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Fate/ZERO―イレギュラーズ― 第27話:六陣営会談・序
作者:蓬莱   2013/03/27(水) 23:34公開   ID:.dsW6wyhJEM
―――突然、空に巨大な骸骨のような城が現れた。
笑うなと前置きをした管制官の口から出たその言葉に、F15戦闘機にて領海哨戒中だった仰木一等空尉は思わず笑いを堪えることが出来なかった。
とはいえ、如何に馬鹿げた内容とはいえ、正式な指令である以上、無視するわけにもいかなかった。
結局、仰木は、僚機のパイロットである小林三等空尉と共に、互い冗談交じりの軽口を叩きながらも騒動の舞台となっている冬木市へと向かっていった。
そして―――

「何だ…あれは…?」

―――仰木は眼前に見える現実離れした光景―――上空に浮かぶ巨大な骸骨に築かれた城にそう呟かずにはいられなかった。
何とか正気を保ちつつ、仰木は無理やり思考を働かせながら、自身の頭がおかしくなってしまったという事も含めて、ありとあらゆる錯覚の可能性を検討した。
だが、僚機の小林も、音声越しでも分かるほどの動転している様子から、仰木は上空に浮かぶアレが幻覚でない事を理解せざるを得なかった。

『コントロールよりディアボロT。状況を報告されたし』
「報告は―――いや、その―――」

管制官からの状況報告の催促が来るが、仰木は人知を超えた現象を前に、言葉で説目することができなかった。
説明をするためには先立つ認識が必要不可欠なのだが、今の仰木には、上空に浮かぶあの骸骨の城が何であるのかという事の認識さえままならない状態だった。

『もう少し高度を上げて、接近してみます』
「ま、待て、小林!!」

とその時、僚機の小林が痺れを切らしたのか、仰木に連絡を取ると同時に、上空に浮かぶ骸骨の城へと近づき始めた。
咄嗟に、直感的に何か嫌な予感を覚えた小林は、慌てて僚機を制止しようとするが、すでに小林のF15は骸骨の城をめざし、急上昇を始めていた。

「戻ってこい、ディアボロU!!」
『もっと間近から視認すれば、あれが何なのか…え?』

必死になって戻るよう説得する仰木に対し、小林はあの骸骨の城が何であるのかを知るために、さらに上昇を続けた。
やがて、小林のF15が骸骨の城のすぐ間近にまで迫ってきた瞬間―――上空に浮かんでいた骸骨の城は、仰木と小林の前から忽然と姿を消した。

『き、消えた…?』
「馬鹿な…!! あれだけ、巨大なモノがどうして…!?」

突如として消えてしまった骸骨の城に、小林と仰木は声をそろえて驚きながら、慌てて、骸骨の城が存在したと思しき位置にまで上昇した。
だが、仰木と小林のF15がその場所に辿り着いた時には、もはや、存在していたはずの骸骨の城はまるで初めからそこに何もなかったかのように姿はなく、ただほの暗い闇夜が広がっているだけだった。

『コントロールより、ディアボロT。応答せよ。報告を』
「こ、こちら、ディアボロT…城が、骸骨みたいな城が上空に浮かんでいたのだが、突然、その、姿を消して…」

次々と起こる人知を超えた現象を前にして、自身の正気さえ疑い始めていた仰木は、報告を求める管制官からの再度の通信が入っている事に気付いた。
もはや、自身の常識を超えた現象を前に思考停止寸前だった仰木は、自分が何を言っているのか自覚しないまま、目の前で起こったありのままの出来事を伝えるしかなかった。

『…そうか。では、今すぐ、帰投せよ』
「え? コントロール…それはいったい、どういう…?」

だが、管制官から出た帰投命令を聞いた瞬間、正気を取り戻した仰木は思わず耳を疑ってしまった。
仰木からすれば、あれだけの異常事態が起こったにも関わらず、何の調査もすることなく、すぐさま帰投命令が出た事に疑問を感じずにはいられなかった。
とりあえず、仰木は、どういう事情でそうなったのか、通信を行っている管制官に尋ね返した。

『もう一度、復唱する。今すぐ、偵察任務を中断し、ディアボロT、ディアボロUは直ちに基地に帰投せよとの事だ。これは上からの命令だ』
「…ディアボロT、了解。直ちに、本機は偵察任務を中断し、基地に帰投する。通信終了」

だが、管制官も事情が知らされているわけでは無いのか、仰木の質問に答える事もなく、管制官自身も納得しかねる様子が分かるほど投げやりな声で命令の復唱を求めてきた。
この管制官の言葉を聞き、もはや、この命令に従うしかないと判断した仰木は通信を終えると、僚機の小林と共に、F15を反転させ、基地へと帰投するしかなかった。
だが、この街で何かが起ころうとしている事だけは確かだ―――帰投するF15のコクピットの中で仰木は、現実離れした現象を体験した中で、そう確信していた。



第27話:六陣営会談・序



仰木と小林が基地へと戻り始めた頃、銀時らは、上空に浮かんでいた骸骨の城―――ヴェヴェルスブルク城へと辿り着いていた。

「さて、向こうの招きに応じて、やってきたのは良いんだけど…」

だが、ヴェヴェルスブルク城に来たセイバーであったが、どうしても城の門に手をかけることに躊躇していた。
なぜなら、セイバーからすれば、骸骨という死を連想させる見た目だけでなく、一歩でもこの城に入れば、一瞬でも隙を見せれば、その瞬間、魂ごと城に飲み込まれるという感覚に苛まれていたからだった。
ここから先はまさしく死地―――嫌でもそれを思い知らされたセイバーは、息を呑みながら、この会談が一筋縄ではいかない事を予感していた。

「「んじゃ、お邪魔しまーす」」
「…軽っ!?」

…もっとも、そんなセイバーのシリアス加減など関係ねぇと言わんばかりに、銀時とアーチャーは、まるで知り合いの家に遊びに来たような感覚で、ヴェヴェルスブルク城の城門から気軽に入っていった。
―――こいつら、折角、私が作った張り詰めた空気をあっけなくぶち壊しやがった!?
―――というか、今の私、滅茶苦茶恥ずかしいんだけど!?
そんな無駄にシリアスを決めてしまった自分に、セイバーは真っ赤になった顔を手で隠しながら、厨二病を発症してしまったような恥ずかしさを感じるしかなかった。


「外見は随分と凄かったけど、中は案外、普通みたいね…」

その後、ヴェヴェルスブルク城へと入った銀時達は、第一天の案内で六陣営会談の会場―――へと向かっていた。
その途中、ヴェヴェルスブルク城の周囲を見渡していたアイリスフィールは、城の柱を触りながら、少し意外そうに、実家であるアインツベルン城と比べての感想を口にした。
アイリスフィールの見たところ、悪趣味ともいえる骸骨を模した外見とは異なり、城の内装についてはそれほど際立ったものでないように思えた。

「どうかしたの、銀時? さっきから、顔色が悪そうなんだけど」
「いや、別に…!! まぁ、単なる気のせいだと思うんだけどよ…」
「?」
「なぁ、第一天のねえちゃん―――」

とここで、アイリスフィールは、ヴェヴェルスブルク城へ入ってから、妙に銀時の顔が青ざめている事に気付き、心配そうに声をかけた。
そんなアイリスフィールに対し、銀時は口でこそ何ともないと言い張るが、妙に周囲をキョロキョロと忙しなく目をチラつかせていた。
そんな挙動不審な銀時の様子に、アイリスフィールは首を傾げた時、周囲の壁に手を当てていたアーチャーが何かに気付き、先頭に立つ第一天に尋ねた―――

「―――この城って、何人でできているんだ?」
「え…!?」
「やっぱりね…」

―――このヴェヴェルスブルク城を構成する人間の数を!!
そして、アーチャーの質問の意味がどういう事なのかに気付いたアイリスフィールは思わず驚きながら、それまで触っていた城の柱から慌てて手を放した。
一方、セイバーは、アーチャーの質問を聞くと、城に入ってから探査機能を展開してから、周囲のあらゆる場所から霊的反応が見られた理由が分かり、なるほどと納得した様子で周囲を見渡した。

「数百万人の魂だ。お前の察する通り、この城は、“黄金の獣”―――ラインハルトの取り込んだ死者の魂によって構成された城だ」
「数百万人ですか…」

そして、第一天は、アーチャーの質問に答えてから、ヴェヴェルスブルク城が骸骨を模した見た目だけでなく、城そのものが数百万という死者の魂で築かれた魔城であることを教えた。
これには、さすがの舞弥も顔をやや青褪めながら息を呑むと同時に、拠点にて待機している切嗣がこの死者の城に来なかった事に安堵していた。
それほどまでに、ラインハルトの居城であるヴェヴェルスブルク城は、切嗣にとって断じて受け入れがたいモノだった。

「もしや、戒様の言っていた厨二病患者御用達の力なのでありますか?」
「まぁ、厨二病患者と言うのはともかく…確かに、この城は、ラインハルトの渇望を具現化した結果、覇道型の創造として生み出されたものだ」

ふとここで、ホライゾンは、この数百万の魂で造られたヴェヴェルスブルク城が、以前、第一天の精神世界に向かった際に、戒から説明を受けた厨二病患者御用達の力―――“創造”の類ではないかと尋ねた。
―――何とも容赦のない娘だなぁ。
そして、自分もそんな末期的厨二病患者である事を自覚していない第一天は、さり気無く毒舌を発揮しているホライゾンに末恐ろしいものを感じつつも、“黄金の獣”であるラインハルトの司る“修羅道至高天”の理についての説明をした。
そもそも、この創造は、ラインハルトの持つ“総てを全力で愛したい”という渇望を元となっていた。
一見すれば、“黄昏の女神”であるマリィとよく似た渇望なのだが、ラインハルトの場合は、自分の愛したモノを“破壊”という形でしか愛せないという致命的な問題が有ったのだ。
―――抱擁はおろか、柔肌を撫でただけで壊れてしまう。
―――けれど、破壊することを恐れて愛さないのは、愛しいモノ達を蔑にしているに他ならない。
―――だが、愛する者を壊して喪うなど望むところではない。
そして、“総てを壊してでも全力で愛したい”と“愛する者を喪いたくない”という矛盾した願いの果てに生み出されたのは、“永遠の闘争によって総てを破壊”し、“破壊したモノを蘇生させる”という理として顕現される事となった。
そして、ラインハルトの世界においては、北欧神話にて登場するヴァルハラのように、人々は戦いによって殺し合い、死んでもまた蘇りを繰り返しながら、ラインハルトの戦奴として永劫の闘争を続けるのだ。
数多の戦争英雄を進軍し、終わることなき闘争を永劫繰り返す悪鬼羅刹の極楽浄土“修羅道・至高天”―――それが、戦争狂以外の人間にとって地獄に他ならない、“黄金の獣”であるラインハルトの世界だった。

「つまり、どんな過激なツッコミを入れられても、ボケ役は大丈夫って場所って訳か。そう考えると、すげぇ面白そうな所じゃん」
「Jud.トーリ様のボケ術式をバージョンアップした感じの厨二病能力でありますね」
「それを聞くと、とんでもなく物騒なところの筈なのに、一気に安っぽい感じに格下げされたような気がするのが不思議よねぇ…」

もっとも、アーチャーやホライゾンの言う通り、“破壊を前提とした蘇生や不老不死”という性質上、ある意味で致死確定の爆破オチやろうが、次の週では何事もなかったかのように復活しているギャグ空間を体現しているという面もあるのだが。
このアーチャーとホライゾンの発言を聞いたアイリスフィールは、そう考えると少しだけ気持ちが楽になるかなと思いながら、笑みを浮べて頷くしかなかった。

「とんだ城に招かれたものね…って、銀時、何しているのよ?」

とはいえ、戦をなくすための善悪相殺を掲げるセイバーからすれば、第一天の“二元論”と同じくらい、人々を不死の戦奴として永劫の闘争を繰り返すラインハルトの理を体現したヴェヴェルスブルク城は、邪神の理を体現した碌でもないモノ以外の何物でもなかった。
そんな嫌悪感を隠すことなく吐き捨てるように呟いたセイバーであったが、ふと、いつの間にか銀時が元来た道へと戻ろうとしている事に気付いた。

「いや、ちょっと、用事を思い出したから、一旦、帰らせてもらっていいかなぁ…ほら、切嗣がボッチだからさぁ…」
「はぁ…何言ってんのよ、銀時。さっきまで、ノリノリで参加するつもりだったじゃないの」
「いや、そうなんだけどさぁ…実は、今週号のジャンプが今日発売だったのを思い出したんだよ。だから、ちょっと…」

不意にセイバーに呼び止められた銀時は、若干、ぎこちない動きで振り返ると乾いた笑みを浮べて、切嗣のいるアインツベルン城へ戻ろうと言いだした。
この銀時の言葉に対し、セイバーは、ヴェヴェルスブルク城に入るまでは、あれだけ行く気満々だった銀時の態度の代わりように思いっきり怪しみながらツッコミを入れた。
このセイバーの追及に、微妙に目逸らした銀時は、苦し紛れの言い訳を口にして、何とか帰ろうとする理由を作ろうとしていた。
ちなみに、今日の曜日は、金曜日なので、銀時の言うジャンプの最新号はまだ発売されてはいないはずである。

「…もしかして、銀時って、幽霊が怖いじゃねぇの?」
「ば、ばばばばばば、馬鹿言ってんじゃねぇよ、全裸!! いきなり、なななな何言ってんだよ!! 幽霊が怖いとかそんなんじゃねぇから!! 幽霊なんているわけねぇし!! あれだろ、これは、そのラインハルトって奴のスタンドだろ!? あの第三部で出てきたオラウータンとかOVAで色々とはちゃけた婆さんみたいな感じのスタンドのお城版だろ!!」
「もはやわかってくれと言わんばかりに、ビビッていますね、銀時様」

とここで、銀時とセイバーのやり取りを見ていたアーチャーは、銀時は幽霊が苦手なのではと察して、だから、ある意味で幽霊屋敷といっても間違いではないヴェヴェルスブルク城から帰りたいのでないかと言った。
すかさず、図星を突かれた銀時は、アーチャーの襟首を掴んでガクガク揺らしながら、幽霊が苦手である事は、もちろんのこと、ヴェヴェルスブルク城を、ラインハルトのスタンドであると言い出して、幽霊なんか断じていないし、怖くなどないと、何とか誤魔化そうとした。
もっとも、ホライゾンのツッコミの通り、あまりに必死になって否定する銀時の姿は、誰の目から見ても、自分から幽霊とかが苦手である事をバラしていた。

「はいはい…んじゃ、さっさと行くわよー」
「ちょ、セイバー!! たんま、たんま!! だから、今週号のジャンプが、まだ…!!」

英霊が幽霊にビビッてどうするのよ―――そう呆れて、ツッコミを入れるのさえ面倒になったセイバーは、必死になって怖がってなどいないと主張する銀時の右手を掴んで、城の奥へと引き摺り始めた。
これには、銀時も慌てて、セイバーに引き摺られまいと、未だにジャンプの購入を理由に、逆方向に逃げようとした。

「それなら、大丈夫だ。ちゃんと城の売店で、その手の雑誌を取り扱っているはずだ。やはり、ドイツはこういう方面できっちりしているな」
「何で、こんな物騒な城で売店があるの!? つうか、どっから、ジャンプを仕入れてんだよ!! むしろ、業者さんまで取り込んでんじゃねぇか、ここ!?」

だが、今度は、第一天が、ヴェヴェルスブルク城の売店にてジャンプが発売しているからと逃げ道を塞ぎつつ、色々とツッコミを入れる銀時の左手を掴んで同じように引き摺り始めた。
そもそも、こんな場所で、誰がジャンプなんて読んでいるんだよぉおおおお!!―――そんな叫び声を城中に響かせながら、セイバーと第一天に引き摺られた銀時は城の奥へと消えていった。



その後、セイバーが何度か逃げ出そうとした銀時を無理やり縛り上げた後、一同は、六陣営会談の会場となる広間の扉の前に辿り着いた。

「どうやら、ここのようね…って、何やってんのよ、銀時!?」
「来ちゃったよ…マジで来ちゃっ―――んじゃ、失礼しまーす!!―――ちょ、待て、全裸ぁああああ!! まだ、心の準備が!?」

いよいよ、この中で始まろうとする六陣営会談を前に、セイバーは、今後の聖杯戦争の動向を左右する事もあり、張り詰めた表情を浮かべていた。
一方、ミノムシ状態にまで縛り上げられた銀時の方は、顔が青ざめ、もはやいつ気絶してもおかしくない虚ろな表情でうつ状態になっていた。
とここで、銀時は、アーチャーがいつもの空気を読まない軽い口調で扉を開けようとしている事に気付いた。
大慌てでアーチャーを制しようとする銀時の叫びもむなしく、扉が開かれ―――

「だから、そろそろ離れろって!!…何で、胸を押し付けながら、俺の背中に隠れているんだよ、お前は?」
「だ、だって、幽霊よ、幽霊!! ここ、幽霊屋敷よ!? どうなるか解ってんの!? 散々イチャイチャした後で、一人になったところを狙われたらどうするの、アンタ!!」
「だから、何度も説明するけど、ここはそういう場所でも、俺とお前はそういう関係でもねぇから!!」

―――ある意味、幽霊よりも怖い修羅場が展開されていた。
この状況をどうすりゃいいんだよ!?―――そんな事を考えつつ、頭を抱えるしかない蓮は、ひとまず、背中に胸を押し付けるように引っ付いている喜美に離れるように言った。
だが、銀時と同じく幽霊関連が大の苦手な喜美は、いつもの余裕のある態度からは想像もできないほど取り乱し、何やらメタ的な事を力説して、ますます強く抱きしめてきた。
普通の男ならば鼻の下を伸ばすような状況だろうが、当事者である蓮にしてみれば、絶体絶命の窮地以外の何もでもなかった。

「蓮…やっぱり…」
「…不潔ね」
「サイテー」
「うん…色々とあざといね、藤井君」
「マリィも含めて、お前らはもうちょっと俺を信じてくれよ!? 別に浮気とか不倫とかじゃねぇから!!」
「「「「…」」」」

―――可愛らしく頬を膨らませながら、拗ねるようにそっぽ向くマリィ。
―――無表情でばっさりと吐き捨てるように断言する螢。
―――半眼で睨み付けながら、唇を尖らせるアンナ。
―――巨乳娘と書かれた札を張った藁人形と五寸釘をチラつかせる玲愛。
追い打ちをかけるように、蓮の背後では、この蓮と喜美のやり取りを見ていたマリィ達が絶賛フリン状態(?)の蓮に対し、様々な反応を取っていた。
あまりの女性陣からの信用の無さに泣きたなってきた蓮は必死になって弁解を試みるが、女性陣はただ半眼で疑いの眼差しを向けるだけだった。
もはや、自分だけではどうにもならないと判断した蓮は、何とかこの場を収めてくれそうな奴がいないか視線を動かして探した。

「ホント若いっていいわよねぇ〜」
「まぁ、そうだな…」

―――こっちは必至だってのに面白がってんじゃねぇよ!?
まず、ランサーは、気の毒そうに見守るケイネスに話しかけながら、この状況を面白がって観戦している様子だったので真っ先に除外した。
他にも、蓮の見た限り、ランサーは蓮の悪友と似たような雰囲気であることから、明らかにこの場を収めるよりも、今以上に引っ掻き回される可能性が高いと判断せざるを得なかった。

「よ、余裕を以て…優雅た、れ…!!」
「すみません…もう一本、胃薬を持ってきてください」

―――明らかに胃痛がクライマックスになっているよ、あのマスター!?
続けて、ある意味において、喜美のマスターでもある時臣は、正純を介して、配膳係の骸骨(メイド服)が持ってきた胃薬を貪るようにゴリゴリと飲み続けていた。
唯でさえ、アーチャーの奇行により神経をすり減らしている時臣に、これ以上のストレスを与えれば、憤死しかねない様子だったので除外するしかなかった。
ちなみに、他にもアーチャーの関係者と思しき連中も来ていたが、色々と不穏な予感がしたのでスルーすることにした。

「…(ニヤリ」
『おい、綺礼…さっきから色々と本性出ているぞ、何か駄目な方向で』

―――というか、うちの似非神父といい、ここの神父といい、神父には変人しかいないのかよ!?
そんな時臣の隣に座っている綺礼は、宝具であるトランプカードを介していたアサシンの呆れ交じりの指摘の通り、知らず知らずのうちに、うっすらと笑みを浮べていた。
どうやら、ラインハルトとの邂逅で何かに目覚めかけたのか、綺礼は、蓮と時臣の不幸な姿に愉悦を感じているようだった。
神父という人種には碌な奴はいない―――蓮は、身内である某鍍金神父と比較しながら、そう思わずにはいられなかった。
当然のことながら、そんな綺礼に場を収めさせようものなら、色々と二次被害を拡散されそうなので、当然のごとく除外した。

「おのれ…マリィ御姉様というものがありながら…!!」
「嬢ちゃん…ここ、最近で、ほんま、色々と変わったもんやなぁ…」
「はっははははは!! なるほど、これもまた絆の一つと言うものだな」
「いや、ライダー…あれは絆っていうより、むしろ、修羅場というべきだと思うんだけど…」

―――いつの間に、あの馬鹿娘、マリィのスールになったんだよ?
―――後、ライダー!! いくら何でも、こんなドロドロした絆はねぇから!!
最後に、キャスターとライダーは、蓮の知る限りでは、この面子の中では比較的常識人であり、蓮にとっての最後の希望である―――はずだった。
だが、蓮の期待に反して、キャスターは、マスターである真島を思わず呆れさせるほど、神聖な巨乳(マリィ)より外道な巨乳(喜美)にうつつを抜かしている蓮に憤怒と嫉妬交じりの感情を露わにしていた。
さらに、ライダーに至っては、マスターであるウェイバーの指摘するように、何か色々と勘違いしている様子で、うんうんと頷きながら、微笑ましく見守っている始末だった。
結局のところ、蓮は、キャスターもライダーも、この場を収めるという事に関しては当てにできないという事を理解せざるを得なかった。

「おい、そこの変質者!? 何、ニタニタ笑ってんだよ…」
「いや、大したことではないのだが―――」

とここで、蓮は、やけにいやらしい笑みを浮べる変質者―――メルクリウスが目に付いた。
蓮としては、喜美やマリィ達の事で一杯いっぱいなので、厄介事しかやらない変質者をできればスルーをしたかった。
だが、同時に、どのみち、無視しても碌な事にはならないという予感もあった蓮は、笑みを浮べるメルクリウスを訝しむように睨み付けた。
そんな蓮に対し、メルクリウスは少しだけ前置きを述べた後―――

「―――マルグリットの可愛く頬を膨らませながら拗ねる仕草に、下品とは分かっているのが、思わず勃…」
「おい―――ブチッ!!(堪忍袋の緒が切れる音)―――いい加減にしろやぁ、この変態水銀!! とっくの昔に枯れ果てたもんを、ここで復活させてんじゃねぇよ!! てめぇは、どっかの手首フェチな殺人鬼か…はっ!?」

―――銀時達との接触でGM粒子の影響をもろに受けているのか、明らかにイっちゃってますと顔を赤らめながら、いつも以上の変態っぷりを発揮しつつ、爆弾発言をぶちかました。
もはや我慢の限界に達した蓮は、堰を切ったように感情を一気に爆発させると、アインツベルンの森で見せた姿に変身しながら、メリクリウスに引導の一撃を叩き込まんとした。
そして、勢いに乗った蓮が色々とメタな発言をした瞬間、ようやく、蓮は、セイバーと銀時がこちらをジッと見ている事に気付いた。
後に蓮は、その時のセイバーと銀時の目を見たときに感じ取った事を、一番の親友にこう述べていた―――まるで、これから精肉加工場へと出荷され、スーパーで売られたまではいいものの、結局、賞味期限切れで廃棄されるような末路を辿る豚を見るような冷たい瞳だったと。

「…失礼しました。何かお取込み中だし、帰るわね」
「あぁ、後、数時間後ぐらいなら終わっているだろうぜ…どういう終わり方にしろ」
「ちょ、待てぇえええ!! この状況で俺を見捨てるなぁああああああ!!」

そして、互いに顔を見合わせたセイバーと銀時は、そそくさと扉を閉めると、淡々と足早にその場から去り始めようとしていた。
てめぇの浮気はてめぇで蹴りを付けろ―――そう無言で訴えるセイバーと銀時の後姿は、どう見ても、浮気をやらかした蓮を見捨てる気満々という雰囲気だった。
―――本当にどうしてこうなった!?
予想の斜め上を行く混沌とした状況に翻弄されっぱなしの蓮は、慌てて帰ろうとする銀時らを呼び止めながら、そう思わずにはいられなかった。



その後、遅れてやってきたラインハルトによって事態の収拾が図られる事になった。
ひとまず、ラインハルトは会談終了後に蓮に浮気問題についての裁判を執り行うという事で、怒れる女性陣を宥めて、六陣営会談の体裁を整えるに至った。

「さて…まずは、卿らが、我らの招きに応じてくれたことを心より感謝しよう」
「えぇ、それはどうも…その割には随分と乱暴な招待の仕方だったようだけど」

まず、ラインハルトは、この場に集まった六陣営のサーヴァントとマスターにむけて賛辞の言葉を送りながら、普段通りの態度で、場を取り仕切り始めた。
天上天下唯我独尊―――一軍程度ならば容易く壊滅させるほどの戦力に匹敵する六体のサーヴァントがいるにも関わらず、ラインハルトが揺らいでいる様子はまったくといっていいほどなかった。
ともすれば傲慢とさえも取れるほどの余裕を見せるラインハルトに対し、アイリスフィールは、ラインハルトのそれに飲まれまいと、普段の和やかな貞淑さを潜ませ、俄かに凄みを帯びた女帝の貫録を示すことで対抗しようとした。

「魔術の秘匿…あぁ、そういえば、この世界の魔術師らの鉄則であったな、カールよ」
「然り。故に、多くの衆目の眼前で、獣殿が堂々と城を呼び出したために、今頃、魔術協会及び聖堂教会において、大小様々な問題が起こっているのは明白と見るべきかと思うが」

しかし、ラインハルトは、そんなアイリスフィールの貫録を歯牙にもかけず、自身の不徳―――堂々とヴェヴェルスブルク城を衆目に晒してしまった事を思い出しながら、少々やりすぎてしまったかと、隣にいるメルクリウス(賢者タイム中)に尋ねた。
それに対し、メルクリウスも、ラインハルトが、この世界における魔術の秘匿を破った事で、各方面で多大なる迷惑をこうむっている可能性がある事をどうでも良さそうに告げた。

「なるほど…確かに、全てのマスターとサーヴァントをここに呼び出すためとはいえ、それについては些か礼に反する事だったようだな。すまぬ、こちらの非礼を詫びるとしよう」
「…っ!!」

そして、それを聞いたラインハルトは、アイリスフィールに向かって、自分の不徳を素直に認めると、恭しく謝罪した。
一見すれば謙虚とも取れるラインハルトの態度であったが、実際のところ、それは、王者の目線として遥か高みから見下ろすような傲岸不遜さに他ならなかった。
そんなラインハルトの統べる者としての格を見せつけられ、アイリスフィールは言葉を失って、ただ、悔しそうに押し黙るしかなかった。

「…それより、先ほどから気になっていたのだが…なぜ、この会談に明らかに子供や一般人、後…大型類人猿まで紛れ込んでいるのか一つ聞かせてもらいたいところなのだが」
「…って、何で、ゴリラ扱いなんだよ!? 俺も人間だから!?」

とここで、護岸不遜なラインハルトに対し、ケイネスは、この会談に明らかに場違いの人間たちとゴリラ―――凛や大河ら、近藤(ゴリラ)がいる事について、皮肉を交えながら問い詰めてきた。
ちなみに、ケイネスに、ゴリラ扱いされた近藤が抗議の声を上げたが、皆、ゴリラの鳴き声や幻聴という事で聞き流すことにした。

「無論、彼らを、私がこの城に招きいれる客人として認めた故だ」
「ほう、客人ねぇ…なるほど、魔術の秘匿すら知らん素人の見る目など―――」

当然のことながら、ラインハルトは余裕の態度で、簡潔に、凛や大河らをヴェヴェルスブルク城へ招くことを良しとした事を話して、ケイネスの質問に答えた。
それを聞いたケイネスは、凛達を値踏みした後、失笑と共に目を伏せつつ、小馬鹿にしたように鼻を鳴らしながら、たっぷりと皮肉を込めて返答しようとした。
この時、ケイネスとしては、ラインハルトの落ち度を突くことで、不遜なサーヴァントもどきの鼻の柱をへし折るだけでなく、この会談での主導権を握りつつ、自分たちの優位を確保しようとする狙いがあった。
だが、この時、ケイネスは過ちを犯してしまった―――よりにもよって、この城の中において、もっとも、ラインハルトに忠を誓う女傑の耳に入ってしまったのだから。

「下らん戯言は慎んでもらおうか、魔術師」
「―――なっ!?」

その直後、ケイネスは、有無を言わさないような命令に近い制止の声と共に、叩き付けられた殺気を受け、思わずハッとして目を開けた。
そこには、無数の銃身を背後から出現させた、ポニーテールに纏めた赤い髪と左半身を縦に走るような火傷の跡が特徴的な女―――“赤騎士”エレオノーレ=フォン=ヴィッテンブルグが、主であるラインハルトへの侮辱の言葉に静かに怒りながら、突然の事にたじろぐケイネスを見下ろしていた。

「随分と口が過ぎたな。たかがマスターの分際で。私にとって、ハイドリヒ卿の招いた客人の侮辱は、すなわち、ハイドリヒ卿への侮辱と同義だ…その舌の根ごと灰を残さず焼き尽くすぞ、魔術師」
「…っ!!」
「はいはい…そこまでにしてもらおうかしら」

そして、エレオノーレは、噴火寸前の活火山のように、淡々とではあるが、静かな憤怒を込めた口調で、ラインハルトを侮辱したケイネスを威圧しながら、背後に展開した銃口を一斉にケイネスへと向けた。
この強烈な殺気を叩きつけられたケイネスは息をのみつつ、銃口を突きつけるエレオノーレが冗談でも脅しでもなく、本気で自分を殺すつもりなのだと理解せざるを得なかった。
だが、静かに激怒する赤騎士に対し、自分から地雷を踏み抜いたとはいえ絶体絶命状態のケイネスを見るに見かねたランサーが、ケイネスの背後から対抗するかのように剣を出現させ、それをエレオノーレの咽喉元に突き付けた。

「まぁ、仕掛けたのは、うちのマスターなんだけど―――こっちも、これ以上、やるつもりなら容赦しないわよ」
「できるのか、貴様に?」

一応、ケイネスの非を認めつつも、ランサーは、エレオノーレを焚き付けるように、いつでも闘ってやるぞという意思を込めた紅蓮の双眸で睨み付けた。
これに対し、エレオノーレも、自分に対峙するランサーに向かって、凶暴な笑みを浮べて、望むところだと言わんばかりの挑発的な言葉でもって返した。
次の瞬間、ランサーとエレオノーレを中心に、周囲にむけて焼けつくような熱気が吹き上がり、部屋の温度が一気に急上昇し始めた。

「おいおい、何かヤバくねぇか? このままいくと、至上最強の女傑決定戦やりかねねぇぞ、全裸?」
「いやいや、大丈夫だって」

一方、銀時は、何やら会談を前に殺し合いを始めそうなランサーとエレオノーレを見ながら、不穏な空気を感じ取ったのか、隣に座っているアーチャーに話しかけた。
しかし、アーチャーは、心配そうに青褪める銀時に対し、さして危機感を覚える様子もなく、いつものように軽い口調で笑って返した。
なぜなら、アーチャーは、なぜ、エレオノーレが会談の場において、このような暴挙に出たのか本当の理由に察したからだった。

「多分、あの火傷のねえちゃんは、あの金髪のにーちゃんに惚れているから、あの変質者じゃない方の水銀先生に悪口を言われて、ちょっと怒っているだけだし」
「んな…!?」
「え、そうなの?」 

そして、アーチャーは、実のところ、エレオノーレがケイネスを脅したのは、エレオノーレがラインハルトに惚れているからという事を、皆の前であっさりと言葉に出した。
このアーチャーの言葉に、それまでランサーを睨み付けていたエレオノーレは、急にアーチャーの方を振り返って、思わず絶句した。
さすがに予想外だったのか、ランサーは、とりあえず、エレオノーレに尋ねてみるが、エレオノーレの様子から察するに図星を突かれたのは確実だった。

「貴様…何を下らん戯言を…」
「え〜だって、ヴァレンタイン・デーになると、皆の前だと口では下らないって言っているけど、こっそり隠れて、金髪のにーちゃんのために、ヴァレンタイン・チョコレートを手作りで作ってそうじゃん、ねーちゃん」
「ぐっ…!?」
「あぁ〜、ふ〜ん、へぇ〜、そ〜なんだ〜v」

すぐさま、エレオノーレは、ラインハルトの御前で醜態をさらすまいと、アーチャーの言葉を道化の戯言と苛立ちのまま吐き捨てるように断じようとした。
だが、アーチャーは、そんなエレオノーレの心情に構うことなく、ジェスチャーを加えつつ、ヴァレンタイン・デーにおけるエレオノーレの行動を演じてみた。
これには、さすがのエレオノーレも、アーチャーに事実をいきなり指摘された事で意表を突かれたのか、思わず歯噛みをしながら押し黙ってしまった。
さらに、そんなエレオノーレの姿を見ていたランサーは意地の悪い笑みを浮べながら、何かを一人で納得していた。

「おいおい、それはねぇだろ…あんな見るからに、母性のかけらもない、冷徹非常で処女なんてくそ喰らえなビッチ系女軍人を、何処をどうすれば、そんな乙女っぽいみたいな奴に見えるんだよ…」
「そんな事ねぇよ。色々とおっかねぇところもあるけど、ああいうのに限って、結構、根は純情系で、恋してるけどそういうのに慣れてない、昔ながらの乙女ちっくな女の子なモンだったりするんだって。俺のエロゲ観察眼に間違いねぇって」
「あ〜もう、そういう事なら言ってくれればいいのに〜v」
「き、貴様らぁああああああ!!」

とここで、アーチャーのペースに乗せられたエレオノーレを、見るに見かねた銀時が全然、フォローになっていないフォローを呆れながらぼやくように言ってきた。
だが、アーチャーは、分かってないなぁという口振りで、色々な意味で的確に地雷を踏みながら、女としてのエレオノーレの本質を暴露し始めた。
それに続けと言わんばかりに、ランサーも悪乗りしてきたのか、大爆笑するのを我慢するように口元を抑えながら馴れ馴れしい口調でからかい始めたてきた。
次の瞬間、ラインハルトの御前という事さえ忘れながら、エレオノーレは照れ隠しをするように怒りを露わにしながら、乙女の純情を笑いの種にした外道共に怒りの咆哮を上げた。

「…すまない。私の不用意な一言で、本当に何か色々と…気の毒すぎて…申し訳なくて、すまない」
「いや、構わんよ。それに、卿のおかげで中々面白いモノが見れた」

ケイネスも、自分の不用意な発言なせいで、六陣営会談を前に、大乱闘勃発寸前となった事に責任を感じたのか、ラインハルトに申し訳なさそうに謝った。
だが、ラインハルトはさらりと許しながら、逆に興味深いモノが見られた事への礼を送った。

「…そう、実に良いモノを見せてもらった」
「うむ、随分と面白い男がいるものだな」
「なんや、ふざけとるようで、なかなかやり手やないか、兄ちゃん」

そして、この場において、ラインハルトとライダーという二人の君主と、真島組の看板を背負う組長である真島は、怒り心頭のエレオノーレに正座説教させるアーチャーの姿を見ながら。アーチャーがただ馬鹿をやらかしただけではない事に気付いていた。
事実、一つ間違えれば、ランサーとエレオノーレの殺し合いが勃発しかねないほど緊張していた状況を回避できたのは、アーチャーのおかげであった。
あの時、アーチャーは、エレオノーレの僅かな言動の中から、エレオノーレの女性としての本質とラインハルト対する恋心を見抜いた。
そして、それらをあえて、ラインハルトの居るこの場所で、場違いな道化のごとく振舞いながら、エレオノーレに伝える事で、アーチャーは、ランサーとエレオノーレの間にあった闘争の空気を有耶無耶にしてしまったのだ。
いつものエレオノーレならば、問答無用でアーチャーらを殺しに掛かるだろうが、エレオノーレにはそれが出来ない理由があった。
もし、この場でそんな事をやらかせば、ラインハルトを含めたこの場にいる全員に、自らアーチャーの言った戯言を認めた同然となってしまうからだ。
それは、エレオノーレからすれば、ラインハルトがいるこの場において、自身の恋心を知られる事だけは絶対に避けねばならなかった。
その結果、エレオノーレは、アーチャーのペースに乗せられ、アーチャーらに対して正座説教する程度で場を収めざるを得なくなってしまったのだ。
これらの事を踏まえた上で、僅かな時間で他人の素質と本質を見抜く能力に長け、それを元に殺伐とした空気を解していく頭の回転の速さを兼ね備えたアーチャーが、ただの無能な全裸でないことは明らかだった。
若さ故の未熟さもあり、その在り方は違えども、優れた王としての資質を持つ者―――それが、アーチャーに対する、ラインハルト達の評価だった。

「さて…これより、六陣営との会談をここに執り行う訳なのだが…その前に、君達に問わねばならぬ事がある」
「問わねばならない事?」

しばらくして、ようやく、エレオノーレの説教が終わりを迎えると同時に、長い賢者タイムを終えた変質者(メルクリウス)が何を思ったのか。徐に質問を投げかけてきた。
今更、ここにきて、どんな質問があるのかと首を傾げるウェイバーに対し、変質者(メルクリウス)は、マスター達に向かって、こう質問を投げかけた。

「万能の願望たる聖杯…それに、君たちがいかなる願いを託すのか…是非ともお聞かせ願おうか」


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