「おいおい、希望の創造者ってチートすぎんだろww公式デュエルで使えないって、フリーでも俺だったら使わせねーぞ。ってか、『かっとビングだ!オレ!』と宣言して発動ってデュエマかよ。カレーパンかよ」
俺は暗闇の中、パソコンで適当に新しめのカードをチェックしていく。
やっぱり魔導は升だなーとか征竜は征竜でやばいよなーとかそんなことを考えているうちに、気が付いたらもう七時になっていた。
「あー、働いた働いた。そろそろ戻るか」
俺は天井からぶら下がっているひもを引いた。カチッと音がして、ライトが消えた。
数秒後、俺は目を覚ました。夢の中でずっと仕事してたけど、目覚めは最高だ。ったく、三沢のやつ、仕事仕事しろ言いやがって。そろそろうざったいし、もう話しちまおうか。
まぁ、いつか暇なときにでも話すか。
さて、さっさと行こう。
◇
デュエルアカデミアにおける学園祭は、そこまで派手ではない。
まず、オベリスクブルー。そこそこ設備は豪華だが、やっていることは優雅にお茶するだけ。需要は少しはあるだろう。
続いて我がラーイエロー。縁日は定番で、だからこそ楽しい。人も大勢来るし、学園祭のメインはここだと自負している。
で、オシリスレッド。上二つに予算の大部分がかかっているので、できることは限られるはずなのだが、あいにく、何をするのかよく知らない。十代に聞いてみたのだが、十代もよく知らないようで。うちと違って、作業は今日からのようだし。
と思っていたら、有力な情報が先輩からもたらされた。
「コスプレデュエル大会!?」
「ああ。その名の通り、モンスターのコスプレして、デュエルするんだ。俺は参加するつもりだけど、お前はどうする?」
「いや、俺は忙しいので。というか、どうして先輩はここに?」
「どうしてって、焼きそば食べたくなったから」
それなら表に回ってほしい。この金持ちは、なぜか裏でつまみ食いをしようとする。
「それはいいとして、三沢、シフトもう少しで交代の時間だろ?だったら来いよ。衣装なら用意してあるからさ」
どうしてシフトなんか把握してるんだ。というか、ブルーで仕事はないのだろうか。ないのだろうな。この人、喫茶店で働けそうな性格してないし、料理できそうもないし。
「またそんなところに無駄遣いを............あ、はい、焼きそば二つですね?500円です」
「ほら、見ろ、エアーマンだぜ?エアーマン。かっこいいだろ?しかも、この翼のところのプロペラ回るんだぜ?」
はいはいと頷き返しながら、必死に説明されるセールスポイントを聞き流す。
そんなにその衣装を俺に着せたいのか、と思っていると、相手にされなくて寂しかったのか、どこかに行ってしまった。かと思ったら、すぐに戻ってきた。エアーマンの衣装を着て。
「自分で着たんですか............」
「おう!もったいないからな。
結構着心地いいんだぜ?難点はプロペラの音が少しうるさいことと、通気性抜群なせいで扇風機なんて寒くてやってられっかってとこだな」
「最悪じゃないですか............」
まったく、いつも通り、能天気な先輩だ。セブンスターズがいつ襲ってくるかもわからないというのに。
しかも吹雪さんによると、彼を闇の世界に送り込んだのは大徳寺先生だというのに、その大徳寺先生は姿を消してしまって、色々よく分からなくなっているのに。まったく。
「おっ、シフト終わった?」
「一応。一緒に行ってあげますけど、コスプレはしませんからね?」
「まぁ、エアーマンは一着しかないから、しょうがないか。来年は来てもらうからな?」
「嫌です」
断ると、ものすごく大げさにため息をつかれる。
「人生楽しまなきゃ損だって。
チャレンジ精神なくすと、人間だめだぜ?」
「早く行きますよ。俺は@wikiの編集とかもしなきゃいけないんですから」
俺がさっさと早足で行くと、先輩は大人しく付いてきた。めんどくさい先輩だ。
「ただ今より、本日のメインイベント、遊城十代バーサスブラックマジシャンガールのコスプレデュエルを..........」
「ちっ、もう始まってるか.............」
「結構、ブルーとイエローからも、人来てますね」
というか、ブラックマジシャンガール?
遠目でも、かなり完成度が高いことが分かる。こんなイベントがなければ、本人だと思ってしまいそうだ。
「それで先輩、先輩はいつ、..................先輩?」
「うをおおおおおおおおおおおおおおおっ、十、だーーい!!!!」
「ちょ、先輩!?」
気が付いたら、先輩は十代に飛びかかって行っていた。
観客たちを飛び越え、十代に向かって華麗に飛び膝蹴りを決めようとしている。
「ん?なんだよせんぱ(はっ、殺気!?)」
だが、十代は寸前でのけぞってかわす。
当たると思っていた先輩は、そのまま地面に激突。
「ぐおおおおおっ!!!いってええええええええええ!!!!」
膝を押さえて地面にのたうち回る。でもきっと大丈夫だろう。
先輩のよくわからない丈夫さを知っている俺は心配しない。
「お、おい、大丈夫か、旭センパイ?」
「くっ、十代、お、俺とデュエルだ............」
また訳のわからんことを。
派手な演出、意味不明な言葉、そしてかすかに漂う痛々しさ。完璧なコンボだ。アド損にしか思えないが。
「デュエル?いや、俺は今からブラマジガールと......」
「じゃんけんぽん!!」
先輩の掛け声に反応してしまった十代は、思わずグーを出す。それに対する先輩はチョキ。不意打ちで負けるとは、みっともない。
「ああ、くっそ、俺の負けかー。ま、いっか。先攻は譲ってやるよ」
「え、ええっと....................まあ、いっか!」
「え!?わ、私は!?」
十代は納得したようだが、ブラックマジシャンガールは露ほども納得していない。というか、展開についていけていない。俺たちと同じように。
「「デュエル!!」」
「いくぜ、俺のターン!」
「はっ、甘いな、十代!」
「へ?」
「ドローなんてする必要ないぜ!
喰らえ、怒りの業火 エクゾード・フレイム!!!!」
「な、なにぃ!?ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ」
十代:6000→なんか死んだ
そしてものすごい勢いでものすごい茶番が繰り広げられた。
「先輩、積み込みは犯罪ですよ」
「ちゃうわい!俺だってこんなところで一生分の運使い果たしたかねーよ!!楽しいからいいけど!
ともかく、こんなエルフの剣士とか魔導戦士ブレイカーとかごちゃまぜなやつとじゃなくて、俺とデュエルしてもらうぞ、ブラックマジシャンガール!!」
...........................................................................................................................................................................................................................................................................................
「「「「「「「「「ふざけんなー!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」
一瞬の静寂の後、観客の怒りは爆発した。
「なんでそうなるんだよ!」
「あほかー!」
「死ね、旭!!」
「てかそれなら俺と代われ!」
「そうだそうだ!!」
「うっせー!!
いいか、悪役と言えば俺、俺と言えば悪役だろうが!つまり、ブラックマジシャンガールをぼっこぼこにするのは、俺が一番ふさわしいんだよ!!!」
先輩は暴論を持ち出すが、ブーイングは続く。
「みなさん、お静かに、お静かに!!」
司会の翔君もてんやわんやしている。もはや収拾がつかない。
そう思われたが、たった一フレーズで、その嵐は収まってしまった。
「私は別にかまわないけど?」
ブラックマジシャンガールの口から出たその一言は、騒いでいた人全員を静かにさせた。
「あなた、私と楽しくデュエルしてくれるんでしょ?」
「ああ。こんな男より、手加減抜きで、楽しくかわいいモンスターでぎったんぎったんに倒してやるぜ」
「それなら、決まりね!」
嬉しそうに笑った彼女を見て、男子生徒はみんなテンションが上がり、丸く収まったようだ。恐るべし、ブラックマジシャンガール。
「ええと、よく分からなくなってきましたが、改めて!
本日のメインイベント、旭敦バーサス、ブラックマジシャンガールのコスプレデュエルを行いまーす!」
「「「「「「うおおおおおっ!!!」」」」」」
どうやら、色々なかったことにされたようだ。哀れ十代。
「解説は、万丈目、じゃなかった、
銀河眼の光子竜、実況はこの私、丸藤翔でお送りします!
おおっと、いよいよデュエルモンスターの登場だぁ!」
最初からいるが、な。
「赤コーナー、E・HERO エアーマン!」
「「「ブーブー!!」」」
「青コーナー、これはすごいぞ!われらがアイドル、ブラックマジシャンガールの登場だ!」
「今日は応援、よろしくね〜☆」
「「「「「おおおおおおおおおおおおう!!」」」」」
この雲泥の差。
先輩のホームのはずなのに、アウェーみたいなことになってる。
「さあ、両者、デュエルディスクを展開だぁ!」
「全力で行くぜ?」
「よろぴくで〜す」
「「デュエル!」」
「先攻は僕の独断で、ブラマジガァール!」
「「いぇーい!」」
「私のターン、ドロー!
私は、モンスターをセット」
「「「いいぞー、ブラマジガール、かーわいいっ」」」
「みんな、応援ありがとう〜!
私はこれで、ターンを終了しま〜す」
「ブラボー、ブラマジガール!
さて、続いては、エアーマン選手のターン!」
「俺のターン!ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。
俺は手札から、永続魔法、近・未来融合−フューチャー・フュージョンを発動」
近未来?未来融合なら知っているが............
「自分のエクストラデッキの融合モンスター一体を互いに確認し、その融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送る。
そして、発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に、その融合モンスター一体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
俺は、キング・もけもけを指定」
「おおっと、ここでエアーマン選手、まさかのキング・もけもけだぁ!!
って、なんっすか、万丈目君?」
「
銀河眼の光子竜と呼べ!俺も知らん!」
「使えないっすねー」
「なんだと!」
「おいおい、漫才はやめろよ。
俺は、デッキから三体のもけもけを墓地へ。
さらに手札から、創造の代行者 ヴィーナスを攻撃表示で召喚する。
ヴィーナスは、500ポイントのライフを払うことで、手札かデッキから、
神聖なる球体一体を特殊召喚できる。
俺はこの効果を、三回使用したい」
「いいよ☆」
旭:6000→4500
「デッキから
神聖なる球体を守備表示で特殊召喚。
そして、手札から
魔法カード 馬の骨の対価を発動。
効果モンスター以外の自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター一体を墓地へ送り、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
通常モンスター、
神聖なる球体をコストに、ドロー。俺はこれで、ターンエンド」
「守備モンスターばっか並べやがって、卑怯だぞ、旭敦!」
「そうだそうだ、男なら正々堂々勝負しろ!」
「はっ、悪役が正々堂々なんてやってられっかよ!」
これ以上ないくらいのアウェーなのに、先輩は楽しそうだ。
悪役を楽しんでいる。
「あいかわらず、うまいな」
「そうだね」
「カイザー、それに吹雪さん!もう大丈夫なんですか?」
「おはよう。おかげさまで、もうすっかりよくなったよ。それより、初手としてはなかなかだね」
「ああ。ライフは失ったが、三体の守備モンスターを残すことができた。さらに、手札は一枚しか減っていない。いい布陣だ」
「へぇ〜攻撃してこないんだ。
それなら、私から行くね☆
私のターン、ドロー!モンスターを反転召喚!」
「おおっと、ブラマジガールのモンスターは、ファイヤーソーサラーだった!」
「リバース効果持ちのモンスターか」
「ファイヤーソーサラーの効果!手札二枚を除外。さぁみんな、いっきますよー!」
「「「いっけぇ、ブラマジガールー!」」」
「せーの!」
「「「いち、に、さん!」」」
「うーっ、うう!ファイヤー!!」
旭:4500→3700
「ちっ、この程度のダメージ、たいしたことはない!」
「おおっと、エアーマン選手、強がっているー!」
いや、ちょっと役入ってるけど、本音だろう。
手札二枚除外で800ポイントの火力なんて、今では火力が低すぎるだろう。コンボに使われるくらいか?
「へへーん。まだ終わりじゃないもんねー。
私は、ファイヤーソーサラーを生贄に捧げ、ブラック・マジシャン・ガールを生贄召喚!」
「「「「キター!ブラマジガールー!!」」」
「そして私は、魔術の呪文書を、ブラック・マジシャン・ガールに装備。
このカードは「ブラック・マジシャン」か「ブラック・マジシャン・ガール」のだけが装備可能で、攻撃力が700ポイントアップ!
これで、ブラック・マジシャン・ガールの攻撃力は2700!行っくよー!!」
「「「バトル!」」」
「ブラック・マジシャン・ガールで、ヴィーナスを攻撃、|黒・魔・導・爆・裂・破《ブラック・バーニング》!!」
「くっ、ぐぁっ」
旭:3700→2600
「可愛い顔してやるぞ、ブラマジガールー!
これにはたまらず、エアーマンもよろめいたー!!」
「私はカードを一枚伏せて、ターンエンドよ☆」
「ちっ、こりゃあまずいな。俺のターン、ドロー、スタンバイ、メインフェイズ。
俺は手札から、タイムカプセルを発動」
「ここでエアーマン、タイムカプセルだー!
タイムカプセルはデッキからカードを一枚裏側表示で除外し、二ターン後にそのカードを手札に加えるカード。だが、そんな時間は果たしてあるのかー!?」
「おい、解説は俺の役割だぞ!」
「あ、ごめん......」
確かにな。手札枚数的には何とかなりそうではあるが、もけもけデッキにそれほど守りが入っているだろうか。
「俺は、裏側表示で、このカードを除外。
さらに、手札からカードカー・Dを召喚」
「攻撃力800?そのモンスターで、一体何をするのかしら?」
「別に。テーマデッキの宿命ってやつさ。
カードカーDの効果を発動。自身をリリースして、デッキからカードを二枚ドロー!」
「こ、これは、モンスター版強欲な壺かー!?」
「いや、違うな。召喚権は使っている」
「でも、それでもちょっとズルくなーい?
確かあのカード、禁止カードになったはずだよね?」
「そうだそうだ!」
「どうせお前が作ったんだろー!!」
「だからうっせーんだよ外野!最後まで聞け!!
カードカー・Dの効果は、特殊召喚をしたターンには発動できない。さらに、この効果はメインフェイズ1にしか発動できず、発動した場合、バトルフェイズ、メインフェイズ2を飛ばしてエンドフェイズまでノンストップ直行だ!」
ほう。なるほど。
「悪くないカードだな」
「ですね。攻撃できない最初のターンに使えれば、それなりに使えそうです」
「防御は、ちゃんとしないといけないだろうけどね」
その通りだ。
先輩の手札は6枚と、減る気配を見せないが、守りは守備モンスターが二体のみ。
耐えきれるかどうか。
「そういうことなら、私のターン、ドロー!私は手札から、マジシャンズ・ヴァルキリアを召喚。せーの!」
「「「バトル!!」」」
「マジシャンズ・ヴァルキリアで、
神聖なる球体を攻撃、マジック・イリュージョン!」
「ちいっ」
「まだまだ☆
ブラック・マジシャン・ガールも、
神聖なる球体に攻撃!せーの!」
「「「|黒・魔・導・爆・裂・破《ブラック・バーニング》!!」」」
「ぐぁぁぁぁっ」
くっ、これで先輩の場はがら空きか。追撃はないが、きついか?
「私はこれで、ターンエンドよ☆」
「いいぞー、ブラマジガールー!!」
「このまま叩きのめせー!」
「サレンダーしちまえー、旭敦ー!」
最初から最後まで、ブラマジガールのペースで終わるだろう。
彼女のファンは、きっとそう信じているはずだ。
だが、旭先輩のことをよく知っている者は、違う。なぜなら
彼のもっとも恐ろしいのは、ここからだと知っているからだ。
「くっ、くくく、くくくくく」
予想通り、先輩はにやにやと、不気味に笑い始めた。
「くはははははははははははははははっはははははははは」
「何がおかしいの?」
「時は満ちた。ここから俺の、大★逆★転★劇が始まる!」
「ええっ!?」
「行くぞ、俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズに入る。
近・未来融合−フューチャー・フュージョンの効果!発動から二回目のスタンバイフェイズ時に、エクストラデッキから指定された融合モンスターを特殊召喚。現れよ、キング・もけもけ!」
『キ〜〜〜ン〜〜〜グ〜も〜〜け〜〜も〜〜け〜〜』
「な、なんだ!」
「で、でけー!」
「おおっ!?ここでエアーマンの場に、突如として、巨大モンスターが出現!
だが、騙されるな!キング・もけもけの攻撃力は、たったの300ポイントだぁ!」
「な、なーんだ、びっくりしたー」
「安心するのはまだ早い!メインフェイズ、俺は手札から、
魔法カード トライワイトゾーンを発動。自分の墓地の、レベル2以下の通常モンスター三体を特殊召喚する。
俺は、レベル1のもけもけを三体、特殊召喚」
『もけ』
『もけっ!』
『もけけっ!!』
「あら、か〜わいいっ!」
「しかし旭選手、攻撃力300、守備力100のモンスターを並べて、一体何をするつもりだー?」
「これから、それを見せてやるよ!
俺は手札から、フィールド魔法 光の結界を発動。
続いて、速攻魔法 リロードを発動。自分の手札を全てデッキに加えてシャッフルするし、その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする。俺がデッキに戻すカードは四枚。よって四枚ドロー!よし。
俺は、二体のもけもけを生贄に捧げ、最上級モンスター、アルカナフォース
XXI−THE WORLDを生贄召喚!!」
「!! あのカードは!」
「知っているのか、三沢!」
「はい。そうか、あのデッキは、そういうデッキか......」
ようやく、得心がいった。
よくそんな勝率度外視のデッキ使うな。
「攻撃力3100!?
でも、あなたはマジシャンズ・ヴァルキリアの効果で、他の魔法使い族モンスターを攻撃対象に選択できない」
「構わん。THE WORLDは召喚時にコイントスをすることで、正位置、逆位置の効果を決定する。
だが、光の結界の効果で、コイントスをせずにどちらの効果にするか決められる。
俺が選ぶのは、当然、正位置だ。
それから俺は、速攻魔法 サイクロンを発動。伏せカードを破壊」
「おおっと、エアーマン、このタイミングで伏せカードの
魔法の筒を破壊!
何たる非道、何たる極悪!」
「さぁ、バトルだ。THE WORLDでマジシャンズ・ヴァルキリアに攻撃。オーバー・カタストロフ」
「きゃあああああっ」
BMG:6000→4500
「こらー!旭!」
「女の子相手に何すんだ!」
「死ね!死んで詫びろ!」
「はっ、そういうセリフは最後まで取っておけ!
光の結界の効果により、アルカナフォースが破壊したモンスターの元々の攻撃力分、ライフを回復する。俺は、1600のライフを回復」
旭:2600→4200
「これで俺は、ターンエンドだ」
「よーし、私のターンだね☆
頑張って逆転、逆転............あれ?あれれ?」
ブラックマジシャンガールは、不思議そうにしている。
ドローしようとデッキに手を伸ばしたのだが、なぜかその途中で動かなくなってしまった。
どうしたのだろう。効果には忠実だが............もしかして、効果を知ってのリアクションなのか?
「クククッ、馬鹿め。お前のターンじゃない。俺のターンだ!」
「え?ええっ!?」
「俺はエンドフェイズ時に、アルカナフォース
XXI−THE WORLDの正位置の効果を発動。自分の場のモンスター二体を墓地へ送って発動する。次の相手ターンを、スキップする!」
「「「な、なんだってー!!?!」
「THE WORLDは時すらも操る!ブラックマジシャンガール、お前の時は止まった!」
「う、嘘!?」
「ひ、卑怯だぞ!?」
「そ、そうだそうだ!!!」
「クックック、悪役が時間を操るってのは、鉄板なんだよ!
俺が生贄に捧げるのはもけもけと、キング・もけもけ。そして、キング・もけもけの効果。このカードがフィールド上から離れた時、自分の墓地に存在する「もけもけ」を可能な限り特殊召喚する事ができる!」
『もけー』
『もけ?』
『もーけっ』
「また、そのモンスター?あっ!!」
「そう。こいつらを生贄に、俺はさらなるターンを得ることもできる。とはいえ、さっさと終わらせてやるつもりだがな。
俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズ。
まず、光の結界の効果。スタンバイフェイズ時にコイントスをして、裏が出たらこのカードの効果は無効だ。よっと。あー、裏か。まぁ、しょうがない。
続いて、タイムカプセルの効果。発動後二回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを破壊して、このカードの効果で除外したカードを手札に加える。
俺は、永続魔法 怒れるもけもけを手札に」
「あのカードは!」
「来たか。もけもけデッキの切り札!」
タイムカプセルのカウントを、THE WORLDで無理矢理呼び寄せる。なんて馬鹿なコンボだ!
「メインフェイズ。怒れるもけもけを発動。
さぁ、行くぞ、もけもけ!」
『『『もけけけけー?』』』
「一人目のもけもけで、ブラックマジシャンガールへ攻撃」
『もけけ?』
『『ももけー』』
『もけー............』
一匹だけ、ふわーっとゆっくりブラックマジシャンガールに近づいて行く。
そしてブラックマジシャンガールの足元に降り立つと、彼女を見上げた。
『も、もけっ?』
『..................えいっ☆』
ちゅどーん。
爆発四散。
『『も、もけけー!!!!!』』
「怒れるもけもけの効果。自分フィールド上の天使族モンスターが破壊された場合、このターンのエンドフェイズまで自分フィールド上のもけもけの攻撃力は3000になる!!」
残された二体のもけもけの体色が、怒りによって一気に赤くなる。同時に、頬を膨らませ、頭の上の?マークも!マークに変わった。
「不思議ですね。もけもけ言ってるだけなのに、なんとなく言いたいことは分かる」
「それより俺は、自分たちで突っ込んでいって勝手に怒るあの理不尽さが気になるのだが..........................」
「現実の戦争なんて、あんなものさ」
「あの勇敢なもけもけの死を、無駄にはしない!
行け、アルカナフォース
XXI−THE WORLD、ブラック・マジシャン・ガールを攻撃!」
「う、ううっ」
BMG:4500→4100
「ま、魔術の呪文書の、もう一つの効果。このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分は1000ポイントライフを回復する」
BMG:4100→5100
「覚醒したこいつらの前で、その程度の回復は無力!
行け、もけもけ、直接攻撃だ、だぶるもけもけウェーブ!!」
『『もけけけけーっ!』』
「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
BMG:5100→2100→0(−900)
「ガッチャ。楽しいデュエルだったぜ」
「お、俺のセリフ〜............」
◇
そして先輩は、人生最大の危機に直面することになった。
「旭敦、てめぇ!!」
「ブラマジガールになんてことを!」
「大人げないと思わないのか!」
「くそ、殺す、殺す!」
「みんな、この下種野郎を血祭りに上げるぞ!!」
「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!!」」」」」」
「ちょ、こんなコンボめったに決まらないっての!だから適当にいい感じに戦ってたわけででも決めれそうだったらやっちまうのがデュエリストだろうがぁ!!」
「せんぱ〜い、天国でも、能天気でお幸せに〜」
「三沢てめぇ!」
次のシフトが迫っている俺は、さっさと先輩を見捨てることにした。
だが、暴徒の手が、先輩の服をつかみ、腕をとらえ、首に届こうとした時、どこからともなく、くすくすと笑い声が聞こえてきて、彼らは動きを止める。
『フフフ、ウフフフフッ、すっごくすっごく、楽しかったわ!
そんなちっちゃくてかわいいモンスターたちで勝っちゃうなんて!ウフフフ。
でも、次は絶対、ぜ〜ったい、負けないんだからね!』
「ブ、ブラマジガール?」
「ブラマジガールだ............」
「ブラマジガールが、旭敦をお許しになった..................」
彼らはどうする、どうする、と、話し合った結果、次のような結論に達した。
「旭敦、お前を、観察処分とする!」
「は、はぁ」
うん。
茶番も終わったし、帰るか。