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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史介入の章その7
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2012/10/21(日) 20:18公開   ID:mVQsV0ujX36
1993年8月 インド後方支援基地

 インド後方支援基地の日本帝国軍に割り当てられた一画、そこにHSSTで輸送されてきた帝国軍の先進技術実証機撃震参型がその姿を現していた。
 撃震弐型に比べると骨太な印象を受けるフォルム、そしてそれに追加武装が次々と装着されていく。
 別の区画では、九十三式電磁投射砲の点検が行われている。その数、実に40機。大隊運用を視野に置いているがための数なのだが、新規兵装の数にしては破格と言えた。
 先進技術実証機撃震参型の追加武装、及び九十三式電磁投射砲の弾薬は現有規格と合わないため別途用意する必要があり、その輸送にHSSTがまるまる一機必要になったのは一部では有名な話だ。
 当然諜報活動が活発化するが、現物を奪取するような暴挙にでることはさすがに、この基地内ではできない。そのためもっぱら整備マニュアルなどに目がいくのだが、この辺りは日本帝国軍お得意の情報公開を行っているため、必死扱いて手に入れた情報はすでに公開済みの情報でした、と言うことも少なくない。
 ただそのなかでも一つだけ異常な事態、いや、本来であれば普通なのだが先進技術実証機撃震参型については完全に秘匿されていたのだった。
 多くの軍事技術者たちや軍務従事者たちの関心を刺激してやまない撃震参型、しかも先進技術実証機などとついていては好奇心を殺せと言うのが難しいだろう。
 だが、日本帝国においてもこの機体は、来るべきBETA大戦へ投入するための新規戦術機である撃震参型を作成するための、情報収集の意味合いが高く、また秘匿すべき技術の数々を搭載しているために、情報公開は試作撃震参型の完成まで予定はないとの宣言を行った。
 とはいえ、国際社会、ひいては最前線にある国家のためにも、早々に試作撃震参型の製造を行い、その際には必ず情報を公開する旨を国際社会に確約することで一応の騒動の収まりを得た。
 本来であれば自国の機密を他国に公然と公開する日本帝国がおかしいのだが、他の最前線国はすでに日本帝国の技術に依存することが大であった。そのため、先進技術実証機撃震参型の技術秘匿宣言については一悶着合ったのだが、それも先ほどの宣言で緩和された。
 このあたり、最前線国家の常識感が少々揺らいできているような気もするが、生きるか死ぬか、の限界ぎりぎりの状態にあるのだ。少々はやむをえないだろう。
 日本帝国内部では少々最前線国家を甘やかしすぎとの声が聞こえてきているが、BETA大戦は生存を賭けた闘争だ。くだらない、意地や見栄よりも大局を見るべし、との声もまた根強い。



 そんな日本帝国に割り振られた軍事区画にある大隊指揮所、指揮官室に2人の新参者が挨拶に訪れていた。

 「神宮司まりも少尉、現時刻をもって帝国軍大陸派遣隊第二連隊第十三戦術機甲大隊に着任します」

 「立花隆也伍長、現時刻をもって帝国軍大陸派遣隊第二連隊第十三戦術機甲大隊に着任します」

 2人揃ってびしり、と敬礼を向けるのに、答礼を返す男。

 「帝国軍大陸派遣隊第二連隊第十三戦術機甲大隊隊長、小塚次郎少佐だ。貴官らの着任を歓迎する」

 歴戦の猛者を思わせる雰囲気を纏わせながらも、どこか軽い。そんな印象を受ける三十代半ばを越えた男が答えた。

 「帝国軍大陸派遣隊第二連隊第十三戦術機甲大隊専属CP、竹中冷子大尉だ。貴官らの正式な所属は帝国技術廠にあるが、平時の指揮系統は我らが第十三戦術機甲大隊が有する。そのための注意事項などを私から説明する」

 クールビューティーな竹中冷子の姿に隆也の目が奪われる。ぼん、きゅっ、ぼん、そしてまりも達では到底出せないような女の色気。
 ぶっちゃけ、隆也の精神年齢的にドストライクゾーンである。
 隆也が、やっぱ大人の色気はやっはええなあ、などと考えいると、横から後頭部に一撃が撃ち込まれた。
 犯人はまりも、一撃をいれる動作は無拍子、そして達人ですら見極めることが困難なスピードだ。突然後頭部を押さえてその場にうずくまった隆也に、不思議そうな目を2人の上官が向ける。

 「どうした立花伍長?立ちくらみか?」

 「はっ、申し訳ありません。少々緊張しまして」

 恨みがましい視線をまりもにむけるが、まりもは平然としている。むしろ、お前が謝れ、といっているようですらある。
 どうもあの夜以来、隆也に対するまりもの態度が嫉妬深い世話焼き女房のようになっている、などと考えつつ、隆也は姿勢を正す。

 「ところで、三郎、いや小塚三郎技術大尉から、神宮司少尉のシミュレーション結果は届いている。そこで質問なんだが、おまえ本当に人間か?」

 「えっ?」

 あまりな物言いに、まりもが思わず素の返事をしてしまった。

 「貴様、上官の質問にえっ?はないだろう」

 竹中がしかりつけるが、それをまあまあ、と手をあげて小塚が押さえる。

 「いや、すまん、言い方が悪かった。あのシミュレーション結果、はっきり言って異常だ。おそらくこの基地にいる誰にも貴官のような真似はできないだろう。それで、ついつい先ほどのような聞き方してしまった。すまんな」

 「いえっ、こちらこそ申し訳ありませんでした。ですが、私は間違いなく人間であります」

 「ああ、会ってみて安心した。まさか人型戦術機操作用のロボットでも着任してくるんじゃないかと、半分本気で心配してたから」

 そこまで言って、少々雰囲気に凄みを増してから、小塚が隆也に問いかける。

 「そして、立花伍長、貴様はその全てを知っており、なおかつ本作戦においては実戦時に神宮司少尉のCP役を務める、との事だが本当か?」

 「はい、間違いありません、小塚少佐」

 歴戦の衛士の覇気軽く受け流しながら、涼しい顔で答える隆也。

 「おまえ、整備兵だろうに?」

 「まあ、その当たりについては小塚三郎技術大尉から説明があったのでは?もしなかったのであれば、私の口からは答えることはできません」

 暗に、機密事項なんだから知らなかったら、それは小塚には知る権利がないんだよ、と告げる隆也。

 「多少は聞いているよ。多少はな。あと忠告も少々。お前さんのやることにいちいち驚いていたら、胃が持たない、とさ。どういう意味だ、これ?」

 「さて、なんとも答えようが…」

 と言いつつ、心当たりがありすぎて脂汗をかく隆也。その横では、まりもがあきれたように隆也を見つめている。

 「まあいい、今日からお前達も俺たち第十三戦術機甲大隊の仲間だ。実のところ俺たちの部隊は、あんまり軍規については厳しくしていないんだ。機密事項なんかは厳格に守ってもらうが、それ以外はざっくばらんにいこうや」

 にぃ、と笑って、席から立ち上がると、小塚は2人に対して握手を求めてきた。

 「はい、よろしくお願いします」

 「ああ、貴官には期待している。特に先進技術実証機撃震参型、あれは化け物だ。おそらく今回の作戦が終わるまで生き延びれば、お前は伝説となるだろう」

 「はっ、身に余るお言葉、光栄であります」

 「よし、頼んだぞ」

 つぎに隆也の前に立つと、小塚はまりとに対するのと同様に手を差し出してきた。それを握る隆也。

 「いっとくが、竹中はおれの嫁だ。正式な籍を入れるのはこの作戦が終わって、帰国してからだがな。というわけで、手をだすんじゃないぞ」

 「え?それって、死亡フラグですか?ということは、少佐が戦死した後、涙に暮れる竹中大尉を、自分が慰めてそのまましっぽりとしてもいいということですね、そうですね、わかります」

 「お前は何をいっているんだ!」

 切れた竹中が隆也の頬をひっ叩く。だが当然のごとく隆也はびくともしない。

 「美女からの折檻、ありがとうございます」

 などとのたまっている始末だ

 「くく、三郎から聞いているが、大したやつだ。生憎とおれは数々の死亡フラグを折ってきた男だ。そう簡単には死なんさ」

 「少佐はフラグのことはご存じで?」

 「前線は娯楽が少ないからな。MANGAやLIGHTNOVELなんかは割と読んでいるよ」

 「なるほど、なかなか居心地が良さそうなところですね」

 「ああ、前線は天国に一番近いところだからな。もっとも、地獄に一番近いところでもあるが」

 そういって、手を離すと小塚は再び席に戻る。

 「竹中大尉、冗談が過ぎました、謝罪いたします」

 「まあいい、戦場ではこの程度の下ネタは掃いて捨てるほど聞いてきている。そう言う意味では、ある意味一番実戦になじむのが早いのはお前なのかもな」

 「はい、そうなるように努力します」

 当然竹中は知らない。彼が一人で殺戮してきたBETAの総数が、この基地にいる帝国軍二個連隊が今までに駆逐してきた総数を上回ることを。

 「神宮司少尉は、先進技術実証機撃震参型の調整。立花伍長は、同じく先進技術実証機撃震参型の調整と、九十三式電磁投射砲の調整を命ずる。9月の作戦までにはものになるようにしておけよ。竹中、十三戦術機甲大隊に九十三式電磁投射砲を使っての陣形演習を行わせておけ。物はできました、ですが使えません、では話にならんからな」

 「「「はっ」」」

 部屋から立ち去っていく三名の後ろ姿を眺めつつ、小塚は手にした資料を再度眺め直していた。
 神宮司少尉のハイヴ攻略シミュレーション結果、そして先進技術実証機撃震参型のシミュレーション結果。
 ハイヴ攻略シミュレーションでは撃震弐型高機動改修式とやらを使っていたらしいが、単騎での最下層突入後に地上に帰還。これだけでもキチガイじみた戦績だ。
 それだけでも嘘だろう、と思わざるを得ない上に、先進技術実証機撃震参型を使用してのシミュレーションはひどかった。単騎でのBETA総駆逐数、実に4万超、実戦稼働時間3時間弱。
 衛士も衛士だがその機体も化け物だ。
 そしてそれを作り上げた人物。極秘事項中の極秘事項だが、小塚の勘が告げている、立花隆也伍長、彼だ。
 わずか19歳の整備兵にそのようなこと可能なのか?小難しい理屈はわかならいなが、彼の直感はそう判断した。そして、彼が自分以上に地獄を知っていることもわかった。
 あの握手をした瞬間、背筋に怖気が走った。無数のBETAを駆逐してもなお味わったことの無いような戦慄。目の前にした人物は、まさに化け物だった。

 「はてさて、あいつらが救いの天使となるか、地獄の使者となるか、どう転ぶのやら」

 独りごちる小塚の胃に、わずかな痛みが走ったとて、彼の弟は責めはしないだろう。むしろ、同士を見る目で見つめるに違いない。


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