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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史介入の章その18
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2013/01/20(日) 18:49公開   ID:gUbB9FVlFng
1993年9月 ポパールハイヴ周辺 スワラージ作戦最前線(ハイヴ北部域)

 「MOS、全ての制限を解除」

 「指令受領、これより制限を全て解除します。副回路から主回路への切り替え開始………切り替え終了。制限解除段階は5です」

 まりもの指示を受けて全ての制限を解除したMOSこと量産型戦術機搭載用量子電導脳。

 「気増幅機関を両方とも起動して」

 「承知しました。気増幅機関を起動します」

 先ほどと比べて人間味がました口調でMOSが指令の復唱を行う。制限が解除されたことにより、人工知能レベルが格段にあがったためだ。
 そしてその影響として、とある現象を引き起こすことになる。

 「BETAの動きに変化を検知しました。ハイヴではなく、こちらに向かってくるように進路が変化しています」

 「わかったわ。隆也くんの予想通りね。MOSの制限をすべて解除すればBETAの優先順位が格上げされ、こちらに向かってやつらが殺到する」

 呟きながらBETAの動きを表す戦域マップを見つめるまりも。これから10万近いBETAが自分めがけてやってくるというのに、その表情にはなんの変化もない。
 むしろ望むところとすら考えているようだ。

 「気増幅機関の起動が完了しました。これより通常運転に移行します」

 「それじゃ、気を流してみるわ。気増幅機関の調子を確認して」

 「承知しました」

 気増幅機関は、現代科学では解明されていない気を増幅する機関である。核となる気力増幅鉱石は、特に気と親和性の高い合成金属、立花隆也命名、ヒヒイロカネに、たっぷりと気を注ぎ込んだものを精製したものだ。
 この時点で他の国では作成することが出来ない。不思議機関である。
 さらにこの機関の特徴は一機で10の出力を得ることができるとした場合、二機同時に起動した場合は100の出力を得ることが出来るのも特徴だ。単純に2倍ではなく10×10の出力を得ることが出来る。
 従って今のまりもの気力を100倍にすることが出来る。
 そして100倍の気力を使って強化された機体、先進技術実証機撃震参型は超常の能力を発揮する。
 もっとも人目があるためその全てをひけらかすことはできないのだが、それだけでもBETA戦には十分である。
 例えば今の装甲だと、要塞級の一撃をうけても傷一つ付くことがない。なにせどんな強力な溶解剤であろうと気により強化された装甲には無駄なのだ。
 傷をつけようとする場合、より大きな威力を持つ一撃、この場合は帝国で研究されている大口径艦船搭載用電磁投射砲くらいの威力は必要だ。

 「うん、なかなか良い感じに気が行き渡っているわね。MOS、次は重力偏差型機関の能力を解放。重力フィールドを機体全体まで拡大して」

 「承知しました。重力偏差型機関の能力を解放します。機体に掛かるGの全てを吸収するように、機関駆動重力フィールドを展開します」

 重力偏差型機関の隠れた能力その1。重力素子の偏り、つまり重力を利用した駆動機関である重力偏差型機関は、その触媒となる重力素子を受ける機関駆動重力フィールドをある程度自由な形で展開できるのだ。
 わかりやすく言うと、蒸気機関の薪の投入口の形と大きさを自在にかえることができる。それでなにが起こるかというと、本来なら重力偏差型機関内でしか受けるすることが出来なかった重力素子を、展開したフィールドで受け、そして機関に投入することが出来るようになる。
 その影響で機関の出力向上は無論のこと、フィールド内にかかる重力の偏差を抑えることが出来る。つまり、どんな無茶苦茶な機動を仕様とフィールド内にいるものはGの影響を受けないのだ。
 ここまでの説明で、今の先進技術実証機撃震参型がとんでもない戦略兵器へと変貌を遂げていることがわかるだろう。
 究極の演算能力で衛士のサポートをおこなう量産型戦術機搭載用量子電導脳、衛士の持つ気を何倍にも増幅する気増幅機関、機体にかかるGのすべてをキャンセルしなおかつ永久に動力を生み出し続ける重力偏差型機関。
 気増幅機関については、気の存在を知るものでなければその意味が失われるが、残りの二つについては表に露呈すれば各国があっという間に群がってくるに違いない。

 「準備は良いわね。それじゃMOS、機体とのフィードバックリンクを開始して、同調率は50%でお願い」

 「承知しました。機体とのフィードバックリンクを開始します」

 次の瞬間、まりもの感覚に変化が起こる。自分の手足が、身体の感覚が、広がっていくような不思議な感覚だ。そしてそれが収まったときには、まりもは自分の身体の感覚と先進技術実証機撃震参型が同調していることを感じ取っていた。
 先進技術実証機撃震参型はまりもであり、まりもは先進技術実証機撃震参型であった。おのれの身体を動かすのと同じ感覚どころではなく、自身と先進技術実証機撃震参型が一体化しているのだ。
 フィードバックリンクとは、もともと夕呼が研究していた人の意識を機械、つまり量子電導脳にダウンロードする仕組みを応用したものだ。
 夕呼が研究を進めていた仕組み自体は欠点として、意識が元々収まっている器から全てのデータを抽出してしまうため、人間であれば死んでしまうというものがあった。いやさすがその技術は危なすぎだろう、というわけで隆也が色々と改良を加えた結果出来上がったのが、このフィードバックリンクシステムである。
 その内容は、人の意識と量子電導脳との間で情報の相互共有を行うことで擬似的に人間が量子電導脳の演算能力を得ることが出来る。そして量子電導脳が管理している機械を己の手足として知覚することが出来るという機能だ。

 「準備は十分。あとは盛大にお迎えしてあげるだけね」

 「CPよりフライヤー1へ。あんまり暴れすぎないでくださいね。ハイヴ攻略部隊が反応炉を破壊するまで持てばいいですから」

 「わかってるわよ。これでも後のことは考えているつもりなんだから

 「あいあい、フライヤー1は思慮深いですからね。信用していますよ?」

 「わかればよろしい。まあ、見ていて。BETAどもの度肝を抜いてみせるから」

 「いや、ぜんぜんわかってないじゃないか」

 準備は十分。気力も十分。あとは、前方十数キロまでに近づいてきたBETA先頭集団との接敵を待つばかりだった。



1993年9月 ポパールハイヴ内

 「と言うわけで、BETA増援に対しての遅滞戦闘が始まったわけなんだが、リサー1、一つ提案がある」

 「なんだ、支援者?」

 ソビエト連邦特殊戦術情報部隊はハイヴ内を進み、今は中層の半ばを超えたところだ。

 「情報の収集、うまくいっていないのだろう?」

 「むっ、それは」

 「言っただろう、支援者の情報網からは逃げられないと」

 「ああ、その通りだ。芳しい結果は出ていない。部隊の損耗率が少ないのが救いだな」

 支援者こと隆也の指摘通り、結果は何もでていない。全ての能力者からBETAからは何も読み取れない、との報告が来ている。

 「そこで提案だ。反応炉に行ってみないか?」

 その辺りに散歩でも行かないか、といった軽いのりで投げかけられる言葉。リサー1の頭が一瞬停止する。

 「な、なにをバカな?反応炉と言えば最下層だ。そこまで行くのは想定していない。そもそも武装が持たない」

 「大丈夫だ。そこはこちらがフォローする。指示通りの道順で進んでくれればいい。反応炉であればなにか得る物があるかもしれないぞ」

 「むぅ」

 隆也がこのようなことを持ち出したのは理由がある。それは反応炉が普通のBETAとは違うからだ。実際にオリジナルハイヴのBETAは普通のBETAとは全く別物だった。
 とは言え、少しばかり気になることがある。それは反応炉の気の感じが違うのだ。
 以前オリジナルハイブで感じた反応炉の気は、意識を持つ者特有の感触があったのだが、今回潜り込んでいるポパールハイヴの反応炉にはそれがないようなのだ。
 いってみれば他のBETAと同じような感じしかしないのだ。その辺りも含めて一度確認をしたいのだが、この場に彼らソビエト連邦特殊戦術情報部隊をおいていくのは気が引ける。
 これまで散々フォローして損耗率を極限まで減らしたのだから、最後まで面倒を見ていたい。でも反応炉も気になる。
 そんな隆也の我が儘が今回の提案につながっていた。

 「わかった。反応炉まで行こう。どうせ支援者のフォローがなければここまでこれなかったのだ。どうせなら有用な情報を持ち帰りたい」

 「貴官の英断に感謝する。それでは一番負担の少ない経路を指示する」

 リサー1をはじめとする特殊戦術情報部隊の機体にデータが転送される。

 「よし、各自これから進軍する」

 進路を確認した後に、リサー1から各隊へ向けて指示が出される。

 「「「了解」」」

 支援者の指示に従い進軍する彼ら特殊戦術情報部隊は、唖然とすることになる。
 なぜならば、進路上にいるはずのBETAが悉く殲滅されているからだ。
 大型種はもちろん、小型種まで悉くだ。リサー1は背筋に冷や汗が流れるのを感じながら、指示された通りの道を進む。
 地獄へと続く道を歩む気持ちとはこんな感じだろうか、などと思いながら。
 そしてその頃地上では、BETA戦史上、もっとも無謀な遅滞戦と呼ばれる戦いが始まろうとしていた。


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