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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史介入の章その11
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2012/12/02(日) 16:57公開   ID:I3fJQ6sumZ2
1993年9月 インド後方支援基地 発令所

 日本帝国陸軍九條雅臣少将は、用意された席でそのときを待っていた。
 そのとき、すなわちスワラージ作戦の発動命令だ。
 彼は五摂政の生まれながら、斯衛へは進まずに帝国陸軍に入った変わり種だ。
 当然当初は周りの猛反対もあったが、本人が頑として譲らないこと、上に兄が3人もいること、などもろもろの理由から結果的に陸軍への入隊が許可された。
 高いカリスマ性を持ち、決断力、戦局状況判断能力にも優れる彼は、あっという間に指揮官まで上り詰めた。
 その後はその能力を生かして地道に戦功を重ねて現在の地位に至る。たとえれば、血筋と能力を併せ持った文句なしのサラブレッドといったところだ。
 そんな彼でさえ、今回の作戦に挑むに当たっては胸が高鳴るのを押さえられなかった。人類戦力を結集させたスワラージ作戦。その作戦に日本帝国軍の代表として参加するのだ。

 「俺にもまだこんな思いが残っていたか。だが、それでいい。この熱い思いがある限り、BETAなどにはこの世界を渡しはしない」

 独りごちる九條の声は、国連軍インド方面軍指令の演説によりかき消される。
 この場に挑む全ての将校が押さえがたい胸の高鳴り、緊張を抱いているのがわかる。誰一人冷静さを欠いていないながらも、極度の興奮状態にあるのだ。
 そして時は満ちる。

 「それでは本日08:00より、スワラージ作戦を開始する。各軍担当者におかれては、作戦概要の最終確認をよろしくお願いする。我ら人類に勝利を!」

 「「「勝利を!」」」

 声が場内を満たし、ついにスワラージ作戦が始まる。



1993年9月 インド後方支援基地 帝国軍領域

 「出動命令が出た、第十三戦術機甲大隊各機、告げる。ポイント3042にて集合後、第二連隊所属の第七十一大隊、第三十二大隊との合流を果たす。機体の最終調整が完了し、九十三式電磁投射砲を受領した機体から順次発進すること、以上だ」

 「「「了解」」」

 小塚次郎少佐は号令を発すると、自身の機体を固定を解除するといの一番に九十三式電磁投射砲を受け取る。両腕で保持しなければいけないほどの重量だが、その威力はすでに検証済みだ。
 戦術機ハンガー内は戦場だった。これから出撃する機体は最終調整を終え次第、次々とハンガーを後にしていく。
 整備兵の出番はここまでだ。後彼らにできるのは、己が果たした仕事の結果が少しでも衛士たちの命を長らえることを祈るだけだ。
 そんな慌ただしいハンガーを悠々と後にすると、小塚少佐の駆る撃震弐型はカタパルトデッキに進み、そのまま発進の準備に入る。

 「ご武運を!」

 「ああ、行ってくる」

 カタパルトデッキの管制官に声をかけ、一瞬にして巡航速度まで引き上げられた機体がカタパルトから飛び出していく。
 それに粛々と続いて発進していく第十三戦術機甲大隊の面々。
 そんななか、第十三戦術機甲大隊に所属しながら特別な待遇を受ける一機の戦術機だけはいまだハンガー内にいた。

 「よし、先進技術実証機撃震参型に追加武装、準備はばっちりだ。まりもん、後はお前次第だ」

 「もう、だから今は軍務中なのよ。神宮司少尉でしょ」

 半ば諦めたように毎度の台詞を口にしながら、まりもは先進技術実証機撃震参型の各状態をチェックし、全てが問題ないことを確認していく。
 機体状態は極めて良好。さすが隆也、と内心では思いながらも、口には出さない。長い付き合いで、口にすればするほどつけあがるのが立花隆也という人間なのだと言うことを嫌と言うほど知っているのだ。
 この間もこのようなやりとりがあった位だ。

 「まりもん、エッチしようぜ、エッチ」

 「も、もう、なに恥ずかしいことを口にしているのよ。前から思っていたけど、隆也くんには雰囲気作りというか、心配りが足りないのよね」

 「う、それは否定できない。わかった、それじゃ今度からはもっと雰囲気を大切にするからさ。だからさ、やろうぜ!」

 「もう、行ってる側から雰囲気もなにもないんだから。でも、場所がないわよね。隆也くんの部屋も私の部屋も前線だけあって、二人部屋だし」

 「じゃあさ、青姦しようぜ、青姦」

 「あおかん?」

 「うん、そう。わかりやすく言うと野外プレイ!初めての野外プレイ!いやー、燃えるね。インドの青い空のもと、不健全な行為にふけるけしからん二人。あれ、これって結構ムードでない?」

 などとほざいていたくらいだ。ちなみにそのときは、

 「ムードも何も全部台無しよ!」

 という怒りの声と共に隆也の顎にまりもの幻の左が炸裂した。自業自得である。
 ちなみに常人であれば頭が吹き飛ぶレベルの一撃である。恐ろしい話であるが事実だ。

 「神宮司少尉、撃震参型の特殊兵装は通常の武器補給コンテナからの装填はできない。おれが昨晩こそっと戦場に専用のコンテナを設置しておいたから、状況に応じてそれを使って補給してくれ。ちなみに場所はMOSに登録してあるから、補給が必要になったらMOSに聞けば、最短距離のコンテナを教えてくれるはずだ」

 「ええ、わかったわ」

 平常心平常心、と心の中で唱えるまりも。いうまでもなく突っ込みたいのは、昨晩に戦場にコンテナを設置したという非常識っぷりだ。

 「あと光学迷彩とステルス塗料が塗ってあるから、他の部隊に見つかる心配はないからな」

 「どれだけ凝っているのよ、まったく」

 「いや、一応あの武装類はまだ公表してないからな。機密保持っていうやつだな」

 しれっと答えながら、隆也は手元のコンソールをぺこぺこと叩いている。

 「あと言い忘れていたけど、おれも今回は戦場に出る」

 「え?私のCP役は?」

 「当然それをこなしながらだ。戦いながらまりもんのCPくらい軽いもんだ」

 軽く言うが、そもそもまりものCPをこなすことが出来る人材が隆也だけだということから、その難しさがわかる。それを戦場を駆け抜けながらとなると、それがどれほどの難事なのかは押して知るべしである。

 「でもいいの、勝手に戦場に出たりなんかして?装備って、前見せてもらったあの強化外骨格でしょ?」

 「大丈夫だろ、多分。それにも一応、光学迷彩とステルス塗料が施してあるし。それに、独立行動権限も一応もらっているし」

 「はあ、相変わらず無茶苦茶ね。もう、心配するほうの身にもなって欲しいわ」

 「大丈夫大丈夫。そもそもBETA戦の実戦経験なら、おれのほうが遙に上なんだし」

 「う、まあ、そうなんだけど」

 「それに生身でもBETA程度なら問題なく対処できるんだから、心配するだけ損だろう。そもそも、それをいったらまりもんなんて初陣の上、世界中から注目されている戦術機を操るんだぞ。まずは自分のことをしっかりとすること、いいな」

 「言われてみれば、それもそうなのよね。わかったわ。ただし、ちゃんと私のCP役をこなすこと、それくらいいいでしょ?」

 「言われるまでもないさ。まかせろ、快適な戦闘状況を提供するぜ」

 隆也は触っていたコンソールをしまい込むと、サムズアップしてから良い笑顔をまりもに向ける。

 「すべてを最善の状態にしておいた。まりもん、死ぬなよ」

 打って変わって、真剣な面持ちで告げる隆也。

 「ええ、当然よ。それに隆也くんだって知っているでしょ。私もちょっとやそっとじゃ死なないわ」

 「だな」

 事実まりもに致命傷を与えようとするとS11クラスを複数用いないといけない。ある意味歩く反応炉である。
 ちなみに隆也になるとM01がダース単位で必要になってくる。

 「それじゃ、行ってきます、隆也くん」

 「ああ、行ってこい、まりもん」

 ハッチが閉じられ先進技術実証機撃震参型の重力偏差型機関がうなりをあげる。タラップを降りていく隆也の姿を確認して、まりもは戦術機格納ハンガーの拘束機構の解除を指示する。

 「神宮司まりも少尉、先進技術実証機撃震参型、出ます」

 ハンガー内を歩いて移動する先進技術実証機撃震参型に、整備員の手が一瞬止まる。
 激震弐型のフォルムよりもさらに重厚さを増した追加武装を装備したその姿。一瞬野暮ったい重さを感じさせる姿にも関わらず、足取りは軽い。
 そして何よりも、目にしたものに安心感を与えるだけの力強さを内に秘めている。
 カタパルトデッキに進み両足をカタパルトにセットする。

 「MOS、モードを戦闘補助へ移行、これより戦闘機動状態に入るわよ」

 まりもの声が管制ユニットに響くと、操縦席の脇にセットされた量産型戦術機搭載用量子電導脳、MOSから合成音声が返ってくる。

 「指令受領、これより戦闘補助に移行します。制限解除段階は1です」

 「よし。管制室、第十三戦術機甲大隊所属特別遊撃隊神宮司まりも少尉、先進技術実証機撃震参型、出撃します」

 「ご武運を!」

 カタパルトから射出される先進技術実証機撃震参型。その姿を見つめながら隆也は一人呟いていた。

 「ぶっちゃけ、まりもんを殺せるだけの戦力がBETAにはないんだけどな。最悪生身での帰還も余裕だろうし」

 神宮司まりも、彼女はある意味被害者なのかも知れない。いろんな意味で。
 そのまま隆也は戦術機の格納ハンガーから離れた場所に設置してある特別コンテナの前に進むと、そのコンテナのロックを解除した。
 そこに現れたのは、漆黒の強化外骨格。通常の強化外骨格とは違い、気を通しやすい特殊合金で作られたそれは、気増幅機構を内蔵しており、右手に12.7mmNATO弾を使用する特殊重機関銃、左手に刃渡り実に3mに及ぶ日本刀を握っている。
 また背面にはNATO弾が山と言うほど積み込まれている。
 オリジナルハイヴでBETAを散々狩り殺してきた脅威の強化外骨格が、ついに人類が参加する戦線に姿を現すことになる。
 これが後に様々な機械工学の権威、戦術機開発担当者の目と正気を疑わせることになる、黒い幻影の正体である。
 ちなみに、まりもの駆る先進技術実証機撃震参型の活躍も十分に機械工学に関わる者と戦術機開発担当者の正気度をごりごりと削ることになるのだが、それはまだ少し未来の話である。


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