ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

ネギま!―剣製の凱歌― 第二章-第25話 京都決戦・弐 鬼神来迎
作者:佐藤C   2013/01/27(日) 18:30公開   ID:CmMSlGZQwL.



 その湖は、形容し難い神秘性を帯びていた。

 関西呪術協会の本山を置く山の中にぽつんと、その存在を忘れられたかのように静かな佇まいで広がる湖沼こしょう
 その中央に、台座の様に平坦に削られた大岩と…その上に安置された巨大な岩塊の存在がある。

 その大岩に向かって伸びる桟橋さんばしの先に、松明に煌々と照らされる祭壇があった。


「あの大岩にな、危な過ぎて今や誰も召喚出来ひんゆー巨躯の大鬼が眠っとる。
 十八年だか前に封印が解けて大暴れしたらしいけど…今の長とサウザンドマスターが封じたんやと」

 後ろに立つフェイトに説明するように、千草は儀式の準備をしながら口にした。

 彼女の前に置かれた台座には木乃香が横たわっている。
 口を塞がれ服を脱がされ、全裸のからだに薄布を一枚かけただけのあられもない姿を晒していた。


「でもそれも…お嬢様の力があれば制御可能や。
 …御無礼をお許しくださいお嬢様。ほな…始めますえ。――"イジャヤ"」

「ん゛っ……!?」

 詠唱が始まった途端、塞がれた口から木乃香が苦悶の声を出す。
 輝きだした少女の体を中心にして、光の柱が闇夜の空に突き刺さった。









     第25話 京都決戦・弐 鬼神来迎









 ―――ズドォオン!!ドッガァアン!!ギャギギギメキャメメタァバキキキギンンッ!!!

《ぎゃぁぁあああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーー!!?》




「………派手にやってますね、随分…」
「あ、あははは……」

 杖で空を飛ぶネギと刹那は、後方から聞こえてくる断末魔に若干顔を青くした。

「…兄貴、感じるかこの魔力!ヤツら何かおっ始める気だぜ!」
「わかってる!」

 先程から徐々に、この一帯に濃密な魔力が満ち始めている。
 そして何より…ネギ達が"気"を辿った先に見える湖から、巨大な光の柱が立ち上る異様な光景…!

「急ぎましょう!しっかり掴まっててください刹那さん!! 『加速アクケレ――」


 ――ド ドンッ!!

「!?」

 鈍い衝撃音。先ほど聞こえた士郎の攻撃とは別のもの。
 しかも今のは―――『近い』。

「先生!!」

 刹那の声にネギが慌てて振り返ると、二人に向かって飛来する漆黒の―――

「狗神!?」

 影で編まれた二匹の黒狼が、弾丸のように二人に迫る!

「『風盾デフレクシオ』!!」
「斬空閃!!」
《グルァァアアア!!!》

 狗神は精霊の一種である。
 故に彼らは術者の意識にのみ依らず、攻撃の途中で自ら軌道を変更できる。
 つまり…。


 ――ドガァッ!!


 狗神は、二人の防御と迎撃を躱して彼らに激突した。


「うあっ…!!」
「く、杖よメア・ウィルガ…ッ!『風よウェンテ』!!」


 弾かれた杖を呼び戻し、逆巻く風が二人を覆う。
 風に守られるようにして、ネギと刹那は山中の林にふわりと着地した。


「だ、大丈夫ですか刹那さん?」
「はい、なんとか!」

「……へへっ…よぉ。」

 突然聞こえてきた声と、こちらに近づくその足音。
 その正体は…今日一日で非常に見知った顔だった。


「嬉しいで…こんなに早く再戦の機会が巡ってくるなんてなぁ…!
 ここは通行止めや、ネギ!!」

 嬉しそうに拳を握り、黒い学ラン姿の少年―――犬上小太郎が立ち塞がった。


(…刹那の姉さん、ここは)

「わかっていますカモさん。
 先生、ここは私が引き受けます!先生はお嬢様を!!」

 刹那はネギの前に出て、野太刀の柄に手をかけた。

 ネギさえ木乃香の元へ辿り着ければ、カードの機能で刹那もその場に駆けつけられる。
 …士郎の言ったとおりになって、彼女は若干気に食わなかったが。


「へっ、誰が女と戦うかい。アンタの相手は俺ちゃうで」


 ――ザッ……。

 その足音に、刹那は左方に視線を向ける。
 ゴスロリファッションに身を包む眼鏡の少女が、緩やかに林の中から現れた。


「こんばんわー、刹那センパイ♪」

「…! 月詠…ッ!!」


(…おいおい!旦那が言った通りになっちまった!
 マズイぜ…兄貴は昼の疲労が抜けてねえし、なのに犬ッコロはピンピンしてやがるし……!!)

 ネギ達が焦燥に駆られている事に構わず、
 立ちはだかる障害は嬉々として拳と太刀を握る。

「いくで、ネギ!!」
「お昼の続きといきましょーセンパイ♪」

 ネギは杖を、刹那は剣を。
 相対あいたいする互いの敵を目前に、二人は冷や汗を浮かべて構えを取る。


「……でも、カモ君」
「…ああ」

 ネギが静かに口を開き、カモがそれに頷いて……そして刹那が笑みを漏らした。

「これ、僕達の作戦通りだよね……!」

 自分達がこうしている間に。
 明日菜と詠春が―――……!!




 ◇◇◇◇◇



 千草が唱える呪文によって、祭壇の正面に安置された大岩が木乃香の魔力と共鳴する。
 すると次第に…光の柱は一つから二つに。
 大岩からも光の柱が立ち上り、夜空の雲を貫いた。

「まだですか?」
「もう少しや!」

 横たわる木乃香の前で両手を広げ、額に玉の様な汗を浮かべて千草は言霊を紡ぎ続ける。
 …しかし自分が質問したにも関わらず、フェイトは千草の言葉を聞かずにあらぬ方向へ視線を向けた。


「……これは…思わぬ客人だね」

「何?」


 ――――ザッ―――ドドドドドドドドドッ――――!!


 突如として湖に上がる水柱、水飛沫。
 意思を持つように祭壇に向かい来る水飛沫の中心に…まさか人間がいるなど、本来なら夢にも思わないだろう。

 それは湖の、水上を走る・・・・・人影。
 彼は足の裏に流した"気"で水を弾き、水飛沫を上げながら桟橋に向けて疾走する。

 その人物の顔を確かめて、千草は思わず声を上げた。


「なっ!? お…長ッ!!?」

(んなアホな!!長自ら突っ込んでくるとは!?)



「明日菜さん、私があの少年を引きつけます。貴女はその隙にこのかを……頼みます」
「は、はい!」

 詠春に抱えられた明日菜が、彼の腕の中で頬を染めて返答した。
 その赤い顔を見て詠春は、これからの大一番に彼女が興奮しているのだろうと思ったが……実際は、自分好みな渋いオジサンに姫抱きにされて照れているだけとは知らなかった。
 そんなやりとりを交わしながら高速で接近する二人を見て、動揺を隠せずに千草が叫んだ。

「ッ新入り!なんとか時間稼ぎしてや!!」

「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!
 小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ! その光我が手に宿し、災いなる眼差しで射よ!!
 『石化の邪眼カコン・オンマ・ペトローセオース』!!」

 千草の指示が飛ぶ前に彼は行動を開始していた。
 浴びた者を石化する光をレーザーのように指から発射し、そのまま水面を薙ぎ払う。
 閃光が着弾した湖水が蒸発し、詠春と明日菜は水煙の中に紛れて消える。


(……しまった、見失った)

「舐めるなと、言った筈です」

「!!」

 声の主は、少年の背後に。
 振り返れば、太刀を振り上げたその姿。
 その長大な刀、野太刀に宿るは雷光の煌めき――――!!


「――雷ッ!光ォオ剣ッッ!!!」


 ―――ドパァアンッ!!


 詠春の斬撃はフェイトの障壁に阻まれるも、無効化できないほどの衝撃で彼を湖に叩き落とした。
 だが気は抜けない。詠春はフェイトから離れるわけにはいかない。
 だから…愛娘このかを救い出すのは―――!


「『念話テレパティア』!!ネギ、お願い!!」

『す、すいませんっ今ちょっと緊急事態で――…よし、いけます!!
 契約執行900秒!!ネギの従者「神楽坂明日菜」!!』

「よぉ――しOK!来たれアデアット!! さあ、このかを返しなさい!!」

 ブオンと風を唸らせて、明日菜が『ハマノツルギ』を振り下ろす。
 祭壇に到達した彼女は猿鬼を消滅させ、その勢いで千草にハリセンを突きつけた。


「くっ…!!小娘がぁ………っ!!」

 儀式に集中している千草には、新たに式神を召喚する余裕は無い。
 自らにハリセンを向ける少女を見やり、彼女は盛大に舌打ちした。




 ・
 ・
 ・




 ――ザァァアア………ッ

 フェイトが湖に叩きつけられた衝撃で生じた水柱が、小雨となって詠春の体を濡らす。
 だがそれを意に介する余裕はない。
 白髪の少年が墜ちた場所をこれでもかと、射殺す視線で詠春は睨みつける。

 そして…「ザパッ」と、ずぶ濡れのフェイトが顔を出した。
 無表情のまま水面に手を着き、水面に足をかけて、水上に立ち上がる。
 髪から水を滴らせながら、彼は何でもないように話し始めた。


「…いいの?貴方が出るという事は、組織のトップが直々に手を下すほどの内乱だと内外に示すようなものだよ。
 西の長としての能力が疑われると思うけど」

「心配ご無用。そもそもあなたに口出しされる問題ではありません。それに…」


「娘一人守れず、その役目を子供達に投げ出すような男が何を守れるというのです。
 …それが組織などと大層なものを。それこそ笑われてしまいますよ」

 逡巡など皆無な即答、しかし確固とした返答。
 だがフェイトは唇を結び、興味なさ気に会話を続けた。

「そう。でもだからといって死に急ぐ必要はないんじゃないかな。
 老い衰え、腕の鈍りきった今の貴方では…僕を止める事は不可能だ」

「それもあなたが決める事では無い」

 話はここまでだと言わんばかりに、
 普段は穏やかに細められた詠春の瞳が若き日のそれになる。
 鷹より鋭く。刃より鋭利に。

 救世の英雄『紅き翼アラルブラ』の一員にして、サウザンドマスター最初の盟友。
 何よりそして剣技の極致。「サムライマスター」の二つ名を戴く者――――!!


「京都神鳴流剣士―――――――近衛詠春、推して参る」


 衰えた?そんなものは彼が一番理解している。
 けれど。
 その眼に宿る眼光の鋭さは、往年のそれと変わりなかった。


「………驚いた」

 その姿に、かつての彼を垣間見て。フェイトは即座に気を引き締める。

「少し、骨が折れそうだね」

 手を抜く余裕など、もはや無かった。





「"ラーク"。来て、ルビカンテ」

 陰陽術の呪符を取り出し、フェイトの背後に一体の悪魔が召喚された。




 ◇◇◇◇◇



《おらおらおらぁああっ!!》

 十数体の鬼が一挙に押し寄せる。
 士郎は干将の投影を破棄して詠唱を開始した。

「ものみな焼き尽くす浄北の炎、破壊の王にして再生の徴よ!我が手に宿りて敵を喰らえ!!
 『紅き焔フラグランティア・ルビカンス』ッ!!」

《ギャァァアああッ!!》

 左手から走る真紅の火球が炸裂し、鬼達の体を焼き焦がす。
 …概算、六体撃破。


 ―――ドゴォオンッ!!!


 巨躯の大鬼が背後から、その剛腕を士郎に叩きつけた。

《ガハハハッ!!潰したか!?》

 その拳のあまりの威力に、河原の水と小石が辺りに飛散する。
 しかし直後、牙を覗かせて笑う鬼の顔に影が射す。

 拳を躱して宙に跳んだ士郎が、体重を乗せた莫耶で鬼の頭蓋を叩き斬る!


“『鶴翼攻究・襲』!!”

《――ッガ…!?》


 大鬼は何が起きたか理解できぬまま、頭頂部から胸まで裂けた身体を消滅させた。
 …一体撃破。


《フンッ!!》

 ――ガキンッ!!

 閃く剣影を咄嗟に莫耶で払いつつ、士郎は干渉を再投影して敵を見る。
 それは大きなくちばしと翼を持ち、全身を黒い羽毛に覆われた…"烏天狗"こと『烏族』の剣士。

《なかなかやるな若造!!だがそれがしは今までの輩とは一味違うぞ!?》

 激しい金属音を鳴らして交わる剣が、火花を散らしてぶつかり合う。

 確かにその烏族は今までとは違った。切り返す刃は速く一撃の重さは段違い。
 何より剣術というものを理解している。
 刃だけでなく鍔や柄も巧みに利用し、体捌きすら計算に入れた動きは相当の熟練者を思わせる。
 …だが、それだけだ。


「――――。」

《む?》

 士郎はこれより迅い剣を知っている。
 これより重く、鋭い剣を知っている……!


全投影イルシオーニス待機エクスぺクタ

《!! 西洋魔術か!!》

 ただそれは、比べる相手が悪過ぎた。
 何故なら士郎かれの剣の師は――…千の武器を自在に操る、無敵の剣士なのだから。


停止解凍アギテ・エクストラティオー!!全投影連続層写ソードバレルフルオープン―――――――――――――――――――!!!」


 出現した二十七の剣群が、士郎の頭上の空間から発射された。
 剣の弾丸は烏族の体を容易く貫き、吹き飛ばし、彼の後方の鬼達にも襲いかかる。


《グウゥッ!!》

《が…っ!》

《ぎゃあッ!!》


「…壊れた幻想ブロークン・ファンタズム

 放たれた剣の魔力を、爆発させた。


 ―――ドォォオオオオオオオンッ!!!

《ぐぁぁあああああああああっ!!!》


 魔力爆発は周囲を巻き込み、阿鼻叫喚の悲鳴をもたらす。
 …撃破数、詳細不明。推定四十体撃破。

「まだだ」

 凄惨な光景に怯んだ鬼達が攻撃の手を緩めた隙に、士郎は左手を天に掲げた。
 直後、彼らは目を瞠る。

全行程、完了アデアント


 ―――――剣。
 空に、宙に、頭上に無数の刀剣が。
 切っ先を地面に…じぶん達に向けて静止している……!


「――――『剣林弾雨』」


 無数の剣が雨の如くに降り注ぐ。
 そして繰り返す先程の光景。飛来した剣群に籠められた魔力が暴発する。
 …推定、百二十体撃破―――。



《…な…せ…千の兵が五分足らずで…残り二百やと!? ば、化け物かこのあんちゃん……!!》

《あんたが言うな》

《オヤビーン、どーします?》

 人間大の小さな鬼がオヤビン―――鋼鉄の棍棒を抱えた、3mを越す長身を持つ巨躯の大鬼―――に指示を仰ぐ。
 この軍勢の中でも実力者と思われる彼…オヤビンも、この状況には冷や汗を禁じ得ない。


(…マズイ……!)

 しかし彼らと同様に士郎も、この状況に焦りを感じていた。

 焦燥感の理由みなもとは、遠くに望む光の柱。
 その輝きは今もなお増し続け、纏わりつく濃密な魔力は弱まる予兆すら見せない。

(……ネギ達は…間に合わないかもしれない、か……!)

 このままでは何が起きるか分からない。
 早くこの鬼達を仕留めなければ――……!!




「…全く、なんだこの数は。選ぶ仕事を間違えたかな?」

「うひゃー、あのデカイの本物アルか?強そアルねー♪」

 艶やかな呆れ声と、愛らしい弾んだ声。
 戦場に場違いな二つの声が、士郎の耳に飛び込んだ。




 ◇◇◇◇◇



『長瀬さん……!!それに夕映さん!?』

『わ、私が電話で呼んだですネギ先生…』
『ここは拙者に任せるでござるよ。急いでいるのでござろう?』

『で、でも』

『…拙者のことなら心配いらぬ。今は考えるより行動の時でござるよ。さあ早く!!』

『〜〜…!! す、すいません長瀬さんっ!!』

『あっ待てネギ!!』


 ・
 ・


「…ふむ。結局最後まで本気を出さなかったなコタローとやら。勝った気がせんでござるよ」

「………いや…言い訳はせん、負けは負けや。強いな姉ちゃん」

 小太郎は楓に背中を取られ、地面に押さえ込まれながら腕を締め上げられる。
 勝負は既に決していた。

「…!? か、楓さんアレを!!」
「む?」

 木の陰に隠れていた夕映が声を上げ、楓も湖の方角に視線を向ける。
 そこに広がる光景は、先程までとは異なっていた。

 湖から立ち上る光の柱が…いつの間にか二つから一つに。
 柱の太さと輝きが、今までの比ではないほど巨大なものになっていた。




 ・
 ・
 ・



「あ〜んセンパイ、いけずですー。ウチをこないにしてどっか行かんといてください〜」

 地面にうつ伏せに倒れた月詠が、顔だけ上げて恨めしそうに泣いて言う。
 その周囲には、数本の小刀が円環状に地面に突き刺さっていた。

 それはネギとの契約によって得た刹那のアーティファクト、『匕首シーカ十六串呂シシクシロ』。
 最大十六本まで分身する小刀であり、持ち主の意思に呼応して自由自在に飛行する能力を併せ持つ。

 この性質を如何なく発揮して、刹那は陰陽捕縛陣『稲交尾篭いなつるびのかまた』を発動した。
 匕首を地面に突き刺して形成された円陣内部に、麻痺スタン性能を持つ電撃を発生させる。
 これをまともに受けた月詠の体は完全に停止する……筈だった。


「せぇ〜んぱぁ〜〜い……!(しくしくしく…)」

(……こいつ……!?)


 動く事こそ出来ないものの、月詠は陣の内側でピンピンしていた。

 ……驚くべき事だが、今はそれを気にしている時間はない。
 刹那は湖に向かおうと体を翻し……飛び込んできた光景に思わず叫んだ。

「ッ!?な…なんだアレは!?」

 遥か前方で煌々と輝きを放つ、天まで伸びる極大の光の柱。
 …その、光の中から………『何か』が、を動かした。




 ◇◇◇◇◇



《なんや嬢ちゃん、ハリセン使えんかったらただのガキやな》

「な…! は、放しなさいよっこのぉ!!」

 宙吊りにされた明日菜は必死に、自分の腕を掴む悪魔をげしげしと蹴りつける。
 だが効果などある筈も無い。

 湖の祭壇で、明日菜は千草を追い詰めたかに見えた。
 だがいま彼女はハリセンを握る右手を掴まれ、切り札である『ハマノツルギ』を完全に封じられている。

 左右のこめかみから生える二本の角、口からはみ出した牙、大きな翼。
 中華包丁を長大にしたような大剣。顔に貼りつけられた呪符。
 一見して鬼と見紛う風貌をしたその悪魔―――「ルビカンテ」の参戦で、状況は呆気なく逆転した。


《姉ちゃん、まだ終わらんのか?》

「ええい五月蠅いやっちゃな!もう少しや!!」



 ―――ドォオンッ!!!

 ルビカンテと千草が言葉を交える側で響く轟音。
 祭壇から十数メートル離れた水上で、巨大な水柱が発生した。

 そこから少年が飛び出すと、彼に向けて"気"の斬撃が飛来する。
 少年は加速してそれを回避しながら高速で呪文を詠唱した。

「小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ!その羽ばたきを害毒なる鏃と成せ!!
 『石の槍ドリュ・ペトラス』!!」

「!!」

“奥義・斬岩剣!!”

 石灰色の岩を粗く削り取ったような石杭―――『石の槍』を、フェイトが無数に発射する。
 詠春は自らに迫るそれを太刀の一振りで全て切断し、軌道を逸らして湖に落下させた。


「彼女の所には行かせないよ。近衛詠春」

「く……!!」

 一見して二人は互角だが、状況的には詠春が負けている。
 詠春がフェイトを押さえるという作戦が、逆に詠春がフェイトに押さえられる状況かたちになっているからだ。


(迂闊だったとしか言えません…まさか彼が召喚術まで使うとは…!!)


 明日菜なら千草の式神を送り還せると考えた布陣が…悪魔が一体召喚されただけで劣勢に陥った。
 生粋の陰陽術師である千草の式神より、フェイトが召喚した悪魔の方が強力だというその事実。
 それは白髪の少年――フェイト・アーウェルンクスの能力の高さを如実に表している。

 太刀の構えを解かぬまま、苦虫を噛み潰した顔で詠春は口を開いた。

「……何が目的なのですか。なぜ今頃になってまた動き出したのです」

「貴方に話す必要があるの?」

「ええ。無いとは言わせません。
 私の娘を使ってあなたは…『あなた達・・・・』は何を企んでいるのですか!!」

 詠春が激高して声を荒げる。
 するとフェイトは、意外そうな顔をして考える素振りを見せた。


「……困ったね。何か勘違いをしていないかい近衛詠春?
 この件にお姫様を巻き込んだことに『僕達』の思惑は絡んでいないよ。
 今回は依頼主クライアントの指示があったからそうした…それだけの事さ」

「そんなもので納得できると…!!」


《む!?》

迎え撃てコントラー・プーグネント!!」

 その声が響くと同時、十七体の風の精霊がルビカンテに突進した。


《ぬうっ!》

「きゃっ…」

 風の精に突撃され、ルビカンテが明日菜の手を放す。
 その隙に精霊のうち一柱が、宙に浮いた彼女を拾って空に離脱した。


《く、誰だか知らんが――なんやなんや?こんなんで儂を倒せる思うとるんか!?》

 動揺して圧倒されたのも束の間のこと。
 ルビカンテはすぐに冷静さを取り戻し、大剣を自在に操って次々と精霊達を切り裂いていく。

「…あ」

 その時、精霊に抱えられた明日菜は確かに見た。


「―――契約執行2秒間!ネギ・スプリングフィールド!!
 乗杖飛行ウォラーレ・ヴィルガ最大加速マークシマ・アクケレラティオー!!」

 水飛沫を上げてこちらへ飛んで来る、小さな魔法使いを。


《むう!?》

 ルビカンテも気づくがもう遅い。
 契約執行で強化された「魔力パンチ」に、
 最高速度の突進で威力を掛け合わせ―――ネギの拳が一撃でルビカンテを貫いた。


(…スゲェ…!昼の疲労に加えて姐さんと自分への契約執行。
 そろそろガタがきてもおかしくねえのに、何だこの威力は!?)

 剣を構える間もなく腹に風穴を開けられ、ルビカンテはそのまま消滅する。
 ネギの肩に乗るカモは内心で唖然とした。


「大丈夫ですかアスナさん!!」

 明日菜は精霊によって祭壇に下ろされ、ネギも杖から降りて彼女のもとへ駆け寄った。

「う、うん。ありがとネギ。
 …ってそうだ!早くこのかを……えっ? い、居ない!?」

 明日菜が驚愕の声を上げる。
 つい先程までこの祭壇に、千草と木乃香が居た筈なのに。
 着物姿の女はおらず、台座に横たわっていた少女の姿も欠片もない。

「え、ここに居たんですか!?」
「そうよ!!おサルの女と一緒に、確かにそこに…!」




「ふふふ……一足遅かったようですなあ。儀式はたった今終わりましたえ」



 ―――――ズズン!!!


「うわぁ!!」
「きゃあっ!!」

 天地を揺るがす振動に、ネギと明日菜は悲鳴を上げる。

 …それは山が噴火する予兆のように。
 連続して大地が揺れて、湖面は津波を作って荒れた―――。


 ―――――ドドォオン!!

 ―――――ドドォォオン!!


 水が揺れる。湖が揺れる。
 姿を現した大質量の存在に、湖沼の水面はその場所だけが暴風雨のように荒れ狂う。


「……全く…人生で二度もコレの復活に立ち会うことになろうとは………!」

「ある意味幸運じゃないのかな。この国ではそれなりに有名な鬼神なんだろう?」


 詠春とフェイトは祭壇から離れた場所で、荒れる水面に立ちながら静かにその様を見つめている。
 だがネギ達はそういかない。
 目の前に現れた巨大な"力"を、ただただ呆然と見上げる事しかできなかった。


「こ…これは………!?」
「そ、そんな……こんな、こんなの………!!」
「うおぉいっ!?幾らなんでもデカ過ぎるぜっ!?」

 祭壇の前に安置された大岩が、膨大な魔力を放出しながら輝いている。
 そこから永き封印を破り………その霊格は、十八年ぶりにこの時代に顕現した。


 体型そのものは人間と変わらない、筋骨隆々の輝く体躯。
 だが肩や肘から突き出る鋭い突起が、明らかに人間のそれではない。
 そして明らかに異なるのが……角と牙が覗く凄まじい形相。それは――……"鬼面"。



「二面四手の巨躯の大鬼…〈リョウメンスクナノカミ〉。
 千六百年前に討ち倒された、飛騨の大鬼神や」




 頭部の前後についた顔―――「二面」。
 肩から伸びる両の腕と、肩甲骨から生え出るもう一対の剛腕―――「四つ手」。
 何より、まだ上半身しか封印から目覚めていないに関わらず……30mはあるその巨体。


「――こ…こここんなの相手に、どうしろっつうんだよぉっ!!!」


 荒れる波音に掻き消され、カモの悲鳴は誰にも届かなかった。




 ◇◇◇◇◇



 〈リョウメンスクナノカミ〉。
 約1600年前、朝廷に背いたために討伐されたという伝説の鬼神。
 伝説として名が残るほど強大な霊格。
 かのサウザンドマスターによってようやく封印されたという規格外の巨神兵。

 ――それを、手中に収めた。手に入れた。この手に従えた…!!
 魔力源である木乃香を傍に置きながら、千草は昏い笑みが浮かぶのを止められない。


「伝承では身の丈が十八丈(約55m)もあったというけど……こいつはそれ以上ありそうやな…!」


 その巨躯のうち下半身は未だ封印石から解放されず、大岩から胴体が生え出るように姿を現している。
 スクナの顔の横に浮遊する千草は、その不完全な状態でも満足気に顔を歪めた。

 何故ならそれは、今もこうして体を突き刺す圧迫感。
 鬼神が無意識に発散している至大の呪力と極大の魔力。その余波だけで、千草の体は風に吹かれたように揺れている。
 ……不完全でこれ程なら、完全に目覚めた時にはどうなるだろう……!!


「――ラス・テル・マ・スキル・マギステル!!」

「あ…兄貴!?」

 鬼神の出現に呆然とした三人の中で、ネギが一番早く正気に戻る。
 「完全に目覚めたらどうなるか」という考えは当然、千草だけのものではない。

「岩から完全に出ちゃう・・・・・・・前にやっつけるしかないよ!!『来たれ雷精、風の精』!!」

「お、おい兄貴!!確かに効きそうなのはそれしかねえが、兄貴の魔力はもう限界だろ!!
 それ使ったらバテちまうぞ!?」

「雷を纏いて吹き荒べ南洋の嵐!!」

 ありったけの魔力を収束し、輝き渡る雷霆が左手からほとばしる。
 青嵐を纏い大気を貫き、闇夜の鬼神を引き裂かんと煌めく雷閃が走りだす――――!!


「『雷の暴風ヨウィス・テンペスターズ・フルグリエンス』!!!」



 ――パシィィッ……。



 ……呆気ない、音だった。

 …直撃だ。一撃で二十数体の鬼を蹴散らす大呪文が鬼神の胸に直撃した。
 だが目の前の存在は、それを意にも介さない。
 スクナの体は傾く事も、揺らぐ事もなく。文字通りビクともしない。


 ―――――――全く、効いていない。


 幾多の鬼を吹き飛ばした雷霆を以てしても。
 伝説の大鬼神には、掠り傷ひとつ負わせる事ができなかった。


「アッハハハハハハ!!それが精一杯か!?サウザンドマスターの息子が!!まるで効かへんなぁ!!」


「――はあっ、はぁっ…そ、そん、な………っ!!」


 ネギは自分が強いとは思っていない。
 彼はまだ子供でありただの見習い魔法使いだ。
 事実、彼より強い者など数知れずいるだろう。

 …でも、それでも。
 幾つもの修羅場を乗り越えてきたという、「自負」だけはあったのだ。
 だがそれはこの瞬間……欠片も残さず粉々に砕け散った。

 今まで潜り抜けてきたどんな死線も。
 目の前に聳え立つ絶望ほどではなかったのだと、ネギは愕然と思い知らされた。


「コイツをこのかお嬢様の力で制御可能な今、もう何も怖いモンはありまへん!明日到着するとかいう応援も蹴ちらしたるわ!!
 そしてこの力があればいよいよ…!東に巣食う西洋魔術師に一泡吹かせてやれますわ!!
 アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

「く……くそぉっ………!!」

「ちょっ…ネギ!?大丈夫!?」

 崩れ落ちるように膝を着いたネギに、ハッとして明日菜が駆け寄る。
 大量の魔力を一度に使用した反動で、彼は荒い呼吸をしながらどっと汗を噴き出していた。


 …トンッ


「善戦だったけれど…残念だったねネギ君」

 桟橋に、誰かが足をかける音。
 瞠目するカモと明日菜の顔を見て、ネギは重い体で後ろを振り返る。

 そこには、白い髪の少年が立っていた。


「なっ…何でだよ!?長のオッサンは…」

「きっと今ごろ石になって、湖に沈んでいるよ」

 ネギ達は…何かが音をたてて崩れ落ちたような気がした。


(……さ………最悪だ………!!)


「よく頑張ったよ、ネギ君」

 そう言って、フェイトはネギ達に近づき始める。

「ッ兄貴!!」

「…っ! し、召喚!ネギの従者『桜咲刹那』!!」


 ―――フォンッ…!

 苦し紛れの最後の手段。
 掲げた仮契約カードが輝くと、祭壇の床に現れた魔法陣から――刹那が姿を現した。

「ネギ先生!明日菜さんっ!ご無事で――……っ!?」

 目の前に佇む巨大な鬼神に、刹那は言葉を失った。


「…それでどうするの?」

「!! お前は…!」

「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。
 小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ…」

「始動キー!?コイツ西洋魔術師か!! 姐さん、姉さん!!奴の詠唱を止め…」
「駄目です間に合わない!!」

 刹那が叫ぶ。一度この魔法を味わった彼女には分かってしまう。
 あと一小節で、この石化呪文は完成すると……!!


「時を奪う毒の吐息を。『石の息吹プノエー・ペトラス』」


 祭壇を、白い煙が覆い尽くした。




 ◇◇◇◇◇



(…く………不覚………っ!!)

 石化を始めた左腕を抱きながら詠春は回想する。

 あの時―――……




『石化の邪眼!!』

『そのようなもの、何度やっても当たりませんよ!!』

 己に向けて放たれたそれを詠春は完璧に回避する。
 しかし閃光が着弾して湖水が蒸発し、生じた水煙が詠春の周囲を覆った。


 ―――ボジュゥゥウウウウ………ッ!!


『……む……』

(これが狙いですか……)


 チャキッ……


 野太刀をもう一度握り直す。
 周囲の音と気配に神経を張り巡らせ、訪れるであろうフェイトの奇襲に備えて構える。


『……………。』

 ………来ない。おかしい。静か過ぎる。もうすぐ水煙が晴れ始める。


 気づいた時には手遅れだった。


 ――――バキパキ………ッ!


『…ッ!!』

 侵食する灰色。失われる自由と体温。
 詠春の左腕で、石化が始まった。


『――ああ…成程…。…全く、我ながら間の抜けている………!!』

 かつて命を預けあった戦友に言われた事を思い出す。
 曰く、近衛詠春は生真面目で、色気に弱く………詰めが、甘い。


 そうだ。攻撃を避けただけで安心していた。
 水煙は目眩ましだと思い込んでいた。
 …だが、今なら解る。


 ――この水煙には、『石の息吹』が紛れ込んでいる――――。



“言ったハズだよ近衛詠春。分からないのならもう一度言ってあげよう。
 貴方は…「自分で思っている以上に」衰えている”


(………それは…どうも…………!!)


 何処からか響いてくる声に苛立ちながら、しかし返す言葉もない。

 最後に彼は、ギリッと歯を食いしばって、

 ……湖に沈んだ。









<おまけ>
「その頃、学園長室」

近右衛門
「………のうエヴァよ。これやっぱ無理じゃないかのう(´ω`)」
エヴァ
「Σ(◎Д○;)!? おぉい諦めるな!!孫の危機だろうが!!」

 あらすじ。
 緊迫する京都にエヴァンジェリンを派遣するべく、彼女にかけられた『登校地獄の呪い』の解呪を試みる近右衛門!しかし学園最強最高の魔法使いである彼を以てしても、それは困難を極めていた!
 何故ならサウザンドマスターがかけた呪いは、そう簡単に解けるような代物ではなかったのだ!!

エヴァ
「さっきちょろっと水晶玉で遠視しのぞいてみたが、"アレ"はあのガキどもには荷が重過ぎるぞ!」
近右衛門
「むむ…しかしのぅ…。完全には無理でも一時的な解呪ならできると思うたんじゃが…」


 …………………。

 ……………。


近右衛門
「や、無理じゃ(´∀`;)」
エヴァ
「(♯▼□▼)」

 頑張れ近右衛門!負けるな近右衛門!諦めるなエヴァンジェリン!!

茶々丸
「(ガチャッ)マスター。言われたとおり装備を整えて姉さんを連れてきました。……どうしたのですか?」
チャチャゼロ
「何カ不穏ナ空気ダナ。ケケケ」

 ネギ達の未来は、君たちの手にかかっている!!



〜補足・解説〜

>鬼神来迎
 「来迎」…神仏が死者を迎えに降りてくること。
 これは作者個人の偏見だが、「死者を迎えるために現れる」という点ではまるで死神の様にも聞こえる。
 ちなみに「鬼来迎」という民族芸能があるらしい。

>全裸のからだ
 「体」や「身体」より、「躯」の方がエロいかなって…(笑)
 も、申し訳ない!悪気はなかった…本当だ信じてくれ!!あったのは下心だけなんだ!!

>木乃香が苦悶の声を出す。
 原作では「気持ちいい」という表現でしたが、それだと締まりがないのでシリアス「らしく」苦悶の声という表現に。…悶えるという点では共通している。

>「――雷ッ!光ォオ剣ッッ!!!」
 原作で若い頃の詠春が「らいっ」「こぉ――けん!!」と言っているシーンが好きなので、それを出来るだけシリアスなイメージで再現してみました。

『雷光剣』:
 神鳴流剣技のひとつ。"気"によって剣に電気エネルギーを帯電させて振り抜き、広範囲に爆発を引き起こす。原作では若い頃の詠春が球状のエネルギーを敵に放つシーンがある。
 今回はこれを至近距離からフェイトに叩きつけた。

>あなたに口出しされる問題ではありません
 フェイトの外見からすれば「君」と呼びそうなものですが、詠春は彼を「二十年前に見たアーウェルンクス」として捉えているため、「あなた」という呼び方をしています。

>「京都神鳴流剣士―――――――近衛詠春、推して参る」
 関西呪術協会長の肩書きではなく、一人の剣士として、一人の親として。
 あくまで個人での戦いを挑む詠春の決意とスタンスを現しています。

>《ガハハハッ!!潰したか!?》
 「やったか!?」→やられてない。
 というあまりに分かり易いフラグなので直そうかと思いましたが、やられ役の負け台詞なので「まあいいや」とそのままに。

>『鶴翼攻究・襲』
 Fate格闘ゲームの技が元ネタです。ちなみに私は未プレイなのでネット知識。
 ジャンプ後に落下しながら干将・莫耶で斬りかかる"襲"の他に、"薙"、"昇"、"突"があり、それぞれ名前のとおり薙ぐ、斬り上げる、突くというバリエーション。

全投影イルシオーニス待機エクスぺクタ
 イルシオーニスは「幻想(illusio)」の複数系、エクスぺクタ(expecta)は「待つ」「待機」という意味。

>アデアント
 アデアット(来れ)の複数系。出典は原作より。

>『剣林弾雨』
 『鶴翼攻究』と同じくFate格闘ゲームから。元になった技は「アンリミテッドブレイドダンス」。
 ネギま!の某委員長やエヴァが使う魔法とは別モノです>『氷槍弾雨』

>いけず
 意地悪な人、という意味。
 決して作者のように、寿司屋や料亭に置かれた「生け簀」と混同しないように!(赤面

>「小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ!その羽ばたきを害毒なる鏃と成せ! 『石の槍』!!」
 原作に『石の槍』の詠唱文は登場しないので、これは完全に捏造です。ただし途中までは原作の石化呪文のテンプレを引用しました(小さき王〜主よ)。
 『石の息吹』や『石化の邪眼』に倣い、バシリスク及びコカトリスをモチーフとしています。バジリスク(とコカトリス)の外見における一説には「ニワトリに似た風貌である」とあり、「羽根を射出して攻撃する」イメージで詠唱文を作りました。

>あなたは…『あなた達』は何を企んでいるのですか!!」
 一応原作に従って、この発言の意図や「あなた達」の正体には言及しません。

>彼女を拾って空に離脱した。
 「離脱させずにネギが遠距離から魔法で気を引いている隙に、明日菜がハマノツルギで叩けばよかったんじゃないの?」と思う方がいるかもしれません。ええ、それがベストでしょうw
 しかしネギと明日菜はまだこの時点では、そこまでのコンビネーションを執れるほど信頼が無いので無理です(この頃のネギは明日菜を魔法関係に巻き込みたくない、危ない目に遭わせたくないと言って頼らないので、積極的に戦力に組み込まない)。
 でも一番の理由は「ここでネギに活躍させないと見せ場がねえ…!!」という演出の問題ですww

>なんやなんや?こんなんで儂を倒せる思うとるんか!?》
 この小説ではルビカンテを会話させる事になりましたが、原作ではあまり喋らないので勝手に関西弁にしました。

乗杖飛行ウォラーレ・ヴィルガ
 ラテン語のスペルは「volare virga.」、直訳は「杖が飛ぶ」「飛ぶ杖」など。
 「最大加速」の「マークシマ・アクケレラティオー」は原作参照。

>何だこの威力は!?)
 小太郎との実戦で成長し、(元々持っていた膨大な魔力容量のうち)扱える魔力の量が増大したため。

>永き封印を破り
 18年が封印期間として「永い」と言っていいのかは知りません(オイ
 しかし某悪魔伯爵が6年間の封印で愚痴愚痴言っていた様子を見るに、長寿な種族であっても封印されるのは堪ったものではない様子です。

>サウザンドマスターによってようやく封印された
 「サウザンドマスターでもようやく封印できた」という意味ではなく、「サウザンドマスターでなければ封印は難しかっただろう」という意味です。本人は余裕だったでしょうけど。

>規格外の巨神兵
 巨神兵とは「おおいなるつわものの神」なので、戦う神なら誰でも名乗れると思いました(安易)。

>今まで潜り抜けてきたどんな死線も。
 @六年前の出来事:???
 A図書館島:地底で遭難した(衣食住保障・学園長及び士郎の監督付き)
 BVSエヴァンジェリン:危うく死ぬまで血を吸われる所だった(エヴァに殺す気はなかった)
 CVS小太郎:直撃したら死ぬ恐れがある威力のパンチで殴られた(魔法障壁で何とかダメージ軽減)

 今までネギが経験した死線のうち、実は半分は命の危機ではなかったという事実w
 そして自力で乗り越えたものは一度だけ(C)。しかしそれすらも万が一に備えて士郎が近くに来ており、結局小太郎を倒したのも士郎。ネギがどれだけ周囲の人々や環境に守られているのかが分かります。
 要するに「テメーが本当に自力だけで乗り越えた修羅場なんて一度も無かったんだよお坊ちゃんが」状態。

>今まで潜り抜けてきたどんな死線も。目の前に聳え立つ絶望ほどではなかった
エヴァ「あん?(ギロッ)」
ネギ「ひぃっ!?」
近右衛門「じゃが、エヴァは子供は殺さんからのう」
士郎「本当に殺す気があるか無いかじゃ、殺気もだいぶ違うしな」
エヴァ「…ほーう?そうかそうか、私は遊び過ぎてぼーやに舐められていたのか…」
ネギ「そ、そんな事言ってませんよーーー!?」
エヴァ「お望みどおり本気の殺気を当ててやる。気絶したら血を吸うからな?精々気を張れ」
ネギ「きゃーーーーーーーーーーーっ!!!」

>始動キー!?コイツ西洋魔術師か!!
 読者様方には判りきったことですが、ネギ達はこの時点まで知りませんでした。
 本編中では詠春しかフェイトの詠唱を聞いておらず、また彼についてある程度知っている士郎と合わせ、「フェイトは西洋魔術師(魔法使い)」という認識はこの二人しか持っていませんでした。

>「サムライマスター」の二つ名を戴く者――――!!
>……湖に沈んだ。
 今回はずっと詠春のターン!!…かと思いきやそんな事は無かったぜ!!

>水晶玉で遠視してみた
 学園長室に置いてあった近右衛門の水晶玉を借用。

>装備を整えて
 エヴァ邸にある茶々丸の自室その2(という名の武器庫)に格納された、超印の武装。ただし性能はこの時代の最先端科学と魔法を組み合わせれば再現できる程度の能力に抑えられています。



【次回予告】

 ―――――羽根が舞う。
 月の光に照らされて、舞い散る羽根が光を放つ。

 山々に囲まれた湖。晴れ渡った夜の三日月。輝き踊る白い羽根。
 幻想的な光景に、二人はきっと魅入られている。

 羽撃はばたく音が木霊する。
 数多の想いを振り切って、彼女は桟橋から飛び立った。

「天ヶ崎千草。お嬢様を返してもらうぞ!!」


 次回、ネギま!―剣製の凱歌―
 「第26話 京都決戦編・参 白烏の覚醒め」


「キレーなハネ……なんや天使みたいやなー……」


 それでは次回!!

■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
 誤字脱字・タグの文字化け・設定や展開の矛盾等お気づきの点がありましたら、感想にてお知らせください。
テキストサイズ:30k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.