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マブラヴ 転生者による歴史改変 歴史改変の章その22
作者:ぜんくう◆7RWKYcvP01c   2013/04/14(日) 18:54公開   ID:jkr/fq7BJDE
1994年 晩夏 日本帝国柊町

 「あれ、ヘタレじゃないの、どうしたのよこそこそとして?」

 「あ、ジジョさん、じゃなくて、伊隅先輩」

 こそこそと木の陰に隠れながら様子をうかがっている不審者丸出しの人物、これが今年の衛士育成科の衛士適正最優秀者だとは誰も想像しないだろう。
 そのヘタレこと鳴海孝之に声をかけたのは、衛士育成科2年のなかでも座学、戦術機操作課程、などさまざまな分野でもぶっちぎりのトップを納める才媛伊隅みちるである。

 「いや、それが文化祭の出し物に誰と一緒に回るかでちょっと」

 バツが悪そうに答えるヘタレに、みちるがあきれたような声を挙げる。

 「相変わらずね、あなたたちは。というか、そろそろ決めたらどうなのよ?どちらかを選ぶか、それとも両方をとるか。まんざらでもないんでしょう、アクアとエターナル、じゃなくて、速瀬と涼宮も」

 「でもですね、そんな優柔不断なことは相手に失礼だと思うんです。男だったら1人に決めるべきかと」

 「それで答えが出せずに結局逃げ回っているの?はぁ、本当に救いようがないヘタレね。あの2人もどうしてこんなのを好きになったのやら。正樹の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわね」

 心底あきれたような目でこそこそと身を隠すヘタレを見下ろすみちる。

 「うぐっ!た、確かに言われてみればそうなんですが…でもですよ、好きとか嫌いとか考えたことなくて、でも2人とも同じくらい大切な仲間で、しかも最近は遙の妹の茜ちゃんまでなんかなついてきていて」

 「はいはい、ごちそうさま。妙にもてるヘタレの自慢話はよく分かったから。結論が出たらそのときにでも教えてちょうだい、私も暇じゃないんだからね」

 言って、颯爽と立ち去っていくみちる。そのみちるの姿をみると、有象無象の男どもが声を掛けてくるが、それを冷たくあしらっている。1年の女子達は、みちるをおねーさま呼ばわりして、その反応に照れるみちるをみてキャーキャー言っている。
 その光景をみながら、すげぇ、モテモテだ、などと思うヘタレだった。ちなみにみちるには心に決めた相手、幼馴染みの男の子、どうやら孝之と同年齢らしい、がいるのでまるでぶれない。
 それに比べて自分は、と暗澹たるため息をもらすヘタレだった。

 「あら、こんなところに隠れていたの孝之?気配をうまく消したつもりのようだけど、遙を欺くほどじゃないみたいね」

 そんなヘタレに後ろから冷たい声がかかる。

 「あ、こ、これは速瀬さんじゃありませんか、奇遇ですね?」

 「台詞が棒読みだよ、孝之君」

 「ははは、涼宮さんも、本日はお日柄も良く」

 「ねえ、水月、孝之君、いっぱいいっぱいみたいだし、今回は許してあげようよ」

 ヘタレのあまりにもあまりなヘタレっぷりに、遙が助け船を出すことを提案する。それを、水月はしぶしぶ了承。

 「え?ほんとう?ありがとう、ありがとう、遙。水月もありがとう」

 許しをもらった瞬間、途端に復活するヘタレ。蓼食う虫も好き好きとはよくいったもので、我ながらどうしてこんなのがいいのか、本気で悩む水月であった。
 ちなみに水月は、衛士適正二位である。負けん気を発揮して、ヘタレを追い越そうとがんばるのだが、BETAとの実戦経験有り、さらに隆也のスパルタを追加されたヘタレに死角はなかった。
 もっとも、座学では遙、水月に大きく水を空けられているのだが。

 「それじゃ、文化祭の前半と後半で分かれる?それとも3人で一緒に回る?」

 「うーん、私は前半後半で別れたいかな。その方が2人きりになれるし」

 照れながら自分の意見をいう遙、それに対してあんたの意見はどうなのよ、とばかりにヘタレに目を向ける水月。

 「え、俺は、3人いっしょがいいかなーなんて」

 「はあ、どうせそんなことだろうと思ったわよ。あんたトコトン優柔不断よね。しょうがないわね、遙、3人で一緒に回りましょ。それにどうせ茜も見学に来るんでしょ。だったら4人で回った方が楽しいわよ」

 「おお、それだ、それが言いたかったんだよ」

 突然話題に食い付いてくるヘタレ。

 「ヘタレは黙ってなさい」

 「はい」

 凍てつく視線で調子に乗ったヘタレを黙らせると、水月はやれやれと大きなため息をつくのであった。



1994年 晩夏 欧州連合 各国首脳会議

 「お集まりいただいた皆様には、まずこれを見てもらいたい」

 英国代表が手にした資料を各国の要人達に配っていく。それは、ECTSF技術実証機についての詳細なスペックを書き記した資料だった。

 「当初今年の春には公開する予定だったこの機体だが、先の参型ショックにより、一時的に計画の見直しを行っていたものだ。それがようやくものになったので、諸君らの忌憚のない意見を聞かせてもらいたい」

 参型ショックとは、正確には先進技術実証機撃震参型ショックといい、既存の戦術機を遥かに凌駕したスペックとその戦果に戦術機開発業界に走った衝撃をいう。
 犠牲者は主に、新型戦術機開発担当者達で、胃痛、頭痛、むねやけのほか不眠症などなどさまざまな精神性疾患などをもたらしたという。
 閑話休題。

 「おお、このスペックは日本帝国の不知火さえも凌駕していますな。すばらしい。それにこの近接格闘性能、撃震弐型を遙に凌駕している」

 イタリア代表の賛辞に、渋い顔をしながらドイツ代表が苦言を呈する

 「我々が作ろうとしているのは、欧州戦線の次代を担う機体だ。その程度の性能は当然備えていないと困る」

 言いながらも、興味津々と言った感じで資料を見続ける。

 「この機体形状、以前見た物とはずいぶん違っているように見えるが?この短期間でこれだけの変更を加えてだいじょうぶなのか?」

 「ええ、その形状の変更については、キャンプ富士での成果を取り入れた結果。そして、日本帝国軍技術廠の技術供与があってのものです」

 ドイツ代表の指摘に、想定の範囲内の質問だとばかりに英国代表が答える。

 「日本帝国軍技術廠?まさか、小塚三郎少佐の?」

 スペイン代表が声を挙げる。今まで技術供与を影ながら受けているとは言え、こうも面だった支援を行ってくるのはまれだ。

 「その通り。そしてキャンプ富士での成果をもっとも効果的に発揮することができるのがこの機体です」

 英国代表の声を受け、正面モニターに映像が流し出される。
 F−15大隊とECTSF技術実証機であるESFP中隊との演習模様だ。
 もう中隊規模の試験機を作成を行っていることも驚きだが、さらなる驚きはその演習内容だった。
 既存の戦術機動を覆すような日本帝国製の機動教練映像を完全にマスターしたF−15の尋常ならざる機動。その動きに各国は目を奪われた。
 だが、それもほんの数瞬、対峙するESFP中隊が動き出すまでだ。
 ESFP中隊に所属する衛士はすべてキャンプ富士、すなわち神宮司中尉から直々に戦闘機動の手ほどきを受けた精鋭中の精鋭たちだ。
 一瞬何が起こったか、英国を除く各国の首脳は理解できなかった。
 中隊全機が、大空に向かって跳躍。
 BETAの支配する空域において禁忌とされる行為の内の一つ。それをなんの気負いもなく彼らは実行したのだ。
 すぐさま鳴り響くアラート。ここ欧州戦線では、戦術機同士での戦いでもある一定高度を取るとレーザー照射が行われるようになっている。
 しかし大空に飛び上がった中隊は慌てることなく、すぐさま降下機動に移る。
 タイミング的にはぎりぎり照射を受けない絶妙な間合いだった。
 そして思い知る、その跳躍は意味のない跳躍ではなく、制空権を握ることでの圧倒的な優位性を見せつけるための示威行為であり、上位に位置をとることの脅威を植え付けるためのものだということに。
 猛禽類のようにF−15に飛びかかるESFP、その機動は先ほどF−15が見せていた機動をさらに洗練し、さらに猛々しくしたものだった。
 一瞬にしてF−15を屠るESFP。エレメントを組む別のF−15と近接格闘に移るが、そこでまた圧倒的な差を見せつける。
 驚異的なまでの近接格闘能力を誇るESFP。撃震弐型により蓄積された近接格闘の技術を惜しみなく提供され、それにより現行の機体では極まったと言っても言い性能をたたき出していた。
 そしてその性能を100%引き出す、特殊な戦術機動。キャンプ富士にて彼らが手にした戦術機の操縦技術。
 演習開始から8分で数的有利が消えた。そして12分過ぎには、ESFPで構成された一個中隊が、F−15一個大隊を見事に食らいつくしていた。
 戦果はF−15が36機とも大破判定、ESFPに置いては小破判定4、中破判定1、大破以上の判定はなしだ。

 「素晴らしい、この機体が正式に配備されるようになれば、欧州の戦線は劇的に変わる」

 スペイン代表の口から、思わず言葉が漏れる。
 イタリア代表は口をぽかーんと開いて映像に見入っていた。

 「皆さん、ECTSFの成果、ご覧頂けただろうか。これからこの中隊を前線に派遣し、さらなるデータ収集を行い、そして完成させる。我らEUが掲げる新たなる剣を」

 英国代表が朗々と歌い上げる。後に第三世代の最高傑作の一つと言われるEF−2000タイフーンの原型が歴史に姿を現した瞬間だった。
 ちなみにF−22のようなステルス機能はついていないが、逆にステルス殺しという特殊レーダーサイトを装備していることを、英国代表以外は知らない。
 それを知っていれば米国も、警戒レベルを数段階引き上げていただろうが、生憎と軍事機密中の軍事機密のためそれを知るのは、EF−2000が正式配備されてからになる。


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