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ネギま!―剣製の凱歌― 第二章-第24話 京都決戦・壱 千鬼万来
作者:佐藤C   2013/01/26(土) 17:59公開   ID:fazF0sJTcF.



 目の前の惨状は、間違いなく現実だ。

 ここで混乱して思考を放棄しない、
 もしくは考えなしに飛び出さない程度には、彼―――ネギは冷静さを保っていた。

 それはエヴァンジェリンとの対戦、そしてここ数日の出来事により、
 嫌でも場数を踏まされてきた成果と言えるのかもしれないが………。

 場数を踏んだ程度の事で、この状況を打破できる筈もない。


「あ゛…かはっ……っ!!」

 壁に叩きつけられた刹那は、痛みを堪えるようにしてそのまま壁にもたれかかった。
 女子中学生に振るわれるには強大過ぎたその力は、彼女が背中から激突した壁に容易く亀裂を生じさせる。
 空気を強引に吐き出させられ、刹那の肺は悲鳴を上げて酸素を求めた。

「……せ…刹那さ………っ!」

 そんな刹那を、力なく床に体を横たえた明日菜が、何とか上体を起こして様子を窺おうとしている。


 ――その光景の前で…ネギは絶句して、杖を構えたまま棒立ちになっていた。


 否。正しく言えば、彼には立っている事しかできなかった。

 明日菜と木乃香が待っている筈の風呂場の戸を開け放つと、そこには倒れた明日菜の姿。
 慌てて彼女に駆け寄ろうとした時には、…気づいた時には刹那が吹き飛ばされていた。
 ネギに出来たのは、ただ……

 この惨状を引き起こした人物を、睨みつける事だけだった。



『………白い髪の少年に気をつけなさい。格の違う相手だ……。』


 眼前には。宙に浮かんでネギじぶんを見下ろす―――


(長さんの言ってた、白い髪の少年………!!)


 白髪の少年――フェイトはネギとほとんど同じ背丈をしている。
 だが浮遊術を操り宙に静止しているフェイトが、どうしてもネギを見下ろす形になる。
 それはそのまま両者の、覆しようのない力の差を表していた。

 乾いた喉に、ネギはごくりと唾を飲み込む。
 ぐっと口を強く結び、彼はフェイトと直接対峙した。


「こ、このかさんをどこにやったんですか……?」

「………。」

 相手は答えを返さない。
 ピリピリとした重い静寂が充満するその場に、直後に聞こえたのは…苦悶の声。

「う…ううっ……ごめんネギ……このか……攫われちゃった………」
「…けほっ…!か……っせ、先生…!」


 ……杖を握る力が強くなった事を、ネギは自覚しなかった。
 気づけば口が、勝手に動いた。


「…みんなを石にして…刹那さんを殴って…、このかさんを攫って……アスナさんまで……っ!!
 先生として、友達として…! 僕は……許さないぞ!!!」


 目の前の惨状は、間違いなく現実だ。
 自分よりよほど強く頼もしい、二人の少女を倒した眼前の少年。
 そんな相手にたった一人で、ネギに何ができるというのか。

 …だが。
 だからといって。
 ここで啖呵を切らない選択肢など、彼の胸には存在しない――――!!


「…それで? 許さなくてどうするんだいネギ・スプリングフィールド。僕を倒すのかい?」

「――…ッ!!」

 無機質な瞳に貫かれ、ネギは言葉を失った。

 …解っている。腹が立つくらいに正鵠を射たその指摘。実力ちからの差は歴然だ。
 ネギじぶんフェイトかれを倒すのは、決して容易な事ではない。
 どこまでも冷たい双眸は、燃え上がるネギの決意を容赦なく粉砕した。


「やめておいたほうがいい。近衛詠春も衛宮士郎も既に石になっている。君達に勝ち目はないよ」

「なっ…」


 ―――今。いま彼は、何と言った――――


「今の君には無理だ」

 フェイトの真下に広がる浴室の水溜まり。
 そこから大量の水が現れ、水流は渦を巻いて上昇し彼の体を覆い始める。

「あっ!待っ……!!」


 ――トプンッ………


 戦う事すらなく…戦う事すらさせてもらえず。
 あれだけ息巻いていた癖に、『敵』に容易く逃げられる。

「く……………!」

 唇を噛むネギと、傍で倒れる二人の少女だけを残して。
 フェイトの残した水音が、その場に虚しく木霊した。

 ……目の前の惨状は、間違いなく現実だ。
 故に。
 決意で敵は、倒せない。









     第24話 京都決戦・壱 千鬼万来









「これでお嬢様が手に入った。後はあの場所まで行けばウチらの勝ちや」

 そこは本山の山中に流れる小川、その河原。
 そのせせらぎの中に混じって、一人の女性の声が聞こえた。

 今回の事件…反逆の首謀者、天ヶ崎千草。
 その傍に控えるフェイトと、千草の式神・猿鬼が一体。
 そして……手足を縛られ、口を塞がれた状態で猿鬼に抱えられる………木乃香がいた。

「ん゛――、ん゛――…!」

「安心しなはれお嬢様、何もひどい事はしまへんから」

 目に涙を浮かべて手足をバタつかせる木乃香に対し、落ち着かせるように千草が囁く。
 そして木乃香から離れると、彼女は体の向きを変えてバサリと着物を翻した。

「ほな、『祭壇』に向かいますえ」

「待てっ!!」


 ――バシャッ!


「そこまでだ!!お嬢様を放せ!!」

「……またアンタらか」

 千草は呆れた声で振り返る。
 そこには、彼女達を睨みつける……ネギ、明日菜、刹那の三人が、川の浅瀬に踏み込んで駆けつけていた。

「"気"の跡を辿れば、追って来るのは簡単やろけどな?
 …しつこい人は嫌われるて何度言えばわかるんや」

「余裕でいられるのも今のうちだ天ヶ崎千草!
 明日にはお前を捕えに応援が来るぞ、もはや諦めて投降するがいい!!」

「ふふん、応援がナンボのもんや。あの場所に行きさえすれば……。
 …まあええ。そんなに痛い目に遭いたい言うならお嬢様の力の一端を見したるわ。
 本山でガタガタ震えとったら良かったと後悔するで」

「…!? なにを…っ」

 余裕を崩さないどころか勝ちを確信してすらいる千草の態度に、刹那が困惑する。
 そんな彼女を尻目にして、千草は一枚の札を指で弾いた。

「お嬢様、失礼を…」

 ――ぱしっ


「ん゛っ…!」

「「「!!」」」

 弾かれ飛んだ札の行き着く先は――木乃香の胸元。
 札が張り付くと、式神に抱えられた少女の体が輝きだす……!

「お嬢様っ!?」

 それは供物。そして贄。
 或いはこれから喚び出す者達への、報酬であり糧となる。
 近衛木乃香の魔力を搾取し、吸収し、捧げてたてまつる。
 そのためのしゅと言霊が―――


「――オン。キリ、キリ。ヴァジャラ。ウーンハッタ……!」


 千草の声が、周囲の空気に染み渡る。
 彼女を中心として川面に梵字が浮かび上がり、そこから立ち上る無数の光が辺り一面を照らし出す……!!

「貴様!!何を…」

《…むぅ?》

 刹那の言葉は、そんな間の抜けた声に遮られる。
 "彼"は……光と共に、川の中からその巨体を現した。


《…ふーやれやれ。喚び出しかいな》

「なっ………!!」


 水面から射す光は、一つではない。
 …すなわち。
 現れた者達も、一人などでは決してなかった。


 ―――山中の河原を中心として、光と共に無数の異形が出現する。

 狐の面を持つ者、鴉の翼を持つ者、角を持つ者、牙を剥く者、一ツ目の者。
 刀剣、大剣、槍、棍棒、幾種類の得物をそれぞれ携え、覗く牙と瞳に妖しい光を湛えている。

 それはまさしく、日本の伝承『百鬼夜行』。
 …但し、この場に現れた人外は百体などでは到底済まない。

 それは千万無量の大群にして、同時に千軍万馬の大軍。千姿万態のもののふ達……!!


「あんたらは、千体の鬼どもとでも遊んどき」


 千に及ぶ鬼の軍勢が召喚され、河原と周囲の山々に群れと列とを形成する。
 ネギ達三人は為す術もなく、蠢く大軍に周囲を取り囲まれていた。

「ちょっとちょっと、こんなのアリなの―――!?」
「やろー、このか姉さんの魔力を使って手当たり次第に召喚しやがったな…!!」
「な、何体いるのか見当もつかないよ……!」

「まだガキやし、殺さんよーにだけ・・は言っとくわ。
 五体満足でいたかったらお嬢様を取り返すなんて考えんと、追って来んほうが身の為やで」


「ほなな、ガキども」

「ま、待て…!!」

《…グフフ。アカンで嬢ちゃん》

 この場から去る千草達を、三人は引き留める事も追う事もできなかった。
 千に及ぶ周囲の鬼が、それを決して許さない。
 刹那は歯痒い思いに身を焦がした。

「くうっ………!」

《しかし何や、久々にこんな大所帯で喚ばれた思うたら……》
《相手はおぼこい嬢ちゃんに坊ちゃんかいな》
《悪いな嬢ちゃん達。「殺すな」言われとるけど、喚ばれたからには手加減はでけへんのや》
《恨まんといてなー》

 世間一般的な「恐ろしい」鬼のイメージと違い、この鬼達は妙に飄々として気さくに見える。
 ……だが今……彼らは確実に。
 武器を構えて、ネギ達との距離を詰め始めていた。


「せ、刹那さん………こ、こんなの流石に私、ムリ………!!」

 刹那はハッとする。
 ガチガチと歯を鳴らして、縋るように刹那じぶんを見て―――明日菜が体を震わせていた。


(そうだ、どうも常人離れしているから忘れていたけど…明日菜さんは一般人なんだ……!!)

(ヤベエな、姐さんがこんな状態じゃすぐにやられちまう!!)


「…兄貴、時間が欲しい!障壁を!!」

「OK!ラス・テル・マ・スキル・マギステル!
 逆巻け春の嵐、我らに風の加護を! 『風花旋風フランス・パリエース風障壁ウェンティ・ウェルテンティス』!!」

《…む?》


 ―――ビュオッ――ドッパァァアアン!!!


《おわぁぁぁあああああああっ!?》


 大気の渦がネギの周囲に集束し、小川の水を吹き飛ばし、彼らを守るように竜巻が発生する。
 弾け飛ぶ水と暴風の衝撃波に、鬼達は悲鳴を上げて後退した。


《オヤビーン!今ので河童が何体かやられちまっただーー!》
《…退場早いわー》




 ――――ゴォォォオオオオオオオオオオオオオオ…………!!!


「…こ、これって!?」

 風の流れが竜巻の外と内とを遮断する。
 鬼の姿が見えなくなると、明日菜は僅かに落ち着きを取り戻した。

「風の障壁です。ただし二、三分しか保ちません!」
「よし、手短に作戦立てようぜ!どうする…コイツはかなりやばい状況だ!!」

 顎に手を当てて俯く刹那は、躊躇いなくその案を切り出した。

「……『二手にわかれる』、これしかありません。
 私が鬼を引きつけます。その間にお二人はお嬢様を追ってください」

「ええっ!?」
「そ、そんな刹那さん!!」
「任せてください。ああいう化け物の相手をするのが神鳴流の仕事ですから」

 「だから大丈夫、心配しないでください」と、ネギと明日菜を諭すように刹那は笑う。
 しかし……。

 「はいわかりました」と簡単に頷けるほど、二人にとって刹那の存在は軽くなかった。


「…じゃ…じゃあ私も残る―――!!」

「「ええぇっ!?」」


 何度も言うが、明日菜はただの中学生だ。
 いきなり化け物どもに囲まれて平静を保つことは出来ないし、それらと戦うなど想像する事すらできない。
 ……けれど。そんな戦場に友達を置いていく事も、彼女には到底出来なかった。

「そ、そんな、アスナさん!」

「刹那さんをこんなところに一人で残して行けないよっ!!」


 明日菜は涙目で、今にも泣き出しそうな声で叫ぶ。
 だがそれでも、彼女は刹那を放っておけない。
 そんな意固地を張ろうとする明日菜の我が侭に……カモだけが、神妙な顔をして頷いた。


 ――ボッ―――


「……いや、案外イイかもしれねえ!
 どうやら姐さんのハリセンは召喚された化け物を送り還しちまう代物だ。
 あの鬼達を相手にするには最適だぜ!?」

「た、確かに…。ですが…」

「兄貴、姐さんへの魔力供給を防御とかの最低限に節約して何分保つ?」


 ――ヒュオオオオオ―――


「術式が難しいけど……十分、いや十五分は頑張れるよ!」

「十五分か……いつもの10倍、900秒だしな。短いが仕方ねえ……ん?
 …兄貴、風の音がおかしくねえか?」

「え?まだ障壁は保つはずだけど……」


 ―――ババババババッ………!


「「「!?」」」

 上空…三人の頭上から、布が風になびく音が聞こえる。
 そしてその音は――間違いなく彼らに向けて接近し、落下していた。

「な、何!?」
「敵!?」
「まさか!!この竜巻の中を吹き飛ばされずに降りてくるなんて―――」

 揃って顔を上げた三人と一匹のうち、最も視力の良い明日菜が最初に気づいた。

「――あっ…」
「え……!?」


 ――――ズドォンン!!!


「わっ…!!」
「くっ!」

 "ソレ"が落下した衝撃で飛び散る礫と土埃に、三人は目を瞑る。
 煙が晴れるとその向こうに、落下物の正体が見てとれた。

 落下してきたのは巨大な岩。…いや、正確には。
 岩塊のような斧剣に掴まり、それを重りにして竜巻を突破してきた……二人の男。


「ま……まさか……!!」


 一人は黒いコートを纏い、一人は野太刀を手に握る。
 それは本来、ここにいる筈のない者達だった。


「よう」
「御無事ですか?皆さん」



 ―――― 『近衛詠春も衛宮士郎も既に石になっている。君達に勝ち目はないよ』。



「……シ、シロウ……!!」
「長………!!」

 ネギと刹那は信じられないといった表情で、二人の顔を凝視した。




 ◇◇◇◇◇



 士郎は詠春の部屋を出た後、風呂に入るため自室に着替えを取りに行き…そこでフェイトに襲撃された。
 直撃は避けたものの、彼は左腕に『石の息吹』を受けてしまう。
 それを確認するとフェイトは、すぐにその場を去っていった。

 恐るべきはその侵食力。
 掠っただけに関わらず、抵抗レジストを受け付けずに進行していく士郎の石化。
 …だが彼には、その呪いを棄却する術が存在した。

 あらゆる魔術を初期化する裏切りと否定の剣、『破戒すべき全ての符ルールブレイカー』。
 士郎はその、ジグザグに折れ曲がった歪なナイフを―――目の前の石像目掛けて突き刺した。


 ――パキイィン…ッ!


『……は…。…わ、私は……?…士郎!!』

『よ、起きたか』

『私は…石化した筈では……そうです、このかは!?』

『ほら』

『!!』

 石化解呪された彼――詠春は、状況がわからず声を荒げて士郎に問う。
 すると士郎は、部屋から持ち出した無銘の野太刀を差し出して、逆に詠春に問いかけた。

『どうする?』

『………行くに決まっているでしょう…!』

 …その問いは、
 組織の長として本山に残るか、父親として戦場に赴くかの二択。
 そして彼は、迷いなく後者を取った。


“娘も守れずに、何が父親か。
 これからも…木乃香あの子の父親だと胸を張って言い続けるために。私は再び剣を執る……!!”


 差し出された野太刀の柄を、詠春は力強く握り締めた。




 ◇◇◇◇◇



「お、長……なぜ………?」

 三人の目の前には、石にされた筈の士郎と詠春が立っていた。
 士郎はともかく詠春の石化は、ネギと刹那が確かに目撃している。

 しかし彼らの前には、確かに。
 シャツとズボンという動き易い服装に身を包み、野太刀を握る詠春がいた。

「今はそれを話している時ではありません。
 …ここは私達二人が引き受けましょう。貴方達はこのかを…」

「いや義父さん、ここは俺一人でいい」

「士郎!?」

 士郎の発言に、一同は一斉に彼を見た。

詠春とうさんの鈍った身体は持久戦に向いてない。刹那達と一緒に行け」

「し、しかし、君一人でこの数は………」

「…おいおい、俺を誰だと思ってる。
 『千の刃』ジャック・ラカンの弟子で……『サムライマスター』近衛詠春の養子むすこだぞ?」

 そう言って彼は、二ィッと不敵に笑みを作った。

「じ、じゃあ僕も残りま……」

「…いや、邪魔。足手纏いだよ」

「(ガーン!)」

「…ネギ君。悔しいでしょうが士郎の言うとおりでしょう。
 ここは彼に任せるのが一番のようです」

 詠春と士郎は目配せし、互いの行動に合意した。


「でも気を抜くなよお前ら。
 アーウェルンクス…あの白い髪の少年は、詠春とうさんクラスじゃなきゃ相手にできないほどの実力者だ。
 それに天ヶ崎には月詠と小太郎も付いている、人数的にはギリギリだ」

「そ、そうか、あの二人とも戦わなきゃいけないかもしれないんだ……」
「あの犬っコロは昼間のでボロボロだと思うんだが…楽観はできねーか」

 向こうの戦闘員は天ヶ崎、フェイト、月詠、小太郎の四人。
 対するこちらは士郎を除けばネギ、明日菜、刹那、詠春の……四対四の構図になる。
 加えて、呪符使いである千草の式神も考慮しなければならない。

「しかし士郎が言ったとおり、私にかつての力はありません。
 アーウェルンクス相手では時間稼ぎがやっとでしょう」

 白い髪の少年をよく知るような詠春の発言。
 だが、それに気づくほどの余裕はネギ達三人にはなかった。


「よし、なら作戦はこうだ!
 旦那が鬼どもを引きつけてる間に俺達はこのか姉さんの救出に向かう。
 厄介な白髪のガキは長のオッサンが押さえて、その隙に兄貴達がこのか姉さんを奪還するんだ!!」

「な、なんかイケそうな気がしてきた…かも?」

「…今はこれが、最善ですか」

「ああ、だが完璧にゃ程遠い。そもそも旦那を置いてくって時点でこっちの戦力は引かれてるんだ。
 ……よし!少しでも勝率を上げる為だ、やはりアレもやっとこうぜ!!」

 明らかにテンションが上がったカモの姿に、明日菜は激しく嫌な予感に襲われた。

「…アレって、まさか………」

「キッスだよキス♪ 兄貴と刹那姉さんの仮☆契☆約っ!!」

「「―――ええぇぇぇえええええええっ!?」」

 実はこの話題、千草達を追って来る前に風呂場でも交わした内容である。
 下心が無い訳ではないカモの提案だが、戦力増強に繋がるかもしれないこともまた事実。
 それでもやはり抵抗のある当事者二人――ネギと刹那は顔を赤くして異を唱えるが。

「なに嫌がってんだゴラァァア!!
 緊急事態なんだよ手札は多い方がいいだろうがぁぁあああああんん!!?」

「「は、はぃいっ!!」」

『……………。』

 キスを強要するオコジョと、それに押し切られる少年少女。
 そんな二人と一匹を、他三名は何とも言えない顔をして眺めていた。




 ◇◇◇◇◇



「………う、うう………っ」

 普段の凛々しさは鳴りを潜め、頼りない声で少女は唸る。
 それはカモが敷いた魔方陣の上で、ネギと対面している刹那だ。
 そんな、頬を桜色に染めた少女はチラチラと………士郎の方を盗み見ていた。

(……ん?)

 士郎は視線に気づきつつも解らなかったが……
 心当たりのある明日菜はその考えに思い至り、詠春も何となく事情を把握した。

(そーいえば刹那さんって確か…士郎さんに気があるっぽかったじゃない!!)
(うーむこれは……どうなるんでしょうねぇ)

(ちょっとカモ!! そのへん察しなさいよ!!)

 そんな思念を必死に籠めて、明日菜はカモを睨みつける。……だが。



(――――ニヤァッ。)


 カモは明日菜の視線に対し、憎たらしいほどの笑顔を浮かべて振り向いた。


(こ、このエロガモ…!分かっててやってる――――!?)

 オコジョ妖精は古来より、魔法使いの仮契約をサポートしてきた種族だ。
 その仮契約と言えば、今ではかつての意味を失い、恋人作りの一環として見られている面が強い。
 故にオコジョ妖精はいつしか、「人の好意を計る」というトンデモ能力を獲得していた。
 そのカモが…刹那の気持ちに気づかないハズがない。


「フフ…どうしたんだい刹那の姉さん?旦那の方をチラチラ見てよー。
 もしかしてアレか? 兄貴より旦那が相手の方がいいですってかい? んん〜?」

「…へっ、ふぇええっ!?」

 刹那は肩をびくりと震わせ、桜色の頬を更に紅潮させる。
 それを見てカモは、自身のオコジョレーダー(仮称)に間違いはなかったと確信した。

「…はあ?こんな時になに言ってんだカモミール……。なあ刹那?」

 士郎は呆れた声をして、何でもないように刹那を見る。
 それでも彼女の様子に気づかない士郎に明日菜は戦慄すら覚え、詠春が額に汗を滲ませた。

(な……し、士郎さん…なんて鈍い……ッ!?)
(……………。)

 そう…このニブ過ぎる男に確実に好意を伝えるには…もはや告白しかないのである…っ!!


(クククク…どうするよ刹那姉さん……これは千載一遇のチャンスなんだぜぇ!? HAHAHAHA!!)

(な、なんかカモ君怖い………)

 側に立つネギはと言えば、お子様ゆえ恋愛絡みのこの状況を理解していない。
 しかし自らの使い魔が放つ邪悪なオーラに、彼は少しだけ怯えていた。
 そして…カモの策略に嵌まりきった刹那は。


(あ……あああ………わ、わた、わた…私……! 私は――――……!!)


 沸騰しきってのぼせた思考のまま………彼女はネギから、士郎に体を向けた。

「うん?」

 腕を組んだまま士郎は、不思議そうに刹那を見る。

 熟れた林檎の様な赤い顔を俯かせ、肩を小さく縮こませるその少女。
 ミニスカートの前で愛刀・夕凪を握る両手は、じっとりと汗で湿っている。
 ……そして刹那は、息をするのも忘れてその言葉を口にした―――。


「わ………私は……………っ! し、士郎さんがいいですっ………………!!」


「………え……?」



(い…言ったぁーーーーーー!!頑張ったわね刹那さんっ!!)

(…なんというかコレは…むず痒いですね……)

(え……せ、刹那さんってもしかして……!)

(ふぅ…俺っち良い仕事したぜ……っ!!)






「いや、ここはネギと仮契約した方がいいと思うぞ?」





 ………時が、凍った。






「そうすれば敵に分断されても、カードの機能で呼び出せるだろ?」

 仮契約カードには、魔法使いの下に従者を呼び出す「従者召喚」機能がある。
 例えば途中で敵に遭遇して仲間が離れ離れになっても、
 ネギさえ木乃香の下に辿り着ければ、彼と同じ場所に従者を呼び出すことができるのだ。

 だがもしこれが士郎と刹那の契約だった場合、
 召喚機能を使っても士郎の元……つまり百鬼夜行がひしめく場所に召喚してしまうことになる。
 ネギとの契約に比べ、「この状況では」士郎と契約するメリットが少なかった。

 そう説明を終えた士郎は、刹那から涙目で、他の者からは一様に白い目で睨まれる。
 さもありなん。当然である。滅びろボケが。


(………なんでさ?)


 結局……気まずい雰囲気のままネギと刹那は仮契約を交わし、ネギは非常に居た堪れなかった。



 “ピロリロリーン♪ ネギは悲しいキスを経験した!”
 “ピロリロリーン♪ 明日菜の士郎への尊敬度が9999下がった!”


「…士郎、最低だわ……(ペッ)」

「呼び捨てっ…いや吐き捨てた!?」

「今のは無いよシロウ…」

「ネギまで!?えっ何が!?」


「……………。(ぐすっ)」

「………ウチの愚息が…その…申し訳ありません、刹那君……」

「………。(ふるふる)」

 空気読め主人公…。




 ◇◇◇◇◇



 風障壁の外では鬼の軍勢が、
 竜巻――『風花旋風・風障壁』を睨みながら待機していた。

《オヤビン、これじゃ手出しできやせんぜ?》
《安心せい、こんな大がかりな風は長くは保たん》

《……そろそろか。》
《ふん、待たせよって……》

 竜巻の勢いが弱まり、鬼達が臨戦態勢をとったその時。
 消失した風の壁の向こうから、鬼達に突き出されるネギの掌が現れた。

《――!!》

「『雷の暴風ヨウィス・テンペスターズ・フルグリエンス』!!」


 ―――ズドォンンッ!!


《ぬぉぉおおおッ!!》
《こ、この火力!西洋魔術師かぁ!?》

 風を纏った雷閃が、軍勢のど真ん中を貫いて鬼達を吹き飛ばす。
 雷撃で生じた一筋の道と隙を突き、刹那はネギの杖に乗って、詠春が明日菜を抱えて飛び出した。

《ああっオヤビン!逃がしちまっただ!!》
《……二十体は喰われたか》
《やーれやれ、西洋魔術師にはわびさびってモンがなくてアカン》

《くっ、追うぞ!!》
《面倒やなぁ、せやけど命令は守らんと――》
《…む?》

 ……足止めする対象を逃したと、慌てる彼らの視界の先に在ったのは。


 竜巻が消えて水が戻ってきた川の、浅瀬に独りで立つ青年。
 黒いコートを纏う人物は、巨大な斧剣を肩に抱えて静かにその場に佇んでいた。


《………ふっふっふ……成程、敢えて残ったんか》
《それもたった一人でとは、随分と勇ましいあんちゃんやのう》
《でもちょーっと舐め過ぎゆうか……無謀ちゃうんか?大丈夫かホンマ?》

「―― く………。」

《?》

 鬼達は怪訝に思う。目の前の人間が、何故か笑って……いや。
 ―――彼が、嗤って・・・いたから。


「…舐めているのはそっちだろう? その程度の頭数でこの俺を倒せると?
 全く以て笑わせる。俺を打倒したいなら、この三倍は持ってこい」

《…………あ゛ぁ゛?》


 ―――ギシリと、大気が軋む。
 或いは空気が、小川の水面が張り詰めた。


《言うたな兄ちゃん…ああ、よくぞ言うたわ》


 周囲一帯を押し潰すように降り注ぐ、圧倒的に重厚なる威圧感プレッシャー

 吹きつける夜風はどうしようもなく窮屈で、星空はこんなに狭かったろうかと錯覚する。
 それらは言うまでもなく、異形の大群が発散する怒気と殺気に類するもの。

 たった一人の人間が言い放った、千の鬼に対する挑発。
 鬼神の軍勢は彼の台詞に、みな一様にして色めき立った。


《相手がガキなら手加減せえと言われとるが…》

《貴様ほどの歳なら話は別だ》

《どーせ殺しゃあせんと、舐めたコト考えとるんなら大間違いやで》

 ガシャリ、ガチャリと、鬼達は得物を構えて臨戦態勢に移っていく。
 しかし士郎はそんな、自らに突き刺さる殺意など素知らぬ顔で―――極めつけの言葉を口にした。


「安心しろ、お前達ほどめでたい頭はしていない。
 …では一応訊いておこうか鬼ども。還る準備は充分か?」

《……………。》


《なんやとゴラァァアアアアアアアアアアアああああああああああッッ!!!》


 異形の兵の軍勢が、たった一人の青年に殺気を向けて殺到する。
 だが彼は、自身に迫る千の雄叫びより迅くその斧剣を振り上げた。


「…まあ、どちらにせよ」



“もし否と答えても、問答無用で叩き潰す――――!!”



「カラダ・ハ・ツルギ・デ・デキテイル」


“―――『戦いの旋律メローディア・ベラークス』”

“―――投影装填スプレーメントゥム・イルシオー


 ギリシャの英雄を祀る神殿の支柱に使われていた、岩の塊のような斧剣。
 それを投影し、そこに刻まれた経験を己の身に憑依させる。
 類稀なる英雄の技を、強化した己の身体で模倣する…!

 身の丈を越える斧剣を左腕一本で頭上に掲げ―――彼はその力を解放した。


解放エーミッタム



“―――――――――『是、射殺す百頭ナインライブズブレイドワークス』―――――――――――――――――!!”


 どっかーん


《グァァァァアアアアアアアアアアアアアああああああああああああッ!!?》
《ぎゃぁぁぁあああああああああああああっ!!!》

 おおいなる百重の剣戟を、士郎は軍勢のド真ん中にブチ込んだ。


《オ・オヤビーーーン!!百体近く還されましたぁあーーーーーーー!!》

《あ、あと九発撃たれたら終わるやん!?(ガビーン!)》

《ええい落ち着け!こないな大技を連発なんてでけへんわ!!》


 そのとおり、『射殺す百頭』はその発動まで約三秒の時間を要する。
 いま上手くいったのは初撃ゆえ、これからはそう簡単に使わせてはくれないだろう。

 …だが。そんな事は関係ない。
 士郎の役割は彼らをここで抑える事。そして――


「………く、ククク……ふはははは…」


 士郎が、突然不気味に笑いだす。
 振り下ろした斧剣を地面にめり込ませた、前屈みの姿勢のままで。
 …俯いたその顔を、窺う術は彼らに無い。

《……お、おい…何だアレは》
《ワシに訊かんといてやー》
《な、なんやメッチャ怖いわぁ…》

 怒り狂って反撃しようとした鬼達は、不気味な士郎を見て完全に腰が引けている。
 そして……士郎が、ゆっくりと顔を上げた。


「―――ひとつ、教えておいてやろう」

「お前らが命令を聞いている召喚主が攫っていったのは…俺の、義妹いもうとだ」

「さっきお前らも見ただろう? 兄として贔屓目に見てるかもしれないがあいつは可愛い。
 将来は絶対美人になる。というか既に美人と言っていい。そうさ美人だ」

《…フム。まあ、せやな》
《平安の頃もあないな娘おったな〜♪》
《今ではああいった器量の娘を確か、大和撫子と――》

 ギロリと士郎に睨まれて、鬼達は即座に口を閉じた。

「…ええ?オイこら。お前らはその誘拐の片棒を担いでるって解ってんのか?
 これでもし木乃香あいつに何かあったらどうしてくれんだこの妖怪ども。まだ彼氏の一人も作った事ない純真無垢な十四歳でルームメイトの為に毎日朝食を作ってあげるような本ッ当に良い子なんだぞあいつは……」

 鬼達はバツが悪そうに「うっ」と呻いて押し黙る。
 しかし士郎の口は止まらず、ブツブツと何かを呟きながら再び斧剣を振りかぶった。

「…だから……」

《……へ》

 士郎は斧剣を、鬼達の方向へ思い切りぶん投げる。
 彼の言葉に色々と引き攣った顔をしたまま鬼達は、それを見て全力で逃げ出した。


《…そ、総員、退避ぃーーーーーーーーーーー!!》

壊れた幻想ブロークン・ファンタズム

《ッどわぁぁぁああああああああああああああああ!!!》


 幻想を自壊させる魔力の暴発。
 爆発に巻き込まれて轟く悲鳴と怒号を士郎は無視した。

 大気を揺るがす轟音は開戦の合図であり、戦端を開く狼煙となる……!


「―――存分に暴れさせてもらう。憂さ晴らしには丁度いい………ッ!!」


 士郎の両手が、黒白の夫婦剣――干将・莫耶を握り締めた。


 ……掻い摘んで言えば彼の態度は、妹思いの義兄が心配性なやるせない気持ちをぶつけたかっただけである。
 …決して、決してシスコンの八つ当たりとかそんなものでは無いのである!









<おまけ>
「千鬼招来の舞台裏」

千草
「あんたらは、千体の鬼共とでも遊んどき」

明日菜
「ちょっとちょっと、こんなのアリなの―――!?」
カモ
「やろー、このか姉さんの魔力を使って手当たり次第に召喚しやがったな…!!」
ネギ
「な、何体いるのか見当もつかないよ……!」

千草
「まあまだガキやし、殺さんよーにだけは言っとくわ。
 五体満足でいたかったらお嬢様を取り返すなんて考えんと、追って来んほうが身の為やで」

千草
(ふははははは、いい気味ですえ!
 ウチらのコト散々邪魔してくれはったイイお返しになったわーーー!!♪)



千草
(……………ぜぇ、はぁ……。)


フェイト
(…千草さん、張り切り過ぎましたね)

千草
(ぎくっ! …う、うるさいわ)

フェイト
(しつこいしつこいって、彼らに対して随分と欝憤が溜まっていたようでしたし)

千草
(ええいじゃかぁしい!!黙っとき!!確かに千体はやり過ぎたと思うたわ!!)

フェイト
(いくら魔力がお嬢様頼りでも、術者に全く負担が無い訳じゃないですからね。
 計画に支障が出ては困るんですが?)

千草
(ああもうわかっとる!もう行きますえ!!)


千草
「…ほなな、ガキども(ハァハァ…)」

刹那
「ま、待て…!!」

鬼A
《グフフ。アカンで嬢ちゃん》

 こうして千草は何とか、大見え切った体面を保ったまま去る事ができたのだった。



〜補足・解説〜

>千鬼万来
 「万来(ばんらい)」…人が大勢来ること。
 この話では、やって来たのはヒトではありませんでしたが。

>日本の伝承『百鬼夜行』。
 鬼や妖怪の集団が列を成して夜中に行進すること。朝日が昇ると退散するらしい。
 結構ポピュラーな話なので、今さら説明する必要もないでしょうけれど。

>今ので河童が何体かやられちまった
 この台詞は、原作でネギが魔法を使った時に河童が吹き飛んでいるシーンから発想を貰いました。
 「鬼」の軍勢とは言っていますが、この小説では「鬼=人間でないもの」という概念的な固有名詞で扱っています。
 なのでこの軍勢は一つ目、烏天狗(ネギま!では烏族)、狐女、河童など、「日本古来の妖怪の集まり(=百鬼夜行)」と思って頂ければ。

>組織の長として本山に残る
 組織のトップが直々に参戦せざるを得ないほどの内乱が起こったとなれば、後で色々と責任問題を問われたり、追及・非難されたりなどあるでしょう。それを避けるため、「ここで詠春が出張るのはどうなのか? 本山に残ってドッシリと構えていた方がいいのでは?」という政治的な話です。

>シャツとズボン
 Yシャツとスーツのズボンのようなイメージです。

>オコジョレーダー(仮称)
 類義語:【ラブ臭レーダー】…人物が発する甘い、もしくは甘酸っぱい雰囲気を感知する事によって、恋愛感情の有無を間接的に測定する観測装置。
 但し実際には装置ではなく、"ラブ臭"という概念を初めて提唱した早乙女ハルナ氏が会得した技能であるとの見解が有力である。

>(ふぅ…俺っち良い仕事したぜ……っ!!)
 今回に限って言えば、カモはオコジョ$を稼ぐ為ではなく、純粋に刹那の為に一肌脱いだという面が強いです。
 でもその結果は………ぐすっ。

>さもありなん
 =然もありなん。
 きっとそうであろう、もっともである、という意味の言葉。

>ネギは悲しいキスを経験した!
 愛情の伴わない、単なる手段としての口づけ。それだけならネギは明日菜とも経験があるが、アレは何だかんだで親愛の情らしきものはあったので該当しないとする。
 しかも今回のケースに限っては相手(刹那)に意中の男性がおり、しかもその人物への告白に失敗した直後に、その彼の目の前で行った口づけである。改めて書くと本当に酷い…士郎ひどい。外道?
 ネギはきっと大人になった。

>「呼び捨てっ…いや吐き捨てた!?」
 これ以後、明日菜の士郎の呼び方は「士郎さん」→「士郎」となります。尊敬度が下がったので。
 あとこの時の、士郎に「最低」と言った明日菜の表情は皆さま方のご想像にお任せしますw

>「………。(ふるふる)」
 詠春に謝られた事を受け、「気にしないでください」というニュアンスを込めて首を横に振る刹那。
 健気や…この娘ホンマ健気や……!!

>嗤っていた
 「笑う」ではなく「嗤う」。
 後者の字には相手を嘲る、馬鹿にする、見下すなど良くない感情が籠められている。

>“もし否と答えても、問答無用で叩き潰す――――!!”
 じゃあ訊くなよ、とか言わないで。だから「一応」訊いておこうか、って言ったんですよ(汗)
 そしてこの発言の真意が八つ当たりの憂さ晴らしというのだから何てこったい。

>ひとつ、教えておいてやろう」
 「俺の妹はメッチャ可愛いよ!」という類のお話だったと思われます。たぶん。

>将来は絶対美人になる。というか既に美人と言っていい。そうさ美人だ」
 美人三段活用とはこのこと(お前は何を言っているんだ

>シスコンの八つ当たりとかそんなものでは無い
 士郎が本当のシスコンだったらあの程度では済みません。きっと迷いなく固有結界きりふだを使ってます。
 つまり士郎はシスコンではない。

>おまけ
 千草さんは見栄っ張り。
 そして容赦なく指摘するフェイトさんはドS(笑)



【次回予告】


 ――あの大岩にな、危な過ぎて今や誰も召喚出来ひんゆー巨躯の大鬼が眠っとる。
 ――18年だか前に封印が解けて大暴れしたらしいけど、今の長とサウザンドマスターが封じたんやと。

「でもそれも…お嬢様の力があれば制御可能や」
「んむ゛……っ」

「こ…これは……!?」
「そ、そんな…こんな、こんなの……!!」
「うおいっ!?幾らなんでもデカ過ぎるぜ!?」

「……全く、人生で二度もコレの復活に立ち会う事になろうとは………!」

 頭部の前後についた顔――「二面」。
 胴から伸びる両の腕と、肩甲骨から生えるもう一対の剛腕――「四つ手」。
 まだ上半身しか封印から解き放たれていないにも関わらず、30mはあるその巨体。

「――こ…こここんなの相手に、どうしろっつうんだよぉっ!!!」


 次回、ネギま!―剣製の凱歌―
 「第25話 京都決戦・弐 鬼神ノ顕現」


「二面四手の巨躯の大鬼、『リョウメンスクナノカミ』。
 千六百年前に討ち倒された、飛騨の大鬼神や」


 それでは次回!

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■作者からのメッセージ
 士郎と刹那の関係が進展するのはまだまだ先の話です(ニヤッ)。

 誤字脱字・タグの文字化け・設定や展開の矛盾点等お気づきの点がありましたら、感想にてお知らせください。
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