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マブラヴオルタネイティブ-フォーアンサー 【第拾伍話】日は昇る 雪は溶けた
作者:首輪付きジャッカル   2012/10/09(火) 03:05公開   ID:aJK45xIaU56
これで戦いは終わる。誰もがそう思ったときだ。
―――ドォン―――
一発の銃弾は、その全てを台無しにした。
飛来する銃撃。突撃銃から煙を上げる-22A・・・の姿・・・
「もう一息だったのに・・どうしてこうなっちまうんだよーーーーー!!!!」
 白銀が叫ぶ。これは一部を除いたこの場の全てが者達の思いだっただろう。
『応答せよハンター2!ハンター2!攻撃を中止せよ!!』
ウォーケン少佐が命令するも応答はなく、攻撃も止まない。
「やめろ・・・やめてくれ!」
御剣が飛び出そうとする。しかし白銀がその肩を掴み、管制ユニットに引き戻す。
「行かせてくれタケル!今ならまだ―――」
「バカ言うな!早く簡易ジャケットを付けろ!
―――俺はお前を死なせない。生きて殿下に会わせるんだ!!」
 決意を口に出し、己を鼓舞する。その時ウォーケン少佐から通信が入る。
『作戦を第2シーケンスに移行!兵器使用自由!!』
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
叫びを上げて全力で目の前にいる沙霧機から逃げる。
(みんな・・・死ぬなよ!この新OSならなんとか逃げ切れるはずだ・・・)
逃げながら頭の中で同じ部隊の仲間達の姿が過ぎった。




―――此度の件―――米国の思惑を成就せんがための謀にございます―――
 ウォーケン少佐の脳裏に先程の沙霧大利の言葉が過ぎる。
テスレフ少尉ハンター2にまで息がかかっていたか・・・裏でこそこそと・・・気に入らん・・・実に気に入らんな・・・!!」
 自分の国に誇りを持っているウォーケン少佐は表情に怒りを現していた。
しかしそれでも指揮官の仕事は全うする。
「―――各機、絶対に敵を近づかせるな!米国陸軍の誇りにかけて、なんとしても殿下をお護りするのだ!!」
『『『Sir,Yes,Sir!!』』』



「やはり、こうなってしまうのか・・・」
 目を瞑ったまま沙霧大尉は小さくつぶやいた。そして、目を見開き同志達に命ず。
「逝くぞ同士諸君!我々の手で、殿下を反逆者どもの手から御救いするのだ!!」
「「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」
クーデター部隊もいっせいに動き出す。



「くそっ、計画が崩れた!」
一人離れたところから、「本物の」殿下の乗る吹雪を狙って狙撃しようとしているF-22Aの中でごちる男。
「ハンター2の暗示も解けた頃だろう。精々敵を引付けてくれ」
 この世界では特殊な映像や音波などで暗示をかける等が出来るのだ。ハンター2の衛士もまた、この男に聴かされた音波によって暗示により攻撃したのだが、それをクーデター軍が知るはずもなく、既に2、3機の敵との戦闘になっている。
「そもそも何だあのルーキーども―――替え玉だと!?聞いていないぞそんなのが居るなんて」
(まとめて片付けねば・・・偽者も後から送ってやる―――消えろ!)
白銀と御剣の乗る吹雪に照準を合わせ、引き金を引く。しかし、
(―――!?)
突撃銃は何も起こらない。その時通信が入った。
『―――指揮官権限で武装をロックさせてもらった。我が部隊にまで浸透しているとはな・・・舐められたものだ。
―――F-22Aの性能はこそこそ隠れるためにあるのではない。恥を知れ!!』
すぐ横にはいつの間にかウォーケン少佐の駆るF-22Aがいた。
「殺さなくてよかったのか隊長?俺を放って置けば何をするかわからんぜ?」
『侮辱するな。私は米国人だ、クーデターを起こした連中とは違う。
貴様を裁くのはアメリカの法と秩序だ。私ではない。
この戦いが終わるまで貴様には死ぬことも殺されることも許さん。精々逃げ回れ。
言い訳は法廷で聞いてやる』
 するとそこに2機のクーデター軍の不知火が向かってきた。
それに対応するためにウォーケン少佐のF-22Aがその2機に向いた時。
「悪いな・・・隊長!」
キーを叩き、ロックを解除する。しかしそれは―――普通ならありえないこと。
『バカな!ロックを解除した!?F-22Aのシステムは機密中の機密だ!それを書き換えるなど―――そこまで根の深い話だというのか!?』
ウォーケン少佐が狼狽えている隙に彼は白銀の吹雪の元に向かい、攻撃をする。
そしてそれを見た白銀機を追撃中だった沙霧大尉が激昂し、彼に襲い掛かる。
「おのれ、米国人め!何処まで貴様らは・・・!!」
F-22Aの特徴といえばやはり抜きん出たそのステルス性だろう。しかし混戦となっている今その性能はあまり役にはたたない。
しかしF-22A、ステルス性能だけでなく、その機体そのものの運動性能も沙霧大尉の乗るTYPE94不知火を上回る。
1対1ならば普通ならF-22Aが勝つ。彼もそう信じ込み、慢心していた。しかし・・・
その慢心が隙を呼び・・・その隙が死を招いた。
『殿下に銃を向けたこと、後悔するがいい』
次の瞬間彼は絶命した。



「まて!その男を殺しては・・・!」
ウォーケン少佐の静止の声も聞かず、沙霧大尉は長刀を振り下ろす。
目の前でF-22Aは轟音と共に鉄屑に成り果てた。
「―――!!オオオオ大オオォォォォォォ!!」
叫ぶ。この時ウォーケン少佐確かに正気を失っていた。今すぐにでも目の前の不知火を打ち倒したいと思った。しかしその怒りを「叫び」という形で鎮めさせる。
 F-22の機動で沙霧大尉の乗る不知火を押し退け、白銀の吹雪に併走する。
『ウォーケン少佐!?』
「ハンター1より06!そのまま全力で逃げろ!訓練兵にしてはいい動きだ。そのまま後退しろ!」
『りょ、了解!』
これだけ言うと少佐は立ち止まり、沙霧大尉の不知火と相対する。



「傲慢なる米国人よ、これ以上邪魔をするな!!G弾で無断に国土を殺し、今尚土足で我々の国を踏み荒らすか!」
「生かしておけば罪を償わせることも出来た!殺さなければ終われなかったとでも言うのか!?無法を以ってことを成すのでは永遠に流血は止められん!!」
沙霧大尉とウォーケン少佐がお互いの言葉を、技を、ぶつけ合う。実力は互角。いや、僅かに沙霧大尉が上を行く。
その差はきっと覚悟の違い。死を覚悟した者の強さ・・・
「血を被る者が必要だった!汚れ役を演じる者が必要だった!己が身の保身しか考えられないものでは決して選べぬ道を歩む者が!
殿下が御座おわす限りこの国は変わる!その未来に不要なものは全て我々が背負って逝くッ!!」
そう叫ぶ沙霧大尉は鬼気迫るものがあった。
「―――月詠中尉に言われたように、私は貴様らを侮っていたようだ・・・
―――だが私も合衆国に忠誠を誓った軍人なのだ!!秩序を護る者たることが我々の矜持―――
祖国の誇りにかけてここを抜かせる訳にはいかんのだ!!」
攻めながら守り、守りながら攻める。引くも押すも無い戦い。しかし僅かな差は少しずつ開いていき―――
「先に逝くがいい―――我々もすぐ参る―――」
―――ドゴォン―――
轟音と共に爆ぜる少佐のF-22―――その爆煙の中から長刀を携え駆けて来る不知火。
それを見てあわてて突撃銃で応戦しながら後退する白銀。しかし白銀の攻撃は掠りもしない。沙霧大尉にことごとくかわされる。
「くそぉ!何で!何で当たらないんだよ!?」
銃撃をかわしながら不知火が近づいてくる。もう眼前に迫り、「殺される!」そう思ったときだ。ふっと・・・今この場には居ないもう一人の207訓練部隊の仲間のニヤニヤ笑いの顔が脳裏に過ぎった。
そうだ。あんな化け物と訓練してきたんだ。こんな所で・・・
「死んでたまるかよおおおおおぉぉぉぉ!!」
突撃銃を破棄し、長刀で応戦する。
反撃を予測していなかったのか。受けに回る沙霧大尉。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
「ほぅ、訓練兵にしてはなかなかいい気迫だ。腐った国連などに属さなければ君ももっといい衛士になれただろうに」
「な!?」
「だが、私と相対するには君はまだ、未熟!」
本当にあっという間のことだった。不知火が長刀を振るった。次の瞬間吹雪の両腕が肩口から吹き飛んだのだ。
「ぐっ…!」
「タケル!大丈夫か!?」
「殿下・・・今そこから救って差し上げます」
沙霧大尉が長刀を振り下ろそうとしたその瞬間。赤い機体が間に割り込んだ。
「月詠さん!?」
「赤いType-00F・・・月詠中尉か!?」
「白銀訓練兵!貴様らの適う相手ではない、邪魔だ!
・・・しかし、よく殿下を守ってくれた!あとは任せろ!」



「はああああぁぁぁぁ!」
長刀でのぶつかり合い。戦術機の性能差など物ともしない沙霧大尉。
先に攻め立てた月詠中尉だが、逆に押され始める。
「そこをどけ月詠中尉!―――斯衛である貴様が!何故米国の片棒を担ぐ様なことをする!?
貴様も他者に隷属するを良しとする日和見主義者か!どうした中尉!答えろ!
答えて見せろオォォ!!!
―――日本は全人類への奉仕という大儀に酔い、潔癖や徳義を軽んじ忘却していった…
我等の先達は日本をこのような国にするために死んでいったのではないッ―――!!
―――今目覚めずして…いつ日本は救われようかッ!!」
帝都を護る最新鋭部隊の名は伊達ではない。沙霧大尉は鍛錬を怠ったことは無い。
何という皮肉だろう。今この国に真に必要な人間がその身を投げ出さなければならなかったとは―――

月詠中尉が大きく後退し、回線を開く。
「沙霧大尉・・・」
「ほぅ、何か言いたくなったか?月詠中尉」
「―――貴官らは見事…その先導となったと信ずる―――貴官らの所行が人々の心に潔癖や徳義を目覚めさせたと私は信ずる。
されど、その道は外道…外道に甘んじそれでも尚、命を駆けて国を正そうとしたそなた達を私は…誇らしく思う」
「外道は外道・・・それ以上でもそれ以下でもない」
「せめてもの手向け―――介錯つかまつる…」
月詠中尉の武御雷が沙霧大尉の不知火を一閃する。
「日本の新生に先駆け、散るもまた宿命―――ああ・・・あとは…頼む…!」
―――ドゴォン―――
沙霧大尉の死を合図に、クーデター部隊は一人残らず動きを止めた。
「これまでか・・・」
そういって長刀を地に突き立て両手を添える。
これがきっと彼らの望んだ結末。
彼らの行動で殿下に実権が戻れば法の裁きを受けなければならない。それでも彼らは何かを変えようとしたのだ―――

東から日が昇り、光が射す―――雪は溶け、水になり地を流れていく―――
こうして今度こそ本当に、クーデターは終わった


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■作者からのメッセージ
沙霧大尉かっこいいよね
今の日本もどうにかならんかな・・・クーデター起こすか!
スイマセン冗談です。
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