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竜人とマッドの弟子は赤龍帝 レーティングゲーム開始
作者:ゼクス   2012/08/05(日) 17:03公開   ID:sJQoKZ.2Fwk
 一誠達が修行の為に訪れたグレモリー一族が所有している山。
 『騎士ナイト』である祐斗は自らの剣の技量と宿っている『神器セイクリッド・ギア』の更なる向上を行ない、『戦車ルーク』である小猫は同じように接近戦を主体とする一誠と模擬戦を繰り返し行ない、朱乃とアーシアはリンディから送られて来たアーシアがその身に宿している『聖母の微笑トワイライト・ヒーリング』に関する資料で能力の向上と、元教会の人間だったアーシアの協力を得て聖水などの悪魔の天敵道具の精製を行なっている。
 そして最後のリアスは、一誠から渡された資料や自ら集めた資料を調べてレーティングゲームでの勝利策を練っている。特にリアスが考えているのは一誠から知らされた『赤龍帝の籠手ブーステット・ギア』の更なる力である『赤龍帝からの贈り物ブーステッド・ギア・ギフト』。
 先日一誠が精神世界で模擬戦を行なっていた歴代の赤龍帝の一人のように十秒ごとに倍増していた力を自身ではなく、他の者や物に力を譲渡し、爆発的にその力を倍増させる事が出来る。
 それらを有効に活用すれば勝機が僅かに見えると考えたリアスは、一誠に頼んで他のメンバーの倍増した時の実力も調べて戦略を考えていた。

「ハァ・・ハァ・・・ハァ・・」

「小猫ちゃん、大丈夫か?」

 荒い息を吐いて膝を地面に着いている小猫に、一誠はタオルや飲み物を差し出しながら心配そうに声をかけた。
 小猫は一誠が差し出して来た飲み物とタオルを受け取り、背を木に預けて座りながら全く息が乱れていない一誠を見上げる。

「・・は、はい・・・でも・・兵藤先輩・・・本当に人間ですか?」

「い、いや・・・俺も時々自分が人間のままなのか気になっているけど・・・・・基本的に俺の『赤龍帝の籠手ブーステット・ギア』は基礎体力が重要だから、それをメインに鍛えられたんだよ。まぁ、他にも格闘技が得意なクイントって言う女の人に鍛えられたしな」

「そうですか・・・・・・・質問良いですか?」

「ん?何かな?」

「・・・・“兵藤先輩だったら、ライザー・フェニックスに勝てますか”」

 それが一誠と模擬戦を行なっていた小猫がずっと考えていた疑問だった。
 一誠の実力は少なくとも自分達以上だと小猫は悟っていた。更に言えば『赤龍帝からの贈り物ブーステッド・ギア・ギフト』以外にも、いや『赤龍帝からの贈り物ブーステッド・ギア・ギフト』などよりも強大な切り札を一誠は持っているように小猫は感じていた。
 故に小猫は自分達は一誠とライザー・フェニックスの一騎打ちに追い込めば良いと僅かに不満を抱きながら、一誠に告げようとするが、一誠は首を横に振るう。

「小猫ちゃんの言いたいことは分かるけど・・・俺は部長の眷属候補でしかないんだよ。正式なグレモリーの関係者じゃない。だから、もしも今回の戦いで最終的に俺がライザー・フェニックスを倒したら、『ドラゴンの力を借りて婚約を解消させた』なんて他の家から陰口を言われるだろうからね。だから、部長はどんな形にしても力を示さないといけないんだよ」

「・・・・・ちょっと驚きました・・・兵藤先輩なら後先考えずにライザー・フェニックスを倒すと思ってました」

「ハハハハハハッ・・・前に後先考えずに行動して本気で死に掛けたんだよ・・それ以来は少しは考えるようになったからね」

 一誠の脳裏に浮かぶのは完全にキレて自身をこの世から抹殺しようとしたルインの姿。
 欲望と努力の果てに編み出した『洋服崩壊ドレス・ブレイク』をルインに使用したばかりに、一誠は本気で死にかけた。

(しかも、ブラック師匠・・・俺が『禁手化バランス・ブレイク』に至る前から来ていたのに、助けてくれなかったもんな・・・やっぱブラック師匠も怒ってたのかな?)

(さてなぁ・・あの時もブラックウォーグレイモンの奴は相棒が『禁手化バランス・ブレイク』に至らない事に不満を持っていたから、これ幸いにとルインフォースの件を利用したのかもしれん・・・真実は奴にしか分からんが、少なくとも相棒の不用意な行動があの事件を引き起こした事は間違いない・・・良いか?相棒・・・『洋服崩壊ドレス・ブレイク』はやはり出来るだけ相手を見定めてから使用すべきだ・・人妻や貞操観念が強い女・・そして恋人が居る奴に使用するのは控えるんだぞ。失敗すればルインフォースの時の二の舞になるだろうからな)

(分かってるって)

 ドライグからの忠告に一誠は内心で頷きながら、休憩は終わりと言うように構えを取る小猫に目を向けて、自身も膝を落としながら小猫と相対する。

「それじゃ・・兵藤先輩・・夕食までにもう一回やりましょう」

「分かったよ・・じゃぁ、行くぞ!子猫ちゃん!!」

「はい!!」

 一誠と小猫は互いに叫びあい、再び模擬戦を行ない、朱乃が呼びに来るまで模擬戦を続けたのだった。





 時は流れて、一誠達が山篭りを始めてから九日が経過した。
 九日間行なったのは基本的に練習や、ゲームで想定される連携や攻防バリエーション。そして『赤龍帝の籠手ブーステット・ギア』の力によるリアス達のパワーアップの限界点の見定めや、どれがどのように強化出来るかなどの調査だった。
 やはりと呼ぶべきか一誠が倍加出来る力に限界が在るように、譲渡の方にも過剰な相手への力の譲渡は、譲渡した相手側にダメージとして返って来る。一度ぐらいは耐えられるかもしれないが、その後は少なくともレーティングゲームの最中は動けなくなるか、最悪の場合はリタイヤしてしまう。
 一応『赤龍帝の籠手ブーステット・ギア』には譲渡する相手が戦っている者を倒せるレベルに力が上がった事を伝えてくれると言う便利な機能も在るが、ライザー・フェニックスのような『不死』と呼べる特殊な技能を持つ相手や譲渡する相手の実力を敵が上回っていれば機能は役に立たない。
 故に譲渡の限界点の見極めも訓練の中に組み込まれ、それなりに戦える形に一誠達はなっていた。

「と言う訳で、一誠から貰ったライザーのレーティングゲームの内容を研究したところ、ライザーは『犠牲サクリファイス』を主に使うようね」

「ライザー・フェニックスの眷属の数は『悪魔の駒イーヴィル・ピース』の最大数と同じだから出来る策ですね、部長」

「えぇ・・祐斗の言葉どおり、ただ相手を倒すだけじゃいけないわ。寧ろ倒される事こそが役目と考えておくべきね」

「逆に此方の数はイッセー君とアーシアちゃんを合わせても六人のみ。かなり厳しい戦いになりますわね」

「朱乃の言う通りね・・予想以上に厳しいゲーム内容になるわ。皆力を合わせて戦いましょう」

 リアスのその言葉に全員が頷き、明後日の戦いに意欲を燃やす。
 しかし、フッと一誠の脳裏にライザー・フェニックスがフェニックス家の悪魔で在る事が思い浮かび、右手を上げてリアスに声をかける。

「あの、部長?」

「何、イッセー?」

「ライザー・フェニックスはフェニックス家の家系なんですよね?」

「?・・そうよ・・一体如何したの?そんな事を改めて聞くなんて?」

「いや、今思い出したんですけど・・フェニックスって『不死』以外にも、もう一つ特性がありましたよね?・・確か・・そう!『涙』!?」

『ッ!!!』

 一誠の告げた言葉にリアス、朱乃、祐斗、子猫は慌てて顔を見合わせた。
 そう、フェニックスには『不死』と言う特性以外にもう一つ、その身が流す涙には如何なる負傷も癒すと言う特性が在るのだ。
 通称『フェニックスの涙』。アーシアの『聖母の微笑トワイライト・ヒーリング』のように体力は回復出来ないが、ライザー側にも負傷を回復する手段は在る。

「迂闊だったわ・・こっちもイッセーとアーシアに聖水を持たせようと考えていたように、あっちには『フェニックスの涙』を手に入れるどころか、生み出せる家系だった」

「レーティングゲームでも、『フェニックスの涙はゲームに参加する自身の陣営で二名の悪魔まで持てる』と言うルールが在りますわ・・イッセー君の言葉が無かったら少し不味かったかもしれませんわね」

「イッセー、ありがとうね」

「いえいえ、気にしないで下さい、部長、朱乃さん」

 何処と無く照れたように一誠は頭を掻きながら答え、再び全員がそれぞれの意見を出しながら作戦を会議を続ける。

 そして明日の訓練の為にそれぞれが眠る中、リアスは大詰めだと言うように沢山の資料を読みながら作戦を練っていた。

「フゥ〜・・・イッセーがくれた資料のおかげでかなり戦術や戦略は固まったけど・・やっぱりかなり厳しいわね・・でも、絶対に勝たないと・・皆にこれだけ頑張って貰っているんですから・・・・ん?」

 フッとリアスが窓の方に目を向けて見ると、コソコソと隠れながら森の奥の方へと進んで行く影を目撃する。

「・・アレは?・・・イッセー?」

 窓際に立って影を注意深く見てみると、森の奥へと進んで行く一誠の背が見えた。
 こんな時間に一体何をしているのかとリアスは疑問を覚えて、椅子に掛けていた上着を羽織って一誠の後を追って行く。
 気がつかれないように一定の距離を保ちながらリアスは一誠を尾行するが、途中でその姿は音も無く消失する。

「あら?・・変ね・・イッセーは何処に行ったのかしら?」

「・・・・・・あのスケベ馬鹿を追って来る何て物好きですね」

「誰ッ!?」

 突如として聞こえて来た聞き覚えの無い声にリアスは慌てて全身から魔力を発し、辺りを警戒しながら見回すと、木の上に不機嫌そうに座っている長い銀髪を腰の辺りで結んでいるロングコートを羽織って体を隠している女性を発見する。

「貴女誰なの!?此処はグレモリー家の所有地よ!!勝手な侵入は赦さないわ!」

「知ってます・・全く、私だって来たくて来たわけじゃないです・・・あのスケベ馬鹿・・ブラック様を呼び出すなんて何を考えているんですかね?」

「スケベ馬鹿?・・・・それにブラック?・・良く分からないけど、貴女はイッセーに呼ばれて来たの?だったら、まさか『アルード』の関係者?」

「正解です・・・・私の名はルインフォース。あのスケベ馬鹿の師匠であるブラックウォーグレイモン様のパートナーです」

「イッセーの師匠!?だったら、イッセーがこんな時間に外に出たのは!?」

「『明後日のレーティングゲームの為に最終調整がしたい』って言って、ブラック様を呼んだんですよ。丁度暇だったから此処に来たと言う訳です。今頃はブラック様と模擬戦をしているでしょうね」

「イッセーが模擬戦を?・・・それにしたら音が聞こえないけど?」

 リアスはそう疑問に思いながら辺りを見回すが、戦闘音のような音は全く聞こえて来なかった。
 一体どうなっているのかとリアスは疑問に思いながら改めてルインに目を向けて見ると、ルインはつまらなそうな顔をしながら答える。

「レーティングゲームのフィールドを応用した特殊な結界を使っているんですよ。どんな形にしてもブラック様と『赤龍帝』の戦いは派手になりますからね。自然破壊は出来るだけ控えると言う訳です」

 そうルインは答えると、木から飛び降りて音も無くリアスの前に立つと、腕を組みながらリアスの顔や体を見回す。

「フ〜ム」

「な、何かしら?」

 いきなり自身を観察するような行動をして来たルインにリアスは驚きながら、ルインに質問した。
 その質問にルインは何かを考え込むように顎に手を当てると、何かを納得したかのように両手を叩いてポンと鳴らす。

ーーーポン!

「なるほど・・確かにかなりの潜在能力を持っているようです・・面白くなって来たかもしれません、クスクス」

「い、一体何を言って?」

「こっちの話です・・・・と言っている間に終わったみたいですね」

「えっ」

ーーードン、ドン、ドン

 リアスがルインが顔を向けた方に目を向けると共に、森の暗がりの方から力強い足音が響いて来る。
 それと共にリアスは何か言い知れぬ違和感のような感じと、恐怖心が僅かに湧き上がり、暗がりの中からボロボロな状態で気絶している一誠を肩に担いだソレが現れた。
 何処までも黒い漆黒の体に、金色の髪に鈍く光る銀色の頭部に胸当てをし、両腕の肘まで覆う手甲の先に、三本の鍵爪の様な刃を装備した漆黒の竜人-ブラックウォーグレイモン-が闇の中から姿を現した。
 まるで闇そのものが具現化したようなブラックの圧倒的な威圧感に、闇の住人側である筈のリアスでさえも恐怖と困惑に包まれる。

(な、何なの!?こ、こんな生物見たことが無いわ・・・それよりもただ立っているだけで、私が威圧されている!?)

「ルイン・・そいつがこの馬鹿が働いている先のサーゼクスの妹か?」

「はい、ブラック様」

「確か『聖母の微笑トワイライト・ヒーリング』を持っている奴も一緒に居るんだったな・・・小娘、この馬鹿の事は任せるぞ」

ーーードサッ!

 言葉と共にブラックは肩に担いでいた一誠を地面に降ろし、そのまま背後へと振り向く。
 ソレと共にボロボロになって気絶している一誠の姿に僅かにリアスは苛立ちを覚え、ブラックに威圧されながらもその背に向かって叫ぶ。

「待ちなさい!!貴方!イッセーの師なんでしょう!?どうして此処まで!?」

「ソイツが望んだ事だ。本気で俺と模擬戦がしたいと告げて来たからな。死なない程度には手加減しておいた・・・しかし、随分とやる気になっているようだな」

 ブラックはゆっくりと僅かに顔を背後に向け、気絶している一誠の顔を眺める。
 自身との模擬戦がどれほど危険なのかを一誠は理解しているはず。それでもなお一誠はブラックとの模擬戦を求めた。明後日行われると言うレーティングゲームに対してそれだけ意欲を燃やしていると言う事だとブラックは察し、僅かに楽しげに目を細めると、一誠に膝枕を行なっているリアスに目を向ける。

「(一誠・・・・どうやら自分の道を見つけ始めたようだな・・『白い龍バニシング・ドラゴン』と言い、お前と言い・・中々に楽しくなって来た)・・・・小娘、その馬鹿の事は頼むぞ。馬鹿な成長をしそうな奴だが、本気で欲しいのなら頑張るんだな・・・行くぞ、ルイン」

「仰せのままに、ブラック様」

 ブラックの言葉にルインは頷くと共に二人は並んで、そのまま森の闇の中へと消えて行った。
 その場に残されたリアスは気絶している一誠の顔を撫でながら、左手に顕現したままの『赤龍帝の籠手ブーステット・ギア』に声を掛ける。

「ねぇ、ドライグ?」

『何だ、リアス・グレモリー?』

 リアスの声に応じるように『赤龍帝の籠手ブーステット・ギア』の宝玉から、宿っているドライグの声が響いた。

「イッセーはどうして急にさっきの竜人を呼んだの?・・こんなボロボロになるかもしれないと分かっていたのにも関わらず?」

『勘を取り戻す為と言うのが大きいな・・相棒は此処最近自分の実力よりも上の者との戦いが無かった。一応毎日訓練はしていたが、僅かに勘が鈍っている可能性が在ったから、ブラックウォーグレイモンに模擬戦を頼んだ。奴との模擬戦はそれこそ決死で挑まなければならない。手加減していると言っても、あくまで死なない程度の手加減までだ』

「どうして其処まで・・今回の件は私の問題なのに」

『さてな、俺にも相棒の考えは分からんが・・・・それだけお前達の事が気に入っているのかもしれん・・・・リアス・グレモリー・・これは俺からの忠告だ』

「何かしら?赤龍帝の貴方から忠告だなんて?」

『ライザー・フェニックスは確実にお前を精神的に追いつめる戦略を練って来るだろう。今回の戦いはお前の心を折ると言う狙いも在るだろうからな・・・お前が情が厚いのは理解しているが』

「其処を攻めて来るかもしれないと言う事ね?」

『そう言う事だ。考えられる可能性の一つと思って居てくれ・・じゃ、俺も眠らせて貰う・・ブラックウォーグレイモンとの模擬戦は俺にも少し影響が在るのでな』

「待って!・・・一つだけ教えて・・・・あの竜人はどれぐらい強いの?」

『・・・・・・・奴の強さはお前達の常識さえも超えている・・奴の本気は『二天龍』と呼ばれていた頃の俺を越えているやもしれん。もう一方の相棒の師も同等クラスとまでは行かないが、潜在的にはそれだけの脅威者だ』

「ッ!!!」

 ドライグが告げた事実にリアスは、ブラックとルインが去って行った森の方に見開いた目を向ける。
 嘗て三勢力を相手にして戦い、神や魔王に匹敵する実力を持っていると伝説に謳われている『二天龍』の一方であるドライグを越える力を持っているブラックウォーグレイモン。
 会った事は無いが一誠が先生と言っている人物もまた、同等とは言わなくても近い実力を秘めている。リアスはどうして三勢力が『アルード』を敵に回さないようにしているのかおぼろげながらも理解した。
 失敗すればとんでもない事態を引き起こす可能性を秘めた勢力『アルード』。以前会ったリンディも、もしかしたら自分達よりも強い実力者の可能性が在るのだとリアスは悟る。

「敵に回したら不味いなら、利用した方が良いって事かしらね」

(奴らを利用か・・・・・フッ、まだまだ甘いな、リアス・グレモリー・・・・奴らは決して利用は出来ない。それだけ恐ろしい連中なんだ)

 リアスが呟いた言葉にドライグは内心で呟いた。
 ブラック達を利用すると言う考え自体三勢力のトップの誰もが持っていない。寧ろ自分達に被害が及ばないために餌として依頼を提供していると言う形こそが正しい。
 ブラックの本質は戦闘狂。フリートの本質は研究欲。それらが牙を向かないようにする為に、それぞれが動く場を自分達に利が在ると言う形で与えている形が一番ブラック達と三勢力の関係は近いのだ。
 何れリアス達もブラック達の恐ろしさを本当の意味で知る時が来ると思いながら、ドライグはブラックのドラモンキラーで負わされたダメージを癒す為に眠りに付くのだった。





 決戦当日の二時間前。
 一誠は自室で二時間後に始まるライザーとのレーティングゲームに対して意欲を燃やしていた。
 ブラックとの模擬戦のおかげで鈍っていた勘は取り戻し、模擬戦で負った傷もアーシアのおかげで完全に完治していた。

「フリートさんが欲しがる訳だよな。まさか、『龍殺し』で負った傷も時間が在れば完治出来るんだから」

 一誠は右手を開いたり、握ったりしながら感触を確かめる。
 気力は充実している。単独で負ける要素は殆ど無いが、確実に勝てると言う保障は無い。戦いにおいて絶対は無い事を一誠は今までの経験から理解している。どんな相手にも油断せずに全力でぶつかる事こそが重要なのだと一誠はブラック達に教えられた。
 故に油断も慢心もせずに戦いに挑むと言う気持ちを持ちながらベットから立ち上がり、自身の服装を確認する。一誠が今着ているのは駒王学園の制服。リアスに確認したところ、自分達は『オカルト部』だから駒王学園の制服で挑むと告げられたので一誠もそれにならった。
 最もリアス達と違って普通の人間である一誠は、フリートから渡された身に纏っている衣服をバリアジャケットと同等の防御力を与えてくれる腕輪を装備して自身の防御力を上げている。

「さて、アーシアにも同じ物を渡しておかないとな」

 一誠はゆっくりとリンディから送られて来たアーシア専用のバリアジャケット発生装置である腕輪が入った箱を机の上から取る。
 アーシアに渡すために一誠は部屋から出る為に扉の方へと歩こうとすると、扉をノックする音が響く。

ーーーコンコン

「イッセーさん・・入っても良いですか?」

「あぁ、丁度良かった、構わないよ、アーシア」

「失礼します」

ーーーガチャッ

 一誠が許可を出すと共に扉が開き、ヴェールを付けていないシスター服姿のアーシアが部屋の中に入室して来る。

「やっぱり、アーシアはシスター服で行くのか?」

「は、はい・・・ロザリオはリアスお姉様達にもダメージが行くので外してますけど、やっぱり私はこれが一番良いと思える服装なんです」

「俺も構わないと思うよ。部長も『自分で一番良いと思える服装で来なさい』って言っていたんだから」

「ありがとうございます・・・あ、あの、イッセーさん?」

「何かな?」

「て、手を握っても良いですか?」

「あぁ、構わないぞ」

 これから行なわれるレーティングゲームに対して不安なのだと察した一誠はアーシアの願いを了承し、自身の手とアーシアの手を握る。
 それと共にアーシアは一誠の腕に自身の腕を絡めるが、一誠は無言でそれを受け入れる。アーシアの体が不安と恐怖で震えていることが絡まっている腕の震えから察したからだ。無理も無い。殆ど戦いなどと無縁に近い生活を行なっていたアーシアにとって今回の戦いは始めての実戦に等しい。
 一定のダメージを超えれば退場させられるレーティングゲームとは言え、絶対に死なないと言う保障は無い。事故と言う形で死亡者が出ているのだから。
 その不安を察した一誠は何時ものスケベ心を心の内に押し込めて、アーシアの頭を絡められている右手とは逆の左手で優しく撫でる。

「やっぱり、不安かい?アーシア」

「・・・は、はい・・・・これから怖い戦いが始まると思うと震えが止まらないんです・・で、でも、イッセーさんが傍に居てくれたら不安が少し治まるんです・・・あ、あの・・家を出るまでこうしていて良いですか?」

「構わないぞ・・そうだ、アーシア・・家を出る前にこれを身に着けて行ってくれ」

 一誠はそう告げると共にベットの上に置いておいた腕輪が入っている箱をアーシアに手渡し、アーシアは箱の中から腕輪を取り出す。

「・・・イッセーさん?これは?」

「それはバリアジャケットと言ってもアーシアは分からないか・・・まあ、とにかく腕輪を身に着けると特殊な防御膜のようなモノが体を覆って防御力を上げるんだ・・俺達は部長達と違って人間だから、少しでも防御力を上げないと不味いからな」

「分かりました!イッセーさん、ありがとうございます!!」

 一誠の説明を聞いたアーシアは嬉しそうにしながら腕輪を身に着ける。
 そのまま二人はベットに座りながら静かに腕を握り締めあうが、フッと何か視線のようなモノを感じて扉の方に目を向けて見ると、何処と無く不満そうにしているオーフィスと、不機嫌なオーラを放っているベルフェモンが、ジッと一誠とアーシアを眺めていた。

「オ、オーフィス!!ベ、ベルフェモン!!」

「仲が良い」

「フンッ!!」

 驚く一誠にオーフィスは不満そうに声をかけ、ベルフェモンは苛立ちを表すように顔を一誠から背けた。
 自分達の姿が見られていた事に一誠とアーシアは慌てふためくが、オーフィスは構わずに一誠の母親から買って貰ったお気に入りの腕時計を示す。

「そろそろ時間。行く」

「あぁ、そうだな・・・じゃ、アーシア行くか」

「はい!イッセーさん!」

 一誠の呼びかけにアーシアは元気良く頷き、オーフィス、ベルフェモン、一誠、アーシアは戦いの舞台に向かう為に駒王学園の旧校舎へと向かうのだった。





 とある場所にあるレーティングゲームを観戦する為に設けられた観戦席。
 その場所には今回のリアス・グレモリーとライザー・フェニックスを観戦する為に集まったリアスの両親に加え、ライザーの両親がこれから始まるレーティングゲームを楽しげに待っていた。
 そんな中、今回のレーティングゲームの観戦許可を貰ったサイラオーグ・バアルは、上段に座っていたサーゼクス・ルシファーの下へと近づく。

「サーゼクス様・・この度の私のレーティングゲームの観戦のご許可ありがとうございます」

「気にしなくても構わないさ、サイラオーグ・・寧ろ私は幾ら従兄弟とは言え、君が今回のレーティングゲームに興味を抱いたのは驚きなのだが・・・何か理由が在るのかね?」

「ハハハハハッ・・それについては秘密です」

「そうかね・・・・おや、どうやら更に客が来たようだ」

「ハッ?」

 突然のサーゼクスの言葉に意味が分からなかったサイラオーグは疑問の声を出すが、すぐにその疑問の答えは分かった。
 突如としてサーゼクスの横に黒い魔法陣が出現し、その中から黒いロングコートを羽織り、全身を黒で染めた服装で金色の瞳を持った長身の男性-人間体のブラックと、一誠とアーシアと分かれたオーフィスとベルフェモンが転移して来た。
 サイラオーグは現れたブラック、オーフィス、そしてベルフェモンが放つ圧倒的な威圧感に思わずその場から後方へと飛び退くが、サーゼクスは知人に会うように容易くブラックに声をかける。

「やぁ、ブラック・・やはり君も来たようだね・・それにオーフィスも久しぶりだね」

「久しぶりだな、サーゼクス」

「久しぶり」

(ブラックにオーフィスだと!?まさか、この男が師が言っていたブラックウォーグレイモン!?それに彼女はまさか!?『無限の龍神ウロボロス・ドラゴン』なのか!?)

 サイラオーグは目の前に現れた二人の正体を察し、言葉を失いながらブラックとオーフィスを眺める。
 そんなサイラオーグの様子になど構わずにオーフィスはゆっくりとサーゼクスの横にあった椅子に座り、ブラックは壁に背を預けながら展開されているモニターに目を向ける。
 観戦室内にいたグレモリー家とフェニックス家の者は自分達のリーダーであるサーゼクスの横に座ってその身から発せられる圧倒的な力の気配に呆然とオーフィスを眺めるが、オーフィスは気にせずに自身の横で体中に包帯を巻いているサーゼクスを眺める。

「・・グレイフィアにお仕置きを受けた?」

「ハハハハッ、ちょっとしたお茶目のつもりだったんだけどね」

「自業自得」

「それを言われたら返す言葉が無いね・・・・それでブラック・・君はどっちが勝つと思うかね?」

「知らんな」

「おや・・君の弟子の一誠君が勝つとは言わないのかい?」

(ブラックウォーグレイモンの弟子だと!?もしや、その男こそが師の言っていた相手!?)

 横でブラックとサーゼクスの話を聞いていたサイラオーグは、自身の師であるバンチョーレオモンが告げた人物の情報を聞き取り、真剣な顔をしてモニターに目を向ける。
 その間にもブラックとサーゼクスの会話は進み、ブラックはつまらなそうな顔をしながらサーゼクスに答える。

「これが奴個人の戦いなら話は違うが、今回の戦いは貴様の妹の戦いだ」

「我もブラックに同感」

「なるほど・・・・うむ、実に理解出来る」

「最もあの馬鹿の事だ。確実にライザー・フェニックスと言う奴は殴るだろうな。どちらにしても少しは楽しませてくれる事を願うさ」

「やれやれ・・なら、見ようではないか。君の弟子を加えた私の妹の戦いぶりを」

 そうサーゼクスが告げると共に、モニター画面に映っている今回のレーティングゲームのフィールドである『駒王学園』に参加する者達が転移して来たのだった。


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感想の返信をいたします!

asupara様
・はい、知ればワクワクするようなお仕置きでした。

アーチャー様
・投稿サイトについては考え中です。

ロキ様
・一誠の本質はどうやっても変えられません。変える事は不可能なほどのスケベこそが一誠なのです。つまり、リンディ達も匙を投げました。
投稿サイトに関してはそうですね。やはり最低でも二つまでにしようと考えています。

革新者様
・何れお仕置き道具達は姿を現します。まだ、乳力にも目覚めていませんからね。目覚めたら確実に『乳龍帝』は暴れるでしょう。ドライグの精神は確実に磨耗するでしょうけどね。

羊羽様
・はい、ドライグの精神はこれから確実に追い込まれていきます、凄まじく不憫な日々が待っているのです。次回も頑張ります!

とある見習い小説家様
・誤字報告ありがとうございました!!
自分のペースでこれからも頑張って行きます!
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