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遊戯王GX 正直者の革命 第二十七話 馬鹿 (みねうちでもショック死したり物理的に死んだりすることもあるらしい)
作者:レプラ◆23VAxH8p.bY   2013/04/06(土) 21:08公開   ID:BrBj.1iOdwk
『♪♪〜♪〜♪〜♪〜............』

 ケータイが鳴っている。
 沈みかけた意識がゆっくりと浮上する。
 もう体が動かない。
 そう感じているのに、不思議と俺の手はポケットのケータイに伸びた。
 それはきっと
 こんな時に電話をかけてくるのは、あの人しかいないと思ったからだろう。
 朦朧とした頭で、電話に出る。

『お〜い、三沢、俺だ俺。いや〜、まずい事になってよー。
 ...................返事くらいしろよ。なんだ?怒ってるのかー?そんな覚えねーけど。
 まあいいや』

 いつも通りの先輩だ。
 他人の都合なんて、ほとんど考えない。

『いや〜、I2社寄った帰りに歯医者に歯石取りに行ったらさ、帰ってから三沢に渡そうと思ってたリローダーパーミッション、いつの間にか取られててな?
 どこのどいつがやったかわからないから、とりあえずそっちはI2社に任せて俺は帰りの船乗ってるんだけどさ、鍵光ってるだろ?
 1回目は無視したんだけど、消えてすぐ、また光り始めたから、なーんかあったのかと思って。
 あ〜、もしかして、三沢じゃない?三沢死んじまって、他のやつが電話取ってる?』

「勝手に殺さないでください」

 一応、文句は言っておく。

『おう!いきなり話すなよ。びっくりするだろ。
 ん〜、でも、息も絶え絶えって感じだな。闇のデュエル中?劣勢?死にそう?』

 本当に軽い人だ。
 でも、今は羨ましくてたまらない。

「残りライフ3400ですけど、死にそうな気分です」

『はぁ?初期ライフの半分以上残ってるのに死にそうって、貧弱すぎるだろ』

 そうだ。
 俺は弱い。
 先輩も十代も、どんなに傷ついても、立ち向かえる。
 
『つっても、お前賢いからな。
 俺も十代もバカだから、脳内麻薬ドバドバ出るんだろうな。痛くも痒くも怖くもない。
 お前は、楽しく本気のデュエルできればそれでいいってやつでもないし。
 うん。お前はそれでいいよ、それで』

「でも」

 勝たなきゃいけなくて。

『なら戦え』

「でも」

 もう痛いのなんて、御免で。

『ならノーダメで勝てよ』

 そんな無茶な。
 相手の場には四体もモンスターがいて、
 伏せカードは三枚もあるというのに。

『いいからとっとと勝てよ。
 大丈夫。お前は勝つ。俺が保証してやるよ。
 メタ視点で魔女とバトりながら見てたわけでもないから、よく展開わかってねーけどさ、この流れ、お前の勝ちだろ』

 流れ?
 また先輩のとんでも理論か。

『仲間助けるために戦って、でも精神的に参っちまって、そしたら憧れの先輩から「憧れの先輩ではないです」突っ込みはえーよホセ。
 ......先輩から電話かかってきて、元気づけられて。勝ちフラグビンビンじゃねーか』

「その自信、本当に羨ましいですよ」

『えーっと、お前を信じる俺を信じろ、だったかな?
 うん、確かそんな感じだ。
 いいか、ここが勝負時だ。
 死にたいなら勝手に死んでろ。
 生きたいなら..................頑張れ。
 頭働かせて相手の思考読んで嘘ついてはったりかまして意地張って、
 惑わせて裏かいて隙突いて展開して一気に畳み掛けて勝ちもぎ取れ。
 以上。頑張れよ〜』

 電話は切れた。
 ああ、なんというか。
 そういえば、毎回こんな感じだな。
 先輩がかっこつけてバカなこと色々言いたいだけ言ってそれで終わり。
 とはいえ
 それで元気づけられてしまう俺も、実はただのバカなのかもしれない。

「クククッ、最後のおしゃべりは終わったか?
 お前のターンだ。せいぜい楽しませてもらおうか」



 さて、整理しよう。
 次のターンも、タイタンは無謀な欲張りの効果でドローできないが、インフェルニティ・リローダーの効果で手札を確保し、スナイプストーカーでこちらの守りを突破するつもりだろう。
 俺の手札は三枚。
 逆転のカードは、既に手中にある。
 だが――――足りない。
 タイタンの伏せカードは、奈落の落とし穴、次元幽閉、そしてあともう一枚。
 あの一枚が気になる。

 このターンのドロー。
 これで必要なカードを引ければ、賭けに出ることができる。
 そしてさらに、勝利のためには

「十代、カイザー!」

 協力が必要だ。

「このターンで、俺は勝つことができない。
 でも、でもあと1ターン、時間をくれ!」

 あと1ターン。
 それさえもまやかし。でまかせ。
 勝利の確信はない。だが、俺の考える勝利へのルート。
 いくつかあるうちの、どれかさえ叶えば

「俺は勝つ!」

「ああ、分かった.............くっ、だが、長くは............」

 苦しそうだ。
 これ以上は、もたないか。
 早く。早くしないと。

 
 俺が欲するのは、決して特別なカードではない。
 誰もが持っている、普通のカード。
 確率は、二割くらいだろうか。
 それだけあれば、十分だ。

「俺のターン、ドロー!!」

 当然のように、そのカードは、俺の手にやってきた。
 これで、第一関門は突破した。

「俺は手札から、速攻魔法 サイクロンを発動」

「ちっ、この場面でそのカードを引くとはな。
 さあ、どちらだ。奈落の落とし穴と、次元幽閉。どちらを破壊する」

 そんなこと、決まってる。

「俺が破壊するのは、どちらでもない。
 俺は、三枚目のカード、インフェルニティ・バリアを破壊する!」

「な、なにぃ!?」

 不敵に笑っていたタイタンの表情が、一瞬で驚愕に染まった。
 破壊されたのは予想通り、インフェルニティ・バリア。

「くっ、どうしてわかった!?」

 簡単なことだ。
 ヤツの思考をトレースした。
 前のターン、タイタンがインフェルニティ・デーモンの効果で手札に加えたカードは、インフェルニティ・リローダー。
 なぜだ。
 ギャンブルが過ぎる。
 打点が欲しかった?そうかもしれない。
 二体目を確保しておきたかった?そうかもしれない。
 しかし
 そんなことをしても、守りがしっかりとしていなければ、すぐに切り返されてしまう。
 つまり、タイタンがインフェルニティ・デーモンと共に、ドローしたカードがインフェルニティ・バリアだったから、インフェルニティ・デーモンの効果で手札に加える必要がなかったということだ。

「これで、邪魔なカウンタートラップは消え去った!
 俺は手札から、この、逆転のカードを発動する。
 魔法マジックカード 未来への思い !!」

 これがこのデッキの、必殺技だ!

「未来への思いの効果。
 自分の墓地の、レベルが異なる三体のモンスターを選択し、そのモンスターを特殊召喚することができる。
 来い、レベル3 セイクリッド・シェラタン
    レベル4 セイクリッド・ポルクス
    レベル5 霊魂の護送船ソウル・コンヴォイ !!」

「ふっ、馬鹿か。何体出てこようと同じだ!
 私はトラップ..................」

「未来への思いの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は0になり、効果は無効化される。
 残念だが、攻撃力1500以上のモンスターではないから、奈落の落とし穴は発動できない」

「くっ」

「だが、このカードには代償が伴う。
 このターン、自分がエクシーズ召喚を行わなかった場合、エンドフェイズ時に自分は4000ポイントのライフを失う。
 さらに、このカードを発動するターン、自分はエクシーズ召喚以外の特殊召喚ができない」

 4000ポイントの代償。
 それはあまりに大きい。
 しかし
 俺はこのターン、確実にエクシーズできる。

「さらに、俺は手札から、レベル4のセイクリッド・ソンブレスを召喚」

「攻撃力は1550か。ならば――――」

「早合点するな。
 俺は優先権を行使して、セイクリッド・ソンブレスの効果を発動。
 自分の墓地の「セイクリッド」モンスター一体をゲームから除外する事で、自分の墓地の「セイクリッド」モンスター一体を手札に加えることができる。
 さらに、この効果を適用したターンのメインフェイズ時に1度だけ、「セイクリッド」モンスター一体を召喚できる!
 俺は、墓地のセイクリッド・シェアトを除外して、効果を発動。
 これでこのターン、俺は確実にエクシーズできる!」

「!! くそっ、続けろ」

 よしよし。
 第二の関門もクリア。
 そして、さらにもう一手進める。

「俺は墓地から、セイクリッド・カウストを手札へ。 
 そして、セイクリッド・カウストを守備表示で召喚。
 さあ、攻撃力は1800だ。奈落の落とし穴、使うか?」

 俺なりに精いっぱいの、演技をする。
 まるで、それを使わせたいように見えるよう。
 こいつが、ただの囮に見えるよう。
 しっかりと、タイタンをにらみつける。

「.....................ちっ、甘く見るなよ。
 そんな見え見えの挑発に誰が乗るか。
 答えはNOだ」

「NO、と言ったな?
 ありがとう。計算通りだ」

 第三の関門、突破!

「け、計算通りぃ!?」

「これで、ピースは揃った。
 セイクリッド・カウストの効果発動。
 1ターンに2度まで、フィールド上の「セイクリッド」モンスター一体のレベルを一つ上げる、または下げることができる。
 セイクリッド・シェラタンのレベルを3から5へ。
 いくぞ。俺は、レベル4のセイクリッド・カウスト、セイクリッド・ポルクス、セイクリッド・ソンブレスをオーバーレイ。
 三体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!
 その定めし法には、どんな者も逆らえない。無慈悲な法の番人――――Noナンバーズ.16 色の支配者ショック・ルーラー!!」

 突如、空中に四次元超立方体が出現する。
 それがばらばらに分解し、組みあがり、モンスターを形成する。
 これで天使族というのだから、先輩も趣味が悪い。

「くっ、攻撃力2300か!今度こそ、トラップカード..................」

「優先権を行使。ショック・ルーラーの効果を発動。カーズ・カラー!
 1ターンに1度、オーバーレイユニットを一つ取り除き、カードの種類を宣言して発動できる。
 次の相手ターンの終了時まで、互いのプレイヤーは宣言した種類のカードの効果を発動できない。
 俺は、トラップカードを宣言。
 とはいえ、この効果にチェーンして発動することは可能だ」

「ハッ、ならば、私はトラップカード 奈落の落とし穴を発動!
 ショック・ルーラーを破壊し、ゲームから除外だぁっ!!」

 はぁ、はぁと息を切らせて、タイタンはそう宣言した。
 彼は笑みを浮かべる。
 邪悪な笑みだ。
 ようやく、俺の邪魔をできたことへの、満足げな顔。
 だが――――これこそが俺の策略。

「ずいぶんと余裕だな。
 いいことを教えてやる。既にお前は、俺の術中に嵌っている!!」

「な、なんだと!!!」

「これが俺の、お前を封じる、最高の一手だ!
 レベル5となったセイクリッド・シェラタンと、レベル5の霊魂の護送船ソウル・コンヴォイを、オーバーレイ!
 二体の光属性モンスターで、オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!
 光よ、全てを飲み込み、全てを無に帰せ!
 セイクリッド・プレアデス!!
 既にトラップは封じた!
 バトル、セイクリッド・プレアデスで、インフェルニティ・リローダーを攻撃。新星閃光波!!」

「ひっ、くっ、ぐうっ」

タイタン:2000→400(900−2500)

「さらに、メインフェイズ2に入って、セイクリッド・プレアデスの効果を発動!
 1ターンに1度、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで、フィールド上のカードを一枚、手札に戻すことができる。
 俺は、スナイプストーカーを手札へ。
 これで、お前のハンドレス戦法は崩れた!
 俺はこれで、ターンエンド」

「..................だから何だ。
 忘れていないだろうな。このターン、無謀な欲張りの効果で、このターンも私はドローできない。
 スナイプストーカーを召喚すれば、再びハンドレスだ!
 私のターン。私は、スナイプストーカーを召喚」

「俺が言った、最高の一手という言葉、分かっていないようだな。
 セイクリッド・プレアデスは、相手ターンにも・・・・・・・、効果を発動できる!
 セイクリッド・プレアデスのオーバーレイユニットを一つ取り除き、スナイプストーカーを手札へ!!」

 俺が打った一手。
 それは、ハンドレス封じの一手!
 これで、ほぼ無償で1ターンの猶予を得ることができた。

「あ、うっ、ぐっ、ぐぬぬっ、ぬぅっ..................」

 タイタンの顔が、醜く歪む。
 蒼褪めたかと思うと、真っ赤になり。
 血管が浮き、歯がぎりぎりと鳴り、手が怒りで震える。
 その上体から、黒いもやが立ち上がっている。

「既に召喚権は使った!
 お前の場のモンスターはセイクリッド・プレアデスにサイズで勝てない!
 レベルも1と4。エクシーズもできない!
 お前にできるのは、表示形式の変更のみ!
 墓地で効果を発動するカードはあるか?
 ないならば、早くターンエンドを宣言しろ!」

 早く。早くしろ。
 早く早く早く早く早く早く早く早く!!

「ぐぁ、あっ、ううっ、ぐ、インフェルニティ・リローダーを、守備表示に、変更して、ターン、エン、ド」

「俺のターン、ドローーッ!!」

 その瞬間、疑いはなかった。
 負けるかもしれないとか、
 引くべきカードを引けないかもしれないとか。
 そんなこと、頭になかった。
 早く決着をつけよう。
 それだけだった。

 引くべきカードは、一種類ではなかった。
 例えば、サイクロン。次元幽閉を破壊して、攻撃力1800のインフェルニティ・デーモンを攻撃して終了。
 例えば、死者蘇生。セイクリッド・ソンブレスを蘇生して、効果でセイクリッド・カウストを手札へ。召喚。効果でレベル5にして、
セイクリッド・プレアデスをもう一体追加。二体で攻撃して、勝利。
 そして例えば

「俺は手札から、魔法マジックカード |セイクリッドの超新生を発動!
 自分の墓地の、「セイクリッド」モンスター二体を手札に加える。ただし、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行うことができない。
 俺は、墓地のセイクリッド・ポルクスとセイクリッド・カウストを手札へ。
 セイクリッド・ポルクスを召喚。効果を発動。通常召喚に加えて一度だけ、「セイクリッド」モンスター一体を召喚できる。
 セイクリッド・カウストを召喚。
 俺は、レベル4のセイクリッド・ボルクスと、セイクリッド・カウストをオーバーレイ!
 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!
 弾丸よ、我を貫き、敵を貫き、魂を貫け!ガガガガンマン!!!」

 勝利への幾多ものルート。
 俺は、その一つを辿り、たどり着いた。

 ガガガガンマンには、二つの効果がある。
 攻撃表示の時は、オーバーレイユニットを一つ使うことで、相手モンスターを攻撃するダメージステップの間、
このカードの攻撃力を1000ポイントアップさせ、相手モンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせる効果。
 つまり、こいつ単体で、攻撃力3000のモンスターまでなら処理できる。
 そして――――――

「ガガガガンマンは守備表示。よって、守備表示の効果発動!
 一ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使うことで、相手に800ポイントのダメージを与える!!」

「は、800ポイント、だとぉ!?」
 
「そう。お前はもう、セーフティ・ラインを越えていたんだ」

 カチャッ。
 ゆっくりと、ガンマンが撃鉄を起こす。
 そしてぴたりと、照準が、タイタンに合った。

「や、やめろ。わ、私は、闇の力を手に入れて............
 だから、私に敵うものなど、あ、あ、ああっ」

「これで、終わりだ」

『............ガガッ』

 弾丸が飛び出す。
 瞬く間もなく――――おそらくあいつは永遠とも感じているだろうが――――それは、ヤツの身に着けている仮面の眉間に突き刺さり
粉々に、砕け散った。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」

 絶叫が響き、それに呼応するかのように、ヤツに纏わりついていた黒いもやも身悶えする。
 俺もそれから、目を離せない。

 やがてそのもやは、散り散りになり、消滅していく。タイタンは前のめりに倒れこんだ。
 ずぶずぶ、ずぶずぶと。
 黒い何かに沈んでいき、完全に体が見えなくなると、何事もなかったかのように
 デッキだけが、その場に残された。

 放心したまま、俺は立ち尽くす。
 やっぱり俺は、命を懸けた勝負なんて、御免だ。
 俺はそのまま、前回と同じように、意識を手放し、
 誰かの胸に、倒れこんだ。

「よくやった、三沢」

 それは、後で振り返ってみれば、確実に、カイザーの声なのに
 なぜかその時は、旭先輩の声に聞こえた。


タイタン:400→0(−400)

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■作者からのメッセージ
ガガガガンマンの効果名募集中

 条件:1.ガガガ○○であること
    2.○○の最初の文字は「が」であること
    3.言語は問わない
    4.なんとなく響きがかっこいいこと←最重要

 お礼も何もできないので、どうしようもなく暇な方以外にはお勧めできませんが、それでもよければ、よろしくお願いします。
テキストサイズ:13k

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