「ソロモンの72柱とはイスラエルの第3代の王、ソロモン王が封じたとされる72人の悪魔。
スピリットオブソロモン(ソロモンの霊)、ソロモンの72人の悪魔とも呼ばれる。
72人の悪魔はそれぞれ地獄で爵位を持ち軍隊を従えているという・・・」
ムラサメは昔、読んだ聖書の内容を思いだし説明した。
それを聞いていたのかリリスは感心したというように手を叩いた。
「へぇ〜よく知ってるね〜。
近頃の死者どもはろくに教養もないってのに」
目を細め値踏みするようにムラサメを見た。
ムラサメも口元に笑みを浮かべリリスを見返した。
アクアとドレイクはしばらくそのやりとりを黙って見ていたが思い出したように追求した。
「他の死者達はどうするんですか!
あんな酷いことを・・・
天使さんも天使さんです、何で黙って見てたんですか!」
「そうだぜ!これが神に仕える者のやり方か!」
アクアとドレイクの言葉にアランは困り顔で笑顔を浮かべ返し、リリスはニヤニヤと笑いながら後ろを指差した。
その様子に2人は憤りながらも振り返った。
「どうなってるの・・・」
アクアは呟いた。
ドレイクも狐につままれたような顔をした。
それもその筈だった。
さっきまで地獄絵図のようになっていた場所は所々火が燃えているが、死者達は無傷で先ほどあった黒こげの死体などは無くなっていた。
リリスは面白げに呆気にとられている2人を見て笑った。
「死者の内はに何をしても意味は無いのよ。
まだ<転生>してないから消えることも無いわよ」
それを聞きアクアは今したことを許すつもりはないみたいだが、一応納得した。
それとは別にムラサメはリリスに聞いた。
「転生とは何だ?」
「あら、良いことを聞くわねぇ〜、ますます気に入ったわ」
そう言うとムラサメの横に立つと腕を絡ませてきた。
「何してるんですか!」
アクアが叫ぶとリリスが鬱陶しそうに答えた。
「何って、腕組んでるだけじゃない」
そういうとムラサメの腕をさっきよりも強く絡ませた。
それを見てアクアが文句を言ったがリリスは無視し話を進めた。
「転生っていうのは簡単に言えば生まれ変わるって言うことね。
今のあなた達は死者で何をされても消えないけど、所詮は霊体。
霊体の状態が続くと自然消滅しちゃうの」
「自然消滅って何ですか?」
「消えるって事だよ」
横からアランが答えた。
それをいつの間にか聞いていたのか死者達が慌てだした。
が、それをアランが収めつつもですが、消えない方法がありますと答えた。
「転生の儀を行えばいいのです」
「転生の儀?」
アランが説明した。
それを聞き死者達は安堵した。
アランの説明によるとつまり転生の儀とは悪魔か天使に転生するための儀式ということらしい。
「理解できたようですね」
「それでは始めまぁ〜す」
天使と悪魔の声を合図に地面から音をたてて祭壇が現れた。
祭壇は階段があり階段を上がると台があるだけのシンプルな形をしていた。
中央には人ほどの大きさの四角の形の石が置かれているのが見えた。
(さて、何が起こるか・・・)
ムラサメがそれを楽しげに見ているとリリスが腕を外した。
「そろそろ私、いくわね。
もちろんあなたが悪魔になることを祈ってるわ。
色男さん」
最後にそう言うとムラサメの頬に軽くキスをした。
それを見てたアクアはリリスに文句を言ったが、男達は負の視線でムラサメを見ていた。
(余計なことを・・・)
ムラサメは舌打ちしながらも転生の儀を受けるため祭壇に向かった。
祭壇の前には3人が並んでいた。
アクア、ドレイク、ムラサメだった。
他の死者達は最初にするのが不安なのか遠巻きに見ていた。
ドレイクが急に口を開いた。
「本当に大丈夫なのか、これ?」
ドレイクの言葉にアクアが前向きに答えた。
「今はこれしか方法がないんですし、覚悟を決めましょう。
ね?お兄さん」
その言葉にムラサメは頷いた。
「それと、俺の名前はムラサメだ」
「そうか、改めてヨロシクな、ムラサメ」
「私も、よろしくお願いします。
ムラサメさん」
改めて自己紹介してる自分にムラサメが苦笑しているとアランとリリスが祭壇の方から声をかけてきた。
「どうぞ、でも一人づつお願いします」
その言葉にアクアが祭壇に向かって歩きだした。
(まぁ、次でいいか・・・)
そう思いながらもこれから行われる転生の儀にムラサメは目を向けた。