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Fate/ZERO―イレギュラーズ― 第26話:絆の太陽と黄金の獣(後編)
作者:蓬莱   2013/02/07(木) 15:25公開   ID:.dsW6wyhJEM
周囲が様々な反応を見せる中、本来の姿に戻ったラインハルトであったが、青色のロボットを片付ける前に、やらねばならない事があった。

「春人さん…その姿は…?」
「出来うることならば見せたくはなかった…それに卿には非礼を詫びねばならん、大河よ」
「え?」

本来の姿に戻ったラインハルトに、大河は目を丸くして驚きを隠せないまま、無意識のうちにラインハルトに問いかけた。
しかし、ラインハルトは大河の質問にはあえて答えず、自身の犯してしまった不徳を、大河に向けて謝った。
これには、大河も、ラインハルトが、どうして、自分に謝るのか分からなかった。
だが、ラインハルトしては、大河に謝らなければならない理由があった。

「私は卿の思っているほど、尊敬すべき人間ではないという事だ。故に、このような見苦しい姿をさらし、卿を失望させてしまった事を詫びねばならん」
「春人さん…」

それは、ラインハルトが、人間として生きることに耐えられず、飢えと渇きを満たすために幻想となった者である事を、大河に隠していた事だった。
ラインハルトしては、本当の姿をさらすことで、曲がりなりにも自分を人間だと言った大河を失望させたくなかった。
だが、大河らの窮地を救うためとはいえ、ラインハルトは、サーヴァントとしての姿をさらし、結果として、大河の期待を裏切ってしまった事に申し訳なく思っていた。
そんなラインハルトに対し、大河は、真の姿をさらしたラインハルトに少しだけ戸惑った後―――

「髪長かったんですね。短い方も格好良かったですけど、そっちも結構似合っていますよ」
「む?」

―――ラインハルトの髪を褒めつつ、いつもと変わらない、明るい笑顔を見せながら微笑んだ。
これには、さすがに予想外のリアクションだったのか、思わず、ラインハルトは、普段は滅多に見せることなどない呆気にとられた表情してしまった。

「見苦しくなんかないですよ、春人さん。何がどうあれ、私やこの子を助けようとしてくれたんですから、そんな良い人がみっとも無い訳ないじゃないですか」
「ふっ、はは、ははは、あははははっはははははははは!!」
「え、いや、私、そんなにおかしい事言いましたか!?」

呆気にとられるラインハルトに対し、大河は自分と凛を助けてくれたことに感謝しながら、失望することなく、それどころか、あまるさえ、ラインハルトが良い人だと言い切った。
自分が良い人?―――永劫の闘争を繰り広げる死者の軍勢を率いる王に対し、もっとも似つかわしくない言葉を送られたラインハルトは、しばし戸惑った後、何ともいえない可笑しさを感じ、思わず盛大に笑い出してしまった。
これには、さすがの大河も、盛大に笑い出したラインハルトに困惑して、ラインハルトが笑う理由が分からず、慌てふためいた。

「ははは…まったく、卿は本当に面白い娘だ。よりにもよって、この私を良い人と評するのは、卿ぐらいであろうな」
「そ、そんなに笑わないでもいいじゃないですかぁ…」
「ふっ…ならばこそ、ここで、卿を失望させるわけにいかんな」

そして、一しきり笑い終わった後、ラインハルトは、じわじわと込みあがってくる笑いを抑えながら、大河の胆力を感心するように笑みを浮べた。
とはいえ、さすがに、そこまで盛大に笑われたのは心外だったのか、大河は頬を膨らましながら、今も笑いを抑えているラインハルトに不満を口にした。
そんな大河の不満を軽く流しながら、ラインハルトは、大河の期待に応えるべく、こちらにパイルバンカーを向けて突っ込んでくる青色のロボットに向き直った。



第26話:絆の太陽と黄金の獣(後編)



「さて、随分と面白い玩具を持ち込んだようだが、余り舐めてもらっては困るな」
『―――』

先ほどラインハルトの胸を貫いた鉄杭が迫ってくる中、ラインハルトは、常人ならば容易く死に追いやる鋼鉄の兵器を玩具と称し、こんな玩具で自分を倒せると思い込んでいる者たちに向けて苦笑した。
青色のロボットはそれに応じることなく、先ほどと同じように、火薬の炸裂する轟音と共に、発射された鉄杭をラインハルトにむけて撃ち込まんとした。
だが、ラインハルトは、戦車の分厚い装甲さえも貫く鉄杭の一撃を―――

「誰かは知らぬが、このような玩具で、私を討ち取れるなど、思い上ってくれるなよ」
『―――!!』

―――手のひらで受け止め、そのまま軽く押し出すと同時に、青色のロボットの右腕もろともパイルバンカーをグシャグシャに粉砕した。
次の瞬間、両腕を失った青色のロボットから、人間からすれば絶叫のように聞こえる機械音が鳴り響き、両腕の付け根の部分から勢いよく火花と何らかの液体が、流血のように飛び散った。

「我が愛は破壊の情。全てを愛そう故に、私は全てを破壊する…」
「―――…!!」
「それこそが―――」

全てを愛しながら、壊す事しかでしかその愛を表現できないという破たんした価値観を呟きながら迫るラインハルトに、青色のロボットは残された最後の武器―――両肩に搭載されたクレイモアでもって抵抗をせんとした。
だが、ラインハルトは、それよりも早く軽やかに跳躍し、青色のロボットの頭を掴んだ。

「―――私の、ラインハルト=トリスタン=オイゲン=ハイドリヒの求めし渇望の果ての境地!!」
「―――!! ―――…―――………」

そして、己の在り方を示すように叫ぶラインハルトは、青色のロボットの頭をめり込ませるようにして抑え込み、そのまま、青色のロボットの装甲をものともせず、ひしゃげ潰した。
このラインハルトの一撃によって、青色のロボットは中枢機能が完全に破壊されたのか、痙攣するように機体を震わせて、モノアイ・センサーの光が消えると同時に、完全に機能を停止した。

「す、すげぇ…まるで相手になっちゃいねぇ」
「おいおい、素手だけで倒しちまったのかのよ…とんでもねぇなアイツ…」

完全に破壊された青色のロボットの残骸を見ながら、近藤は、ラインハルトの圧倒的な力を目の当たりにし、ただ茫然とするしかなかった。
同様に、もはや何が来ても驚く事などないと思っていた伊達も、さすがにこのラインハルトの化け物じみた力に驚きを隠せないでいた。

「いえ、ラインハルトは、全然本気を出しちゃいませんよ…正直、アレで済んで良かったですよ」
「え、本気じゃないって…まさか、これ以上、まだ上があるって事なのか…?」

だが、ラインハルトの真の力を知る香純から見れば、アレでさえラインハルトの全力とは程遠いモノだった。
あくまで、先ほど、青色のロボットを破壊した力は、ラインハルトからすれば、軽く柔肌を撫でる程度の力だけであり、香純からすれば、ラインハルトが全力を出さなかった事に安堵さえしている様子だった。
まさかと思いながら、香純の言葉に嫌なものを感じたウェイバーは、恐る恐る、ラインハルトの実力にまだ上があるのか尋ねた。
そんなウェイバーの問いかけに対し、香純はしばし目を伏せた後―――

「…そもそも、あの人が、本気でやったら、この発電所丸ごと、完全に破壊しちゃってますからね」
「「「「え…!?」」」」

―――何やらとんでもなく不吉な言葉を口にし、その場にいた一同を凍りつかせた。

「す、すごい…これなら、ここにいるゾンビを全員、春人…じゃなくて、ラインハルトさんがいれば倒しちゃうんじゃ…!!」
「いやいやいやいや!! それちょっとたんま!! そんな本気出したら、こっちまで危なくなるような奴を戦わせちゃ駄目だから!!」
「死ぬ!! 間違いなく僕達巻き込まれて死んじゃうからぁ!! 頼むから煽るなぁ!!」

一方、青色のロボットを倒してしまったラインハルトの力に感嘆の言葉を漏らした大河は、もしかしたら、ラインハルトならばこの場にいるグール達さえも蹴散らせるのではないかと聞いてきた。
だが、他の一同としては、さすがに全力を出す=敵味方もろとも全滅と言うとんでもない力を発揮されては堪らなかった。
慌てて、近藤とウェイバーは、必死になって叫びながら、ラインハルトを煽る大河を止めに入った。

「案ずることは無い。これ以上、私が手出しをするような無粋な真似はするつもりはない」
「え、でも、このままじゃ…」

とはいえ、ラインハルトの方もそれは承知しているのか、あくまで、青色ロボットを倒したのは、大河たちを助ける為であり、グール達の相手まではするつもりはなかった。
だが、ラインハルトの言葉に戸惑う大河思うように、グール達の数は一向に減る様子はなく、それこそ、何か手を打たなければならないのも、また、事実だった。
故に、ラインハルトは―――

「あくまで、今宵の主役は、ライダー…すなわち、卿だ。さぁ、とくとその輝きを存分に見せてもらおう」

―――バーサーカーとの戦いに挑む資格を見定めるという意味も込めて、魔力を高めるライダーへと全てを委ねることにした。


一方、魔力を高めるライダーを援護すべく、真島たちは、一向に減る気配のないグールの軍勢を蹴散らし続けていた。

「何や期待されとるようやで、家康? こらぁ、一発ごっついのぶちかましてやろうやんけ!!」
「しかし、ラインハルトか…いや、まさかな…」

ラインハルトの言葉を聞いた真島が、襲いかかってくるグールを倒しながら、魔力を高めるライダーに軽口を叩くように檄を飛ばした。
また、それとは別に、キャスターの方は、ラインハルトと言う名に聞き覚えがあるのか、真島と同じようにグール達を蹴散らしながら、何かしら思案し始めていた。

「んで、どうなんや、家康!! 正直、もう、こないな歯ごたえ無いような雑魚相手すんのも飽きてきたんやけど…なぁ!!」
「やれやれ…とはいえ、これ以上戦いを引き延ばすのは得策ではありませんね」
「望むならば、ここに集結した全てのグールを一瞬で屠れるような対軍或いは対城宝具が欲しいところですが…」

そんな風にある程度の余裕を持って、奮戦する真島達であったが、一向に打開できない状況にうんざりし始めていた。
ライダーに呼びかけつつ、グールを殴り燃やす真島は、疲労こそないモノの、際限なく表れる雑魚を相手にし続ける事に苦々しくぼやいた。
そんな真島の言葉に苦笑する宗茂であったが、確かに、真島の言い分にも一理あった。
このまま、宗茂らが、数の暴力で攻め立てるグール達と戦い続けていても、いずれ、現界を維持できるまでの魔力を使い果たしかねない状況に追い込まれるのは目に見えていた。
その為、ァの言うように、この状況を打開するには、軍勢規模で現れるグール達を一撃で根こそぎ葬り去る事のできる対城宝具か、それに匹敵するほど大技を、グール達に叩き込むしかなかった。
そして、今―――

「すまない、皆…随分と待たせてしまった。だが、準備は整った!!」
「やっとかいな。ほなら、思う存分、ここに居る連中に見せつけたれや!! お前の全力全開ちゅうやつをな!!」

―――ライダーは、極限まで高めた魔力によるものなのか、身体を金色に輝かせながら、全ての準備が整った事を、自分を援護してくれた真島たちを激励するように叫んだ。
ここにきて、ようやく、ライダーの準備が整った事を知った真島は軽く文句を呟きながらも、ライダーの全力を、いずれ闘う事になる自分にも見せつけろと言わんばかりの笑みを浮べて、大技を放たんとするライダーに檄を飛ばした。

「あぁ、このワシを支えてくれた皆の、全ての絆をこの奥義に込めて―――!!」
「「「―――!!」」」

そんな真島の檄に応えるように、ライダーが大きく構えると同時に、ライダーの中で高められていた魔力が迸る輝きと共に地面に流れて行った。
やがて、ライダーから放出された魔力は、戸惑うグール達の足元を灰にしつつ、次々と幾重にも別れながら地面を走りながら、激しさを増す金色の輝きと共にある文様を描いた。

「これは…光が、紋が、どんどん広がっていく!!」
「見て、おに…お姉さん!! 光を浴びたグールがどんどん灰になってる…」

その紋とは、日本人にとってなじみの深い家紋―――徳川家の象徴である三つ葵の紋だった。
ここにきて、改めて、ライダーの力を目の当たりにしてたウェイバーは、地面に描かれたこの葵の紋が、さらに輝きを増す光と共に、この地下空間全体を照らすように、徐々に巨大化している光景に目を奪われていた。
ウェイバーと同様に、さりげなく、ウェイバーの性別を間違えた凛も、この葵の紋から迸る光に当てられたグール達の身体が、徐々に崩れ始めている事に気付いた。

「曙光か…なるほど、卿が掲げし絆もまた、彼らと同じなのだな」

そして、ラインハルトも、葵の紋からあふれ出る輝きを見ながら何かを納得したように笑みを浮べ、かつて、第六天の世を終わらせた者たちの姿を思い出していた。

「爺様!! どうやら、ヤバい事になりそうじゃ!!」
「分かっている!! ここは…」

一方、点蔵らと闘っていた黒マスクの襲撃者と忍び装束の襲撃者は状況が完全に自分たちにとって不味い方向に向かっている事を感じ取っていた。
これまでは、あくまで、一部の戦力をグール達で足止めをしていたからこそ互角に闘えていたが、グール達がいなくなれば、一斉攻撃を仕掛けられるのは目に見えていた。
よって、互いに相談し合う黒マスクの襲撃者と忍び装束の襲撃者に残された選択肢はただ一つ―――

「「…逃げるんじゃよぉ(のう)!!」」
「あ、ちょ、ここで、逃げるで御座るか…!?」
「くっ…手掛かりが…!!」

―――脇目も振らずに逃走する以外になかった。
先ほどまでの強気な態度から一転して、一目散に逃げ出してしまった二人組の襲撃者に虚を突かれたのか、点蔵と綺礼が慌てて、後を追いかけようとした時には、二人組の襲撃者は既にこの地下空間から姿を消していた。

「すまぬ…力足りずにお主達を救えなかったワシらを許してほしいとは言わない」
「…」

そして、光り輝く葵の紋が地下空間の余すことなく広がろうとする最中、ライダーは、灰となって崩れゆくグール達にむかって悲しい目で見つめながら語りかけた。
グールに言葉など通じる筈もないのは分かっていたが、それでも、ライダーは、自分たちが救えなかった者たちに語りかけられずにはいられなかった。

「だから、ワシはここに誓う!! この犠牲を無駄にはしないと!! そして、この聖杯戦争を、その陰で暗躍する闇を、ワシらの、“絆”の力で終わらせると!!」
「あっ…」

だから、安心して逝ってくれ!!―――そう心の中で手向けの言葉を送ったライダーは、決意を新たに、この聖杯戦争を戦っていくと叫ぶように誓った。
とその時、事の成り行きを見ていたキャスターは、ライダーのもっとも近くにいた一体のグールを見て、思わず声を失った。
ただの見間違いと言えば、それまでもかしれないが、キャスターには、そのグールが、まるで、グールとなった自分たちを解放してくれるライダーに感謝するように微笑んでいる風に見えた。

「淡く微笑め、東の照―――!!」

そして、ライダーが言葉を紡ぐ中で、地下空間の地面全体を覆い尽くすほどに巨大で、目が眩むほどの眩い金色の輝きを放つ葵の紋が描かれた瞬間―――

「―――“葵の極み”!!」

―――自身の奥義“葵の極み”を解き放った。
その瞬間、爆発するかのように葵の紋から放たれた閃光が、まるで光り輝く突風のように地下空間にいたグール達を一気に舞い上げ、そのまま、地下空間の天井を突き破った。
さらに、疾走する光りは、地下空間を突き抜けた後、次々に各階層を突き破りながら、発電所内部を駆け巡り、発電所のありとあらゆる場所を光の奔流によって埋め尽くされていった。
やがて、冬木市からでも見えるほど、巨大な光の柱が発電所から飛び出すのが見える頃、光の奔流に飲み込まれた、地下空間を含め発電所内にいた全てのグール達は、その身を灰へと変えていった
そして、天を照らさんばかりの光が収まった頃、かつて、グールだった灰は、柔らかな夜風と共に、星のきらめく夜空へと還っていった。


その後、地下空間の地面に描かれていた葵の紋が淡い輝きをと共に消失すると、先ほどまで戦いがあったとは思えないほど、辺りはまた、静けさを取り戻していた。

「グールは…全部やっつけた…のか…」
「ふぅ〜どうにか生き残れたみてぇだな…俺たち…」

ようやく目を開けられるようになったウェイバーは、恐る恐る周囲を見渡すが、そこには、地下空間に溢れんほどいたグール達の姿はなかった。
同じく、グール達がいなくなった事を確認した伊達は、ようやく、自分たちは生き残れたのだと実感しながら、やれやれと言った表情で深く息を漏らした。

「何ちゅう眩しいもん、見せつけてくれるんや、家康…こらぁ、ゾクゾクしてきたでぇ…!!」
「まったく…お前は何があっても、ぶれない男だなぁ…」

一方、真島は、ライダーの見せつけた奥義を目の当たりにし、興奮冷めあらぬ様子で笑みを浮べ、いずれ来るであろうライダーとの闘いに期待を胸ふくらませていた。
そんな真島の姿に呆れるように呟くキャスターであったが、それでも、あのライダーが放った光から、黄昏に近い輝きを感じた為なのか、無意識のうちに表情に笑みを浮べていた。

「見事だ、ライダー。見届けさせてもらったぞ、卿の“絆”を」
「ありがとう…ラインハルト殿だったか…なぜ、お主がここに…?」

そんな中、ライダーの放った奥義を見届けたラインハルトは、称賛の言葉を送りながら、ライダーの元に立った。
それに対し、ライダーは礼こそ返したものの、相手がバーサーカーの呼び出したサーヴァントという事もあり、やや警戒した様子で、ラインハルトに対し、ここにいる理由を尋ねた。

「まぁ、積もる話もあるかもしれんが…どうやら、事態が事態である以上、皆に説明する必要が有る故、少々場所を変えるとしよう」
「お、おい、ちょっと待てよ!! 何を勝手な事言って…!!」

だが、ラインハルトはあえて、ライダーの質問には答えず、この発電所内での出来事を含めた今後の展開を視野に入れた上で、予定通り、六陣営会談を執り行う場所へと向かう事を決定した。
何時の間に、ラインハルトに主導権を握られている事に気付いたウェイバーが、ラインハルトに対し、慌てて異を唱えた。

「拒否は認めん。拒否するとあれば、少々手荒な手段を使う事になるが?」
「諦めろ、小僧。その男が私の思っている通りの男であるなら、私の限りでは、この男は一度言った事は絶対に曲げん」
「まぁ、折角、招待してくれとんや。ここは、この色男の兄ちゃんの誘いに、素直に乗ったろうやないか」
「ははは…少々強引ではあるが、まぁ、これも絆を結ぶためだと思っていこう、ますたぁ」
「うぅ…結局、行くしかないのかよぉ…」

だが、ラインハルトは、ウェイバーの意見を即座に却下し、脅しとも取れるような言葉を口にした。
これには思わず、身体を竦めてしまったウェイバーに対し、ラインハルトの提案に応じることにしたキャスターと真島、ライダーはそれぞれの言葉で、ウェイバーに諦めろと言ってきた。
ここには、僕の味方はいないのかよ…―――そう心中で嘆いたウェイバーは、思わぬ四面楚歌的な展開に、幅涙を流すしかなかった。

「卿らもそれで構わんな?」
「私はもちろん大丈夫です、ラインハルトさん!!」
「ここまで来たら、引き返せるわけねねぇよな。俺も付き合うぜ」
「ま、もう、警察に対応できる事態の範囲を超えていますがね…もちろん、俺も行きますけど」
「本当にいいのかよ…」
「あの人は、自分の決定したことは曲げませんからね。まぁ、ここに残るよりかは安全だと思いますけど」

次に、ラインハルトは、本来ならば、この聖杯戦争とは無関係である大河たちも招くつもりだったのか、確認するように尋ねた。
だが、ここまできたら、一蓮托生という訳なのか大河、伊達、大輔の三人も一緒に招かれることにした。
とはいえ、雁夜としては、一般人である大河らを巻き込むことに抵抗があるようだが、香純の言うように、先ほどの襲撃者の事を考えれば、ここに残るよりかは幾分か安全であるはずだった。

「んで、俺たちはどうするんだ、凛ちゃん?」
「…当然、行くに決まっているわよ。私だって、遠坂の娘なんだから!!」
『綺礼、俺たちは…聞くまでもないよな』
「あぁ、こうなっては仕方あるまい」

そして、自分たちはどうするのか尋ねる近藤に対し、凛もややその場の勢いに流された感はあるものの、雁夜に用があるため、凛達もラインハルトの招きに応じることにした。
さらに、元々、ラインハルトとの邂逅を望んでいた綺礼も、建前上は、凛達をほったらかしできないからという事にして、アサシンと共にラインハルトに招かれることにした。

「ふむ…ならば、皆、客人として、我が城に招くとしよう―――“イザーク”」
『分かりました、父様』

ひとまず、この場にいる一同全員がラインハルトの招きに応じたのを確認したラインハルトは、六陣営会談の行われる城へと皆を招く為に、ここに“城”を呼び出すことにした。
そして、ラインハルトが、ここには居ない誰かに声をかけると同時に、ラインハルトの声に応じるように何処からともなく、淡々と抑揚のない口調で返答する少年の声が聞こえてきた。
次の瞬間、ライダーが地下空間に開けた穴から見える夜空の中心に、まるでガラスがひび割れるかのように亀裂が入り、そこから空間を押し退けながら、途轍もなく巨大な何かが現れようとしていた。

『―――その男は墓に住み、あらゆる者も、あらゆる鎖も、あらゆる総てを持ってしても繋ぎ止めることが出来ない』

その時、膨大な魔力を感知した時臣は、何事か起こったのかと、その魔力の発生源と思し場所―――すでに亀裂が走り始めた、未遠川上流付近の夜空を見上げた。
それと同時に、時臣の耳に、虚ろな声をした少年の声が、亀裂の走った夜空から聞こえてきた。

『―――彼は縛鎖を千切り、枷を壊し、狂い泣き叫ぶ墓の主―――この世のありとあらゆるモノ総て、彼を抑える力を持たない』

ランサーも、ケイネスとソラウと共に、時臣と同じようにこの夜空から溢れてくる魔力に気付き、時臣と同じように、その少年の声が聞こえていた。
以前、蓮からある程度の事情を知らされていたため、それが何であるのか、何が起こるのかをすぐに察した。

『―――故に、神は問われた。貴様は何者か?』

それは、セイバーと第一天の料理対決(もといメドローア製造合戦)によって半壊したアインツベルン城から、アーチャー達と共にその光景を見ていた銀時らも例外ではなかった。
やがて、何かを覚悟した表情を浮かべる銀時らが見届ける中で、次々と夜空に走る亀裂より、ソレは現れた。

『―――愚問なり。無知蒙昧。知らぬならば答えよう―――我が名はレギオン』

現れたソレを見た冬木市に住む人間は、何もない夜空から現れたソレを目撃するとともに、その現実離れした光景―――夜空に浮かぶ髑髏で作られた巨大な城という光景に驚愕した。

『Briah(創造)―――』

この夜空より降り注ぐ声の主である少年の名は、イザーク・アイン・ゾーネンキント。
“修羅道・至高天”を司るラインハルトの息子にして、ラインハルトの魔城の心臓であるイザークは、今、ここに、その役目を果たさんとしていた。
すなわち―――

『―――Gladsheimr-Gullinkambi funfte Weltall(至高天・黄金冠す第五宇宙)』

―――六陣営会談の舞台となるヴェヴェルスブルク城を用意するとともに、冬木市にいる全てのマスターとサーヴァントに六陣営会談の開始を告げる狼煙としての役目を!!



その頃、何とか、“葵の極み”に吹き飛ばされる前に、間一髪、発電所から逃げ出す事の出来た黒マスクの襲撃者と忍び装束の襲撃者も、その光景を目撃していた。

「こりゃあ、また、随分、ド派手なモンやってくれたもんじゃのう、爺様…」
「ふん…これだけ目立つマネしでかしたんじゃ、聖堂教会の連中も、今頃、大慌てじゃろうて」

これには、黒マスクの襲撃者も、秘匿なんぞお構いなしの豪快なやり方に、驚きを通り越して呆れ交じりの感心さえしていた。
そして、やれやれと言った様子で語る忍び装束の襲撃者の言う通り、本来、秘匿を旨とすべき聖杯戦争で、これほど多くの衆目に目のつく真似しでかしたのだ。
当然のことながら、監督役である聖堂教会も、人での少ない中、この事態に対し、早急に対応しなければならなくなるだろう。
この発電所での一件に手が回らないほどに―――。

『こちらでも、アレも確認した。どうやら、思わぬ邪魔が入ったようだな』
「どうも、バーサーカーの呼び出したサーヴァントが混じっていたようじゃ。おかげで、始末し損ねてしまったのう。後、武装グールの方も、あの様子じゃ全滅じゃよ」
『そうか。とりあえず、処分する手間が省けただけでも良しとすべきか』

とここで、忍び装束の襲撃者が、所持していた無線機から、彼らの主―――首領の連絡が入ってきた。
首領の方でも、夜空に浮かぶあの城を確認したらしく、それがちょうど発電所の真上という事もあり、首領は、刺客としてはなった襲撃者者たちの方にも、想定外の事態が起こった事をすぐに察した。
とりあえず、忍び装束の男は、簡単に現状報告をしつつ、結果として任務に失敗したことを伝えた。
だが、首領は、襲撃者二人が任務を失敗したにも拘らず、さほど気にすることでもないという口調で、処分に困っていたお歳暮―――武装グールを処理できただけでも良しというように軽く流した。

「武装グールはともかくのう、施設の方は充分な痛手じゃと思うがのう」
『構わん。あの施設は、既に役目を果たした。そう―――』

思わぬ肩透かしを喰らった忍び装束の襲撃者は、首領に対し、厄介払いできた武装グールはともかく、発電所を失った事については、大きな問題ではないかと疑問視した。
だが、首領は、重要施設を嗅ぎつけられたにも関わらず、特に気にするそぶりも見せず、大丈夫だ、問題ないという口調でキッパリと言い切った。
そして、首領は、あの施設が充分に役目を果たしたことを伝えながら―――

「―――敵の目を欺く囮という役目をな」

―――自身の背後で稼働する、発電所に有ったモノを、さらに改良を加え、小型化と高性能化した新型魔力回収装置に目を向けた。
そう、実は、ウェイバーが敵の重要施設だと思い込んでいた、もっとも濃い魔力の残留痕をしめした場所―――あの発電所の廃墟こそが、敵の目を冬木市の各地に点在する新型魔力回収装置の置かれた施設から逸らすための囮だったのだ。
元々、あの発電所にある魔力回収装置は、第三次聖杯戦争の最中に開発された旧式であり、その後、新型魔力回収装置が新たに開発されたことで、既に施設そのものが無用の長物となっていた。
だが、首領は、不要となった発電所そのものを、恰も重要施設であるように見せかける事で、本命の施設から、敵の目をそちらに逸らすための舞台装置―――ミスディレクションとして活用したのだ。
結果として、ウェイバーらは、魔力の残留痕が濃く出ている場所こそが敵の重要施設であり、それ以外は目をくらますための囮と思い込んでいたため、想定外の事態を除けば、ほぼ首領の思惑通りの展開に踊らされてしまったのだ。

「さて…この局面、どう動くか。しばし、我らは盤上の外より傍観するとしよう」

そして、再び、夜空に浮かぶ魔城へと目を移した首領はそう呟きながら、何も知らない駒共が、どう足掻くのか、事の成り行きを見定めることにした。









オマケという名の流行に乗った嘘予告

混沌を極めた第4次聖杯戦争が終結してから、8年後―――

ニート(体がマリィで、中身はニート。以降メリィと呼称)「ふぅ…あぁ、暇だぞ」
凛「だったら、働けや、この穀潰し変質者!!」

―――約一名は、今日も、マスターに叱られながら、ニートとして日々をだらだら過ごしていた!!


舞台は東京―――仕事を求めて、近藤と点蔵(無理やり巻き添え)と共に上京してきたメリィの前に現れた謎の男。

高木社長「ティンときた!!」
メリィ「む?」

その二人の邂逅こそ、後に、アイドル業界と各異世界に、多大な迷惑と共に旋風を巻き起こす、アイドル兼プロデューサーな超絶変質者“メリィ・クラフト”誕生の瞬間だった。


弱小アイドル事務所“765プロ”の社長である高木にスカウトされたメリィ。
そこで、メリィに与えられた仕事は、自身のアイドル活動と共に、765プロの個性豊かなアイドルたちを支えるプロデューサーとなる事だった!!

メリィ「お初にお目にかかる、先達方。私の名は、メリィ・クラフト。新人アイドル兼、君たちのプロデューサーを務めさせていただく故、以後お見知りおきを…」
その場にいた一同(((う、ウザい!! こ、心の底からうぜぇ!!)))

そんな様々な不安とウザさを抱えながら始まるメリィによるプロデュース!!!
だが、このコズミック変質者が、当たり前のプロデュースなんてするはずなかった!!

星井美希「ねぇ、プロデューサー、ここって、何処なの?」
メリィ「ふむ、確か、“リィンバウム”だったか…まぁ、分かりやすく言えば、いわゆる異世界というものだろうか」
天海春香「へぇ、異世界なんで…えええぇええええええ!!」

異世界に…!!

政宗「Let,s Party!! さぁ、野郎ども、気合入れていくぜ!!」
伊達軍兵士一同「「「Yeah―――!!」」」
萩原雪歩「ひっ、あ、はぅ…」
菊池真「あぁ!! ちょっと、雪歩、気絶しちゃだめだから!!」

戦国時代に…!!

シェリル&ランカ「「私たちの歌を聞けぇえええええ!!」」
如月千早「これが、この世界のトップアイドルの実力…!!」
水瀬伊織「へぇ、“銀河の妖精”と“超時空シンデレラ”の肩書は伊達じゃないって事ね」

宇宙に…!!

依頼とあらば、どこでも、いつでも、場所、時間、次元を超えて即参上!!
目指せ、前人未到の多次元トップアイドル!!
今ここに、アイドルでプロデューサーな変質者による、誰も体験したことのない物語が、幕を開ける…!!

THE iDOL M@STER―プロジェクトAA−、始動…!!

そして、舞台は―――

メリィ「あぁ、ならば、今宵のグランギニョルを始めようか!!」

―――誰も経験したことのない至上最高の未知の領域へ!!


ごめん…悪乗りしすぎました(土下座


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