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敵であり、獲物であり、友である 第十六話 神殺しとカンピオーネ
作者:時雨   2013/01/24(木) 16:14公開   ID:wmb8.4kr4q6
真っ直ぐ長い銀の髪と、緑の葉の冠。
白い衣を体に纏い、風はその衣と髪を空に遊ばせその美しさを際立たせる。
あの幼い姿は危うい美しさだったが、今の姿は正に堂々とした女神の姿そのもの。

『ようやっとこの姿に戻れたわ』

妖しく笑うその姿を苦々しく見ながらも、少女から女性の姿に変貌したアテナの姿を見ながら、口をぽっかりあけている鋏をもった男に右手を思いっきり振りかぶり、そして…殴った。もちろんグゥで!!。

「ったぁ!!!!なにすんだよ!!!!!」

「五月蝿い!!殺されないだけましだと思え!!!」

グローブを神具化しておいたのもあり、その男は5mぐらい吹っ飛ぶと、殴られた頬を押さえながら怒鳴ってくるも、それはアテナの言葉に遮られてしまう。

『ほう、草薙 護堂生きておったか。いや、蘇ったと言った方が正しいか…それでこそ我らが仇敵!魔王の忌み名をもつ者よ!!』

高らかに、そして謳うように男に告げるアテナ。
どうやらもう一人の神殺しの名は草薙 護堂というらしい。

(…どうせなら、そのままくたばってくれれば面倒が無かったものを…)

なんて心の隅で思ったり、思わなかったり。
まぁ、それはさておき…このままこの草薙君とやらがこの神様の相手をしてくれるなら万々歳である。
なにせ、こちらとしてはお鉢が回ってきたので仕方がなく戦ったってのが大部分であるし、好き好んで命を危険に晒すほど物好きではない訳で…。

「別に、俺としては好き好んであんたの敵になりたいわけじゃないんだ…けど、無関係の人間巻き込んで知らん振りできるほど、落ちぶれるつもりはないんでね」

ニヤリと笑い、かっこいいことを言う草薙君。
でも、ちらりとこちらに目線を向けてから言うのはいただけない。
何せ、私としては知らん振りしててくれた方が助かったっていうか、その場で終わらせることができたのだ。
はっきり言って、お節介も時と場合をよく観察してから行なってほしい。

『無関係のう…つくづく可笑しなことを言う男だ。そやつはおぬしと同…』

「は?」

右手にナイフ、左手に鋏を指の間に挟み思いっきりアテナに投げ放つと同時に砂浜を蹴り上げ、左斜めからアテナの方へと飛び込み、右手をアテナに向ける。

「紅蓮の炎に眠る暗黒の竜よ、その咆哮をもて我が敵を焼き尽くせ!!」

『フフフ、この姿になったわらわにそのような攻撃効かぬわ!!』

アテナは黒い風を纏いながらデスサイズを一振りすると、黒い風を撒き散らせながら神具をなぎ払う。

「魔竜烈火砲(ガーヴ・フレアー)!!」

黒き炎の閃光が右手から放たれ真っ直ぐにアテナに向かうも、彼女はデスサイズで横になぎ払うが…。

「影縛り(シャドースナップ)」

なぎ払われた魔術が工場や倉庫地帯を一瞬にして爆音と共に瓦礫の山と変えたと同時に、左手の指を五本クイッと曲げると、なぎ払われたナイフが糸に引かれるようにアテナの元に勢いよく戻り、アテナに刺さる前に地面に刺さる!!

『さて次はお主…ん?』

アテナはデスサイズを持ち、地面を蹴ろうとしたが体動かない。
後ろを見ると、刃の部分に補強呪文が刻み込まれたナイフがアテナの影に突き刺さり、アテナの動きを封じ込めている。

一瞬アテナが後ろを振り返ると同時に、一蹴りで距離を詰め再度ペーパーナイフでとどめを刺そうと首目掛けて振りかぶるも、いっきに地面が盛り上がり咄嗟に後ろに蹴り上げると、地面へと落ちる感覚を後ろ向きで感じながら目の前に現れたものに目を奪われてしまう。

「石の蛇…」

全長30mはあるかというぐらいの巨大な石の蛇が私の目の前に一匹、首をもたげ赤い瞳でこちらを睨んでいるのがよくわかる。
しかも、その蛇は一匹にあらず。

『よくもまぁ小細工の好きな奴よ。やはりあの愚か者の権能を簒奪した者といったところか』

アテナは自分の影からも巨大な蛇を呼び出し、蛇の頭でナイフを除去すると同時に蛇の頭にのり、こちらを見下ろす形で嗤うアテナ。
だが、次の瞬間空間が隔たるようにして、海と砂浜からガラリと景色を変えた。

「あんた、カンピオーネだったんだな」

海だった部分は岩場へと姿を変え、高き岩や地面、空には無数に及ぶ黄金の剣が突き刺ささり、その中心に金髪の女性の腰を支えながら立っているのは、もう一人の神殺し、草薙 護堂であった。

さっきのアテナの言葉で私が神殺しであることに気づいたのだろう。
アテナに余計なことを言わせない為に戦ったというのに、無駄骨だったみたいだ。

「君みたいな単細胞にばれるなんて一生の汚点だよ」

「…さっきといい今といい、おまえ俺に恨みでもあるのか?」

口を引きつらせながら、左手に黄金の剣を持ち右手で抱えていた女性に何か耳打ちすると、自分の後ろに下がらせる。

「自覚がないとは、君の馬鹿さ加減は末期だな。可哀想に」

首を軽く振りながら馬鹿にしてやると、草薙君はさらに口元を引くつかせ今にも剣をこちらに振り下ろしそうな形相をこちらに向けている。
はっざまぁみろ!!
二人で話していることに業を煮やしたのか、二人の背後に新たな石の蛇が出現し、襲い掛かるも…。

「「うっるせぇ!!!!!!!取り込み中だ!!!!!!!!!!!!!」」

護堂は黄金の剣で、凪はペーパーナイフで振り向きざまに蛇を一刀両断すると、ガラガラと音を立て、石でできた蛇は崩れてゆく。

『わらわをよそに話し込んでるとは、我も馬鹿にされたものだ』

剣呑とした目つきで睨むアテナに、黄金の剣を向ける草薙君。
…まぁ、ここまできて引き下がるのも後味悪いか…。

「悪いけど、あんたとの話は後まあわしだ。この神様倒さないとろくに文句も言えないからな」

「単細胞な君の頭をかち割るのに、目の前の女神は邪魔だしね」



          「「ぶっ倒す!!」」




「息が合ってるのかいないのか、微妙なところね」

防波堤の淵に座り、風にその金の髪をたなびかせながら呟くのは草薙 護堂と共にいたエリカ・ブランデッリその人であった。
彼女は彼の申しつけ通り、あの黄金の世界から離脱し、その時が来るのを待っているのである。
それにしても、とエリカは呟いた。

「本当にカンピオーネだったなんて…まさかとはおもうけど、知ってて黙っていたわけではないでしょうね」

「おやおや、お気づきでしたか」

確かめるようにエリカが呟くと、彼女の後ろから現れたのは正史編纂委員会の甘粕と万里谷であった。
彼等もまた、神とあの異質魔力をおってここまで来ていたのだろう。
振り返ると、人ごみにまぎれても判らない様な冴えない男のはずなのに、エリカの武人としての勘が、彼女に警戒を促していた。
こいつは、強いと…。

「で?どうなの。もし知ってて護堂に黙っていたのなら、背信行為って見なされても文句は言えないんじゃないかしら」

「いえいえ、とんでもない。ただ、こちらとしましても確信をえるまではと思っていたまででして…」

ニコリと笑う甘粕に対し、訝しげに睨み付けるエリカ…その二人に対し俯きただ黙ったままの万里谷に、エリカは矛先を向けた。

「万里谷…いえ、この際ユリと呼ばせてもらうわ。ユリはあのカンピオーネの存在を知っていたのかしら?」

「…いえ…ただ、もしかしたらカンピオーネが誕生しているかもしれないというお話しなら聞いていました…多分草薙さんがカンピオーネになる前から」

「どういうこと?」

エリカが眉をひそめると、交代とばかりに甘粕がことの顛末を色々はしおりながらエリカに説明する。

「この話は日本で噂されているものってわけじゃないんですよ。五年ぐらい前からちらほらと噂される言わば都市伝説のような曖昧な噂でして…ねぇ、万里谷さん」

「えっ?…えっと、はい…」

甘粕が笑顔で万里谷に返事を促すと、目をぱちくりさせながらぎこちなく頷く万里谷に、エリカは胡散臭さを感じながらも、話の続きを促す。

「聞いたことありませんか?ギリシャ領域の島で忽然と消えたまつろわぬ神の話」

「そういえば…だけど、ギリシャならヴォバン侯爵が打ち倒したんじゃ…」

「いえ、ヴォバン侯爵とは一足違いで消えていたそうですよ。だからこそ、準備を進め、まつろわぬ神の降臨という暴挙に出たわけでして…」

「ッ…」

ヴォバン侯爵の名を出したとたん顔を青ざめさせる万里谷をちらりと見るも、苦笑いをするだけで、甘粕がそのことにたいし何かいうことは無かった。

「あとはエジプトなどでもちらほらと…但し、どれも未確認のうえ、この二件に関しても魔術師からの目撃情報は一切なかったので確かめようもなく…といった感じですね、今までは」

「その未確認のカンピオーネが今護堂と共闘している方だって言うわけ?」

「さぁ、それは…なにしろ未確認ですから」

頬を人差し指でかきながら苦笑いをする甘粕を、ジッと睨み付けるエリカに対し万里谷もまた甘粕の横顔をチラッと見るも、一度目をを伏せ繰り広げられる黄金の世界に目を向けた。

「まあいいわ…その事に関して赤銅黒十字としても調査させてもらうけど、かまわないかしら?」

「それはどうぞ、ご自由に」

にっこり笑う甘粕からプイと顔をそらしたエリカも、万里谷のように黄金の世界へと視線を戻すのであった。
だからだろう、エリカは見逃してしまったのだ。
エリカが視線を戻すと同時に甘粕の背後から飛び立った、蝶の存在を…。





例えば、同属嫌悪という言葉がある。
あれは言うなれば、同じだからこそ嫌な部分が見えてしまい嫌いになるといったニュアンスだったと思うが、だがどんなに嫌おうとも同種なのである。
似て当然なのだ。


「あなたは常に蛇や梟と関りの深い女神だった。蛇といえばメドゥサ。アテナとメドゥサは元々同じ女神だった。二神の女神が異邦…北アフリカからギリシアに招来される前の話だ」

『ほう、我が出自を述べるか…だが、それが戦いの中でなんの意味がある!!』

護堂が黄金の剣を構え、アテナの出自を述べ始めると、アテナは薄笑いを浮かべあざ笑いながら、デスサイズを振るうと、振るった線をおうかのように空間が切り裂かれ底から黒い闇が広がる。
その中から出てきたのは、おびただしい程の梟だった。
無数ともいえる梟は、アテナのもとを離れ上空に飛ぶと護堂に向かって閃光のごとく降注ぐ…が!?

「永久と無限をたゆたいし全ての心の源よ、尽きること無き青き炎よ、我が手に集いて閃光となりて、深淵の闇を打ち払え!」

背を預けるように、護堂の後ろにいた凪が草薙と入れ替わるように前にでると、その時には既に呪文が完成していた。

「螺光衝霊弾(フェルザレード)!!!」

降注ぐ梟に両手をかざすと、放たれたのは大きな螺旋を描く光の柱。
光は闇を打ち払い、梟と亀裂からでていた闇さえもその光で打ち払う。

「芸がないんじゃない?攻撃方法がその姿になる前と同じだよ」

先ほどは時間がなくこの魔術を使えなかったが、今は目の前の単細胞が無駄なのかそうじゃないのかわかんない話をしてくれていたおかげで、詠唱を終えることができた。

『っ!!小癪な!!』

綺麗な顔で鋭く睨みと、その眼光が一瞬にして周りのものを石へと変貌させる。
だが、そんなことはお構いなしと、凪は護堂の後ろに戻り護堂はアテナの出自を述べながら黄金の剣を地面につきたてる。

「元を辿れば、あなたこそが蛇の魔物…いや、蛇の女神だった。それだけじゃないギリシア神話ではアテナの母とされる智慧の女神メティス、この女神も元はあなただった!」

突きたてた黄金の剣はさらにその輝きをまし、腰あたりまで石となり始めていた二人と、それまで石になった全てのものを、一瞬にしてもとの姿にもどす。

『剣の言霊!?先ほどの武具か!!!』

「へぇ、単細胞のくせしてインテリ系の技使うとは、随分とまぁひねくれている」

「俺の後ろにとっとと隠れたお前に言われる筋合いはねぇ」

ニヤニヤしながら護堂の後ろから出てきた凪が軽口を叩けば、鼻で笑いながらもいたずら小僧のような笑顔を受けべる護堂がいた。
そして、護堂は剣を地面から抜き、アテナに向けると空に浮かぶ剣という剣はアテナに刃を向け、臨戦態勢を整える。

「あなたはギリシア出身の女神じゃない。北アフリカで生まれ、地中海全域で崇拝されるようになった大地に女神。そして多くの別名と姿を持つ…メティス、メドゥサ、ネイト、アナト、アトナ、アシェラト、彼女達はあなたというオリジナルから生まれた分身、姉妹といってもいい」

ついに剣の攻撃コードが最低ラインを超えたのだろう。
空にて臨戦態勢をとっていた剣、地面や岩などに無数に刺さる剣は、まさに黄金に光だし、無数の光となりアテナのもとに降注ぐ。

『っ不快だぞ、わらわを暴きたて、切り刻む<剣>!忌まわしき過去を思い起こさせてくれるな!!!』

アテナは半円上の黄色い結界をはり剣を防ぐも、剣は突き刺さった場所からじりじりと中に進入してくるが、アテナはそれよりもやな予感がし後ろを振り返ると、結界の外に赤いヘッドと黄色い持ちてのオモチャのハンマーを持った凪がニッコリ笑って立っていた。

「ごめんね?」

『ッ!?』

そのハンマーを振り上げ、結界に打ち付けるとピコッ!!と情けない音を出すも、その威力は半端ない。
一気に結界に亀裂を入れると、いともあっけなく崩れるではないか。
そこを見逃すはずもなく、一気にアテナに向かっていくもデスサイズでその全てをなぎ払い、その一閃で凪にも攻撃を与えようとするも、凪はそれに対し反撃するのではなく、ただ大きく後ろに下がり、それをおいアテナがデスサイズを振りかざすと、クルリと入れ変わるように、護堂が凪の後ろから飛び出し、刃を止める。

「あなたはエジプトのイシスやバビロニアのイシュタルと同じルーツを持つ、古き太母神の末裔だ。そもそもは大地の女神でありながら、同時に冥府を司る闇の神でもあった。また、天上の叡智を司る智慧の女神でもある」

護堂が出自を述べるたびに、それは言霊となり剣は光り輝き、鋭さをます。
この光が刃となって、女神の体を引き裂くのだ。
デスサイズを抑える今でも、その剣の輝きはましていくも如何せん剣は鋭くなっても自身の力を上げてくれるわけではないので、ズルズルと地面を下がる形で少しずつ護堂の体が後ろに押されていく。

「女性に力負けしてどうすんだよ!?単細胞!!」

アテナの背後から飛び掛り、振りかぶるは一個単体のロッカー!?。

「電撃破(ディグ・ボルト)!!」

アテナにぶつけるようにして投げつけると、護堂の腹に蹴りを加え吹っ飛ばすと、デスサイズでロッカーを切ろうと、振りかぶり接触した瞬間後ろに飛び電撃を流し込む!!

『ック!?!』

「詠唱なしだとそのぐらいか。まぁ、神様に効くってだけでも凄いことなんだろうけど」

ロッカーを真っ二つに切るも、アテナの周りをビリビリと音をたて彼女自身も悶えているのだ、ある程度は効いているのだろうと判断した。

「って!?冷静に何言ってるんだよ!!お前、今ロッカー投げたんだぞ!?てか、どっから出したんだよそんなもの…というか、普通ロッカーを投げるか!?」

「ぐだぐだ五月蝿い。使えるものは何でも使う、これがこっちの戦闘スタイルだ。それよりも、単細胞さっきから長々とやってるんだ、とっととその知識披露を終わらせろ。」

呆れたような、引いたようなそんな顔をしながらこちらを指差す護堂にたいし、馬鹿にするような口調で言い返しながら親指でクイッとアテネを指すと、口元を引きつらせながらも、剣を構えなおした。

「かつてあなたはゼウスの娘ではなく、神々の女王だった。生命と死を司る偉大な智慧の女神には、それが相応しい地位だった」

護堂は吹き飛ばされ場所から二蹴りで距離をつめ、凪はそんな護堂に道を譲るかのように横に飛ぶ。

「でも、女王への謀反が起きた。ゼウスをはじめとする男の神達が反旗を翻し、成り上がり新たな王となってしまった。神話は書き換えられ、女王だったあなたはゼウスの娘となり、メドゥサは魔物にまで貶められた」

大きく振りかぶりアテナに向かい振り下ろすも、柄で押さえられそのまま突き飛ばされるも、宙に浮かぶ剣がアテナを狙う。
グルリと半回転をし鎌で宙の剣をなぎ払うも、後ろから護堂が剣で襲い掛かりそれを後ろ向きで止める。

「翼ある蛇は蛇の姿を失い、ただ美しいだけの女神となる。」

『その言霊、真に汚らわしい!!』

またも外に逃げるように半回転して、刃を護堂の胴体に向けるもその刃の上に飛び乗り、刃を蹴って後ろに飛ぶ。

「地母神であるアテナの本質であった蛇は、やがて別の怪物として語られるようになる。翼ある蛇、つまり龍として」

『わらわの過去、あなたごときに嬲られるほど安くはないぞ!』

鎌を弓矢に変え、護堂に闇の矢を放つも、護堂はその矢を剣の一閃で叩き落す。

「神話の中で英雄に倒される邪悪な龍は、アテナのような敗北した地母神をおぞましく貶めた姿なんだ。没落した嘗ての女王…それがあなたの本質だ!!!」

走り込み、大きくジャンプをして振り下ろす一閃と、無数の刃が嘗ての女王に降注ぐ。強烈な光に目が眩むも、その先にいるであろう者達からは目を離さない。
それにしても…。

「馬鹿か、単細胞。いまので討ち取れよな」

光と共に空間にひびが入り崩壊すると、そこは元の場所ではなく、広い池と簡易的な森であった。多分もとの場所からはそんなに離れた場所ではないことは判る。
私がいる場所からは少しはなれた場所で二人は戦っているのか、遠目に二人が鎌と剣を打ち合わせている姿が見えた。

「まぁ、どちらにせよ…勝負が終わるのはそんなにかかんないか」

双方ともに体力そのほかもろもろの限界も近いだろうし、元々あの単細胞の敵だったのだから、ここまで付き合っただけでも感謝されたいぐらいなんだ、先に切り上げたところで文句はないでしょ。

「銀子さん、居る?」

『居るが、いいのかい?まだ向こうで戦ってるみたいだけど』

木の陰から出てきた銀子さんが首を傾げながら聞いてくるも、私はその質問に肩をすくめながら答える。

「かまわないよ。てか、もっと早くに離脱するべきだったんだけど、どうも流されちゃってタイミングを逃しちゃったんだよね」

『おや、珍しい』

ニヤリと笑いながら、こちらを向く銀子さんに口元を引きつらせながらも首を無言でふり、それはないと答える。
てか、銀子さんの目露骨過ぎだし。

「あの単細胞と私はどこまで行っても対極線上、ただの敵だよ。共闘することはあっても仲間になることはない…ただ、根本的な所は似ているというだけ」

『へぇ〜似ている所があるのは認めるのかい』

「銀子さん、忘れてない?私もあいつも…神殺しだってこと。根本的な所が似ているからこそ、こんなもんになっちまってるってことをさ」

『…だが、だからといって敵であり続けるってことにはならないだろう?』

「どうだろうね。…まぁ、いいや。それよりも早くここから離脱しないと、銀子さんさっきまでいた海、わかる?」

『わかるけど…帰るんじゃないのかい?』

「まだ、やり残したことがあるから」

私の言葉に再び首を傾げる銀子さんだったが、しばらくすると頷き地面を蹴り飛び立ったので、私もそれに続き、地面を蹴り空へと飛び上がると同時に、上空にはまるで太陽でも昇っているのかというほどの強烈な光が立ち込め、その中心から巨大な日の塊が彗星の如く落下するのが、辛うじて見えた。

「どうやら、終局のようだね」

『ったく、結局とどめを刺したのは、あの坊やの方かい。あんただって何度もとどめを刺すチャンスはあったろうに、どうして譲っちまったんだい?』

呆れたように首を振る銀子さんに対し、何故だろう…私の顔には笑みがこぼれていた。

「ん〜…そうさねぇ、ご祝儀代わりってところかな」

生きている限り平穏なんぞのぞめない、この有象無象の世界にやってきた、哀れな馬鹿にたいするささやかなお祝い…かな。

「とりあえず、単細胞。近くで死なれたら迷惑だから…生き抜けよ?」

凪はボソリと言葉を残すと、銀子と共に満月昇る夜空へと姿をくらますのだった。








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■作者からのメッセージ
つたない文を読んでいただき、真にありがとうございます。
やっと、やっとアテナとの対決の終止符までこぎつけました。
戦闘シーンって本当に難しいですね、動きをつなげるだけでも一苦労でなかなか、次のシーンが浮かばず、右往左往してしまうしまつ。
文章はヨタヨタしてますが、一応書きたいことはかけたと思います。
もし、そんな文章でも楽しんでいただけたなら、幸いです。
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