※注意
・今回は少し短いかもしれませんが、切りがいいところで切っているためです。
前編AパートBパート、後編AパートBパート、みたいな感じの予定です。
・今回はアニメのオリカが割と多いので、詳細説明はだいたい省きます。
・もう、計算疲れました。なので、計算ミスがあっても書き直すつもりはありません。ミスがあったらごめんなさい。
◆
「サレンダーだ」
「!!?!」
俺の宣言に、セブンスターズの最後の一人、アムナエルは驚きの声を上げた。
そりゃそうだ。だって先攻1ターン目降参だし。
「もう俺が楽しんでいいイベントは終わっちまったからな。後は十代の奴に任せるよ。
とはいえ―――――――――」
懐からデッキケースを取り出して歩み寄る。
「俺は楽しい、ギリギリのデュエルを見たいんでね。このカードをやるよ。
その代わり、一つだけ条件がある。デュエルの様子、撮影させてくれ。あとで見たいから。
この条件、飲んでくれるよな?」
アムナエルは黙って、俺の差し出したカードを受け取った。
◇
「あ、あれ?」
一瞬だけ鍵が光ったような気がしたのだが、気のせいか?少し、意識しすぎか。
全力で探しているのだが、まだ、大徳寺先生は見つかっていない。そう、昨日校長が言っていた。十代の言う通り、今もどこかで、俺たちの助けを待っているのか、それとも............
そのまま考え込んでしまったようで、生徒手帳に通信が来た時には、日も暮れる時間になってしまっていた。
慌てて、生徒手帳を開く。通信は、万丈目からだ。ひどく狼狽えている。
「三沢、まずいぞ!!」
「万丈目、何かあったのか?」
「ああ。
先輩が、消えた」
「!?それは、どういう意味だ」
「さっき、デッキ調整のために、先輩の部屋に行ったんだ。
そしたら、オートロックの扉が開いていて、そこに先輩のデュエルディスクとデッキが置いてあったんだ」
「先輩が?確かに、それは怪しいな」
先輩はあれでも、特注の金庫を購入していることからも分かるように、防犯には気を使っている。扉を開けっ放しにはしないだろうし、ましてやデッキをそんな場所に置いておくことなんてまずない。
「ん?なんだ?」
「どうした?」
「これは確か、錬金術の授業で習った、錬金術のマークか?」
錬金術のマーク?確か、円の中に黒丸、だったか?でも、なんでそんなところに。
「待て。消えた?いや、今度は窓の外に?
............なるほど、誘われているということか。
悪い、あとでかけなおす」
「やめろ万丈目、危険だ!」
俺の声が届いたかどうか。通信は切られてしまった。
急いで、ブルー寮に向かい走り出すとまもなく、鍵が光りだした。くそっ!
距離が離れすぎていたため、到着するまで十五分もかかってしまった。まだ、鍵の光は残っている。この感覚は、森の方か!
俺はひたすらに走る。だが、それほど走らないうちに、光は消えてしまった。代わりに俺の前に出現したのは、万丈目が言っていた錬金術のマーク。黄緑色の光を放っている。それが俺を導くように、森の奥へ断続的に進んでいく。
着いて行くしかないようだ。
◇
「カイザー!」
「十代!翔!
お前たちは無事だったか!」
「ああ、だけど、それなら今戦っているのは............」
鍵は三回光った。つまり、二人が敗れ、もう一人が戦っているということだ。
「急ぐぞ、翔、隼人、カイザー!」
十代は森へ向かって走り出そうとした。
しかし、その時、突如地響きが鳴り響く。
「な、なんだ!?」
「ああっ、あれは!?」
遠くの空に、光の柱が立ち上った。
「見て、あっちも!」
「いや、あっちにもあるぜ」
次々と、光の柱が立ち上る。その本数は、五本。島を取り囲むように立ち上っている。さらに、空に暗雲が立ち込め、雷まで鳴り始めた。
「つ、つまり、三沢君も万丈目君も、それに旭センパイも、やられちゃったってこと!?アニキ、お兄さん、早く逃げようよ!二人が鍵を奪われたら、何が起こるかわからないよ!」
「ホントに三幻魔が復活して、島が沈没してしまうかもしれないんだな!」
「なおさら逃げられるかっての!」
「そりゃそうだけど............」
「どんな強敵だろうと、俺たちが闇のデュエルに勝つ以外、この事態を治める方法はない」
これが、俺たちとセブンスターズの、最後の戦いとなる。
「ここは、旧特待生用の寮か」
ついひと月前、三沢とあの闇のデュエリストが戦った広場へと続く道。そこへ俺たちは、錬金術のマークに導かれてやって来た。
だが、マークは急に、横道にそれた。
「カイザー、こんなところに道なんてあったか?」
「いや、なかったとは思うが」
隠されていたのか、それとも新しく作られたものなのか、判別はできない。
どちらにせよ、セブンスターズの仕業だろう。
「なんだ、ここは?訳わかんねー機械がいっぱいだ」
「ラスボスのアジトみたい」
「実験室、か?」
そのまままっすぐに進んでいくと、俺たちは大きな部屋に出た。
かなり巨大だが、大徳寺先生の錬金術の授業で見たことのある蒸留窯などが並んでいる。あのマークからしても、ここで錬金術の実験を行っていたのだという予想は、あながち間違ってはいないだろう。
「なんだ、あれ?」
十代の指差した先には、棺桶。この場には、ひどく場違いな物だ。
十代は物怖じせず近づくと、棺桶に手をかける。
「隼人、カイザー、開けるの手伝えよ」
「やめようよ、アニキー..........」
「い、いや、そういうのは苦手なんだなー」
俺も、首を横に振る。
「得意なやつがいるかっての〜。いいや。明かり、頼む。よいしょっと」
十代は重そうにしながらも、あっさりと棺桶のふたを外してしまった。
「これは、ミイラだ」
ミイラ? どうして、こんなところにミイラが............ずっとこの寮に有ったのだろうか。それとも、セブンスターズが運んで来たのか。わからない。
十代は翔から懐中電灯を借りて、ミイラの顔にライトを当てる。そして、しきりに首をひねる。
「でもこのミイラ、どこかで見たことある気がするんだよなー」
「そんなわけないっすよ」
「この服装に、この背丈、それに髪型も............」
そう言って十代は、そのミイラの服をめくった。
DAITOKUJI
服の胸の部分に、そう書かれていた。
「このミイラ、大徳寺先生だ!」
「ええっ!?」
「そんな訳ないんだな!いくら行方不明になってたからって............」
どういうことだ。闇のデュエル?いや、大徳寺先生は鍵を持っていないのに、巻き込まれるはずがない。だが、俺には、見れば見るほど、このミイラが大徳寺先生だとしか思えない。
「ようこそ、私の実験室へ。遊城十代」
どこからか男の声が聞こえ、同時に、天井の明かりが灯る。
「誰だ! どこにいる!」
「フフフフフフ、私は逃げも隠れもしない」
現れたのは、奇妙な風体の男。灰色のローブをかぶり、顔全体を覆う仮面をつけているようだ。
「私が、お前の探し求める七番目のセブンスターズ、アムナエル」
「アムナエル! お前が万丈目や、三沢や、旭センパイを!」
「確かに、お前の仲間は預かっている」
アムナエルは懐から、一冊の本を取り出した。その表面には、千年アイテムと同じ、金色のウジャト眼が付いている。あの中に、三人は取り込まれているということか。
「彼等は皆、類い稀なる才能を持つデュエリスト達だった。しかし、私の期待を超えることはできなかった」
「大徳寺先生を、あんな姿にしたのも、お前か!!」
「残念だがそれは違う。そのミイラは元々この実験室に置かれていた」
「どういうことだ。それじゃあ、俺たちが今まで教わってきた先生は............」
「下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとし」
? これは、錬金術の基本原理か。一年のころ、大徳寺先生の授業で習った覚えがある。
エメラルド板にヘルメースが刻んだ言葉と言われていて、天上界の出来事、つまり宇宙や自然現象が人間界の出来事と繋がっていて、その原理を理解することにより、奇跡をも起こすことができる、という。
やはりこの男、錬金術師。
「十代、事実を知りたければ、この世界の真実が綴られたエメラルドタブレットの前で私の闇のデュエルを受けるがいい」
「十代、挑発に乗る必要はない。ここは俺が」
「いや、俺が行く。よく分かんねーけど、俺が行かなきゃダメな気がするんだ」
そう答える十代の目は、どこまでも真剣だ。いや、真剣というよりは確信か?
どちらにせよ、俺が横入りするべきではないか。
「分かった。だが、勝て。必ず勝て」
「ああ、分かってる。錬金術師なんてイカサマデュエリストに、絶対に負けるもんか!
来やがれ、アムナエル!」
「「デュエル!!」」
「君が錬金術を馬鹿にしきっているのは残念だ。ならばしかと見よ、錬金術の力を!
私のターン、ドロー。永続魔法 錬金釜−カオス・ディスティルを発動。
このカードの効果により、これから墓地へ行く
私のカードは、全てゲームから除外される」
除外?しかも、自分のカードだけ?どういう意味があるんだ。
「さらにもう一枚、永続魔法 魂吸収を発動!」
「!! まずいぞ、十代!あのカードは!」
「永続魔法 魂吸収が存在する限り、カードが一枚除外される度に、私は500ポイントのライフを回復する。
そして
魔法カード 水銀の砂時計」
宣言と同時に、カードが手元から消え、代わりに錬金釜が音を立て始める。
「錬金釜−カオス・ディスティルが場にある時、錬金獣・水銀のエケネイスを手札、または墓地から特殊召喚する。私は水銀のエケネイスを、守備表示で特殊召喚!」
「攻撃力も守備力も、500?」
「錬金獣は通常召喚できない代わりに、相手へのダイレクトアタックを可能にする。
カオス・ディスティルの効果によって、水銀の砂時計は除外される。そして魂吸収の効果により、私は500ポイントのライフを回復」
アムナエル:6000→6500
「さらに、
魔法カード 鉄のランプ、鉛のコンパスを発動!
このカードも、カオス・ディスティルが存在する時、それぞれ、鉄のサラマンドラ、鉛のレオーンを特殊召喚する」
「また、壁モンスターか。それとも、エクシーズ召喚か?」
三体とも、レベルは3。あのデッキなら、
潜航母艦エアロ・シャークまでありえる。
「エクシーズ............あれは邪法だ。いや、ひょっとするとアプローチの角度が違うだけかもしれないが、私は好まない。
カオス・ディスティルの効果でさらに二枚のカードが除外されたことにより、魂吸収の効果が発動する」
アムナエル:6500→7500
「くっ、もう1500ポイントも回復したのかよ」
「いや、大丈夫なんだな。これでアムナエルの手札は残り一枚。ライフは勝っていても、たぶん、こちらの方が有利なんだな」
違う。そんなはずがない。
仮にも、三人の守護者を倒した相手だ。これで終わるはずがない。
「ふっ、愚かな助言だな」
「な、なに!?」
「言っておこう。私の錬金術の前に、すべての常識は覆る。
私は手札から、
魔法カード 黒の過程−ニグレドを発動。
カオス・ディスティルが存在し、手札が0枚の時、自分フィールド上の錬金獣全てを除外し、除外したモンスター一体につき、二枚のカードをドローできる」
「馬鹿な!アムナエルの場の錬金獣は三体。ということは!?」
「私は六枚のカードをドロー!
フフッ、これこそ、錬金術における滅びと再生の儀式。十代、このデュエルは、着々とお前の敗北へと向かっている」
くっ、手札六枚、場には二枚のカード、そして計四枚のカードが除外されたことにより、ライフは―――――
アムナエル:7500→9500
「9500!?」
「ま、まずいんだな、まず過ぎるんだな!
これで、次のターンからも、余裕で十代の攻撃を受け流してしまえるかもしれないんだな!」
「まだだ。錬金術の恐ろしさ、括目して見よ!
錫の魔法陣、銀の鍵、銅の天秤を発動。出でよ、錫のアエトス、銀のムーンフェイス、銅のウロボロス!」
これでまた、三体の守備モンスターが場に出てしまったか。しかも、アムナエルのライフはさらに回復する。
「三枚のカードの除外により、1500ポイントのライフを回復!」
アムナエル:9500→11000
「これで終わりではない!
私は手札から、
魔法カード
偽・封印の黄金櫃を発動。デッキからカードを一枚、ゲームから除外して、発動後二回目の自分のスタンバイフェイズ時に、そのカードを手札に加える」
「タイムカプセルの、上位互換カード!」
「フッ、私はデッキから、ネクロフェイスを除外する。そして、ネクロフェイスの効果発動!
このカードがゲームから除外された時、お互いはデッキの上からカードを五枚除外する!!」
「「五、五枚!? 」」
「くそっ」
除外されたカードは、5+5+黄金櫃+ネクロフェイスで、十二枚!!!
「これで私のライフは、さらに6000ポイント回復!!!!」
アムナエル:11000→17000
「そ、そんな............初めのライフポイントの、約三倍..................」
「これこそが、錬金術の力だ。さぁ十代、君の力を見せてくれ」
(除外カード枚数:アムナエル17枚 十代:5枚)