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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史介入の章その21
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2013/02/10(日) 19:42公開   ID:jkr/fq7BJDE
1993年9月 インド後方支援基地 総合司令所

 「指令、降下部隊より入電。反応炉の破壊を確認。作戦の成功を確認したとのことです」

 ざわりっ、と一瞬司令室内の空気がざわめいた。

 「その報告は確かか?」

 総司令のシブ・バーダーミが震える声で問いかける。オペレーターも震える声でその問いに答える。
 震えの中に隠されているのは圧倒的歓喜。

 「はい、間違いありません。機動降下部隊ダイバー2よりの報告です。反応炉に設置したM01すべて起爆を確認。これにより反応炉の破壊に成功した、と」

 「「「おおおおおお!!」」」

 一瞬の静寂の後、司令室内で歓喜が爆発した。
 BETAに蹂躙され続け、負け続けてきた人類が、ついに一矢報いたのだ。まさに、まさに歴史的瞬間だった。
 司令室中が歓喜で沸き立つ中、総司令であるシブ・バーダーミは、歓喜に身を任せるわけにはいかない。
 未だに前線ではBETAとの交戦が続いているのだ。確かに大きな局面は過ぎたが、戦闘自体が終結したわけではない。すぐに冷静さを取り戻し、指揮を振るうことに専念する。

 「展開している全部隊に通達しろ。現時刻をもって、フェイズ5の達成を確認。この戦いは、人類の勝利だと」

 「了解しました。こちらHQより各部隊へ、現時刻1420をもってフェイズ5の達成を確認。繰り返す、現時刻1420をもってフェイズ5の達成を確認。これを持ってして、本作戦の人類の勝利を宣言する」

 回線を通じて、様々な部隊から歓喜の声が殺到する。
 中には信じられないのか、何度も確認の問い合わせをする部隊もある。それはそうだろう。今までの対BETA戦との歴史を紐解いても、人類が勝利したと明確に言える戦いはないのだ。
 間引き作戦や防衛戦において、確かにここ数年勝利と言えるだけの戦績を納めることが出来るようになったが、それでもそれは明確な勝利とはほど遠いものだった。
 それが今回は誰の目から見ても勝利だ。敵の拠点であるハイヴの中枢機能破壊に成功したのだ。
 とはいえ、前線は未だにBETAとの戦闘が継続中だ。勝利の知らせにより士気は上がったが、だからといってBETAがすぐさま消えてなくなるわけでもない。
 これから如何に部隊の損耗を押さえながら展開した部隊を回収し、戦闘を終了させるかが課題だった。
 ところがここで展開していた部隊から意外な報告が入る。

 「総司令、展開している部隊からの報告ですが、BETAが撤退しているようです。正確に言えば、直近のハイヴであるオリジナルハイヴに向かって移動している様子です」

 「なんだと?それは確かか?」

 「はい、展開している部隊には目もくれずに転進しているとの報告が入っています。どういたしますか?」

 「決まっている、ならば今こそ追撃の時だ。各自深追いを避けつつも、出来るだけBETAの数を減らせ」

 「了解しました。HQより各部隊へ、敵は撤退に移行した模様。深追いを避けて、打撃を与えよ。繰り返す、敵は撤退に移行した模様。深追いを避けて、打撃を与えよ」

 各部隊から了解の返答が帰ってくる。BETAが敗走する。それは人類にとって初めて目にする光景だった。
 勝ったのだ。我ら人類が勝ったのだ。
 感慨にふけるシブ・バーダーミのいる司令室は盛大なる歓声に包まれていた。



1993年9月 ポパールハイヴ周辺 スワラージ作戦最前線(日本帝国担当戦線)

 「やったー!」

 「勝った、勝ったんだ、BETAに勝ったんだ!」

 「あーおまえら、喜ぶのは良いが、機体の操縦はちゃんとしような」

 冷静な小塚次郎少佐の突っ込みは、狂喜乱舞する連中にはあまり効き目がないようだ。
 無理もない。ここにいる連中の殆どが先の見えない防御戦や、間引き作戦に明け暮れていたのだ。
 明確な勝利の味を知るのはおそらくこれが初めてだろう。

 「幸いなことは、BETAが撤退していることか。まあおかげで俺も楽ができているわけだが」

 遊撃に回ったため、BETAが向かってこない今となっては小塚の仕事は何もない。いや、本来なら部隊を統括して敗走しているBETAに打撃を与えるという役割があるのだが、それについては、優秀なCPである、

 「貴様ら!少佐のお言葉が聞こえないのか。各員すぐさま陣形を立て直してBETAへの追撃を行え!つまらんことで少佐の評価に傷が付くようなことがあれば、たとえ貴様らであっても許さんぞ!」

 竹中大尉からの怒声が、一気に浮かれていた連中の熱を下げる。

 「イエス、マム!」

 すぐさま気持ちを切り替える第十三大隊の各員。この辺りの切り替えの早さはさすがだ。

 「CP、フライヤー1はどんな感じかわかるか?」

 「立花伍長からの連絡によると、位置的にBETAの撤退進路上にいるようなので、迂回しながら本隊と合流するようです」

 「そうか、無事か」

 「はい、キルスコアも10000を超える大暴れっぷりだそうです」

 「そうか、キルスコアが10000か…ん?10000だと!?」

 「ええ、俄には信じがたいですが、送られてきたデータに虚偽はありません」

 「げっ…いや、大丈夫だよな。うん、誰も突っ込まないさ。ははは、そうだ、そうにきまっている」」

 「あの、Eナイト1、大丈夫ですか?」

 「あ、ああ、すまない、少々嫌なことを思い出してな。わかった。フライヤー1には合流するまで気を抜くなと伝えておいてくれ」

 「はっ、了解しました」

 「よし、各自陣形を組み直して、撤退するBETAに追撃を与えるぞ!ここで少しでも数を減らしておけば、それだけ今後の戦いが有利になると思え。いいか、決して手を抜くな!」

 「「「了解!」」」

 小塚次郎少佐が、九十三式電磁投射砲を構え治した35機の撃震弐型を指揮し、一気に前線を押し上げる。第十三戦術機甲大隊の面子には、戦闘が6時間を超えてもなお落ちることのない戦意がみなぎっていた。



1993年9月 ポパールハイヴ周辺 スワラージ作戦最前線(ソビエト連邦特殊戦術情報部隊展開地域)

 「生還率98%か」

 リサー1が呟いた言葉は、想像以上の戦果を納めたことに対する安堵感から、普段の厳しさがやや薄れたものだった。
 そこには、わずか2機のマインドシーカーが欠けただけのオルタネイティブ3直属の戦術機甲部隊の姿があった。

 「とはいえ、目立った成果は上げられなかったか。こればかりは俺たちの領分ではないからな。せいぜい科学者達に責任を取ってもらうか。全機、撤収だ」

 「「「了解」」」

 リサー1のかけ声と共に、106機のマインドシーカーが撤収していく。
 その姿を見送る2名のロシア人衛士と2名の能力者。
 衛士である、ラリーサ・ドゥヴェが背後に佇む、別のドゥヴェ姓を持つ女性に声を掛けた。

 「本当に良かったのか、ナターリヤ?」

 「そうだな、良かったのかどうかと聞かれると、これからの身の振り方次第としか言いようがないな」

 ラリーサ・ドゥヴェと同じ、第三計画第二世代の出身であるナターリヤは、もの憂げな表情のまま去っていく106機のマインドシーカーを見つめていた。

 「支援者の援護がなければ死んでいた。そして、支援者からこのまま死んだことにしてソ連軍から抜け出すことを進められたとき、なぜか拒む気になれなかった。不思議なことだがな」

 ナターリヤはそう言うと、74・チィトゥィリと呼ばれる少女の頭に手を置いた。

 「ヤーナ、お前はよかったのか?我々は祖国を裏切ることになるんだぞ?」

 「問題ないです。わたしの命はあなたに預けたのだから。この命はあなたのものだから」

 「ヤーナ?名前をつけたのか?」

 「ああ、私たちは相棒だからな。いつまでも74などと味気ない呼び方はないだろう?」

 「まあ、それはそうだが」

 なぜか103に名前をつけていないことを責められたような気になるラリーサだった。
 彼女たちがこの場に居る理由は2つ。
 1つは乗っていた戦術機がBETAとの戦闘により行動不能になったこと。そしてそこを謎の支援者の手により助けられた。
 1つはこのまま生き残ってソ連の特殊部隊にいたところで、能力者である103共々死ぬまで使い潰されることが分かっていること。これは予知能力のたまものではなく、これまでのソ連のやり方からわかる確固たる未来予測だった。
 その二つの条件が揃った彼女に、支援者はこうささやいたのだ。

 「自由にならないか?」

 と。
 自由、全てにおいて抑圧され続けてきた彼女には想像が付かない、ただひどく尊く素晴らしいものだろう、と思っていた。
 こうして、自由への切符を手に入れた彼女は迷い無くその手を取った。
 無論、それが今後どのような未来を描くかを彼女は見ようとした。だが、見えなかったのだ。
 辛い未来も、絶望に彩られた未来も、何も。
 ただ、可能性があった。すべての可能性があった。それだけで彼女にとっては、支援者の手を取るのに十分な理由だった。

 「それよりもだ、103、貴様は良いのか?私に付き合うことはなかったはずだ」

 「あなたは温かいです。わたしは、温かいあなたの側にいたいです」

 「そうか…そうだ、貴様にも名前をつけよう。どんな名前がいい?」

 「なんでも、あなたがつけてくれるなら、なんでもいいです」

 「そうか、そう言われるとかえって悩むな…」

 後にアニメとよばれる日本帝国が世界に誇る文化が醸成されたとき、神原画の書き手として知られる10傑集と呼ばれる原画師たちがいる。
 そのなかに、ドゥヴェ姉妹とチィトゥィリ姉妹とよばれ原画師がいることは、アニメファンの中では有名な話である。


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