「準決勝第2回戦を制したのは・・・・・・ルゥゥゥウウウウイイイイィイィィイイイっ!!!」
観客から地面を揺るがすような声援が起こる。
俺は控室でソファに座り、聞こえてくる声援に耳を預けていた。
なんだよ、俺声援なんてもらえなかったぞ。・・・・・・まぁ、あいつの戦いは見てて面白いからなぁ。ゴム人間って珍しいよな。
「・・・・・・では、これより決勝戦に向けて半時の休憩時間とさせていただきます」
休憩時間か、そんなものあったんだ。俺にとってはラッキーか。俺には早急に解決しなければならない問題がある。
『俺の能力』について・・・・・・
さっきの戦いで、俺の記憶がない時間、『デネプラ・ドラコ』を名乗る何者かが、俺を操っていたとダシンは言っていた。
狂乱龍は、俺の食った悪魔の実だ。つまり、悪魔の実には自我があるということか?そして、どうにかして俺の意識を追い出し俺の身体を操った。でも、何故?どうやって?
俺が思考の渦に飲まれようという時に、誰かが俺の名前を呼んだ。
「やぁ、シイグ君。あの時ぶりだね」
「お前は、ワンタ!・・・・・・何しに来た?」
突如現れたワンタに対し、俺は警戒心を丸出しにし花恋に手をかける。だが、ワンタは片膝をつき、頭を下げ言った。
「お久しぶりです。我らが主、
悪魔王様」
はっ?
「ちょちょちょ、ちょっと待て。なんだよいきなり」
まったくもって意味が分からん。なんだよ誰だよ。さたんて。つーか、ワンタの声変わってない?
しかし、ワンタは俺の質問にはまったく答えない。
「
悪魔王様より貰い受けし、【嫉妬】の称号、レヴィアタンがただいま、戻って参りました」
その、ワンタとは少し違った声に反応してか、俺の身体の奥底から何かが聞こえる。
えっえっ、えっ?なにこれ?
〈ぉぃ、ぉい、おいっ!聞こえるか?〉
〈き、聞こえるけど、お前は誰だ?〉
そろそろ良いでしょ、俺に何が起こっているのか教えてくれ。
〈質問は後で受ける。今は
変われ、さっきの試合はオレのおかげで勝てたようなもんだ。つまりオマエはオレの恩がある、変わってくれればチャラでいいぞ〉
〈あ、ああ、わ、
わかった〉
その瞬間、俺の意識が飛んだ。
ふぅ、やっとか、めんどくせぇ身体に食われたもんだ。
だが、今はそれより・・・・・・
「久しぶりだな、レヴィ」
俺が再開のあいさつをすると、レヴィは顔を上げた。
「ええ、ほんとですよ」
その顔には、涙が流れていた。
「やっと、やっと仲間に会えたっ・・・・・・」
そして・・・・・・俺の顔にも涙が流れていた。
しばらく、静かに泣き続けた後、オレらはこれからのことを語り始めた。
「レヴィ、オレは目覚めたばかりなんで今の時代のことがさっぱりわからん。教えてくれ」
「はっ。ですが、
私の身体も奴隷という身分なので、世情は詳しく分かりませぬ」
ちっ、使えねぇな。
「主、そういうことは声を出さずに仰ってください」
「ああ、悪い悪い、声に出てたか」
だが、レヴィを罵ったところで現状は変わらん。
オレの身体に聞こうにも、まだ慣れてないからなぁ。
さて、時間もない。仲間全員集めるには海を渡らなければならない。幸い、オレの仲間は強いから、全員”
偉大なる航路”にいると思う。だが、海にはなぜか強敵がいる。せめてどんな力か、あらかじめ知っていれば対処のしようがある。
やはり、情報が欲しいな。
ちっ、あんまりこの身体を酷使したくなかったが、そうも言ってられないか・・・・・・
「レヴィ、
オレの身体に聞くことにする。質問ばっかしてくると思うが、逐一答えてやれ。オレの身体だ、世話のなるからな」
「あの、失礼ですが、それはご自分でやられた方が・・・・・・」
「やれ」
「はっ、変わりませんね、主は。わかりましたよ」
そういうオマエも、お堅いところは変わらねぇけどな。
「それじゃ、まかせた」
オレは
オレの身体の意識を戻す。
「うぅ、んっ・・・・・・はっ!」
目を開ける。視界は靄がかかっている。
「っ!?」
頭痛がしてきた。痛っ、つーか今、どんな状況?
「大丈夫ですか?」
視界が鮮明になってきた。目の前を見ると、ワンタが俺の顔を覗き込み、訪ねてきている。
か、顔が近い。吐き気がしてきた。俺は手で押し返しながら言う。
「だ、大丈ぶぅえっ、大丈夫だ。離れろ」
「わかりました」
俺の今の状態は、ソファの上で寝ていた。頭痛はするしで、全く理解できない。
目の前のやつに聞くか。
「まず、お前は誰だ?」
ワンタは片膝ついたまま、言った。
「我が名は、レヴィアタン。主より【嫉妬】を貰い受けた者です。世間では、
氷霧狼と呼ばれています」
氷霧狼って、ワンタの食った悪魔の実だよな?・・・・・・
「あ、主って、誰?」
「あなた様が、
狂乱龍と呼んでいる方です」
まじかよ・・・・・・
「えーと、悪魔の実って、本当に自我を持ってるんだ・・・・・・」
「いえ、その考えは不正確です。自我を持っているのは我ら
合成系と呼ばれる者だけです」
レヴィアタンさんは淡々と答えてくれる。いい人?じゃないな、いい悪魔の実?これもちょっと違う、いい悪魔でいいか。いい悪魔だな、レヴィアタンさん。・・・・・・レヴィアタンっていうのも長いな。レヴィさんでいいか。
「自我を持つって言うのはどういうことなんですか?」
「自我を持つというのは、あなた様「シイグでいいですよ」・・・・・・シイグ様の身体にもう1つの意識がある、ということです」
俺の中にもう1つ・・・・・・
「シイグ様が心の中で主に語りかければ、答えてくれると思いますけど?」
まじで、そんなことが可能なのか!ちょっとやってみようかな?
・・・・・・き、緊張してきた、どんな奴だろう?礼儀正しいといいな。
・・・・・・って、さっき話したけどあんま良い奴じゃなかったじゃん。
「レヴィさん、やっぱ遠慮しとくよ。」
「そうですか・・・・・・でも、話しかけてくると思いますよ」
〈なぁ、オレもシイグって呼んでいいか?〉
話しかけてきたー・・・・・・
〈別にいいですよ。俺はなんて呼べばいいですか?〉
〈サタンでいいぞ〉
「それで、レヴィさん。
合成系って、いったい何なんですか?」
ずっと気になっていたことだ。
合成系の真実。
「・・・・・・・・・・・・
合成系とは、遥か昔、世界政府によって封印された人間たちです」
・・・・・・マジ?