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敵であり、獲物であり、友である 第六話 亡者の声 現世の楔
作者:時雨   2012/12/02(日) 00:38公開   ID:wmb8.4kr4q6
ここは・・・どこだろう・・。

真っ暗で光一つ無い場所。

自分の手を見ても見ることの出来ないような、そんな闇。




「華火!!」

「華火!?大丈夫か!!」

警察や野次馬であふれかえったそこは正に騒然と言っていい場所だろう。
警察の規制線の向こう側にはタイヤ痕と思われる黒い跡と、おびただしい程の血の海。そんな騒然とした場所を見て、喜和子たちは顔を真っ青にさせ、わが子をさがす。警察からの連絡では、事件現場に居合わせたとしか言われなかったが、もし怪我でもしていたら、もしかして何かあったのでは、と気が気でなかったのだ。
そんな二人が見たのは、規制線の向こう側にいる・・血濡れの我が娘。
二人は警官の制止も振り切り、規制線の中に入っていった。

「おか・・さん。凪ちゃんが・・凪ちゃんが!!!」

華火は震える手で喜和子にすがりつきながらも、懸命に何かを伝えようとするが、凪の名前以外、声がつまり何も言えず、それでも凪の名前を呼び続けていた。
二人も懸命に華火を落ち着かせようとするなか、声をかけてきたのは背広を着た若い男性だった。

「失礼ですが、この子のご両親ですか?」

「はい、華火の母です。いったい、なにが!?」

華火を抱きしめながら喜和子は慌てるように尋ね、喜和子の肩と華火の頭を撫でながら、恭司もその若い男性を見つめた。

「実は女の子がひき逃げにあいまして、その子はひき逃げに会った女の子にずっとすがり付いて泣いていたんです。さいわいにも、他にも事件を目撃された方がいて、その方が警察と救急に連絡をくれたんです。」

「そうなんですか・・」

「その女の子が言ってる“凪ちゃん”とは・・・」

「うちであずかって・・・もしかして、ひき逃げにあったのって!?」

喜和子は口に手をあて今にも叫びだしそうなのを押さえるようにして、うめいていた。

「その凪ちゃんについてはもうすこし詳しく・・」

「そんなことより、凪ちゃんが搬送された病院を教えてもらえませんか?」

喜和子の背を撫でながら、語尾を荒げず言う恭司だったがその声は低く冷たく、
そして、今にもその男を殺しかねないほど鋭い目つきで睨みつけていた。

「ですが・・」

「おい」

男性が言い募ろうとした途中で、今度は中年の背広をきた男性が若い男の肩を掴み
話し掛ける。

「他にも目撃者はいるんだ。その子は後日でいいだろう」

「警部!!」

「それに、その譲ちゃんは俺達には何もしゃべってはくれなかった。無理にここで聞いたところで同じだろうよ。・・・失礼しました、私×××警察署の宮部と申します。もしよろしければ、その凪ちゃんの氏名、年齢、特徴を簡単に教えてもらえませんか?もしかしたら別の子の可能性もありますんで」

「・・・はい」

宮部と名乗ったその男性はまず若い男性を諌めると、次に落ち着いた声で簡潔に今
何が必要で何故必要なのかを述べた。
その声と言葉に、恭司も血が上っていた頭を冷やし言われた質問に答える。

「名前は稀龍凪 年齢は娘と同じです。特徴はセミロングの髪を後ろで一つに結んでいます。服装は・・・」

特徴を聞くと、宮部は携帯で誰かに連絡を取り始めた。
どうやら、救急車に乗せられた子供の特徴を聞いているらしい。

「・・・確認した結果、救急車に搬送された子と凪ちゃんの特徴が一致したようです」

「!?」

「申し訳ありませんが、凪ちゃんのご両親は・・」

「あっ・・あの子の父親はわっわたしの兄で・・兄は仕事で海外に・・」

喜和子はつまりながらも、なんとか言葉を発し冷静になろうとしていた。

「そうですか。でしたらお兄さんの連絡先を教えてもらえますか?
 こちらから連絡して事の次第を伝えておきます」

「これ、兄の携帯番号です・・滞在先は△△△・・・あの凪ちゃんは・・」

「・・○○○病院に搬送されたようです」

消え入りそうになる喜和子の言葉に、少し間をおきながらも宮部は凪が搬送された病院の名を告げた。

「・・凪ちゃんのそばに行く・・」

今まで母親に抱えられうめくように何かを言っていた華火が喜和子の腕の中からはっきりとした言葉をいい喜和子にせがむ。
だが、華火の格好はひかれた凪にすがっていた所為か、服や手顔にまで血がつき、昼間であれば大怪我をしたか下手したら殺人者にでも間違われそうな格好だ。
そして、その華火を抱きしめていた喜和子の服にも血がついてるしまつ。

「華火、一回お母さんとおうちに帰んなさい。凪ちゃんにはお父さんが・・」

「やだ!!!華火が行くの!!!!?華火が凪ちゃんのところに行くの!!!!」

「でも華火・・」

「だめ!!!華火がいくの!!!!華火が!!」

二人が言い含めようとするも聞かず、しまいには暴れだしてしまい二人が困り果てていると、宮部がしゃがみこみ華火の目線に合わせてきた。

「・・・華火ちゃん、そんなに凪ちゃんの所に行きたいのかい?」

「うん!!華火が凪ちゃんの所にいくの!!」

「・・そうか、ならおまわりさんにパトカーで送ってもらおうか」

「え?」

宮部の申し出に喜和子や恭司・・いや、その後ろにいた男性も驚いた表情をしていた。

「勝手なこといって申し訳ない。ですが、このこの目が凪ちゃんの所にいくまで梃子でも動かないって言っているもんでね」

「警部!!ですが!?」

「お前は黙ってろ・・上からのお小言なら俺が全部引き受けるからよう」

「・・・よろしいですか」

「!?喜和子」

宮部が静かに告げると、喜和子も顔を上げ強い目をしながら宮部に言った。
それに驚いたのは恭司であった。

「このまま家に帰れば、華火は一生このことから立ち直れない・・そんな気がするの」

「・・一緒に行こうか?」

「・・うんん、あなたは帰って凪ちゃんや私達の着替え、あと凪ちゃんの保険証なんかも一緒に持ってきて」

「わかった・・何かあればすぐに連絡を」

「えぇ」

その会話のすぐ後に恭司はその場から離れていき、喜和子も華火と手をつなぎ立ち上がった。

「宮部さん、お願いします」

「わかりました・・・おい、この方達を○○○病院までお送りしろ」

喜和子の言葉に頷き、宮部は近くにいた制服警官に声をかけ、その言葉に警官も頷き二人をパトカーまで案内した。
この時不思議なことに、華火がずっと片手に握り締めていた万華鏡のことは誰にも気づかれることはなく、華火が硬く握り締めながら喜和子と二人、病院に送られるのであった。


「では、私はこれで」

パトカーから降り、喜和子たちにそういうと警官はまたパトカーで現場に戻っていった。
それを見送った喜和子たちは足早に病院に入り、廊下を歩いていた看護師を捕まえ、状況を聞く。

「すみません、先刻車に追突された女の子が運ばれてきたはずなんですが」

「!?・・あぁ、その子でしたら今緊急手術中です。」

「あっ、あそこの手術室ですね!!」

「はい」

場所を聞くと華火を連れて廊下を歩き、手術中の明かりがついた扉の前に着くと、華火の手をギュッと握り、悲しそうにその扉を見つめた。
しばらくすると、近くにあった椅子に座り込む。

「・・華火、それどうしたの?」

ここに来て初めて自分の隣にいた華火が何かを握り締めているのに気づき、華火に聞くと、華火はさっきまで握っていた喜和子の手を離し、両手で万華鏡を握り締めた。

「凪ちゃんが・・持ってたの」

「華火!?そんなのもってきちゃダメじゃない!!」

喜和子が華火から万華鏡を取り上げようとすると、華火は体を丸めこみ喜和子のてから万華鏡を隠そうとし、無言で首を振った。

「華火!!」

「ダメなの・・これ華火がもってなきゃ・・ダメなの!!」

「華火・・・」

華火の頑なさに喜和子は驚きながらも万華鏡から手を離した。


近くにある窓が赤から黒に変わっていく日の光を廊下にいれ、血がこびり付いた手がさらに黒く感じながらも華火はずっと握り締めていた万華鏡からそっと手のひらを開いた。

「凪ちゃん・・・ごめんね」

ポツリとそう呟くと、また万華鏡を握り締めるのであった。

事故から2時間経過し、ようやく手術室の扉が開き看護師や手術に携わった医者、それらに伴われベットが押され一緒に出てきた。

「先生!!凪ちゃんは、凪ちゃんは!?」

喜和子は先頭にいた医師に掴みかかる気負いでたずねると、医師は優しく喜和子の肩を掴み落ち着かせる。

「・・彼女のお母さんですか」

「いえ、私はあの子を預かっているものです!それで・・」

「そうですか・・・どうぞ、こちらに」

喜和子は医師に案内され華火をともない、少し広めの部屋に通され椅子に座らされた。

「あの子・・凪ちゃんの手術自体は上手くいきました」

「!!」

「ただ、この病院に担ぎ込まれる前に心肺停止の状態に陥り、蘇生措置で状態を持ち直したときには既に時間がたっておりました・・・脳に障害が残る可能性や最悪の場合このまま目が覚めないということも考えられます」

「そんな!?」

喜和子が驚愕をあらわにしているなか、華火はそんなことは聞く必要が無いとでもいうかのように、そっとその部屋を後にした。

華火はゆっくりと歩きながら近くにあった長いすに腰をすえた。

「凪ちゃん・・」

まるで何も写していないかのように、華火の目からは光が消えうせ、その目をゆっくりと閉じ、体を長いすに倒れ込ませた。




「ここ、どこだろう」

周りを見渡しても何も見えない。

(確か私は華火の背を押し、車にひかれたはず・・・)

そんなことを漠然とおもいながら、何も見えない黒い空間を呆然と眺めていると肩に誰かが触ったようにかんじ、バッと振り返るとそこには赤いコートを着込んだ二十歳ぐらいの女性が立っていた。

“なんで・・・”

「え?」

“なんで、同じように死んだのに!!!どうして貴女だけ生き返ってるの!?”

「!?」

“私だって、私だってもっと生きたかったのに、なんで!!!?”

そう女性が叫ぶと、徐々に私に周りには青白く光る人たちが一人また一人と姿を現していく。

“やっと子供が生まれたのに、どうして!!”

“結婚が決まったの!彼と幸せに私はなるはずだったのに!!!?”
嘆き、怒り、悲しみ、絶望、様々な声が響き私を責め立てた。
そう、この人たちは・・。

「あの事故・・に巻き込まれっ・・た・・ひと・・たち」

何も考えずにいた。

考えたら生きてはいけないから・・

何も考えたくなかった。

考えても苦しいだけだから・・・


“なんで・・なんで、君が生きて、渚(ナギサ)が死ぬんだ?”

「お・・とう・・・・さん」

“なんで、なんで!!?”

もう何も聞きたくなくって、耳を塞ぎ、目を閉じしゃがみこんでも、聞えてくる見えてくる・・その姿。

“子供なんていらなかった!!渚さへ生きていれば・・良かったのに・・”

“渚、渚、渚、渚、渚!!・・・なんで・・生きていてくれなかったんだ”

何も・・見たくない・・・

何も・・・・聞きたくない

もう・・やだ!?!

硬く、硬く身をちぢ込ませ、まるで貝がその体を閉じるように・・硬く・・硬く・・。
そんな凪の周りには青く光る人間のほかに、黒い手が地面から無数にはえ足や腕、肩頭、・・全てを掴み、まるで底なし沼に引き摺りこむようにゆっくりゆっくりと、凪を地面に引き摺りこんでいった。
その時・・・。

「・・!!」

「・・・」

「・・凪ちゃん!!」

「・・・」

「凪ちゃん!!」

「!?」

気がつくと、事故に巻き込まれた人たちの向こうから、なんとか私に近づこうともがく華火の姿が目に映った。

「は・・なび」

「凪ちゃん!!華火、華火、凪ちゃんのこと大嫌いだったの!!・・華火の持ってるもの見せても、そのまんまの凪ちゃんなんか大嫌いだったの!!でも・・だから、華火は凪ちゃんと一緒にいたい!!勝手にいなくなっちゃったら許さないから!?」

叫び、がなり、言葉を紡ぐ華火。

でも・・・けして泣いてはなかった。

泣きそうな顔してるくせに・・泣いてはいなかった。

「・・・」

『あの声に応えるかは譲ちゃんの自由だ』

「・・・」

『今ここで楽になったところで、誰もお前を責めやしないさ』

「・・・」

『決めるのは・・お前だ』

ゆっくりと目線をあげ華火を見ると、光る人間達に阻まれながらも手を伸ばし、その手には万華鏡が握られていた。







ここは・・どこ?

周りをみても誰もいなくって・・暗いし寒いよ・・・。

「ここ・・どこ?お父さん・・お母さん!!・・なぎ・・ちゃん」

叫んでも叫んでも、誰も答えてくれなくって・・なんで華火こんなところにいるの?

「もうやだ!!帰りたいよ!!!?」

叫びながら座り込むみ、いままで握っていた万華鏡がコロコロと手を離れて転がっていった。

「あっ・・・」

『華火』

「!?誰!?」

どこからか声がしたけど・・だめ、なにも見えない!!

『華火、帰りたいか?』

「!!っかえり・・・たいよ。・・・・でも・・・」

『でも?』

「わかんない・・帰りたいよ、帰りたい!・・でも、今かえったら・・」

『帰ったら?』

「・・かえったら・・凪ちゃんに、もう会えないかもしれないって・・」

『凪に会いたいのかい?』

「・・うん」

『凪に会いに行けば両親に会えなくなるかもしれないよ?』

「!!」

『それでも会いたいか?』

「・・お母さんとお父さんに会えなくなるのは、やだ!!やだ、やだ、やだ!!?・・・・・・・・・・・でも・・でも!!凪ちゃんに会えなくなるのもやだ!!!」

『・・そうか』

華火は転がった万華鏡を拾い上げ、・・立ち上がった。

「どこに行けば凪ちゃんに会えるの!」

『ここをただ真っ直ぐに・・ただ、一瞬でも迷えば・・一生ここから出られなく・・』

華火は声の言葉を最後まで聞かず、真っ直ぐに走り始めた。
ただ真っ直ぐに・・・。


凪ちゃん!!ごめんね。

華火は足がもつれそうになりながらも、転びそうになりながらも立ち止まらず走り続ける。

華火、本当は凪ちゃんのこと嫌いだったの!
凪ちゃんは家に来る前から一人ぼっちだった。
でも、華火の周りにはお母さんも、友達もいっぱいいた。
だから、華火の方が凪ちゃんなんかよりすごいんだって思ってたの。
・・でも、違ったの。
すごかったのは凪ちゃんの方だった。
凪ちゃんはいつも一人だったけど、目は真っ直ぐに何かをみてた。
周りに人がいなくなっても気にしないで、ただ真っ直ぐに。

そんな凪ちゃんをみてるの、すっごくやだった。

自分がすっごくちっちゃくみえたの。だからだいっきらいだった。
・・でも、そんな真っ直ぐな凪ちゃんの目に自分が映るのは好きだった。
華火も凪ちゃんみたいになれたきがしたから・・でも、そんなのうそ。華火は華火のまんま、ちっちゃくて誰かの目に映んないと自分が見えないまんま。
それでも・・。

「華火だって、いつかすごい人になるんだから!凪ちゃんなんかよりずっと、もっとすっごくなるんだから!!だからそんな華火を見るまで、凪ちゃんが勝手にいなくなることは、華火が絶対許さないんだから!!!?!」

遠くに青白く光る人が見えた。
その人たちから感じるのは、冷たくって寒いそんなのばかり。
恐い、恐い、恐い、恐い、・・・でも・・。

「凪ちゃん!!」

華火は叫ぶの、凪ちゃんに届くように・・。

華火は叫び続けながら、青白い人を掻き分けやっと凪ちゃんを見つけたの。
でも、凪ちゃんはもう殆ど沈みかけてて、それでも叫んだの。
勝手に消えることなんて許さないって叫びながら、万華鏡を持つを伸ばしたんだ。
この万華鏡をみたときから、何でかわからないけど華火が凪ちゃんに渡さなくっちゃっておもったの。これを凪ちゃんに渡さなくっちゃって・・。
でも、凪ちゃんはしばらくは万華鏡を見てるだけで手を伸ばさなかった。
その間にも凪ちゃんの体はどんどん沈んでいくのに・・。
それでも待ったの・・凪ちゃんが手をのばしてくれるまで・・そしたら・・。

「華火・・・やっぱあんた、色々ぶっ飛んでるわよ」

そんな言葉だったけど・・でも、凪ちゃ・・うんん、凪は笑ってくれた。

そして、すこしおでこに皺を作りながらも、黒い腕から自分の腕を引き抜き・・
手を伸ばし、万華鏡を受け取ってくれた。


「んっ・・・」

「華火!!」

「華火!大丈夫か!?」

目を開けると、お母さんとお父さんの顔が見えた。

「お・・かあさん、おとうさん」

「よかった、本当によかった」

お母さんからはめったに見ない涙が零れていて、お父さんはお母さんの肩を抱きしめながらも、やっぱり泣きそうな顔をしていた。

「華火、あなた廊下の長いすで気絶してたのよ?」

そんなことを言いながら頭を優しくなでるお母さんの顔をぼぉっと見ていると目に光があたり、そちらをみた。
すると、窓からは明るい光が差し込んでいた。

「!?お母さん!凪は!?」

「・・大丈夫よ・・凪ちゃんは・・」

そう優しく笑うお母さんが何かを言おうとしたそのとき・・。

「華火」

・・間違えるはずがない・・・。

お母さんが体をずらし、窓とははんたい隣にあるベットが見えるようにしてくれた。
そこには、ベットにもたれかかるようにして寝てるおじさんと・・。

「華火、あんたのおかげで助かったわ・・ありがとう」

そこには包帯やガーゼをつけた凪が笑ってて・・。

「・・違うよ!・・凪は華火をかばって・・だから危険になって!」

「・・確かに、この怪我とかは華火をかばって出来たものだけど・・それでも、私を助けてくれたのは華火だよ」

「!?」

「華火が私を助けたの」

「ちっちがうよ!!・・ちがう、ちがう、ちがう・・・・でも、でも・・凪が目を開けてくれてよかったよ!!!」


そういうと、華火はボロボロと大粒の涙を流し、泣いていた。
あのくらい場所を走ってきてくれたときも泣かなかった華火が・・・。
そんな華火の泣き声に、そばで寝ていた父さんも目をさまし、隣でボロボロ泣いている華火を見て複雑そうな顔をしていたけど・・それでも、優しく華火の頭を撫でていた。

目を覚ます直前、トヨウケヒメが教えてくれた。
どうやら、私に問いかけてきた声はトヨウケヒメだったらしい・・。

『あの万華鏡に足りなかったのは、譲ちゃんを現世につなぎとめる強い楔。そう、それはある意味呪詛とも呼べるほどに強いもの。中途半端なものじゃあれはうけいれない・・それほどに強い楔を華火がお前に打ち込んだんだ』

だから、私を助けたのはやっぱり華火なんだよ・・。

それからしばらく後に華火に色々聞いてみたんだけど、華火は私が車に引かれた後からの記憶が曖昧ならしい。
かろうじて私が車に引かれたことと目が覚めないかもしれないということは認識していたけれど、それ以外のことはほとんどダメみたい。

でも、なんだか思うことはあったらしく。

「華火、凪には負けないから!!」

にっこり笑って宣言されてしまった。


・・・私はきっとこれからも色んなものに出会い、いろんなことにぶつかると思う。

でも、それでも・・なんだかんだといいながら悩んで苦しんで、それでも歩くんだろう。


   だって、私は生きているんだから・・・・。



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■作者からのメッセージ
やっと幼少時の話しが終わりました!!
最初、この話しすら終わるかどうかも不安だったんですが、本当によかったです。
次から権能簒奪編なんですが・・やっぱり原作からはまだちょっと離れている予定です。最後らへんにちょこちょことは出す気ではいるんですが、それでも本格的に原作に入るのはその次くらいになりそうです。・・最後になりましたが、ここまで読んでくださった方々には本当に感謝しております。もし、機会があるようでしたら次も読んでいただけたら幸いです。
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