ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

ONE PIECE ONLINE 第15話 「二つの戦い」
作者:波良田瑛太   2013/05/10(金) 22:20公開   ID:ic3DEXrcaRw


「な、なんで・・・」


――なんでイッサさんが、俺に刀を突き付けてるんだ・・・?


「イ、 イッサさん・・・? ど、どうしたんですか?」


シイグの噛み噛みの問いに、
イッサは、シイグの首から、刃を動かさずに言った。


「イッサ? 誰ですそれは? ・・・ん?・・・ああ、私が名乗ってましたっけ? ですがそれ、偽名です。私の本当の名は・・・『アンゲロス』 まあ、覚えなくていいですよ」
「・・・アン・・ゲロ・・・ス・・・・・・」


驚きのあまり、シイグは思わず声に出していた。


「うわぁ、気安く呼ばないでくれますか? なんか、さぶいぼが立ってきました。私の名は、栄光ある、崇高な、神のようなお方である『ラグエル』様がつけてくれたものだ。理解したら、もう呼ぶなよ?」


イッサは言うが、もはやイッサの言葉は、シイグには届いていない。


――コイツは・・・イッサさんじゃない・・・イッサさんは、こんな人じゃない・・・・・・


シイグは頭を抱えだした。
イッサは、そんなシイグを呆れたように見ている。


「はあ、さっさと仕事を済まして、ラグエル様に褒めてもらいますか。ラグエルさまぁ、さっさと仕事を済ませて、今すぐに帰りますからねぇ」


イッサは、視線をシイグから標的の貴族たちに移し、刀を抜き、殺しに走って行った。
シイグは、そんなことを知る由もなく、頭を抱えうずくまり続けている。








――いや、ホントはわかっている。俺が、俺たちが、ずっと騙されていたってことを・・・。父様を殺されたんだ。当然だ。・・・そう、父様を殺されたんだ。大恩ある、父様をだ。許せるはずあるか? 否、許せるはずない。・・・・・・・・・・・・くそっ・・・・・・







―――認めたくない・・・







「おい、シイグ! いつまでそうやってるんだ!」


現実から、目をそらし続けるシイグに向かって、突然ルイは叱りつけた。


「お前の(この世界の)父親は、凄い奴だって、おれを所有している貴族も言っていたぞ。『あいつは、世界貴族のくせして、食えない奴らを拾っては、食わせてやってるんだ』ってな。お前はその凄い人の息子だろうがっ! さあ、立てよ! 立って、弱い奴らを救って見せろよ!」


普段の無気力なルイからは、想像できないことだった。
他人を叱咤激励するなどとは。


「・・・ルイ・・・・・・・・・・・・ふんっ、何が目的だ?」
「・・・ちぇっ、やっぱりばれるか。まあ、あとで教える。今は、ここから逃げるのが先決だろ?」
「確かにな。あと、ありがとよ」


シイグは立ち上がり言った。
その眼にはもう、倒すべき相手しか映っていない。



―――――――



「どけどけどけぇっ!」


シイグは、雑兵どもをたたっ斬っては、掻き分け、進んでいった。
ルイは、後ろからシイグを狙うやつを片付けている。


「はあはあ、・・・・・・イッサぁあっ!」


たった今、でっぷり太った貴族を、殺そうとしていた手を止め、イッサはシイグの方へ顔を向ける。その顔には、怒りの表情を浮かべている。


「はあ、今良いところでしたのに、目標を逃したらラグエル様に怒られるんですけど・・・」
「うるせぇよ。俺はお前をぶっ殺すって決めたんだ。死ぬんだから怒られねぇよ。心配すんな」


シイグの言葉に、イッサは目をむき、次の瞬間には、破顔し笑い崩れた。


「あっはははははははっ、何を可笑しなことを・・・はははっ、はあ、私が何者なのか、解って言っているのですか? 私は、四皇“ラグエル”様率いる、『ノローック海賊団』の幹部が1人ですよ?」


イッサは、聞き分けのない子供に、言い聞かせるように言った。


「ンなもん知るかぁ! あんたは、父様に拾ってもらって、食わせて貰ってたんだろ? 父様に鍛えてもらってたんだろ? 父様に恩があるんだろうがぁあああああああああ!」
「確かに、クーレイは私より強く、いい勉強になりましたね」


シイグは逆上し、がなり立てる。
シイグの言葉に、イッサは軽口で返す。
そんなイッサに、シイグは、大きく息を吸い込み、イッサを指さし言った。


「俺はお前みたいに、恩を仇で返す奴が、一番大嫌いなんだよっっ!! 何が何でもお前を殺すっっ!!!」


改めてイッサを前にすると、シイグの中には黒い感情だけが渦巻いていた。
――憎んでも憎み切れない・・・


「ほう・・・それなりの覚悟で、言ってるみたいですね。ですが・・・ライエン! ヨーグル! コレント! 相手してあげなさい・・・」


「「「・・・御意に・・・」」」


イッサの後ろから、3人の海賊が出てきた。みな、火縄銃を持っている。


――遠距離系か、面倒だな・・・


シイグは、距離を取られる前に片付けようとしたが、その前に撃たれた。


「・・・!! ぐふぅっ・・・・・・」


―――――ルイの胸から血が溢れてくる。


「お、おまっ・・・・・・」


シイグが声をかけようとしたが、ルイに手で制される。


「こいつらは、面倒だがおれが片付ける。お前は先に行け」


ルイに目には決意の思いがやどっていた。


「まったく今日のお前は、らしくなさすぎて恐いわ。後で目的をちゃんと教えろよ」
「ああ、後でな」


ルイにこの場を任せ、シイグはイッサを追いかける。


「はぁはぁ、待てよイッサ・・・・・・いや、アンゲロスだっけか?」
「貴様ぁ、呼ぶなといったはずだが?」


アンゲロスの顔からは、怒りの色を窺える。
が、シイグは構わず続ける。


「悪い悪い、忘れてたよ 【アンゲロス】 しっかし、変な名前だなぁ」
「・・・・・・・・」


アンゲロスは、俯き、シイグの言葉に何のリアクションも取らない。
が、数秒経ち、顔を上げた。
その顔は、抑えた激情、恨み、怨念、そのすべてを混ぜ合わせたような、そんな顔をしていた。


アンゲロスの周りには、抑えきれずに噴き出てしまった怒りが、赤々と漂っていた。


「私を馬鹿にするならまだ許せました。・・・・・・だが、貴様は確実に、」


――ああ、目つきヤベぇ・・・


「―――――怒らせてはいけない人を怒らせてしまった」


アンゲロスは刀を構えなおす。


「本気でぶった斬ってあげましょう」


アンゲロスは目に力を込める。シイグも花恋を抜き、構える。


「うるせぇよ。今じゃな、お前が俺を殺したいんじゃない。・・・・・・俺がお前を殺したいんだよ」


シイグは走る。


「死に狂えぇえええええええええええええええ!!!」


シイグはアンゲロスに向けて思いっきり花恋を振る。


「やかましいんですよ・・・ふんっ!・・・」


アンゲロスは自らの持つ刀で、シイグの攻撃を押し返す。


「死ね死ね死ね死ね死ねぇぇええええええええええええええ!!!」


だが、シイグは狂ったように攻撃し続ける。


「俺は、お前らノーロック海賊団をぶっ潰す!!!」


シイグは自らに言い聞かせるように、変わらぬ思いとして、自らに刻み付けるように言った。


「どうでもいいんですけどね、そういうの。私はあなたを殺すだけですし」


アンゲロスは刀を正眼に構える。


「これで終わる。“神風一刀流 照尾銅鑼(ライテールゴング)”」


アンゲロスの刀が黄色の光った。
地面を蹴り、アンゲロスは空高く飛ぶ。


「はぁああああああああああああああああ!!!」


黄色い刀の軌跡を描きながら、アンゲロスはシイグに向けて刀を叩き付ける。
シイグはそれを、花恋で受け止めた。


「ぐううう・・・・・・」
「はあああ・・・・・・!!」


シイグ周辺の地面が、陥没した。



―――――――



「三刀流 “百八(ひゃくはち)煩悩(ポンド)鳳(ほう)”!!」


リンが放つ、三本の斬撃が渦を巻いて飛んでくる。
ワンタはそれを氷の盾で防ぐ。
その盾には、狼の模様が描かれていた。


「“氷狼の盾(アイスシールド)”!!」


だが、盾はあっさりと、砕け散る。
リンは、刀二本を鞘に納め、柄に手をかける。
そのまま腰を落とし、突っ走ってくる。


「二刀流居合 “羅生門(らしょうもん)”!!」


その攻撃に対抗するため、ワンタは人獣化。
まさに獣のようにな速度で、横にそれる。
目の前を突風が吹きぬける


――あぶねぇ・・・


「おうらぁあああ!!」


技を終え、隙ができた瞬間、爪をリンに突き立てる。
リンは驚くほどの反射神経で、その攻撃を防いだ。
ワンタの爪をはじいたリンは、その勢いのまま、一回転。
刀を横なぎする。
ワンタの脇腹に刀傷が三本入る。


「いってぇええええええええええ!!」


リンの剣技は、まるで暴力だとワンタは感じた。
圧倒的腕力でもって、叩き斬る。それが、リンの剣術。
脇腹の痛みがズキズキする。
両手を交差させ、刃の先をワンタに向ける。


「三刀流 “牛鬼勇爪(ぎゅうきゆうづめ)”!!」


リンは突進しながら、ぎゅうぎゅう詰めの渾身突きを繰り出す。


「うああああああああああっっ!!」


野獣のような咆哮。
もはや、リンの背後には牛の姿をした闘気が見えた。
突き、突き、突き、突き、突き・・・・・・。
ワンタも始めは何とか捌いていたが、次第に身体がついていかなくなった。


「くっ、があ・・・・・・」


身体中に切り傷が付く。
全身の痛みに、ワンタが怯む。
そこをリンが見逃さず、三本の刀でワンタの首を挟む。


「三刀流 “蟹獲り(がさみどり)”!!」


ガキィンッッ!
氷のワンタが砕け散った。
リンが舌打ちする。
ワンタは後ろに回り、攻撃を仕掛ける。
リンはワンタの姿を追い、後ろを向く。
しかし、リンの視界は突如として反転した。
ワンタが、しゃがみ込み回し蹴りを繰り出したのだ。
仰向けに倒れたところを、下から突き上げる。
リンの身体が空に浮く。
ワンタもリンを追いかけ、地面を蹴り、飛ぶ。
リンより高く飛んだところで、身体を折り前に一回転し、踵をリンの腹に叩き込む。


「“氷狼激烈斬(ひょうろうげきれつざん)”!!」


地面に激突し、リンは地面に亀裂を入れる。
リンの口から血が吐き出される。


「がはっ・・・・・・」


ワンタは降下しながら膝をリンに突き入れる。


「ちぃがほっ・・・・・・」


深いダメージで動けるはずもないのに、リンは近くの刀でワンタを斬ろうとした。
ワンタは後ろに跳び、避ける。


「くくく、かっはっはっはっはっは、手前ぇ、強すぎるんじゃないのか?」


あれだけやられたのに、リンは高らかに笑っている。
恐ろしい、ワンタは素直にそう感じた。


「くくくくくくくくくくくくく、こうなったら、小生(しょうせい)の奥の手を・・・・・・」


リンは黒い闘気を放ち始める。
ま、まさか、『鬼気“九刀流阿修羅”』か・・・・・・
その時、ワンタの横を風が流れた。


「・・・・・・待て・・・」


大柄の男が、リンの腕をつかむ。
その男は、髪が長く表情がよく読めない。
ドクンッ・・・・・・
ワンタは何かを感じた。あの男に。


〈ワンタ。あの男は・・・・・・私たちの仲間です〉
〈えっ・・・・・・合成系(キメラ)ってこと?〉


「放せっ! タチっ! 小生(しょうせい)は・・・・・・」
「・・・だから、待て、言ってる・・・アンゲロス、逃げた。この戦い、意味、無い・・・・・・」


リンは舌打ちした。
ワンタを、射殺すかのように睨みつける。


「くくく、手前は小生(しょうせい)が必ず・・・・・・」


リンはいったん言葉を切り、強く言った。


「―――斬る」


その言葉を置いていき、二人は消えた。
ワンタは困惑している。


〈ねぇ、アンゲロスって誰? つーか、あの男の人合成系(キメラ)なんでしょ?〉
〈ええ、あの禍々しい気配。テューポーンですか・・・・・・やっかいですね・・・〉
〈強いの?〉
〈我ら、ソールオク王国王族親衛隊14人衆の頂点に立つ男。テューポーン・・・サタン様の次に強い。つまり、サタン様の配下の中では最強です〉
〈それって、ヤバくない? あっち側にいるってことは、敵だよね〉
〈確かに、そうですね・・・なんでテューポーンが・・・〉


ワンタとレヴィアタンは、言葉を切り、考える。


〈テューポーン・・・やはりあなたは・・・〉



―――――――



――このままじゃ、花恋が折れちまう・・・


アンゲロスの刀に段々と押され始める。


〈サタン、手ぇ貸せ〉


サタンは無言で了承する。
すると、シイグの背中から、黒い手が1本生える。


「・・・・っ!! ごばぷっ!!」


アンゲロスが気付いた時には、黒い手が目の前にあった。
殴られた衝撃でか、アンゲロスの鼻から赤い線が一筋流れていた。


「げほっ、げほっ・・・・・・ふむ、それが例(・)の(・)・・・」
「あ? 知ってんのか? サタ・・・・・・」


〈おい、バカ野郎!! その名は公の場では出すなと言っただろうが!!〉
〈そ、そうだった。悪い悪い〉


シイグはアンゲロスの様子を窺い見た。
アンゲロスは目を細くし、考え事をしている。


(・・・サタ・・・・・・)


「おっほん、お、俺の能力の、ここと、ししし知ってるのか?」


シイグは早口に誤魔化す。
アンゲロスはひとしきり思案した後、返事をした。


「まあ、それなりにですね。あなたのことを調べるのも、私の仕事でしたしね・・・」


アンゲロスは、一拍置き言葉を続けた。


「――――――悪魔の実史上、最悪種・・・・・・合成系(キメラ) 
 現在、存在を確認されているのは、15種。名前がわかっているのも、15種全部。
 能力者がわかっているのは、わずか5種。
 ウオウオの実 【犬蛸(クリポリー)】 能力者ナポリー
 ムシムシの実 【透明蝿(ディアファージ)】 能力者ムヤ
 イヌイヌの実 【氷霧狼(アセナ)】 能力者ワンタ
 ネコネコの実 【鵺(ライディーン)】 能力者タチ
 ヘビヘビの実 【狂乱龍(デネプラ・ドラコ)】 能力者シイグ
 シカシカの実 【唸る獣(ベスティアセ)】
 ウシウシの実 【角山羊(オーヴェスホーン)】
 ラトラトの実 【金剛針鼠(ヴァジュラジホッグ)】
 ネコネコの実 【毒熊(ベネンオルソ)】
 トリトリの実 【鷲猫(ガットイーグル)】
 セイセイの実 【白虎(アルブスタイガー)】
 トウトウの実 【青龍(アズルドラゴー)】
 ナンナンの実 【朱雀(レッドフェニックス)】
 ホクホクの実 【玄武(エクスニュー)】
 ランランの実 【砂嵐(セト)】                            」


――知らない名前ばかりだ・・・・・・


〈バカ野郎! 全部覚えておけよ。オレの仲間だぞ。これから集めるんだからよ〉


シイグは心の中で、サタンに怒られた。
アンゲロスはそんなことは知らずに、話を続ける。


「調べているうちに、1つの国の名が出てきました。『ソールオク王国』・・・・・・この国が、何を意味するのかは、いまだに解りませんが」


――ソールオク王国・・・・・・


〈オ、オレの、故郷・・・・・・オレの国・・・オレの、オレの! し、知らないのか! なんで!〉


その名が声となった瞬間、
シイグの中で、サタンが狂ったように叫び始めた。
その様子にシイグは、慌てふためく。


〈ままま、待てよ。どうした? どうしたんだよ、サタン!〉
〈まさか、まさかまさか・・・・・・オレらの存在を、消したのか? ・・・・・・ファルサ・デアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!! 許さねぇええええええええええぞぉおおおおおおおおおおおお!!〉


「おっと、話がそれてしまいましたね。失礼。あなたの能力、【狂乱龍(デネプラ・ドラコ)】は合成系(キメラ)の中でも、最強との噂。つまり、悪魔の実中、最強最悪。ラグエル様は、そんなあなたを唯一危険視している。だから、殺しましょう。あなたを・・・」


〈シイグ代われ!! オレが、ファルサ・デアをぶち殺すっ!!〉


――まずい、色々とカオスだ。


〈シイグ! シイグ! 聞こえてるんだろ!!〉
〈・・・・・・うるせぇよっ!! 今忙しいんだよっ!! 少し黙ってろ。ファルサなんとかは、いつかぶちのめしてやるから黙ってろ〉


――今、殺したい奴が目の前にいるんだ。殺させろ・・・


ゾクッ・・・・・・


〈・・・お、おい・・・シイグ・・・〉


サタンの怒りを一瞬で鎮めるほどの憎しみを、シイグは心のうちに秘めていた。


〈く、狂っている・・・〉


サタンは恐怖した。
およそ人間ごときが、感じることはないほどの憎しみである。

シイグが、黒い闘気をまとう。
アンゲロスは、刀を振り上げる。一瞬のための後、刀が桃色に光る。


「一刀流奥義・裏・・・・・・」
「神風一刀流居合・・・・・・」


シイグは、刃の先を敵に向け、腰元に構える。
アンゲロスは、刀を鞘に納める。
そのまま腰を落とし、柄に手をかける。


「――――“桔梗(バルーン)”!!」
「――――“迅雷(じんらい)”!!」


シイグは、1本の針となり、敵に穴をあける。
桃色の光を置いていくほどの速度で、アンゲロスは敵を斬りつける。


「割れろおおおおおおおおおお!!」
「ラグエル様最高おおおおおおおおおおおおお!!」


2人の剣閃がぶつかり、火花が散る。
・・・・・・アンゲロスの右腕が、風船のように割れた。
シイグも右肩をぶった斬られる。


「うう・・・ぐおおお・・・・・・」
「・・・くっ・・・・・・もう、終わりだな。俺の勝ちだ」


右腕を押さえ、苦しむアンゲロスにシイグは近づく。
アンゲロスはそれに気が付き、逃げようとするが、うまく逃げられない。


「父様、ついに復讐が叶うよ・・・」


シイグは刀を振り上げる。
だが、そこでシイグの動きは止まった。


「・・・ぐっ・・・なんで・・・・・・」
「ふふふ、やっと効いてきましたか・・・」


シイグの斬られた右肩に、電流がはしっている。


「ちきしょぉ・・・・・・」
「くっ、ごはっ・・・・・・ふふふ、許さない、許さない。ふふふ、血が、血が止まらないいいいいいいいいい。・・・・・・おい」


アンゲロスの呼び声に、2人の男が現れた。
いまだに、シイグの身体は動かない。


「ふふふ、戻るぞ」


その言葉に、2人の男は肩にアンゲロスを抱え、去っていく。
完全に姿は見えなくなったはずのアンゲロスの声が、どこからか聞こえた。


「・・・ふふふ、『シイグ』貴様のことは、忘れない・・・」



―――――――



アンゲロスが消え、30分もしたらシイグの身体は、動くようになった。
そして、ノーロック海賊団もいなくなっていた。


ようやくやってきた海軍の調べでは、

死傷者 約8000人
負傷者 約2000人
生存者 約10人

あまりに大きな犠牲。だが、一部ではノーロック海賊団を英雄視する者もいた。
それは、しょうがないことなのかもしれない。


来て早々、海軍は後片付けに忙しく働いていた。
そして、ものの1時間で片付けは終了した。
シイグへの取り調べも1時間ほどで終了。
取り調べの後は、病院にて、治療を受ける。・・・が、
戦いが終わってから、シイグは常に放心状態だった。
シイグにとって父は、この世界での初めてできたつながり。
見慣れない世界。日を重ねるごとに募り積もっていく不安。
そんなシイグに優しく接してくれた父を、シイグが大切に思うのは当然かもしれない。
大切だった父を、シイグは奪われる。
心のよりどころを失い、人を信じることすらできなくなりそうなシイグは、今何を思うだろう。


――就活しなきゃ。


「現実的っ!!」


思わず突っ込んでしまったルイ。
ルイもまた、数少ない生存者として取り調べを受けていた。


「おお、ルイか・・・何の用だ?」
「ふぁあああ、いや、なんかお前がすごく落ち込んでるから、慰めてくれって海軍の人に頼まれたんだよ。めんどくさいことにな・・・」
「それで、慰めに来てくれたのか?」


ルイの存在にやっと気づくシイグ。
シイグの言葉にルイは激しく動揺する。顔はまるでトマトのようだ。


「べ、別にそんなんじゃねぇよ。ふぁ、ふぁあああ、めめめめんどくさいなぁ・・・」
「・・・そうか。ま、当然だな」


シイグの顔は相変わらずに暗い。
空気が重くなり、ルイも口を紡ぐ。


「俺は、生き延びなくてはならない。・・・でも、俺にはもう住む家ぐらいしか残ってないんだ。それでも、生きて、生きて、あいつを・・・・・・」


殺す。
今のシイグは、憎しみによって動いている。
暗く深い闇の感情。


「・・・そういえば、ルイの目的ってなんなんだ? ははは、そうだよ。お前ホントらしくなかったよな」


シイグはやっと場の空気を読み、無理に笑顔を作る。
乾いた笑い声が響いた。
ルイは口を開き、シイグの問いに答える。


「シイグ――おれの仲間になれ」


その口ぶりは、国民的海賊漫画の主人公のようではなかった。




■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ

どーも、波良田瑛太です。
今回は結構な長文でしたね。
なので、あとがきも少し長くなります。面倒な方は、とばしてください。

近況報告でもしますね。
あれは、一週間ぐらい前のことですね・・・

夕日が、空を赤く染め始めた時間帯
学校の体育館裏。
道路を走る、車のエンジン音。部活中の生徒の声。
妙にロマンチックな、雰囲気の中、
(え・・・・・・いや、まさか・・・・・・・でも・・・)
といった、期待を込めながら、僕は精一杯の勇気を振り絞り、目の前の女の子に、声をかけました。
「あ、あのさ、・・・・・・ぼ、僕に、は、話って、何、かな・・・・・・?」
目の前の女の子(名前は分かりません)は、僕の言葉に反応し、ふせていた顔を上げた。
――その顔は、湯気が出そうなほど、真っ赤だった。
女の子は、少しの間もじもじし、覚悟を決めたように、言った。
「わ、私、あ、あなたのことが・・・す―――


ガバッ


息が切れている。汗がひどい。
すぐに、落ち着き、周りを見渡す。
そこは、僕の部屋だった。
そして、僕はベッドの上にいた。
まるで、今起きたかのような体制。
つまり――


















――夢オチです。

さて、もう一度夢を見てきますね。それでは。
テキストサイズ:15k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.