修行の期間は1か月、1か月という短い期間でシイグはSVS優勝できるくらいに強くならなければならない。この辛く高い壁を前にしてシイグの心は熱く、猛々しく、燃えていた。
――――そして、SVS当日。
「申し訳ありません、クーレイ様。シイグ様を上級下士官並みにするという命令に、背くこととなってしまい本当に申し訳ありません」
ここは父様の部屋、イッサさんが父様を前にして片膝で跪き、頭を床にこすり付けるように下げていた。
「ここは私の首1つでどうか、お許しください」
そういってイッサさんは、懐から短刀を取出し・・・・・・
「もういい」
あぶねー。イッサさん本当に斬るとこだったよ。
「ですがっ!」
「もういいと言ってるだろうがっ!!少し黙れ。おれが家族を目の前で死なせると思ってるのか?」
イッサさんが口を閉ざした。相変わらず真面目な人だと俺は思った。しかし、俺はイッサさんに対して疑惑の念を抱いていた。
「イッサ、お前は本気でやったのだろう?なら、それでいい。シイグにはシイナ(剣全般の天才)の血があまり流れていなかった。それだけだ。わかったら下がれ」
「はっ!ありがたき幸せを・・・・・・」
イッサさんは部屋を出て行った。だが、違う。イッサさんは俺の目で見て明らかなほど、俺の修行に手を抜いていた。なぜだ?イッサさんは実は、サボり魔だったのか?わかんねー。
「さてシイグ、才能が無いといっても落ち込むことはない。イッサに見てもらったんだ、それなりに強くなっているはずだ。優勝は十分狙える」
確かに、イッサさんがあんなに手を抜いていたにもかかわらず、かなり強くなったことが実感できている。これが母様の血か。
「そこで、お前に渡すものがある」
父様はおもむろに一本の刀を取り出し、俺に差し出す。
「これは・・・・・・?」
「この刀は最上大業物12工の1つ・・・・・・名は、【
花恋】」
「花恋・・・・・・」
「その刀で優勝をつかみ取ってこい」
「はっ!仰せのままに」
俺は刀を腰に差し、部屋を出て、会場へ向かった。今は、イッサさんのことを一旦忘れてSVSに集中しよう。
ここは、SVSの会場「ナムリンキナ」 会場前は人で溢れかえっている。ずいぶんと人気なイベントらしいな。世界貴族だけでなく一般の人もかなりいる。俺は人の間を潜り抜け、控室に向かった。
控室に入る。
「ぬおっ・・・・・・!」
控室の中は、巨人、巨人、巨人、そこらじゅうが巨人だった。・・・・・・ガチだよ世界貴族の皆さん。
「ぬはははは、おい、そこのちっこいの、おめぇがSVSに出るのか?」
「そうだけど」
「ぬっははははははは!てめぇみたいなちっこいのか勝てるわけねぇだろ」
ピキッ・・・・・・。キレた・・・・・・キレたぜ、俺。許さん、コイツは許さん。俺は腰の刀に手をかける。・・・・・・が、その手を戻した。落ち着け、・・・・・・まだだ、試合で殺す。
俺は何もせず、巨人の前を素通りし、端っこの席を陣取る。そのまま、開始を待つ。
――――そして、時が来た。
体の芯に強く響く、鐘の音とともにSVSが開始した。会場が途端に活気立つ。司会が出場者の名前と持ち主の名前を読んでいく。
「・・・・・・以上のメンバーでお送りしていきます。えー、今大会は、出場者が多かったので本戦の前に予選を行うそうです。予選は4人1組の生き残り戦、何が起きようが、主催者は一切責任を負いませんのでご了承ください。それでは、まず第1回戦!戦うのはコイツらだ!」
司会の声とともに上空・控室に画面が現れ、4人の名前を表示する。4人の名前には俺の名前があった。