔祓い』が?」

「えぇ・・その筈よ。教会に『はぐれ悪魔祓い』を引き渡した時に、一人足りないと言っていたわよ。確か名前は・・・『フリード・セルゼン』だったかしらね」

「ウワァ〜・・私と名前が一文字違うだけですか・・嫌ですね・・しかし、可笑しいですね。私が着いた時にはあの場には地面から足を生やしていた堕天使四名しか居ませんでしたよ・・反応も在りませんでしたし」

「・・・と言う事は誰かが助けた?一体何の為に?」

 リンディは事前に教会側から渡されていた『フリード』に関する資料を思い出し、少なくとも一誠と相対すれば先ず間違いなく一誠は『フリード』に戦闘不能のダメージを与えると予測していた。
 事実リンディの予測どおり、フリードに対して一誠はかなりのダメージを叩き込んだ。少なくとも二、三日はまともに立ち上がる事が出来ないほどのダメージを。なのにフリードはオーフィスからの報告を聞いて訪れたフリートが来る前に戦闘の場から居なくなっていた。
 誰かがフリードを連れ去ったのだとリンディは悟り、嫌な予感を僅かに感じてフリートに質問する。

「フリートさん・・堕天使関係で何か思い当たる節は無いかしら?些細な事でも構わないわ」

「フム・・そう言えばアザゼルからコカビエルが『皆殺しの大司教』と協力して怪しい動きを行なっているから調査の依頼が入ったんでした」

「コカビエル・・・聖書に名を残す大物ね・・なるほど・・それほどの大物なら僅かな時間でフリード・セルゼンだけを助けるのは出来そうね・・問題は本当にコカビエルが助けたとしたら、一体何の為に助けたのかね」

「う〜む・・・鍵は『皆殺しの大司教』かもしれませんね・・・・ミカエル辺りに聞いてみましょうか?」

「そうして頂戴・・・どうにも嫌な予感がするから、早急に情報収集をお願いね。それとブラックとルインさんも至急呼び戻して頂戴」

「了解しました」

 リンディの指示にフリートは頷き、堕天使の治療を行いながら準備を急ぐ。
 その様子を眺めながらリンディは空間ディスプレイを出現させて、少しでも情報を集めようとするのだった。


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ロキ様
・fateの方は今暫らくお待ち下さい

革新者様
・流石にデジソウルは難しいですが、少なくともバンチョーの戦い方は会得出来る人物です。

ADD様
・はい、リンディ達は基本的には直接戦わず、裏側で動いて行きます。
代わりに一誠君達が表では戦うのです。

kusari様
・マンガ版だと少し『はぐれ悪魔祓い』連中が書かれていたので、其方の連中をリンディが片付けました。
既にバンチョーは冥界に来ています。何れバンチョーと関わっているキャラは登場はします。
オーフィスのベルフェモン・スリープモードの強さはハイスクールで言えば、サーゼクスのノーマルバージョンぐらいです。
これがデジタルワールドに封印されている七大魔王のベルフェモン・スリープモードだったら、十二巻のサーゼクスです。
どちらにも言える事ですが、覚醒したら最後四大魔王全員が挑まないと先ずまともには戦えないでしょうね。眷属付きで、ですけどね。
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